Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

最終章(7)ーBon Voyageー

2017-05-09 01:00:00 | 雪4年4部(最終章(1)〜(7))


散々泣いた雪の目は、既に腫れ始めていた。

雪はヨレヨレになりながら、建物の陰で一人佇む。

↓人気のない場所で落ち着こうとしたけど‥



まるでメガネを外した、の◯太君のような顔‥。

雪は顔を両手で覆いながら、そんな自分が恥ずかしくて悶絶する。

これはナイわー!!何この顔!!



もう早く帰ろう‥



そう思いながら、一歩踏み出した時だった。

「泣いてるの?」



聞き覚えのあるその声、その言葉。

雪はゆっくりと振り返る。








そこには彼が立っていた。

柔らかな笑みを浮かべながら、少し不思議そうな顔をしながら。

「どうして泣いてるの?晴れの日なのに」








驚きのあまりポカンと口を開ける雪。

青田淳はニッコリと笑って、雪に向かって手を広げる。

「やぁ」








瞬間、学位服が翻った。

雪は風のように駆けて行き、思い切り彼に飛びついた。

「先輩!!」



「うう‥」



「うわあああん!!」「おお?」「来るなんて聞いてない!!」



淳の顔を見た瞬間、止まっていた涙が再び溢れ出した。

彼の胸でえんえん泣く雪と、彼女の柔らかな髪を撫でて微笑む淳。

「来れないって言ってたのに〜〜!」「はは、また泣いてる」



「だって私今日本当に情緒不安定で‥先輩は来れないって言うし〜〜」

「だから泣いてたの?」



「ううん、そのせいじゃないけど‥」「泣かない泣かない」



泣きじゃくる雪の身体を、淳は優しくさすってやった。

それでもまだ涙が止まらない雪に向かって、淳は落ち着いたトーンで呼び掛ける。

「雪ちゃん」








顔を上げる雪を、淳は穏やかな表情で見つめていた。

そしてその瞳に浮かぶ涙の粒を、温かな指先で静かに拭う。

「幸い母さんの飛行機が時間通りに来てね。見送ったその足で来たんだよ。泣かないで?ね?」



「遅くなっちゃったけど来れたから許してよ。ね、笑って?

今までお互い忙しくてまともに顔も見れなかったんだから。でしょ?」




淳は雪の頬に触れながら、そう言ってニコニコと嬉しそうに笑っている。

そしてどこか決まり悪そうな顔で唇を尖らせる雪に向かって、

淳は伝家の宝刀、この台詞を口にした。

「雪ちゃん、俺とメシでも食いに行かない?」








は‥、と雪は思わず笑った。

雪のその顔を見て、満面の笑みを浮かべる淳。



その台詞から二人の物語は始まった。

そしてそれはこれからも、ずっと続いて行くのだろう。



「行こう」



二人は手を繋いで、共に歩き出した。

雪の学位帽を淳が被り、二人で他愛のない会話をしながら。

「両親と聡美が待ってます。一緒に食べに行きましょ」「ああ」

「ところで私先輩の会社不採用だったじゃないですか。

お父さん、先輩に会ったらいきなり怒り出すかもしれません」
「ええー?」



「卒業したことだし名前で呼ぶとかどう?」

「うーんもう先輩呼びがシックリ来ちゃってるからな〜‥あ、そういえば花束は?」

「車にあるよ。すっごく大きいからね?」「わ!」



先程雪は思った。

先輩は、河村氏は、いわば蜃気楼だったのだと。

けれどその言葉には続きがある。

<私が見た蜃気楼には実体があった>



<もしかしたら私達は、ただ道端ですれ違っただけだったかもしれない>



<そのままお互い遠く離れて、二度と会えなかったかもしれない>



けれどそうでない場合もある。

もしその人が自分にとって大切な人になったとしたら、覚えておきたいことがある。

<他者と互いにその違いを認めて、距離を縮めるということは>



<一方だけでなく両者が共に努力を必要とする難しいことなのだと、

私は数多くの経験を経て知ることが出来た>




”私達は別々の人間だ”と、かつて諦めに似た気持ちを抱いたことがあった。

だから分かり合えないのはしょうがないことなのだ、と。



けれどそれは自分一人の頭の中で考えていたことに過ぎなかったと、いつしか気づいたのだ。

彼と向き合い、ぶつかり、二人で歩み寄って行く中で。




<これからも、これまでと同じように色々なことが起こるだろう。

その結末に、必ず幸せが待ち受けているという保証もないけど>









赤山雪、青田淳。

二人が歩んだその軌跡は、幻想ではなくリアルな現実の中にあった。

そしてこれから向かう未来への道のスタートラインに、雪は自信に溢れた表情で立つ。





<今はもう、選択する準備は出来ている>





手に入れた全ての経験が、未来を生き抜く術になる。

この道の先にトラップが仕掛けられていたとしても、もう潜り抜けて行けるだろう。

その術を駆使しながら、自分をまた少し変えて行きながら。


彼と彼女が共に歩む未来が、輝かしいものになりますように。



さぁ帆を張り、錨を上げて、Bon Voyage!




<チーズインザトラップ ー完ー >







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<最終章(7)ーBon Voyageー>でした。

これにて、チーズインザトラップ最終話になります。

こうして最終話を見届けられたこと、本当に感無量‥いや感無亮です。

皆様、長い間本当に本当に本当にありがとうございました。

大団円、素晴らしいハッピーエンドでしたねー

しかし結局雪と淳はラブラブだったというオチ!!

まんまとスンキさんに踊らされましたよね〜んもう!罪なお方‥!


そして振り返ってみると‥

ブログを初めて約四年。

書き始めた時三歳だった長女は七歳になり、

長男が生まれ、そして次女が生まれ、私はいつの間にか三人の母となっていて。

ブログを始めた当初とは比べ物にならないくらい日々に忙殺されていく中で、

それでも定期的に更新を続けることが出来たのは、チーズインザトラップという物語への情熱と、

そして皆様が下さるコメントのおかげでした。

時に勉強になり、時に励まされ、まさに私を動かす原動力でした。

飽きっぽい私がこれだけ続けて来られたのは、紛れもなく皆様のおかげです。

皆様、本当にありがとう



そして作者のスンキさんへ、心より愛をこめて

あなたの紡いだ物語が、確実に私の人生を変え、数々のかけがえのない出会いをくれました。

本当にありがとうございました。そして七年間お疲れ様でした。

今後のご活躍を心よりお祈りしています!


さて、本家ではこの後エピローグが公開されています。

今最後のご挨拶をしたところですが、続けてエピローグ編行きますよ!

もう少しだけお付き合い下さいね!


あ、あとどうしてもこの場面の解説だけ‥

記事では日本設定の為「卒業したことだし名前で呼ぶとかどう?」という訳にしてますが、

本当は↓

「卒業したことだしオッパって呼ぶとかどう?」「ん〜それ微妙‥」



こうでした!先輩‥オッパ呼びして欲しかったのね‥!


次回は<エピローグ(1)ー涙の行方ー>です。

ようやく!!!あの淳の涙の続きが見れますよ!!!

再び淳号泣祭りだーっ!!

祭りだドン!!

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最終章(6)ー卒業式ー

2017-05-07 01:00:00 | 雪4年4部(最終章(1)〜(7))


その日は、雲一つない晴天だった。

”卒業おめでとうございます”と書かれた横断幕が、A大中に貼られている。







学位服を着た卒業生達が、皆花束を片手に笑っている。

さて、雪は一体どのような春を迎えているだろうか?

<私?>



<私は今日、とうとう卒業する>



慣れない学位帽をかぶりながらも、その日雪は満面の笑顔で卒業式を迎えていた。

隣には同じく笑顔の聡美も居る。



数え切れない程の写真を撮った。

勿論聡美と、同期達、そして揃って足を運んでくれた両親と。






今までお世話になった教授達、助教授達、先輩、後輩。皆笑顔で見送ってくれている。

そしてアメリカからは蓮と恵がお祝いの電話をくれた。

「ゆき姉!卒業おめでとー!」「congratulation〜!」

「おお、世の中便利になったもんだな」「うわっ!父さんあんま顔近づけないでよ!」



電話越しとはいえ家族が揃って、雪を祝ってくれている。

しかし手元にある花や卒業証書は、長時間持っていると結構な重さであった。

うう‥重い‥疲れた‥



雪が何気なくそうこぼすと、母がそれに向かって手を伸ばす。

「ほら、貸しなさい」



「今までアンタには苦労掛けさせっぱなしだったんだから」

「奨学金貰ってわしらの負担を軽くしようと大変だっただろ。就職も決まったんだし、暫く休みなさい」

「そうよ。もうお母さんあちこちで自慢して回ってんだから」

「もーそういうの止めてって言ってるのに!」「うちの自慢の娘ですから!」



両親にとって自分はいつも後回しだと、そう思っていた頃が嘘のようだった。

雪は照れながらも、こそばゆい気持ちで胸がいっぱいだ。

まったくもう‥



すると突然、声が聞こえた。

「雪ちゃん」







「雪ちゃん卒業おめでとう〜」「ありがとう」



雪はドキリと鳴った心臓を撫で下ろす。

あ‥ビックリした‥同じ名前‥








ゆっくりと辺りを見回してみると、

そこには嬉しそうにはしゃぐ聡美や、後輩の卒業式に駆け付けてくれた柳先輩や佐藤先輩の姿があった。






雪は遠くまで群衆に目を配ったが、そこに彼の姿は無い。

本当に来なかったな 



隣では聡美が雪の母と共に写真を撮っている。

皆が幸せそうな顔で、それぞれに大切な人の卒業を祝っているのに‥。



口から落胆の溜息が漏れ、雪は思わずその場で俯いた。

ここに立っている、それこそが紛れもない現実世界の今だ。

そんな”今”だからこそ、雪はこんなことを思う。

<今になって思えば>



<先輩は>



<あの二人は、私の幻想だった>



<渇き切った私の日常に突如現れた、オアシスのような蜃気楼。

二人共全く現実感が無くって>




雪の前に突然現れたその蜃気楼は、とても幸せな夢を見せてくれた。

おかげで楽しい経験を色々させてもらったな



始まりは彼のその一言。

「一緒にメシでも食いに行かない?」



思い出が、まるで走馬灯のように駆け巡った。

その言葉から始まった先輩との関係や、平井和美との揉め事、横山に追いかけられた苦い記憶。





清水香織との衝突、柳瀬健太との対決。

先輩との間に生じる数々の問題。

過去のしがらみが浮かび上がって、その度に真正面からぶつかった。





父に対して寂しい思いを抱いたことも、両親に積年の思いをぶつけて家出したこともあった。

次第に家族と向き合って行く中で自身を支えてくれたのは、紛れもなくあの二人だった。





青田淳、そして河村亮。

幻影が、曖昧に揺れる雪の前に現れる。







あれは、”雪はその手を離せない”と、自身の傷に気付かされた日の翌日だった。

彼の幻影が雪の目の前に立ちはだかる。



雪はあの時見たはずだ。彼の口元が動くのを。

あの時確かに聞いたはずだ。彼が何か大切なことを口にするのを。



影を背負った彼が、口を開こうとしていた。

様々な業を背負った彼と彼女の、心の声を彼が代弁するー‥。






「もう全部大丈夫だよ」



「君も、俺も」








見る間に、影は消えて行った。





空を見上げた雪の瞳に、まばゆいばかりの太陽の光が刺す。








今まで彼女を縛っていた鎖が、そのメビウスの輪が、スルスルと解けて行った。

苦しみもしがらみも、全てが解き放たれて行く。





そして雫は音も無く、光りながら落下したー‥。









まるで堰を切ったように雪の瞳からはボロボロと涙が溢れ出し、

手の平に温かな水滴が無数に落ちる。

「‥え?」



雪のそんな姿を目にして、聡美が驚いて駆け寄った。

「雪!泣いてんの?!」



「あらあら、この子は何泣いてんの!このおめでたい日に」

「いや、なんか眩しくて‥」

「雪、大学生活色々あったもんね〜」



聡美も、母親も、泣いていることを咎めたりなどしなかった。

むしろ優しい言葉で慰めてくれる。

そして雪は彼女達の前で、遂に涙のダムを決壊させたのだった。

「ふえええええええん!!!」

「うんうん、思い切り泣きな」「まったくこの子は〜」



<多事多難だった大学生活を振り返って、卒業式で涙することだってある‥よね?>



学生生活最後のこの日、雪は全てのしがらみから解放されて涙を流した。

「Everything's gonna be alright.」

そんな彼の魔法の言葉が、今まで雪を縛って来た鎖を断ち切るー‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<最終章(6)ー卒業式ー>でした。

雪ちゃん‥卒業しちゃった‥

怒涛のストーリーの展開にあんぐりですが‥何はともあれ卒業おめでとう

「A大首席卒」か‥凄いなぁ〜〜

そして遂に溢れた涙。

長かった学生生活から解放されると同時に、雪ちゃんはようやく泣くことが出来たんですね。

そしてそれを赦したのは先輩の「全て大丈夫」という言葉でした。

もう幻想などに頼らず一人で生きていけるよということなんでしょうな。

しかし私的には淳の前で初めての涙は流してほしかったな〜なんて‥


あと少し気になったコマ‥



左から二番目にいる人‥誰?!

遠藤さんいるし最初秀紀兄さんかと思ったんですが、なんか違うよな〜とモヤモヤしてまして‥。

そして思い至ったのは‥この人!



唯一雪ちゃんにDの成績を点けたこの教授‥。
ちょっとメガネの形が違いますが、イメチェンしたということで(笑)

さて‥

そして次回ですが、遂に最終回です

連載開始から7年、このブログを開設してから4年弱、遂に最後の回でございます。

どうぞ最後までよろしくお願い致します

<最終章(7)ーBon Voyageー>です。


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最終章(5)ーそれぞれの春(2)ー

2017-05-05 01:00:00 | 雪4年4部(最終章(1)〜(7))


霞がかった青空に、白い花弁が舞っていた。

春は彼等にも再び巡ってくる。



その人は何気なく歩くいつもの道に、

ある日突然現れた。



「お‥おはよ」



「元気にしてた‥?あ‥」



「久しぶりね」







ぎこちなく手を振る秀紀の姿を見て、遠藤修の胸の中へ花弁が舞い込んで来た。

止まっていた時が、今再び動き出す。

およそニ年ぶりの二人のやり取りは、まるでそんな年月を感じさせないものだったけれど。

「おい何だその髪型は?!キモいっつの!!」「あーっ!止めてダーリンってば!あー!」



<お隣さん‥もとい秀紀さんは小さな会社を興し、

完全に独立したのだと遠藤さんから聞いた>




互いに寄り掛かり合い倒れてしまった過去を越えて、今再び二人は巡り合うことが出来た。

時に辛く悲しい別れも、その先へ繋がる為に必要な段階だったりもする。

そして恋愛はいつでも人間関係の一つであり、自分の足でしっかり立ってこそ他者を大事にすることが出来るというものだ。

<恵はアメリカへ短期留学>



<本人の夢でもあったけれど、蓮のことは好きみたいだ>



恵は自分の夢を育てることと恋人の蓮を支えること、その両方を叶える未来を選択した。

自分を強く持ってさえいれば、恋は大概人を強くしてくれる。

<聡美は早くも小さなアパレル事業を開始>



太一と離れる時はあれだけ泣いていた聡美も、今や身一つで旅立つまでに成長した。

<どうやら萌菜とコラボしたりするらしい>

「おのれ伊吹!まず提携するかどうか聞きたいのに!

どうしていつもいつもメールの返しが遅いのよ!」




<まだ両者のスタイルが合わなくてゴタゴタしてるみたいだけど>

「ちょっと!うちら一緒にやるわよ!」



なんだかんだと文句を言いながらも、どうやら息は合っているようだ。

そして萌菜は、女性としての幸せも手に入れた。

<萌菜は彼氏との結婚を控えている>



恋の始まりに贈られたピアスと、愛の始まりに贈られた指輪が、

彼女を光り輝く未来へと導いてくれるだろう。



春は新しい出会いも運んで来る。

<ギリギリで就職が決まった柳先輩は、>



<入社してすぐ合コン三昧>

「柳楓です。写真より格段にお綺麗ですね〜」「あら、ありがとう」



古い出会いも時に訪れるけれど‥。

「ゲッ!柳先輩?」「うおっ!糸井!」



<直美さんは大学院へ進学した>

「お知り合いですか?」「後輩です。別に仲良くもねーですけど‥」

「ダーリン、早く行こっ!」




それぞれが新しい道へと踏み出す春。

しかしこの人は未だ袋小路をぐるぐる回っている。

<健太先輩は未だ大学に出没するらしい>



健太は十も年下の後輩達から、生ける化石だと囁かれていた。

同じ所を巡るこんな人も居れば、新天地へと旅立つ人も居る。

<誰もその消息を知らなかった横山は、最近入隊したと聞いた>

「敬!礼!」



「二等兵!横!山!翔!XX小隊に配属されましたことを!申告いたします!」

「初々しいな」「久々の新兵だ」



緊張でガチガチになっている横山に、上等兵がこう声を掛ける。

「おい新兵、A大生なんだって?」「はっ‥はい!そうであります!」

「ならそこの‥」



「そこのアイツもA大生なんだが、知り合いか?」



壁際に佇むその男を見て、横山の目は点になった。

それは髪型こそ違っているが、福井太一その人だったからだー‥!

ほ〜お‥



ヒィーーーーーーーッ!!!



<‥上等兵になった太一から。>



ヒィィと叫ぶ新兵横山に、太一は「こっちに来て下サ‥いやこっちにコイ」と上等兵らしく命令した。

新天地にてまた一つ物語が紡がれて行きそうである‥。



<私は時々時間が出来た時、愛ちゃんに会いにボランティアへ行っている>

「今週末は雪お姉さん来るよ。良かったね」



<愛ちゃんは今はもう20まで数を数えられるようになった>

「ゆきぃ‥おねえちゃん‥」



一昨年偶然に繋がれたその縁を、雪はずっと大切に繋ぎ続けていた。

信じることとたゆまぬ努力は、時に不可能を可能にする。

そうして必ず未来は輝くのだと、私達はまた信じて進むのだ。

<麺屋赤山は不景気に関わらずなかなかの盛況だ>



<蓮はアメリカに馴染む為に努力している最中だと言う。

本当に喜ばしいことだ>




かつて喧嘩ばかりしていた両親は今や休日に二人で出掛けるようになり、

あれほどアメリカに戻りたがらなかった蓮は、持ち前の人懐っこさで楽しく日々を過ごしていた。

不協和音ばかりを奏でていた赤山家を今の方向へ導いたのは、娘である雪の努力と、

そんな赤山家を繋いでくれた彼の存在なくしては語れないだろう。

<そして‥>









海の見えるその街に、

最近話題になっているダイニングバーがあった。



噂になっているのは、最近現れた一人のピアニスト。



彼がピアノを弾き始めると、鮮やかな色の粒が空間に溶けて踊るようだった。

客は皆その音色に耳を澄ませる。

まるで世界が色を変えて輝き出すかのような、その多彩な音に。







メロディに合わせて、色素の薄い髪が揺れる。

ラフな格好でピアノを弾くその姿は、独特の雰囲気があった。



女性客達の囁きが聞こえてくる。

「あの人かっこよくない?」「あ、ホントだ

「ここますますお客さん増えて入りづらくなっちゃうねー」



曲の合間に、客の一人が彼に話し掛けた。

「あの、ポップスもリクエスト出来ます?」



彼は彼女に身体を向け、愛想の良い笑顔を浮かべて頷く。

「はい?あ、勿論!」



「お望みの曲があれば、なんなりと。どんな曲でも弾けますんで!」



”河村亮”

そのピアニストの名が街に知れ渡るのは、そう遠くない未来だろう。



<河村氏はどこへ行っても上手くやっていけるだろうと、私はそう信じている>



瞼を閉じてみると、容易に想像することが出来る。

河村氏が笑いながら、楽しそうにピアノを弾いている姿を。



雪が目を開けると、そこには新しい春が彼女を迎えていたー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<最終章(5)ーそれぞれの春(2)ー>でした。

色々な人の”春”を垣間見ることが出来た回でしたね。

ちょっとつらつらと感想書いて行きます。


遠藤さん&秀紀兄さん。

いや〜も〜本当良かったですね〜〜!

辛いこと、苦しいこと、二人ともちゃんと乗り越えたんだなぁと感慨深かったです。

詳しくは青さんにコメントお願いするとしましょう!(いきなり丸投げ)

恵。

まだ言いますが‥恵‥本当に蓮でいいの‥?!

良い子過ぎてまるで毒が出ることがなかったですね恵は‥。

他の登場人物にクセがありすぎて‥ちょっと物足りなかったような‥

それこそ静香みたいに恵が美術を諦める時が来たら、またちょっと変わったりするのかもしれません。
(どこまでもダークサイドを求めてしまう私‥)

聡美&萌菜!

この二人がコラボしてアパレルショップを!ビックリですよね

モデルは太一ですかね^^すごい会社になりそうです。

そして萌菜、あのカメラマンと結婚かいな!実は萌菜が一番手堅い女だったという‥

柳と直美

大変!今すぐ合コンへ行かなくちゃっ‥!しかし柳髪固めすぎ‥。

直美(糸井真理子直美)は大学院へ進んだんですね。。

なんかすごいネチネチ言われそうで嫌ですレポート出したのとかロッカーの鍵返せとか‥

遠藤さんの下で働くことになるのかな〜?

健太については‥もう何も言うまい‥化石‥

横山&太一!

今回一番笑いました。横山が太一の部下に!

いつかコメ欄で騒がれた「モムチャンペギノッシとウンテギ物語」は

「ミチゲソオヨンゴンとモムチャンウンテギ物語」に変更です!

くらのあいちゃん

もう一度出てきて嬉しいです。雪ちゃんボランティア通ってるんですね。なんて律儀な‥

いつか淳は「時間の無駄」とか言ってましたが(改めてヒドイ‥)、数も20まで数えられるようになって!

うう‥なんだか涙が‥


麺屋赤山&蓮

赤山家、最初に比べたら格段に良い家族になりましたよね。

あれほどプライドと体裁を大事にしていたお父さんも、自らエプロンを身に付けて働いて‥。胸熱です。

全て雪ちゃんが頑張ったからと、亮さんのおかげ‥

亮さん

うう‥うおおおおおん!!



そう!こんな風に笑顔でピアノを弾く河村氏が見たかった‥っ!(しかもM字じゃない!イケメン!!)

コンクールじゃなくても、亮さんが幸せにピアノを弾いてる所が見られれば、もう本当に満足です。

そうそう、本家で最終話が掲載された当時は、PCで見ると亮さんの所でピアノが流れたんですよね‥

ampstyleというアーティストの「봄이었어」(春だった)という曲で。

日本語版でもそういう仕掛けがあればいいのにな‥


次回は<最終章(6)ー卒業式ー>です。

いよいよ雪ちゃんの”春”が描かれます‥!

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最終章(4)ーそれぞれの春(1)ー

2017-05-03 01:00:00 | 雪4年4部(最終章(1)〜(7))
<また季節が過ぎ去って>



<そしていつの間にか、また新しい春が訪れていた>



長く寒い冬を越え、いつしか植物も新しい芽を芽吹かせていた。

柔らかなその芽からは、やがて綺麗な花が咲く。








春の霞が青空を淡い色に変え、日の光を柔らかに照らしていた。

その空の下で佐藤広隆は、河村静香から一通のメールを受信する。

ごはんおごって



<皆、それぞれの人生を生きている>



まだまだ、彼の受難は続きそうだ。

佐藤はたった二文字のその身勝手なお願いに身悶えている。

「なんで俺ばっかり!もう我慢出来ないぞ!」



するともう一通メールを受信した。

だってアンタもう社会人じゃん



まるで悶絶している彼を見透かすかのようなその内容‥。

「確かに今日ごちそうするつもりだったけど‥」



ご飯を奢ったり、一緒に勉強をしたり、そういう付き合いも良いだろう。

けれど佐藤は、もう一歩踏み出したいのだ。



手に持っているのは美術の展覧会のチケットだった。

佐藤はそれを手に持ちながら、ぐっと覚悟を決める。



<無事就職した佐藤先輩は、

常に告白するタイミングを窺っているみたいだ(バレバレだけど)>




鞄には真っ赤なバラが忍ばせてあった。

握り締めたそのチケットが、きっと二人を新しい未来へ導いてくれるー‥。






その頃静香は、佐藤から送られて来た展覧会へのお誘いメールを見て笑みを浮かべていた。

「ふん」



そんな静香に向かって、彼女の前に座る女性が声を掛ける。

「メール続けてもらっても構いませんよ」

「ううん、それだとブルブル鳴っちゃうし」



<静香さんは定期的にカウンセリングを受けているらしい>



静香は「どこまで話したっけ」と言って記憶を辿り、そして話し出した。

「一度だけね、そいつが心から笑ってくれたことがあったの」



高校時代に三人で花火をした、あの時のことを。

今でも鮮明に思い出すことが出来る、あの高揚感を蘇らせながら‥。



「幸せだった。あの日は‥」







刹那に咲いて消えて行く、まるで花火のようだったあの日。

瞼の裏に、こちらを向いて微笑む淳が焼き付いている。

「本当に、振り返ってもあたしの人生の中で一番‥」



「亮も、あたしも」



響く笑い声、白い花火の煙、ようやく手に入れた小さな幸福感。

瞼の裏に焼き付いた眩いまでのその光が、残像となっていつまでもこびりついた。

「結局それが忘れられなくて、こんなザマになっちゃったのよね。

あいつは絶対あたし達のものになんてならなかったのに」








いつか本当の家族になれると、ずっと三人一緒に生きていけると、

そう思っていた過去を遂に静香は精算する準備を始めた。

人の気持ちを自分の意のままに出来ると思いこんでいた子供時代が、ようやく終わる。

しかしそこには不思議と後悔は無かった。

「けどあたしも亮も、バカみたいな生き方したなんて思ってないわ。

あの時はそうするしかなかったんだもの」




「きっとそれしか方法は無かったの」



辛い過去も、無駄に思えたあの生活も、全ては通るべき道だったと静香は語った。

ゆっくりと自己と向き合って行く彼女に、カウンセラーは一つ質問をする。

「この週末はどこに行くんでしたっけ?静香さん」

「あ、一度叔母さんに会いに行こうと思って」



「まぁ、もう弱っちゃって認知症か何かのリハビリ施設にいるらしいけど。

行けば絶対頭に血が上ってブチギレちゃうかもしんないけどさ、

皆会ってみろって言うし、あたしもちょっと思い出す時もあって‥」




静香は、彼女の精神を歪ませたその当事者にも、会いに行こうとしているのだった。

淡々と語る彼女からは、怨恨や後悔の念は感じられない。

「まぁ行ったらスッキリするだろうし、さくっと全部忘れて‥。そのくらい何でもないわよ」

「よく決断されましたね。辛かったでしょう?」



‥多分

「一発殴れば捕まるかしら?あ、冗談よ、冗談!」



<何度か会ったけれど、前よりは落ち着いた気がする。本当にほんの少しだけ‥

どうやら前向きな変化と見て良さそうだ>




霞がかった春の空に、白い花弁が舞っている。

春はそれぞれの人生に訪れて、また新しい出会いと関係を作って行く‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<最終章(4)ーそれぞれの春(1)ー>でした。

花を抱えて展覧会に誘う佐藤先輩!素敵ー!(でもリュックなのが佐藤先輩らしい

静香もようやく蓋をして来た自分の過去に向き合えるようになったんですね。

そしてその先にはきっと、人を思いやれる彼女になっている未来があると思います。

佐藤先輩と静香に訪れたそれぞれの春が、やがて二人の春になるよう願ってます‥


ああ〜着々と終わりに近付いて行く‥

次回は<最終章(5)ーそれぞれの春(2)ー>です。

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最終章(3)ー越冬ー

2017-05-01 01:00:00 | 雪4年4部(最終章(1)〜(7))


薄曇りの曇天に、ビル群の明かりが反射し靄がかかる。

いつしか秋が去り、冬が訪れようとしていた。

青田淳は一人、夜の街角に佇んでいる。



冷たい空気の中で佇む彼は、どこか憂いを帯びた影を背負っていた。

ネオンが溶け込むその空気を背景にして、彼は人を待っている。



「あら?」



すると懐かしい声が掛かった。

その人物は親しげに淳の腕に手を回す。

「アンタ、寒いからってションボリ縮こまっちゃって」



「待った?」



「久しぶりね!」



その人は、淳の幼馴染みの秀紀であった。

実に一年半ぶりの再会。

二人はそのまま、夜の飲み屋街へと繰り出して行く。






騒がしい居酒屋の一角で、二人は酒を酌み交わしていた。

中でも秀紀は上機嫌で、楽しそうに杯を干して行く。

「やだぁ〜昔を思い出すじゃない。こういう所でアンタお酒おごってくれたわよね。

ほら、昔アンタの彼女が住んでた所でさぁ!あたしお隣さんで




「‥そうだったね」



淳は若干の間を置いてから、少し淋しげにそう言った。

秀紀はそんな淳に対し、多少皮肉るように言葉を掛ける。

「アンタさぁ、あたしには二度と会わないなんて言ってたくせに、結局こうやって連絡して来たのよね?

あたしに対して悪いことしたと思ってんでしょ?どうなの?」


「ううん、全く」「何よっ!」



「ちょっと!アンタもうあたしのこと許したんじゃなかったの?!」

「いや、兄さんのことは未だに理解出来ないよ」「ひどくない?!」



「けど、」と淳は前置きをすると、穏やかな口調でこう言った。

「俺が許した許してないの問題じゃないから。

兄さんが俺に許しを請う必要なんてないよ」








秀紀はその淳の言葉を聞いて、ぽかんと口を開けた。

「どちら様?アンタ、淳よね?」「何言ってんの」



それは今までの彼とはまるで別人のような発言だったからだ。

秀紀はニッと笑みを浮かべると、続けてこう質問した。

「それじゃ今はもうあたしの気持ちも分かったのかしら?」



「あの時のあたしの‥情けなくてみっともなかった時のあたしの気持ち、よ。

今は理解出来るのね?」




去年、最後に二人が顔を合わせた時の記憶が蘇る。

思い浮かぶのは遠藤修を庇いながら、みっともないくらい必死に許しを請うた秀紀の姿‥。









淳は何も言わなかったが、眉を寄せて苦笑いを浮かべて見せた。

それが十分答えだった。

「あら、何その顔。

どうやらアンタもドキュメンタリー‥人間劇場撮っちゃったみたいね」




「昔よりずっと良い表情してるわ」








かつて彼が理解出来なかったことが、その価値観が、今はその穏やかな言葉の中にそっと息づいていた。

あの時もう二度と相まみえることは無いかと思われたかつての幼馴染みは、今再び向き合うことが出来たのだ。

「良いわ。今日はアンタの人間劇場の話、聞かせてちょうだいよ」

「ヤダ」



「何よっ!」










「もうウンザリだ」と言って頭を抱えていたかつての淳は、もうそこには居なかった。

秀紀はあの不器用な少年の横に座った時の気持ちを思い出しながら、笑いながら酒を飲む。


季節は寒い冬を越え、やがて暖かな春へと向かう。

二人の間にあったわだかまりも、ゆっくりと溶けて消えて行った‥。

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<最終章(3)ー越冬ー>でした。

久しぶりの秀紀兄さん!ちょっと垢抜けましたね!

かつて幼い淳に「いつも笑顔でいろ」と生き方を指南した秀紀兄さん。

それを曲解して笑顔の仮面で本心を隠して他人を陥れる方向へ行ってしまった淳ですが、

ようやくその本当の意味を理解出来るようになったのかな、という感じを受けました。

秀紀兄さんはいつも笑顔で人を許して来ましたもんね‥

二人が和解出来て本当に良かったです。


次回は<最終章(4)ーそれぞれの春(1)ー>です。


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