電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

温又柔『台湾生まれ日本語育ち』を読む

2016年04月27日 06時04分01秒 | 読書
白水社刊の単行本で、温又柔著『台湾生まれ日本語育ち』を読みました。著者の温又柔(Wen Yuju,おん・ゆうじゅう)さんは、1980年に台湾の台北市で生まれ、三歳のときに家族と東京に引越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもとで育った作家です。プロフィールを見ると、2006年に法政大学大学院・国際文化専攻修士課程修了、2011年に『幸福の家』(集英社)を刊行、同年9月から2015年5月まで、白水社HPで「失われた"母国語"を求めて」を連載、とあります。本書は、2016年1月の新刊で、初のコトバをめぐるエッセイ集で、白水社HPの連載を加筆訂正し書籍化したものだそうです。



日本統治時代に日本語教育を受けた祖父母世代、台湾に逃げ込んだ蒋介石の中華民国政府によって中國語教育を受けた両親世代、そして幼児期に台湾語で育ち、親のビジネスの関係で日本にやってきて親しんだ子供の日本語。家族がごちゃまぜの言語でやりとりをするものだから、時に疎外感も生じるけれど、落ち込んだりはしません。繊細ではあるが弱くはない、興味深いエッセイ集でした。台湾の歴史への興味は、先の映画「KANO1931~海の向こうの甲子園」(*1)以来です。

(*1):映画「KANO1931~海の向こうの甲子園」を観る~「電網郊外散歩道」2015年3月

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