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『キリエのうた』

2023年10月25日 | 映画(か行)
『キリエのうた』
監督:岩井俊二
出演:アイナ・ジ・エンド,松村北斗,黒木華,広瀬すず,村上虹郎,松浦祐也,笠原秀幸,
   矢山花,江口洋介,吉瀬美智子,樋口真嗣,奥菜恵,浅田美代子,北村有起哉他
 
これを観ておけば前週末までにシネコンで公開になった作品は制覇だから、
心置きなく翌日からクライマックスシリーズに没頭することができます。
前述の『ゆとりですがなにか インターナショナル』の後、同じくイオンシネマ茨木にて。
 
監督は岩井俊二、音楽は小林武史、主演がアイナ・ジ・エンド。
知らないにもほどがあると思うのですが、私は本作の予告編で初めてアイナ・ジ・エンドを知りました。
すごい売れっ子なんですね。知らなくてごめんなさい。
 
2011年の大阪。
ザリガニ釣りにいそしんでいた少年たちは、見かけない少女(矢山花)がいることに気づく。
一緒にザリガニを釣るかと誘ったところ、少女はうなずくが何もしゃべらない。
以後、少女と数回遊ぶも、ひと言も口をきかない少女を少年たちは「イワン」と呼ぶ。
少年たちからその話を聞いた小学校教師・寺石風美(黒木華)は少女のことが気になりはじめる。
 
2023年の東京。
小塚路花(るか)(アイナ・ジ・エンド)は「キリエ」と名乗る路上ミュージシャン
通りかかった一条逸子(広瀬すず)はキリエに「何か歌ってよ」とリクエスト。
しゃべるときには声を発することができないキリエを食事に誘い、自分の部屋に泊まらせる。
 
2018年の帯広。
2023年の逸子は最初から気づいていたが、キリエは高校生だった頃に親しかった相手。
逸子は当時真緒里、キリエは路花。
路花は、真緒里の家庭教師だった潮見夏彦(松村北斗)の妹だということで、
夏彦から友だちになってやってほしいと真緒里は言われ、路花と過ごすようになったのだ。
 
イワンがその後の路花で、キリエというのは路花の姉の名前。
アイナ・ジ・エンドが一人二役で姉妹を演じています。
 
夏彦が高校生の頃に交際していたのが、石巻に一家で在住していた希(きりえ)。
希が一方的に想いを寄せていた夏彦にアプローチをかけ、やがて希は妊娠。
戸惑う夏彦は父親になる決意をしつつも大阪の大学へ行くことを選びます。
不安な思いを隠しながら希が夏彦と電話で話していた折、東北を襲うあの地震
 
思いっきりネタバレになりますが、
母親や姉と離ればなれになった路花は、ひとりでトラックに潜り込んで大阪へ。
大阪行きを選んだのは、姉・希のフィアンセが大阪にいると聞いていたから。
頼るあてもないのに知らない土地へ来て、そこで気にかけてくれたのが風美でした。
路花との筆談で夏彦の存在を知った風美がSNSで探す様子はイマ風。
 
地震のシーンは凄まじく、被災者にはきついかもしれません。
被災していない私がそう思うだけで、実際はもっと凄いものだったかもしれませんね。
ここからたったひとりで大阪へとやってきた路花のことを思うと涙が出る。
 
ただ、私はこのたび初めて聴いたアイナ・ジ・エンドの声は苦手です。
面白い声と歌い方で、声量もかなりのものだから、人気があるのはわかる。
でも、低音から高音に移ったときの声に耳をつんざかれるようで、
そのせいで声に気をとられて歌詞がまったく私には入ってきません。
予告編を観たときから苦手かもと思っていたのは当たりでした。
たぶん私の耳のほうがおかしいのですけれど。(^^;
 
広瀬すずが結婚詐欺師というのもなんだか違和感あり。
彼女に騙されていると知った男性・波田目新平を松浦祐也が演じているのですが、
彼の場合、『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』では連続殺人鬼役だったり、
『福田村事件』で率先して暴挙に出る男性役だったりで、
ちょっと気味の悪いイメージが残りすぎているせいで、本作でも怖かった。
自然体でよかったのはプロデューサー役の北村有起哉でしょうか。
 
岩井監督の人脈なのか、名だたるミュージシャンが大勢出演。
七尾旅人、大塚愛安藤裕子水越けいこ、米米CLUBの石井竜也、ムーンライダーズの鈴木慶一など。
樋口真嗣監督まで出演しているとはなかなかの驚き。
真緒里の母親を演じる奥菜恵のやさぐれっぷりにはもっと驚きました。
やさぐれていても綺麗は綺麗。こんなママさんのいるスナックには通いたくなるよなぁ。
 
と、本筋とは関係のないところで「ほうっ」と思った作品でした。
それにしたって178分は長いよ。予告編を入れたら190分。勘弁して。

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