山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

葉室麟が描く絵師群像 『乾山晩愁』

2014-08-21 10:04:34 | 読書
 古武士のような凛とした姿勢が伝わる作家「葉室麟」に注目している。
 戦国から江戸に活躍した絵師たちの生き様を描いた『乾山晩愁』(角川文庫 2008年12月刊)を読む。
 尾形乾山、狩野永徳、長谷川等伯、清原雪信、英(ハナブサ)一蝶の5人をそれぞれ描いている。

乾山(ケンザン)は、尾形光琳の弟で陶芸や文人画もどきの画家だがあまり知られていない。
 影の存在の乾山に焦点をあてるところが作者らしい。
 赤穂浪士討ち入りと光琳との関係を抽出した新説も斬新だ。

 永徳も等伯も御用絵師を死守しようとする執念に修羅を見る作者は、自分と同じ作家としての修羅を見ている。
等伯は狩野派が独占する御用絵師の牙城を一部崩した執念と実力は一目に値する。

 雪信は、狩野探幽の姪の美人で評判の娘であった。
 作者は雪信をめぐる、探幽のお抱え絵師としての執着と狩野派内の抗争を背景に描いている。

 一蝶の正体は最後になって英一蝶であることがやっとわかった。
 大奥の守旧派と公家派との骨肉の争いに巻き込まれる一蝶は島送りとなる。

 葉室麟のどん底から人間や権力者を見る視座の深さをまたまた感じ入る時代小説だった。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする