Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

二人の休日

2016-11-26 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


雪が先輩の机を借りて勉強を始めると、彼も自分の仕事を持ってやって来た。

「俺も報告書書かなきゃなんだ。一緒にやろう」



雪は微笑みながら彼の為に場所を空ける。







二人の休日。

互いの仕事に目を向けながら、二人は同じ空間で同じ空気を吸う。



閑静な彼の部屋に、パソコンのキーボードを叩く音だけが響いた。

時間は刻々と流れて行く。







雪は熱心に課題に取り組んでいたが、淳は少々退屈になってきたらしい。

頬杖をつきながら顔を上げた。



チラ、と横目で雪に視線を流すと、

彼女は相変わらずPCとにらめっこの最中だ。

難航しているのか、うむむ、と小さな声を漏らしている。



「‥‥‥‥」



淳は、そのままじっと雪のことを見つめてみた。

けれど雪は絶対にこちらを見ようとはしない。



クス、と淳は小さく笑った。

鋭敏な彼女が、見られていることに気付かないわけないのに。



今度はわざとらしく大きな音を立ててキーボードを叩いてみた。

けれど雪は眉間にしわを寄せながら、じっと自身の課題を睨み続けている。

集中







それなら、と今度は顔を覗き込んでみた。

彼女の視界に入るように身を屈める。



それでも雪は彼の方を見ようとしなかった。

少し考えがまとまったのか、PCに手を伸ばしてキーボードを叩く。



淳はテーブルに突っ伏した姿勢のまま口を開いた。

「本当に勉強だけなんだ?」






彼女からの返事は無い。

課題に没頭する雪の横顔を見ながら、淳はふっと微笑んだ。







真剣な顔をしてプリントに目を落とす雪の横顔を、淳は心地良さを感じながらずっと眺めていた。

結局雪はそのまま時計の針が十二時を指すまで、”勉強だけ”していたのだった‥。



「お昼、デリバリー頼んでもいいですか?検索しますね

「いいよ。何食べよっか」



お昼になり、二人はデリバリーを頼んで昼食を取った。

雪は慣れているが、どうやら淳は慣れていない様子‥。



「これはこうして箸を使って‥と」「おぉ」



「出来た!」



まるで初めてコンビニおにぎりを二人で食べた時のようなやり取り。

けれど二人の間には、もうその頃とは比べ物にならないくらい優しい空気が流れている。

「コップ洗いますね」

「いいよいいよ、置いといて」



「うわっこぼれた!」

「台拭き台拭き」「これだ!」



「俺やるよ」「私が!」



ビショビショになってしまった床を拭くのでさえ、二人でやれば楽しかった。

雪と淳は肩を寄せ合いながら、気の置けない者同士笑い合う。





お腹が膨れた二人は、食後の休憩にソファに座りテレビを点けた。

「映画一つだけ観ようか」



そう言って淳が選んだのは、小難しそうな戦争映画だ。

雪はその選択にぶーたれながら、彼に向かって不平を鳴らす。

「本当に趣味が合わない!」「ふーん」



ワチャワチャやっている間に、気がつけば結構な時間が経っていた。



<結局集中出来ず外出>



午後は近所のカフェで勉強し、

一段落してカフェを出る頃には、すっかり日も暮れていた。

さむっ!さむ〜〜!



「寒い〜〜〜!」



雪がそう言って震えていると、淳が温かな珈琲を淹れて彼女に差し出す。

ジャーン






二人は温かなそれを飲みながら、楽しそうに笑い合った。

勉強だけの一日。

それでも二人一緒に居れば、随分と楽しい日に変わる‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<二人の休日>でした。

なんと平和な‥。でもチートラにおける平和は嵐の前の静けさなので、ブルブルしますね

しかしあの「これはこうして箸を使って」のところ、一体何をしているのだろう‥。



*追記 コメント欄にてミロさんより↑の場面の解説いただきました〜!

ミロさんありがとうございます^^

次回は<鏡(1)>です。


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突然の訪問

2016-11-24 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)
まだ日が昇る前のほの暗い空。

鳥の声がまばらに響いていた。



そんな時刻に関わらず、雪は自室にて外出の準備を始めていた。

鞄に参考書を詰め、鏡の前で身支度を済ませて。



外に出ると冷たい空気が頬を刺し、

雪はその中をあくびを噛み殺しながら歩く。



地元の駅から乗るとほぼたいてい座れる地下鉄。

雪はその揺れに身を任せて瞼を閉じた。



目的の駅に着く頃には、太陽もすっかり空に馴染みいつもの朝の風景だった。

雪はマフラーに顔を半分以上もぐらせながら、冷たい空気の中を歩いて行く。









青田淳は突然鳴り出した携帯電話の着信音で目を覚ました。

けれどまだ早い時刻だったので、彼はなかなか覚醒出来ずに着信音は長いこと部屋に響き渡っている。



ようやく淳はベッドサイドに置かれた携帯に手を伸ばし、その画面に目を落とすと、

そこには彼女の名前がチカチカと点滅していた。

「雪ちゃ‥どうしたの‥」



「私、今先輩のマンションの下まで来てるんですけど」



寝起きの頭に、その雪の言葉は唐突に響いた。

思わずパチリと目を開ける淳。



そして数秒後、雪の携帯からは彼の素っ頓狂な叫び声と転げ落ちるような音が聞こえた。

「えっ?!」 ガタガタッ



「ちょっ‥ちょっと待って!今下開ける、うっ‥ちょ‥待っ‥」

「だ‥大丈夫ですか?」



明らかに動揺している先輩の声を聞きながら、その数秒後に開いたオートロックの扉を雪はくぐった。

エレベーターに乗り、彼の家のフロアに着くと、前まで行ってインターホンを押す。



数秒後、先ほど聞いた慌てた声そのものの先輩が出て来た。

「雪ちゃん!」






寝起きそのままの彼の姿を見つめながらその場に佇む雪と、

突然の訪問に驚きを隠せない淳。二人は互いに目を丸くしながら向かい合う。

「どうして‥」



なんだか急に力が抜けたような気分だった。雪は大きく息を吐く。

はあ‥



「ふー‥」



長く息を吐き出しながら、彼の胸に額を付ける雪。

先程まで布団に包まれていたであろう彼の胸は、とても温かだ。

淳はそんな雪を受け止めながらも、やはりまだ思考がついて行かないらしい。

「え?ええ?」

「もしかして今日、何か先約ありますか?

勝手に来ちゃったから‥」




雪は彼の動揺ぶりを、先約があって雪が来られたら困ると言う意味で受け取った。

彼が雪の訪問を断る余地を彼女は与える。

「先約があるなら、行って下さい。顔見れたし、近くのカフェで勉強すればいいんですから‥。

でももし無いなら、今日は先輩の家で試験勉強しても良いですか?」


「え?いやいや!」



淳は引き続き動揺しながら、とりあえず雪の質問に答えつつ彼女を招き入れた。

「約束なんてないよ。あ‥あってもキャンセルするし。行かなくていい、いいんだけど‥とにかく上がって」



手を引かれながら、雪は彼の家の廊下を歩いた。中を見回すと、普段通りの先輩の家だ。

先約が無いのも本当らしく、出掛ける準備も特にしていなかった。

「外寒かったろ?地下鉄で来たの?」



「朝食は食べた?あ‥家に食べ物‥家政婦さんが‥」



廊下を歩き切る間に、淳はいくつもの質問を雪に浴びせた。

雪が口を開く前に、淳は早回しのように動きながら彼女をもてなす。

「とりあえず座って。鞄貸して」



「珈琲淹れようか?えっと‥試験‥試験勉強するんだよね。

俺、机仕舞っちゃってたっけ‥ちょっと待っててな」




「あ、俺顔洗って来なきゃ‥」



くるくると動き回る彼の背中を見つめながら、雪は胸の中にこそばゆい気持ちが芽生えるのを感じた。

起き立ての部屋着で、寝癖姿で、こんな青田淳の姿を誰が見たことがあるだろう‥。







ははは、と雪は声を立てて笑いながら、テーブルの上に上半身を倒した。

突然の彼女の来訪に慌てている彼を、可愛らしく思いながら。

「大丈夫ですよ。そんなに気を遣ってくれなくても」「え?」



「あ‥」



雪からそう言われて、淳はいかに自分が動揺していたかをジワジワと思い知った。

顔も洗ってない着の身着のままの自分は、どんなにかおかしく彼女の目に映っていただろう。



淳は目尻を下げながら、そんな自分と今の状況に思わず笑ってしまった。

静かだった彼の部屋に、二人の笑い声が響き渡る‥。

「本当にビックリだよ」「ごめんなさーい」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<突然の訪問>でした。

我々は今まで、ここまで慌てた先輩を目にしたことがあっただろうか。いや、ない。(反語)

慌て淳に寝グセ淳‥。まるで早朝ドッキリでしたね。雪ちゃんGJ!

先輩だけだとアレなので、以前寝起きを訪問された亮さんの寝起きショットも載せましょう。

寝起き亮と寝起き淳
 

ごちそうさまです!

次回は<二人の休日>です。


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最善の方法

2016-11-22 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


雪はPCの画面を前にして、思わず白目を剥いていた。

教養グループ課題のグループトークには誰も現れず、

同期のグループトークにはゆりっぺからの怒りメッセージがひっきりなしに届いている。

「‥‥‥‥」



とりあえず雪はグルワの方のトークにメッセージを書き込んでみた。

雪:誰も居ないですか?

雪:他のメンバーまだ来てないですか?


メンバー1:??

雪:私達二人だけ?



同期のトークの方は、ゆりっぺのメッセージがじゃんじゃん入って来る。

ゆりっぺ:アンタにはマジでガッカリなんだけど

ゆりっぺ:合コンしてほしいってことの

ゆりっぺ:何がそんなに問題なの?

ゆりっぺ:萌菜にまで言うこと?




「‥‥‥‥」



大層な剣幕で捲し立てるゆりっぺに、雪は一言こう返した。

何も言ってないけど



課題グルワの方は、唯一現れたメンバーの一人がこう呟いていた。

メンバー1:どう考えてもうちらのグループ終わってますよね



二つのグループトークは一方はひっきりなし一方は閑古鳥で正反対の様相だったが、

そのどちらも雪にとっては益を成さないという意味では同様だ。

ゆりっぺ:同級生なんだから、これくらいのお願い聞いてくれたっていいじゃん。

一体何がいけないっていうの?


メンバー1:それじゃお開きということで



雪はただ無心で、二つのやり取りを同時に終わらせる。

ゆりっぺ:アンタの彼氏が 雪:もう連絡してこないで

メンバー1:それじゃお開きということで 雪:はい。では失礼します



バンッ!







「あースッキリした」



PCを閉じると同時に、雪は色々なものから解放された。

神経を磨り減らしてまで、繋ぎ止める意味の無いものばかりだ。

もういいや。同窓会も出なきゃいいわけだし



奨学金は‥



けれど奨学金は諦められず、せめてもの足掻きで雪はテキストに手を伸ばす。

「試験は頑張ろう‥」



さぁ集中、と思った矢先に携帯電話が震え、

雪は「何よ」と呟きながら届いたメールに目を通した。

オススメ問題集、教えなさいよ



河村静香からのメール。

その内容を見て、雪は少し驚いた。

自分が持ち掛けたあの条件を、無視せずあちらからコンタクトを取ってきたのだ‥。

おお‥本気?



塾に登録したらそこで指定されるので、

それを中古サイトを見てみて下さい




「‥‥‥‥」



簡潔なメッセージを送り返し、一息つく。

自分が誘導した現状、そしてそれによって導かれる未来を思って、思わず雪は声を上げた。

「あああ!自分のことで精一杯なのに!何やってんのぉぉぉ!」



試験勉強に財務学会の課題、店の手伝いに周囲との人間関係‥。

自分の抱える様々な荷物の他に、更に手の掛かりそうな厄介事を自ら引き寄せてしまった。

けれど‥。



雪は机に突っ伏しながら、その”厄介事”について思いを巡らせる。

正しかったのかな。先輩に話もせず‥こんな風に自分勝手に‥。

いつかは話すべきなんだろうけど




でも今話したところで‥昔のことでまたストレス与えちゃうのもな‥。

新しい環境に慣れるのに大変だろうし、敢えて傷つけたくない‥




脳裏に、昨日偶然静香から聞いた”真実”が蘇った。

雪はあの時の自分の気持ちを思い出して、こう分析する。

私だってあの瞬間、怒りが湧き上がったけど



いきなり静香さんに対して私がキレたところで、

彼女の犯した間違いが消えるわけでもなく




先輩のトラウマがなくなるわけじゃない



それでも真実は誤魔化せない。

静香さんが‥今まで密告してきたことが‥先輩を‥







彼の抱える暗い闇、彼が負った深い傷の元凶は、河村氏ではなく静香の方にあった‥。

雪は自分の感情は置いておいて、その真実を客観視しながらこう思う。

先輩のための最善の方法はまだ分からないけれど、

静香さんが自立する為に私が少しでも助けになるのなら、それが最善なんじゃないかと思った




まだ道には霧がかかっていて先は見えないが、それがやがて思い描いた未来に繋がっていて欲しい。

その為には今自分が最善だと思う道を歩くしかないのだ。

険しくても、どんなに不安でも。



目の前には、やらなくてはならない勉強が山のようにあった。

雪はそれを横目で見つつ、携帯を手に取ってメールフォルダをスクロールする。



未だ返信出来ずにいる、先輩からのメールを再表示してみた。

来週は期末試験だから、今週末は会えないね。

試験頑張ってな




先輩の言う通り、今週末が山場だった。

眼前に積まれたテキストを、この週末で全て消化しなくてはならない。



けれど‥。



目の前のことしか見えなくなった時、ふと立ち止まって一歩退く。

そして周囲を見回すと、自ずと自分がすべきことが見えて来るー‥。


悟ったその考えをもう一度思い出し、今自分はどうすべきかを、雪はじっと思案していた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<最善の方法>でした。

ゆりっぺ‥ウザス‥ 

そんなに合コン開きたいなら西条和夫の繋がりで開けばいいのに‥。(ろくなメンバー集まらないと予想)


しかし雪ちゃんの黒淳化がここでも見て取れますね。

全て自分の頭の中で結論付けて動いちゃう感じ‥。

2部のレポート紛失事件発覚の際は先輩にこう言っていた雪ちゃんですが‥



相手を思いやってのこととはいえ、結果的に同じことになっちゃっているような‥?

それで自分がしんどい思いをするところは、雪ちゃんの憎めないとこですけどね‥。


次回は<突然の訪問>です。

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心配の種

2016-11-20 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


雪の心の中は、凪いだ海のように穏やかだった。

目の前のことでいっぱいいっぱいだった以前の自分より、

ほんの少し周りに目を向けて気を配れるようになってきたと。

私は嬉しい



けれどそんな感情も、現実の前ではいとも簡単に崩れてしまうわけで‥。

嬉しかったのに‥










教養の授業にて、雪は早くもそんな自分の気持ちがガラガラと崩れて行くのを感じていた。

<グルワメンバー1> <メンバー2>

 

<教養グルワ課題3名欠席>

終わった‥!



元々やる気が無いメンバー達だと思ってはいたが、

メンバーの半数以上が授業にすら出て来ないという始末‥。

雪は祈るような気持ちで、グループトークにメッセージを書き込んだ。

今夜のグループトーク、絶対参加して下さいね。



頼む、と強く願ってみるものの、この絶望的な状況を前にしては諦めの方が優勢だ。

ぶっちゃけ‥期待はしてないけどさ‥



オワタ‥



雪の溜息が、夕暮れの空に溶けて行く。

重たい雲の下、そしてまた二時間掛けて、雪は帰路を辿って行った。



帰宅ラッシュの地下鉄でもみくちゃにされながら地元に帰り、お客さんで賑わう店へと顔を出す。

「来てくれたの」



コートを脱ぎエプロンを付け、もう一働きだ。

ふー



店では蓮も働いていた。

「こっち二人前〜」



威勢の良い声が店に響く。

どこかゴキゲンの弟を見て、雪は若干不思議に思った。



蓮の奴、最近テンション高くない?

やっと気持ちの整理がついたかな




雪の記憶にある蓮の姿といえば‥。

「姉ちゃん‥俺、これからどうすればいい?」「アメリカ戻んな」



大学を休学し帰国してからは、いつもグジグジと悩んでばかりだった蓮。

けれど今の彼は、以前のような明るさを取り戻していた。



ぐー



不意に空腹を覚えた蓮は、依然ハイテンションで姉に向かって話し掛ける。

「なぁ!姉ちゃん、なんか急にラーメン食べたくなんない?夜食夜食!」

「ラーメン?何時だと思ってんのよ しかも宴麺屋でラーメンてアンタ‥

「家帰ったら一緒に食おうぜ!シーフードたっぷりで、俺が作っちゃる!

夕飯も食べずに店に直行してくれたんだろ?」




雪は自分が見透かされたことに若干驚きながら、その蓮の言葉を聞いた。

彼は彼なりに頑張ろうと決め、周りのことにも気を配っている。

「ん、分かった!」



姉に頭を撫でられた蓮は、パッと明るい笑顔を浮かべてこう言った。

「姉ちゃん、そんなに俺のこと心配すんなって!

これから超本気で頑張るからさ!マジで!!」




「分かったよ」 勉強を?仕事を?



目的語の無い”頑張る”は雪を少し不安にさせたが、そこはなんだかんだいっても可愛い弟。

姉弟は麺屋の片隅で以前のようにじゃれ合った。

可愛がってくれよん オッケー



そんな姉弟を見て、これも以前のように母親からの喝が飛ぶ‥。

「アンタ達何やってんの!お客さん通れないよ!」





その日の夜。

雪はPCを前にしてこんなことを思っていた。

例え揉め事を起こすことがあったとしても、とりあえず弟だから可愛く見えてしまうというもので。

けどこの子達には、最後までそんな気持ちは持てそうにない。




顔を見せないグルワメンバーは、グループトークにも当然のように現れない件について。



グルワメンバーが登録してあるグループトークには閑古鳥が鳴き、

一方同期のグループトークには、ひっきりなしにゆりっぺからのメッセージが届く。

雪は白目になりながら、またしても押し寄せてくるさざ波に揺れている‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<心配の種>でした。

グルワ‥本当雪ちゃんはメンバーに恵まれない件について‥

蓮のことも心配でしょうがありませんね。。


次回は<最善の方法>です。


*思ったよりも記事執筆が進んでいるので、更新頻度を一日おきに戻しますね〜
次回は22日更新です☆

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進化する周囲

2016-11-17 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)
静香と別れてから登校した雪。

見上げてみると青空に、パタパタと鳥が舞っていた。



キャンパスでは味趣連こと伊吹聡美、福井太一、そして雪は今日も三人一緒である。

特に付き合い始めの聡美と太一は、見ているこちらが照れてしまうほど仲睦まじい。

「うわああー!」「www」「はいはい、楽しそうで何より」



僅かながらも関係は常に変化し続け、その小さなさざ波はいつか大波となって周囲を揺らす。

そしてこの人達の関係性も、雪がもたらした情報によって大きく変わろうとしていた。





一人キャンパス内を歩いていた糸井直美に、大きな怒声が掛かる。

「おい!!糸井!!!」



「待ちやがれ!!」



振り返った直美が目にしたのは、鬼のような形相で近付いて来る柳瀬健太だった。

「お前わざとやっただろ?!」



健太は直美のコートの襟を掴みながら、感情のままに食って掛かる。

「はい?いきなり何なんですか?!離して下さい!」

「お前電話もメールも無視しただろ?!

俺の卒業試験台無しにしやがって!身に覚えがあんだろうが!!」




健太は怒っていた。

”既出問題から出る”という糸井直美の情報を信じて受けた卒業試験が、散々な結果だったのである。



健太は直美に向かって吠えるように捲し立てた。

「テメー頭どうかしちゃってんじゃねーのか?!

俺の卒業試験、どうしてくれんだよ!あぁ?!どうすんのかって聞いてんだよ!」


「酷い言いようですけど、先輩こそどうかしちゃったんじゃないですか?

どういうつもりですか!?」


「どうしたもこうしたも、お前が言ったんだろ?!既出問題から出るって!」



「一つも出なかったじゃねーかよ!!」



怒り狂う健太。

しかし直美はそんな健太を前にしても微塵ほども動じずに、こう言ってのけたのだった。

「え?そんなこと言いましたっけ?」



「は?」



首を傾げる直美を前にして、ポカンと口を開ける健太。

直美は口角を上げながら、堂々とした面持ちで健太を見据え切り返す。

「何か証拠でも?」




”証拠がないから、あの人はあんなにも堂々としていられるんです”



雪の言葉が蘇る。

直美は健太の境遇を逆手に取り、見事証拠無き犯人に成り果せたー‥。






周囲の色々な出来事に、気配りが足りなかったことを後悔してた



いつも自分のことで精一杯で、周りに目を向ける余裕が無かったと、雪は後悔していた。

一番身近な人達にさえ、何もしてあげられなかったと。



そんなことを思いながら、今雪は彼らと一緒に居る。

「はっ‥はっ‥」



身長180オーバーの太一を背負って、聡美はゼーハーしながらも道を歩ききった。

「入隊前にやって欲しいってこと、全部してあげてるの‥ゼーゼー

「ふぅん」



雪は穏やかな笑みを浮かべながら二人を見ていたが、ふとこれからの予定を思い出して声を上げる。

「あ、私まだ教養残ってる」「あたしも!」「俺、聡美さんと一緒に行って勉強しマス」



「それじゃ今日はここでバイバイだね。じゃね、勉強頑張って!」

「うん!」「皆サン、来週の試験頑張りマショ!」

「みんなファイティーン!」



太一は聡美に凭れ掛かれながらポロリと涙を流し、聡美はそんな太一をしっかり支えている。

「試験終わったら沢山デートしましょうネ?それまでスキーはおあづけ‥

「はいはい」






こちらを見ている雪に気がついた聡美は、晴れやかな笑顔で手を振った。

「じゃあね〜」






吹っ切れたような強い笑顔。そんな聡美を見て、雪の心は温かくほぐれていく。

ほんの数日前まで、頬が乾く間も無いくらい泣き続けていたのに‥。

「そんなに悲しまないで、聡美」



「私と一緒に待ってたら、太一もすぐに帰って来るよ」



雪はそう言って、聡美の肩を優しく抱いた。

今自分に出来ることは、泣いてる聡美に寄り添うこと‥。



「ゆきぃ〜〜〜〜!うおおーーーん!



聡美は雪に抱きつきながら、本当に沢山の涙を流した。

そしてきっと太一の前では、笑っていようと決めたのだろう。



身を寄せ合って歩いて行く二人の背中を眺めながら、雪は心が満たされて行くのを感じていた。

今はもう少し周囲に目を向け、気を配ることが出来るようになって、



私は嬉しい。



目の前のことしか見えなくなった時、ふと立ち止まって一歩退く。

動いたのはたった一歩でも、視界が開けて景色が見える。

そして周囲を見回すと、自ずと自分がすべきことが見えて来るのだと雪は知った。



雪の心は凪いだ海のように穏やかだった。

周囲に伝わって行くさざ波の行方を、そう思いながら眺めている‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<進化する周囲>でした。

直美さんのしてやったり半笑い!

「証拠あるザマスか?」


清水香織のこの顔を思い出しますね〜


(何度見てもイラッとするな‥)

聡美と太一も良い感じにまとまりそうで、本当良かったです。

入隊する時の、太一の丸刈りが見たいな‥


最後の雪の微笑みは、自分がすべきことが分かって喜んでいる先輩と、

表情も心情もかぶりますね。

 

やはり黒淳化の進む雪ちゃんから目が離せない!


次回は<心配の種>です。


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