ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

信じようが信じまいが

2017-10-29 | わたしの好きなもの

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Marcelino Pan y Vino ( スペイン語でパンとワイン;英題 Miracle of Mercelino; 邦題 穢れなきいたずら)と言うスペイン映画がある。制作年は1955年だが、私がこの映画を最初にテレビで観たのは、それからずっと後の小学生の時だったと思う。そんな太古の昔なのに、この映画の主題歌(マルセリーノの唄)までしっかり覚えている。「ぼくの伯父さんと言い、私には、たいして生活には役立たないだろう記憶がしっかりあるものだ。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/imagesMarcelino

スペイン語版の映画ポスター

 

この「穢れなきいたずら」は、イタリアの民間伝承を題材に書かれた小説から作られた映画で、幼い私にも十分理解できた。マルセリーノは、修道院の前に捨てられていた孤児で、修道士達に育てられる。純真でいたずらっ子なこの少年は、屋根裏部屋には農具や工具を保管しているから、決して入るなとある修道士から厳しく言われる。「男がいて、もし入ったりしたらつまみ出される」と脅かされもした。しかしマルセリーノは好奇心からある日その部屋を覗く。するとそこには本当に、「男」がいて、マルセリーノは話しかけるが、「男」はなにも言わない。

痩せこけて空腹そうに見えるから、パンを持ってこよう、とマルセリーノは部屋を後にし、持ってくる。すると「男」は腕を差し伸べて、パンを受け取る。傍にあったひじ掛け椅子に座るようマルセリーノが勧めると、「男」は十字架から降りて腰かけた。そしてマルセリーノに自分が誰だか知っているかと聞く。少年は「神様です」と答える。「男」は少年が運んできた物を喜び、少年はそれから毎日それらを台所からくすねて持ってくる。その「男」とマルセリーノはその間「男」の母親や、自分の母親についてよく話をした。

ある日修道士のひとりが頻繁に足りなくなる食料を不審に思い、マルセリーノの仕業だろうと、少年の後をつける。そうとは知らずに屋根裏部屋に入ったマルセリーノに「男」は親切な彼の願いを叶えようと言う。マルセリーノはその「男」の母親と自分の母親に今すぐ会いたい、と願う。すると「男」はマルセリーノをその腕に抱き、マルセリーノは目を閉じる。それをドアの隙間から見た修道士は十字架に張り付けられたキリストが動き、話したのを見て驚愕のあまり他の修道士達を呼び募る。みなで駆け付けると、キリストの腕に抱かれたマルセリーノはすでに、こと切れていた。

 

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アメリカ版映画のポスター

 

 

この映画に落涙滂沱した私は、自分も子供だったのにも関わらず、マルセリーノの純真さに心打たれ、信仰の信の字も知らなかっただろうに、なにかを信じることの力に感動したのだった。後日、まだ学び舎にあった私が改宗した背景には、案外この映画の余韻があったのかもしれない。

かの心理分析学者のカール・ユングの座右の銘は、「祈ろうが祈るまいが神は存在する」であった。彼は自らのユング心理学(分析心理学)を通じて神を理解しようとしていたようだが、司祭であった古人*の言葉を大切にしていたのは、なんだか微笑ましい。

*Desiderius Erasmus Roterodamusデシデリウス・エラスムス・ロテロダムス、哲学者・神学者・カソリック教会の司祭。ラテン語で"VOCATVS ATQUE NON VOCATVS DEUS ADERIT,"  "Bidden or Not Bidden, God is Present." 日本語では、おそらく「祈ろうが祈るまいが神は存在する」ということになる。

このユングの座右の銘をクロススティッチにした小さな布を高校を卒業した長女へのお祝いに作ったキルトの裏に私は縫い付けた。どんな時にも神を忘れないで、の母親の老婆心の現れである。そうだ、マルセリーノの映画も教えておこう。

*V=U

 

祈ろうが祈るまいが、神は存在する

Bidden or Not Bidden, God is Present

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