電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

昔の廉価盤シリーズ中にあった録音から知名度について考える

2022年03月15日 06時01分42秒 | -協奏曲
1970年前後に、日本コロムビア社に「ダイヤモンド1000」という廉価盤LPのシリーズ(*1,2)がありました。当時、CBSソニー社の独立によりドル箱だったCBS録音が失われたために、単独では売りにくいけれどもシリーズ物の中の一枚ならば大丈夫かも、との目論見でスタートさせたのではなかろうかと思います。貧乏学生だった私は、この中から例えばアルフレート・ブレンデルによる最初のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集から何枚かを購入するなどして、実によく聞きました(*3)。それでも、当時は興味は持ちながらも懐具合の関係で購入には至らなかったものを、パブリック・ドメイン音源として再会し、あらためて喜び、また感銘を受けることがあります。例えばトッシー・スピヴァコフスキー(*4)のヴァイオリン、タウノ・ハンニカイネン(*5)指揮のロンドン響によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲。

YouTube にありました。
Jean Sibelius "Violin Concerto" Tossy Spivakovsky


エヴェレスト社が35ミリ・マグネティックフィルムに収録した優秀録音だそうで、演奏・録音ともに立派なものです。こうした演奏が、レギュラープライスのLPレコードとして売り出しにくかったのはなぜかと考えてみると、要するに「知名度」の問題だったのだろうと思います。当時はもちろんインターネットなどはなく、有名演奏家に関する雑誌等の情報が翻訳されて伝わるだけだったでしょう。購入して実際に聴いてみればその魅力は伝わるだろうけれど、購入する意欲は「知名度」に左右されるのが現実だった、ということなのかも。「巨人・大鵬・卵焼き」の時代は、同時に「カラヤン・ビートルズ」の時代でもありました。そんな時代に、書籍で言えば文庫本でしょうか、廉価盤シリーズはありがたい存在でした。

(*1): 大木正興氏とダイヤモンド1000シリーズのこと〜「電網郊外散歩道」2005年6月
(*2): ダイヤモンド1000シリーズ・アルバム〜BQクラシックスより
(*3): あの頃、聴いていた音楽〜「電網郊外散歩道」2018年12月
(*4): トッシー・スピヴァコフスキー〜Wikipedia の解説
(*5): タウノ・ハンニカイネン〜Wikipedia の解説

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