夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『泣きたい私は猫をかぶる』

2022年04月30日 | 映画(な行)
『泣きたい私は猫をかぶる』
監督:佐藤順一,柴山智隆
声の出演:志田未来,花江夏樹,寿美菜子,小野賢章,千葉進歩,川澄綾子,大原さやか,浪川大輔,
     小木博明,山寺宏一,喜多村英梨,三木眞一郎,佐久間レイ,吉田ウーロン太,落合福嗣他
 
Netflixで何を観ようかなと物色していたら、こんな2020年のアニメが目に留まりました。
文化庁主催のメディア芸術祭のアニメーション部門で優秀作品賞を受賞。
2020年の6月に全世界への配信がスタートしたNetflixオリジナル作品です。
 
愛知県常滑市に住む中学2年の笹木美代のあだ名は「ムゲ」。
その由来は、あまりに奔放な言動が無限大の謎人間だから。
彼女は同級生の日之出賢人のことが大好きで、連日一方的に話しかけたりちょっかいを出したり。
以前はいちいち怒っていた賢人だが、今はもうほとんど反応がなく、
親友の深瀬頼子は美代のことを心配している。
 
しかし、どれだけ素っ気なくされようと美代が怯まない理由があった。
夏祭りの夜、美代は大きな猫の姿をした妖怪「猫店主」から猫になれるお面を受け取った。
そのお面をかぶって白猫に変身した美代は、賢人のもとを訪れて私生活を見聞。
そんなことを知る由もない賢人は、白猫に「太郎」と名付けて可愛がっているのだ。
 
賢人は父親を亡くしており、陶芸家の祖父と陶芸工房を切り盛りする母親、姉の4人暮らし。
一方の美代は両親が離婚。今は父親とその恋人の薫と3人で暮らしている。
賢人の家庭を知る美代は、自分には彼の気持ちがわかると思い込んでいたが、
私生活を見られているとは知らない賢人はある日、美代につらく当たり……。
 
最初、美代のことをずいぶんイタイ子だと思いました。
登校中、前方を歩く賢人を見つけると走り寄っていってジャンプ、彼のお尻に自分のお尻をぶつける。
好きでもない女子にこんなことをされて喜ぶ男子なんていないでしょう。
 
それが、実は美代は可愛い猫に変身して賢人に会いに行っているのだとわかる。
家でも学校でもほとんど仏頂面の賢人が、太郎に対してだけは笑顔を見せます。
あ、白猫は思いっきり雌猫なんですけど、それに「太郎」と名付けるセンスすら美代にとっては好ましい(笑)。
 
猫になれるお面をもらうのは猫店主との取引だから、
そのまま人間に戻らずに猫になる場合は、猫店主に寿命を進呈することになります。
猫になったり人間に戻ったりしている間はいいけれど、
一定の時間を猫になって過ごすと、いずれ完全に猫になって人間に戻れなくなることも。
 
面白いのは、薫が連れてきた飼い猫「きなこ」の気持ち。
美代が賢人につらく当たられて太郎に変身したまま家出した隙を突き、
きなこは猫店主と取引をして美代の姿形を手に入れます。そう、美代を乗っ取るんです。
きなこは薫のことが大好きで、だからこそ自分が死んだら薫がどうなるか心配。
で、美代のいない隙に美代になり代わり、薫のそばにいようと思うんですね。
薫にはもちろん自分がきなこであることを明かせないけれども、
いずれ薫はきなこのことを忘れるだろうし、自分が薫のそばにいることを選択しようとします。
でも、来る日も来る日もきなこのことを探す薫を見て考えを変える。
美代になるんじゃなくて、きなこのままでいることが大事だと考えるわけです。
 
誰も、誰かの代わりを務めることなんてできない。それが人間であっても動物であっても。
そんなことを思いました。

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