夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『楽隊のうさぎ』

2014年01月08日 | 映画(か行)
『楽隊のうさぎ』
監督:鈴木卓爾
出演:川崎航星,宮崎将,山田真歩,寺十吾,小梅,徳井優,井浦新,鈴木砂羽他

年末にナナゲイでハシゴの3本目。

『私は猫ストーカー』(2009)の監督で、『のんちゃんのり弁』(2009)の脚本家、
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(2010)の誘拐犯役など、
役者としての出演作も多い鈴木卓爾監督作品。

何も知らずに観に行ったら、この日は監督と出演者1名の舞台挨拶あり。
なんとなくお得な気分で、終映後を楽しみに鑑賞しました。
原作は中沢けいの同名小説で、数年前のセンター試験にも取り上げられたのだそうな。

吹奏楽が盛んな静岡県浜松市。
花の木中学校に入学した奥田克久は、同じ小学校からの友人らと通学を共にするが、
引っ込み思案な性格が災いしてか、自分だけがのけものにされそうな雰囲気。
見下した態度で一緒にサッカー部に入ろうと誘われ、気乗りしない。

そんなとき、校庭から吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
新入生を歓迎する音色に少しだけ惹かれ、吹奏楽部の部室に近づいてみると、
演奏に合わせて愉快に踊るうさぎの幻が見える。

そのまま部室に足を踏み入れた克久に、
打楽器奏者でティンパニ担当の上級生、藤尾園子が話しかける。
「私は、授業が終わったら一刻も早く家に帰りたいと思っているほうだったけれど」と彼女は言い、
まるで克久の心のうちをそのままわかっているかのよう。

こうして克久はなんとなく吹奏楽部へ。
やがて音楽を奏でる楽しさに魅入られ、練習を重ねてゆくのだが……。

ありそうで意外に少ない、中学生を主人公に据えた映画。
小学生や高校生のほうがグッと多いのではないでしょうか。
私自身のことを振り返ると、中学時代はいちばん「面倒くさい」時期。
小学生の頃はただ無邪気、こう書くと語弊があるかもしれませんが、
高校生になれば同じ程度のアタマの人間が集まって楽しい。
だけど、中学生はそうじゃない。なんだかあれもこれも面倒でした。
おそらくそんな時期の主人公たちの様子が丁寧に描かれた作品です。

吹奏楽部の面々についてはもちろんのこと、
快活でイケてるグループに属していたはずの同級生が
ふとしたことからいじめられる側になってしまったり、
先生の心ない一言でクラスでの位置づけが決まってしまったり、
中学生だからこそ直面するであろう問題がいろいろ。
けれどもそれを見逃さず見放さない先生や友人もいる。
とっても温かい作品です。

憎むべきは、いきいきとしたものを殺してしまう何か。
原作では克久の心の中で発せられた台詞が、
舞台挨拶にも登場した関西からの転校生、町屋恵介によって口にされます。
いきいきとしたものをいきいきとしたままで持ちつづけていられたら。

終映後、パンフレットに鈴木卓爾監督と恵介役の大原光太郎くんのサインを貰いました。
まだサインの練習なんてしていないとおぼしき大原くんのサインは、
何か書類の署名欄に記入された氏名のようでカワイイです。

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