夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『聖者たちの食卓』

2014年11月11日 | 映画(さ行)
『聖者たちの食卓』(原題:Himself He Cooks)
監督:フィリップ・ヴィチュス,ヴァレリー・ベルト

観てから1週間以上経ってしまいましたが、
先週の3連休最終日にシネ・リーブル梅田にて。

真ん前の席の人が開映前からかなり派手な音をさせながら何かを食べていて、
これはヤバイかな~と思っていたら、その前列中央に座っていた人が「シーッ」。
気づかなかったのか無視したのか、その後もバリバリぽりぽり。
前列中央の人が今度は振り返って「シーッ!」。静かになりました。(^^)

インド北西部、パンジャーブ州のアムリトサルにあるシク教総本山、ハリマンディル・サーヒブ。
上層階が金で覆われた独特の外観から“黄金寺院”と呼ばれています。

この黄金寺院では、巡礼者や旅行者に無料の食事が振る舞われます。
その数は驚くことなかれ、1日10万食。
毎日300人のボランティアスタッフによって用意される食事の舞台裏を
淡々と撮影したドキュメンタリー作品です。

インドといえばヒンドゥー教、ヒンドゥー教といえばカースト。
そんな認識があったのですが、シク教は600年前からカーストを否定。
「人間が子宮の中にいるうちは、カーストなどありはしない」と説き、
地位および性別、年齢に関係なく、ともに料理をして、
同じ床に座って食事をし、ともに後片づけをする、
誰もが同じようにおなかを満たすことが聖なることなのだと言うのです。

ボランティアスタッフが取り立てて幸せそうな顔をしているとは思いませんでしたが、
みんなが座って具材を切り、それをときたま回収しに来る人がいて、
皿を洗ったり配ったり、タオル代わりの布を切ったり畳んだり。
誰かのためにやっているという自己満足や偽善はまるでなく、
当たり前のことを当たり前にこなしているという様子なのです。
歌を口ずさみながらなんてこともあって、これだけ人がいるのにとても平和。

寺院に入る前には靴を預けることになっています。
一度に5千人が一緒に食事をとるのですから、預かる靴も5千足。
雑然としている様子なのに、どうして間違いが起こらないのか。
1日に20万個のお弁当がほぼ正しく届けられる国、インド。
いったいどうしてこんなことができるのでしょう。

おかわりは自由、その代わり残さないこと。使った食器は元の場所へ。
タダ飯を食べさせてもらっておいて、ルールを守らない人がいてもおかしくはありません。
なのに困ったことは起こらない。ただただ、すごい。

ひとりごはんも楽しいけれど、みんなでごはんもやはりいいもの。
この時間が人の心を穏やかにするのだなぁと思いました。

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