Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

河村姉弟の会話

2014-04-02 01:00:00 | 雪3年3部(萌菜ズボン~横山の復讐)


食堂の中が、しんと静まり返った。

彼らの視線は、電話越しに大きな罵声を口にしていた河村静香へと注がれている。

「あ~スッキリした!」



静香は先ほど横山から掛かって来た電話を、元カレからだと思い好き放題言ってのけたところだった。

ったく最近ただでさえムカつくことばっかだってのに‥このク◯野郎のせいで更に滅入るっつーの!

ちょっとアンタ誰なのよ?ケイスケ?ヒロアキ?ノリタカ?おい、誰なんだってば?!また掛けてきたら承知しないから!




通話先の横山がその後どうなったかなどつゆ知らず、静香は満足気に携帯を眺める。

亮はそんな静香を前にして、開いた口が塞がらずそこから水を垂れ流した。



得意気な顔をして鼻歌を口ずさむ静香に向かって、亮は声を荒げながらそこにあった布巾を持ってテーブルに投げつける。

「おいっ!この腐れ女!口に雑巾かけたろか?!ここにある布巾の方がテメーの口より

キレイだっつの!誰だか分かっててそんな汚ねぇ口叩いてんだろーな?!」




亮は周りの視線を気にしつつ静香を叱ったが、彼女はまるで気にしていない。

過去の男は無条件に消していく、と言って自分は自由な女なんだと豪語する。

「お前携帯全部整理したんじゃなかったのかよ?」



亮は静香が手に持ったスマホに視線を落として言った。

ついこの間まで静香は携帯を複数台持ち、その利用料金は全て亮に回されていたのだ。

それが原因で姉弟が言い争ったのも、記憶に新しい。




亮の言葉に静香はビクリと身を強張らせ、

「し、したわよ!」と声を荒げた。



しかし彼女は唇を小さく突き出すと、ブツブツ呟くようにこう言った。

「あんた名義の携帯だけはね‥」



はぁ?!と声を上げて亮が顔を顰める。唖然とする彼を前に、静香は取り繕うように弁解した。

「ほら、マジでもうあんた名義のは触らないし!代わりにまだ貢いでくる男共がいて、

そいつらに貰ったのがまだあるのよ!それなら別にいいでしょ?」




未だ貢ぐ貢がれないとやっている姉を前に、亮は開いた口が塞がらない。しかし静香はフッと息を吐くと言った。

「河村静香は死せず‥ってね



「おい頼むから真面目に生きやがれ!」

その生き方を叱る亮に、静香は悪びれずに言葉を返した。

「何で?あたしだって真面目に生きろと言われれば出来るけど、つまらないからそうしないだけ」



そう言ってニヒルな笑みを浮かべる静香に、亮は呆れるばかりだ。

そして静香は何かと上手くいかない自分の人生を嘆き、息を吐いた。

亮は呆れながら「自業自得だろ」とツッコみ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。



静香はそれでもまだ青田会長を説得出来れば何とかなるかも、と言って天を仰いだ。

亮は食事を口に運びながら、溜息を吐く。

「あの人がオレらのことをマジで心配してると思ってんのか?」



家や専門分野を莫大な金を掛けて支援してもらった挙句、逃げ出したり自堕落な生活を送る自分達姉弟。

そんな二人を青田会長が未だに気にかけているわけがない、亮はそう思ってその言葉を口にした。

しかし静香はキョトンとした表情を浮かべると、

「今更何言ってんだか。んなこととっくに知ってるっつーの」と言って肩をすくめた。



自分達を気にかけてくれる可能性、自分達を哀れむ気持ちが一%でもあれば、スッポンのように食らいついてやると言って静香は意気込んだ。

亮は溜息を吐きながら、正しい方向へと彼女を導く。

「とにかくまずはしっかり就活な!」



「余計なお世話!あんたこそ頑張んなさいよ!」

亮の小言にイラついた静香は、彼の高い鼻をグーでパンチした。

ジンジンと痛むそこを押さえながら、亮は涙目で姉を睨みつける。



亮は鼻を押さえていた手を除けると、自身の長い指に目を留めた。

この指が今後またあの馴染みある楽器を奏でることを、姉に言わなければならない‥。



亮は両手を膝の上に置くと、かしこまった態度でこう言った。

「あの‥姉ちゃん」「姉ちゃん~??」



静香は突然の亮の態度を笑ったが、亮は至極真面目な表情のまま、その話を切り出した。

「オレ‥もう一度ピアノ弾いてみようと思うんだけど、どうかな?」



静香はスプーンを咥えたまま、突然の弟の告白に疑問の声を出した。

「は?」



ニヤッと、亮は引き攣った笑みを浮かべた。

姉はどう出てくるだろうか。否定するだろうか、肯定するだろうか‥。



静香は暫し固まっていたが、彼女もまたニヤリと口元を歪めると、首を傾げた。

「ピアノォ~?」



一体どういう風の吹き回しだと静香は言って笑った後、冷静になって自分の意見を述べた。

「金になる見込みもないのに?

やったところでコンクールに出れるレベルになれるわけでもないじゃんよ。意味な~い」




はっ、と静香は息を吐き捨てるようにつき、亮に残酷な現実を突きつけた。

亮は頷きながら言葉を続ける。

「‥それはオレも分かってる。ただ‥どうかなって‥」



そう言って暫し亮は俯き、沈黙した。静香はそのまま黙って弟を見つめている。

普段は傍若無人な彼が持つ、子供のような一面。昔から不意に見せる、弱気な顔‥。



静香は止まっていた手を動かして、スプーンでご飯を混ぜ始めた。

そして軽い調子で言葉を掛ける。

「あっそ。ま、せっかく指もついてることだしね」



弾けないわけじゃないんだし、と言って静香は他人事のように言い捨てた。

「好きにしてくださ~い」



そのいい加減な態度を見て、亮はその長い指を振りながら顔を背けた。

「わーったわーった。話したっていつもこうだ‥」



亮としては真剣な話であったのだが、すぐさま茶化した姉を前にして、亮は決まりの悪い気分になった。

その後、亮は静香に「もう結婚でもしたらどうだ」と切り出してもみたが、

「人の勝手でしょ」と言って静香は取り合わなかった。




二人はそれきり言葉を交わすこと無く、テーブルの上の料理を黙々と食し続けた。

とっくに冷めてしまったそれを、何も語ること無く口に運ぶ。



食堂は昼過ぎの時刻だが繁盛していた。

人々の会話やスプーンや箸が食器に当たるカチャカチャとした音が、ぼんやりとした喧騒になってこの場に溢れていた。



そのざわめきに交るように、亮と静香は食事を続けている。

普段着の素のままの二人が、平凡な時を過ごしている。



静香は咀嚼を繰り返しながら、黒い靄が胸の中に立ち込めて行くのを感じていた。

幼い頃から天才ともてはやされ、静香に劣等感や屈辱感を与え続けた弟が、ピアノを再開する‥。


静香は黙々と食し続けた。クチャクチャという咀嚼の音だけが、彼女の耳に響いて消える。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<河村姉弟の会話>でした。

なんだか今回漠然としたタイトルになってしまいましたね‥^^; 

しかし最後の静香のカット、なんだか怖い‥。

今まではお金があったから空虚な心の隙間を埋めることが出来ていたものの、もう会長からの支援も切れ、

これから静香はどうなっていくのか‥。

ラストは静香にも救いのあるものであってほしいですね‥。


次回は<疲弊の中で>です。


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横山翔の復讐(4)

2014-04-01 01:00:00 | 雪3年3部(萌菜ズボン~横山の復讐)
前日、横山は自室にてレコーダーがきちんと機能するか試していた。

自身を褒め称える内容を、その小さな機械に向けて呟く。

「俺ってマジで頭の回転はえーよ。俺の携帯から送ったんじゃ来ねーだろうし?青田のバカ」



レコーダーはよく録れていた。

去年赤山雪が録音したというMP3などとは、比べ物にならないだろう。

これを使って明日の三時、青田淳に復讐を仕掛けるのだ。横山の頭の中に、顔面蒼白する淳が浮かんだ。

「う‥嘘だろ‥?」



顔を青くした淳は、横山の想像の中で彼に縋り付いた。

「ごめん翔‥!俺が悪かった‥!どうか雪ちゃんにだけは言わないでくれ‥!」



しかし横山は淳を許さず、翌日レコーダーを持って赤山雪の元へと向かう。

そして公衆の面前でそれを晒すのだ。

「よく聞こえるか?これが本当のレコーダーさ」



騒然とする周囲、隣で言葉を無くす伊吹聡美、そして俯いた赤山雪‥。

横山は勝ち誇ったように彼女見下ろす。



傷ついた表情で俯く彼女を見て、彼は嗤うだろう。

脳裏に浮かぶそんな構図を想像して、横山はその勝利に酔いしれる‥。

 





‥のは、夢物語になってしまった現実が、今目の前に広がっていた。

横山は怒りに震えながら、ギリリと歯を食いしばっていた。



淳はそんな横山に、しっかりしてくれと声を掛けて背を向ける。

「俺は番号も変えてないし、機種変もしてないことくらい皆知ってるだろう。

一人で一体何を言っているんだか」




そう言って教室を出て行こうとする淳に、横山は無意識の内に手を伸ばしていた。

「この野郎‥!」



横山は淳の胸ぐらを掴むと、怒りにまかせて彼に詰め寄った。

「いつまで見せかけのままでいるつもりだ?!赤山に本気なわけでもないくせに!」



淳は突然の横山の行動に目を剥いたが、「何するんだ」と冷静に返した。

しかし横山は止まらない。胸中で煮え滾った憎しみにまかせ、その切り札をチラつかせる。

「俺が貴様の本当の姿を、あいつに全部バラしてやる‥!」



横山の怒りは燃え盛った。

その形相は烈しく凄まじいものだったが、次の瞬間彼は息を呑むことになる。


淳は抑揚のないトーンで、横山に向かって口を開いた。

「なんて言った、今」



目の前の淳が彼に向けた眼差しは、これまでのそれとは比較にならなかった。

無言で屈服を促す力が、光を映さないその瞳には宿っている。

それはあれだけ怒り狂っていた横山を、即効で黙らせる威力を持っていた。




すると教室の外からガヤガヤと声が聞こえ、

横山の計画通りここに集められた同期や先輩達が、室内に入って来た。

「横山~来てんのか?何デカイ声出してんだよ。赤山が何だって?」



柳をはじめとする彼らは、横山から焼肉を奢るというメールでここに集められたらしい。

そのことを口に出しつつ室内に入って来た柳だったが、淳と横山の姿を見た瞬間顔色が変わった。

「な‥何だぁ?!」

 

淳の胸ぐらを掴んでいる横山に、柳もそして他の学生達も声を上げて近付いた。

「お前ら喧嘩か?!」「おい横山、手ぇ放せ!」



横山は突然のことに狼狽しながら、ただオロオロとその場に立ち尽くした。

柳や他の学生達は、先輩に対して何てことをするんだと横山の無礼を口々に非難する。



柳は淳の方に向き直り、閉口している彼に声を掛けた。

「何があった?さっき赤山がどうしたって?」



柳からの問いに、淳は溜息を吐いて言葉を濁した。

そして憂いを帯びたような表情を浮かべると、言いづらそうに口を開く。

「大したことじゃない‥ただ‥お前も知ってるだろ?翔が以前雪ちゃんを‥」



そこまで聞いた柳は合点がいったという表情をして、そして続けて横山を指差して笑った。

「どわ~!過去にミレン~!ってか?!そゆこと?!」



キャッキャッと騒ぐ柳に横山は否定するが、周りの先輩達は口々に横山を責めた。

直美と付き合っているくせに、という責めから始まり、

去年の球技大会の時、横山が無抵抗の青田淳に突っかかったことにまで遡った。



最初笑っていた柳も途中から立腹を露わにし、先輩に対して無礼な態度を取った横山は、今や四面楚歌になっていた。

大学生にもなって手が出るなんて前代未聞だ、と柳は口にして横山の袖を掴む。

「ほら、淳に謝れよ」



早くしろ、と柳は横山に謝罪を促した。

淳はそれを止めようとするが、周りの雰囲気は横山が謝るまで静まりそうにない。



しかし横山も、素直にハイそうですかと頷くわけにはいかなかった。

横山は柳の手を振り払うと、彼に向かって声を荒げる。

「謝罪なんて出来ませんよ!俺の話も聞いて下さい!」



横山は携帯を取り出すと、青田淳の番号を見せて柳に弁解した。

彼が自分にわざと偽の番号を教えたのだと言って、末尾が微妙に違っている番号を柳に見せる。

「? これただお前が下4ケタ間違えただけじゃね?」



しかし柳は横山の言葉など微塵も信じなかった。

今の状況ではいくら真実を告げたとしても、誰も彼を信じないだろう。

未だ弁明を続ける横山に向かって、柳は呆れたような口調で言った。

「お前ちょっとはマシになったと思ってたけど、なんも変わってねーのな」



この柳の言葉は、夏休みから水面下で進めてきた横山のイメージアップ作戦が、灰燼に帰したことを表していた。

砂の城が風に吹かれて消えていくように、横山が積み上げたものは脆くも崩れ去ったのだ‥。



そして事態は更に最悪の進行を辿った。今の話を、廊下に居た直美が全て聞いてしまったのだ。

直美は一言も発しないまま、青い顔をして横山に背を向けた。

「ち、違うよ直美さん‥!これは誤解で‥!」



横山はその背中に必死に弁解するが、直美は勿論そこに居た全員がそのまま教室を後にした。

大きな声で横山と赤山雪のこと、そして直美のことを口にしてしまったと言って、柳が直美に謝罪する。



首を横に振る直美に、淳も謝った。

そしてその場に居た全員にあまり言いふらさないようにと釘を刺し、皆がそれに了承した。

「直美さん‥!」



横山は必死な様子で直美に声を掛けた。彼女は少し振り返るが、

「あとで話そう」と小さく口にすると、そのまま去って行った。



皆が横山の前から居なくなって行く。彼女である直美でさえ。

横山が去って行く人達の背中に向かって声を荒げると、たった一人振り返った人物が居た。

他でもない、青田淳だった。



何だよ、と横山は警戒しながら彼に声を掛けた。

すると淳は横山のズボンに向かって指を刺しながら、冷静に口を開く。

「ポケットの中のそれ、まだ要るの?」



横山はギクッと身体が硬直した。

ポケットの中に入れていたレコーダーの存在を、事も無げに言い当てられて。

「ことあるごとにそこを気にして‥たかがそんなもの」



無意識に何度もポケットの中に手を入れていた横山。

淳はこの対話が始まって早々に、レコーダーの存在に気づいていたのだ。だからこそ、”知らん振り”を貫いていたのだ‥。



狼狽する横山を前にして、淳は一つ息を吐き口を開いた。

彼に対する、最終通告だった。

「意外に考え無しでお粗末だから、戸惑っちゃうね」



しっかりしてくれよ、と淳は言い残してその場から去って行った。

横山の脳裏に、先ほど自分が彼に掛けた言葉が蘇る。

意外に先輩が考え無しでお粗末なんで、俺若干戸惑ってんすけどw




因果応報、悪因悪果。

またしても同じ台詞でしてやられた横山は、悔しさと憤りが溢れて爆発した。

「うわぁあああああ!」



レコーダーを取り出して地面に叩きつけると、壊れるまでそれを踏みつけた。

そのまま教室内で暴れまくる横山を置いて、一同は去って行く。



感情のままに叫び続けるその声を聞いて柳はドン引きした後、淳を気にかけた。

「淳、大丈夫か?」



柳の心配に、淳は「大丈夫」と答え笑顔を浮かべる。

そして皆の方に向き直り、彼は全員に向かって声を掛けた。

「連講(連続講義)だったから、皆腹が減っただろう?焼肉を食べに行くと言っていたよな。

今日は俺がおごるよ」




マジで?と柳が聞き返すと、淳は微笑んで頷いた。

もう大学に通常通り通うのも最後だし、と淳は口にして、皆が淳の提案に湧いた。



そして淳は一人呟いた。誰にも聞こえない声で。

「本当に全くの予想通りなんてな‥」



淳の瞳には気怠いものが宿っていた。

疲弊や退屈、彼の人生に蔓延しているつまらないものが。





そして一人取り残された横山翔は、燃え盛る悔しさで頭がおかしくなりそうだった。

こめかみを両手で押さえ、身体を震わせて憤る。



そしてふと、教室内が静まり返っているのに気がついた。

つい昨日まで、彼の周りは騒がしかったというのに‥。




横山翔は再び一人になった。

彼が金と噂で勝ち得たもの全て、所詮は砂上の楼閣だった‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<横山の復讐(4)>でした。

最後の横山が教室で一人佇むカット、見覚えありますね~?



そうです、<取り残された彼>での最後のカット、淳が佇むカットと同じ構図ですね。


同じ台詞でやり返し、横山と同じ方法で彼が金と噂で勝ち得たものを奪い去る‥。

淳の手口の隙の無さに鳥肌ですね‥。とことん敵に回したくないと思いました^^;



そして柳ファンとしては、激おこ柳が見れてごちそうさまです!





次回は<河村姉弟の会話>です。



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横山翔の復讐(3)

2014-03-31 01:00:00 | 雪3年3部(萌菜ズボン~横山の復讐)
暫し沈黙を貫いていた淳であったが、ニヤつく横山に対して遂に口を開き始めた。

「そうだな‥なぜいきなり雪を巻き込むのか知らないが‥。

何の話なのか、俺には本当に分からないんだ。何か誤解してるんじゃない?」




誤解? と横山は彼の言葉を反芻し、鼻で嗤った。

しかし淳はそのまま頷くと、困ったような表情を浮かべてこう言った。

「他の人と勘違いしてるんじゃない?俺こんなメール送ってないよ」



横山は舌打ちをしながら、吐き捨てるように言った。

「は?知らん振りもここまで来ると反吐が出るぜ‥」



横山は携帯を再び淳に見せるように手に持つと、その手の内を淡々と話し始めた。

「ひとまず言い訳すれば何か変わるんすか?先輩、番号すら変わってないっつーのに。

は~マジ往生際悪すぎなんスけど‥」




淳は何も言わない。

横山を俯瞰したまま、彼の発言をただじっと聞いていた。

「本当なら皆が忘れた頃復学して、じっくり機会を見てから先輩を責めるつもりだったんすよ。

当然携帯の番号も変わってると考えてね」




横山は彼を見上げながら、呆れたような口調で話を続ける。

「しっかし意外に先輩が考え無しでお粗末なんで、俺若干戸惑ってんすけどw

これまでの間、先輩はさぞ平和な日々を送られたんでしょうね?」




嫌味をふんだんに込めた横山の言葉にも、淳は何も言い返さない。

だんだんと焦れてきた横山は、ギリッと唇を噛んで言った。

「人をオモチャにすんのは楽しかったか?けどこんなこと許されないからな!」



しかし淳は尚も冷静だった。

何を言ってるのか分からない、なぜそんなに攻撃的なんだと言って彼を宥めた。

「ちょっと落ち着いてくれ。困るよ」



依然としてシラを切り続ける淳に、横山は逆上した。

もう終わりだ、と言った後、携帯を手に取る。

「もっと困らせてやろうか?!」



そして彼は時限爆弾のスイッチを入れた。

アドレス帳に載っている”青田先輩”のコールボタンを。



010-5555-4508

横山はスピーカーモードにした携帯を淳に見えるようにかざし、ニヤリと口元を歪めた。



プルルル、プルルル、というコール音が、静まった教室に響く。

目を見開いている淳。そんな彼を見て、固まってる固まってると横山は嗤う。

 

淳の鞄の中で着信音が鳴るはずだ。

それかマナーモードで消音になっているかもしれないが。



横山は息を止めて待った。その爆弾が爆発するその瞬間を。

淳が携帯を取り出し、横山からの着信が鳴り響いているのを目にした瞬間、彼の勝利が確定する。


プルルル プルルル





プルルル プルルル





プルルル プルルル





‥しかし、待てど暮らせど、電話は繋がらなかった。

目の前の青田淳も微動だにしない。

「‥え?」



これはおかしい、と横山が思った瞬間、事態は思わぬ展開を迎える。

数回ものコールの後、電話が繋がったのだ。

「何よ、誰なの?」



「えっ?」



突然繋がった電話から、気怠そうな女の声がした。

思いも寄らない展開。横山はただ狼狽した。

「え‥?は‥?何で‥?!は‥?!」



もしもし、と電話口からは女の呼びかける声が聞こえている。

淳は、自分の携帯には何の反応も無いことを横山に見せた。



「ちょっと!何とか言ったらどうなのよ!!」



未だ理解がついていかない横山を、急き立てるように通話口から女の声がした。

何も言わない通話主に焦れたのか、女はだんだんとヒートアップする。

「ったく最近ただでさえムカつくことばっかだってのに‥。

お前みたいなク◯野郎のせいで更に滅入るっつーの!

つーかアンタ誰なのよ?ケイスケ?ヒロアキ?ノリタカ?おい、誰なんだってば?!また掛けてきたら承知しないから!」




横山は狼狽したまま、その女の剣幕に押されて電話を切った。

時限爆弾は思いも寄らない場所で爆発し、横山は顔面蒼白である。



顔から血の気が引いた横山は、何も考えられないまま淳を見上げた。

勿論紡ぐ言葉など、何も無いままに。



目の前の青田淳は、ゆっくりと天を仰ぐような仕草をしながら口を開いた。

「で‥」



そして彼は横山を俯瞰した。

それはただ高いところから彼を見下ろした、というよりも、横山そのものを見下げたような視線だった。

「お前今、何してるの?」



完璧と思っていた計画が、音を立てて崩れていくのを横山は感じた。

再び脳裏には、去年の夏休みの記憶が蘇る‥。







 

赤山雪にストーカー呼ばわりされ、福井太一に殴られ、横山は夜道を転がるようにひた走った。

蒸し暑い夏の夜、鼻血を拭いながら逃げる自分が、情けなくてしょうがなかった。

しかしそれ以上に、心の中は不安で揺れている。

起訴されたら俺はどうなる?い、いや赤山は許すって言ったじゃんか‥。

それでも噂が立ったら‥




不安と苛立ち、そしてとりとめのない怒り。

横山は携帯電話を取り出すと、通話ボタンを押した。



何度目かのコール音の後、青田淳は電話に出た。

横山は噛み付くように声を荒げたかと思うと、勢い良く彼を責め立てた。

「どうしてくれんすか!先輩の言うとおりにしたのに全然ダメだったじゃないっすか!

全部先輩のせいッスよ!」




事態が飲み込めない、という淳の言葉にも、横山はひたすら先輩のせいだと繰り返した。

「赤山はレコーダーまで持ちだして告訴するって大騒ぎですよ!全部先輩のせいっすよ!

どうしてくれるんすか?!え?!」




淳は「お前は一体何をやらかしたんだ」と静かに問うた。それは程度の線を超えた彼に対する、冷たさを孕んでいる。

先輩の言うとおりに‥と横山が尚も彼に対する呵責を口にすると、通話口からは溜息が聞こえた。

「‥やめてくれ。もう疲れた。いつまでお前の話を受け入れれば満足するの?」



その言葉に、横山は沸々と湧いた怒りの全てをぶつけた。

握りしめた拳の中に、無念の情が篭っている。

「先輩こそ今更どういうつもりすか!さも俺の気持ちを分かってくれたようなフリして優しくしておきながら、

先輩のせいで結局ダメだったじゃないっすか!なんとか言ってみて下さいよ!」




横山の激昂が夏の夜道に響き渡る。

しかし通話口から聴こえてくるのは、凍えるほど冷たい声だった。

「君は見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、文句が多いね」



横山の脳裏に、球技大会での自分の言葉が蘇った。

てめぇら見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、

デレデレデレデレしてんじゃねーよ!!





言葉に詰まった横山に、淳は静かに通告した。


「あの言葉、そっくりそのままお返しするよ」




因果応報、悪因悪果。

彼を貶めた言葉で貶められた悔しさが、横山の胸の内を憎しみで燃やす。

そして今、彼はこれまでにない憤りが全身を駆け抜けていくのを感じていた。



思い描いていた予想図とは真反対の今の状況。

横山はそれを受け入れることは難く、燃え盛る怒りで震えている‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<横山翔の復讐(3)>でした。

さて皆様、淳の仕掛けたトリックが分かりましたでしょうか?^^

なぜ横山の携帯は淳に繋がらなかったのか‥?

以前当ブログのコメ欄にも載せましたが、本家版コメ欄にあったそのトリックの全貌をもう一度書き出しますね。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

整理すると、淳は二つ携帯を持っていた。携帯A(末尾4580)と携帯B(末尾4508)である。

携帯Aは青田淳の携帯番号として、すべての後輩が知っている。



だが、横山がウザくなった淳は横山からのメールを無視し出して、横山ががなぜ無視するのかと問うと、

携帯番号を変えたんだと言い、携帯Bの番号を知らせた。



携帯Bを利用して、横山を慰めた赤山雪に対して、横山のストーカー気質を利用してメールで横山の行動を操作する。

(このメールは淳ではなく静香が打ったものであるのだが‥)





そして横山との最後の通話後、携帯Bを河村静香に譲った。



復学後、淳に復讐しようとしていた横山は友人の携帯アドレスに載っている淳の携帯Aの番号を見て、

携帯Bの番号と同じだと錯覚して(末尾が違うだけで番号自体が似ているから間違えたのだ。)復讐を決心する。



そして友人の携帯を使い携帯Aにメールを送り、淳を空き教室に呼び出して脅迫した。

すなわち真実は、淳は携帯Bを利用して雪と横山を陥れた事実、そして緻密に証拠隠滅したということである。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

ということでした。

詳しくは<淳>その回想にも書いてありますのでどうぞ~^^


次回も<横山の復讐(4)>です‥横山長引きましてスイマセン~^^;


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横山翔の復讐(2)

2014-03-30 01:00:00 | 雪3年3部(萌菜ズボン~横山の復讐)
「プフフ‥プフフフ‥」



横山はこれからの展開を予想すると、笑いが止まらなかった。

今は笑みを浮かべている青田淳も、切り札となるあのメールを見せれば青ざめるだろう‥。

横山はポケットから携帯を取り出そうとした。すると青田淳は笑みを取り下げ、独りごちるように呟いた。

「何をしようとしてるのかさっぱり分からない」



へっ?と横山は拍子抜けの声を出した。

彼は警戒や緊張など、横山の予想するその全ての反応以外のそれを見せたのだ。



淳は横山に背を向けると、

「人も来ないし帰るよ。それじゃ」と言って出ていこうとする。



横山は幾分慌てて、歯噛みしながらもう少し踏み込んだ言葉を掛けた。

「てか、遊びにしちゃあ赤山は長く引きずり過ぎじゃないすか?」



その言葉を聞いて、淳は足を止めた。

淳はゆっくりと振り返り、背の低い彼を俯瞰する。



横山は意地の悪い表情で言葉を続けた。

「先輩、あんた別に赤山のこと好きなわけじゃないんでしょ?

俺と赤山をくっつけようとしてたことを考えれば、自ずと答えが見えてくるってもんすよ」




横山は淳にゆっくりとにじり寄って行った。

言葉を続ければ続けるほど、胸の奥底に溜まっていた憤りが沸々と湧いてくる。

「どうせ赤山にも恥かかせて休学させるんでしょ?

それならインターン前にさっさと終わらせりゃいいじゃないすか。何仲の良いフリをズルズルと‥」




横山は雪と淳のことを足がかりにして、自分のことへと話を引き寄せた。

「あたかも俺にしたようにね」



胸の内が、憎しみで燃え始める。ギリリと歯を噛んで言葉を紡ぐ横山であったが、

淳はそんな彼を俯瞰しながら、淡々と言葉を返した。

「何の話? さっきから一体何を言ってるんだ?

お前が何の話をしてるのか、全く分からないんだけど」




一貫した淳の”知らんぷり”に、横山は徐々に感情が抑えきれなくなっていった。

彼を見上げる表情には怒りが漲り、瞳の中に憎しみが燃えている。



脳裏に浮かぶのは、去年淳から掛けられた優しい言葉や態度だった。


そうだな、お似合いかもな



赤山と自分の仲をどう思うかと聞いた時、彼は微笑みながら確かにそう言った。

そして去年の夏休み前に催された飲み会で、悩みを打ち明けた時も‥

青田先輩、ひょっとしてまだオレにムカついてます?

わざと避けてるんじゃないっすか?オレがメール送っても無視して‥




落ち込みながらそう言った自分に、淳は新しい携帯番号を教えてくれた。

にこやかに声を掛けながら。

本当にこれ以上謝罪はしなくても大丈夫だよ。もう休みに入るけど、楽しんでな。

挨拶とか相談事とかあれば、いつでもメール送ってくれていいから




あの球技大会以降、周りの人達は自分に冷たくなった。

そんな中淳から優しくされ、横山は素直に嬉しかったのだ。

若干の下心(権力のある青田先輩の目に掛けられているという)も、勿論持ちあわせてはいたが‥。




「何を言ってるのか分からないだと?」



一貫してしらばっくれる淳を前にして、横山は遂に声を荒らげ始めた。

ポケットから携帯電話を取り出し、淳の目の前でその証拠を突きつける。

「よくもそんな厚かましいこと言えるな?!

去年あんたが送ってきたメールがまだここに残ってんだよ!」




横山は淳から送られてきた三通のメールを、次々と表示した。

<正直に告白するのが、やっぱり一番良いんじゃないかな>

<告白が難しいなら、アクセサリーやぬいぐるみを送ってみたら?>

<そうか、休みだと会うこと自体大変だろうね。同じ塾に通って、一緒に勉強してみたら良いんじゃない>




横山は携帯を手元に戻すと幾分気分を落ち着かせて、切々と自分の感情を語り始めた。

「‥休学申請した後、考えれば考える程怒りが込み上げてきて‥。これらを永久保存したんす。

内容だけ見たら大したこと無いメールですが‥」




そして横山は暗く翳った視線を纏った。

彼の切り札だった。

「これを赤山に見せたらどうなるでしょうね?」



横山は俯いていたので気付かなかったが、その一言で淳の表情は少し変わった。

今まで想定内のシナリオを辿っていたそのストーリーに、投じられた一石で少し流れが変わるような。



しかし横山は俯いたまま、尚も話を続けている。

「おかげで俺はストーカー呼ばわりされて‥噂が怖くて休学までしたんすよ。

けど‥俺にはそんな非道い仕打ちをしておいて‥」




横山は唇を噛み締めながら、鋭い視線を淳に向けた。

貶められたことよりも、休学させられたことよりも、一番気に障ったことはー‥

「二人が付き合ってるだって?」



横山は真正面から淳を見据え声を荒げた。

「あんたら二人俺を弄んでおいて、のうのうと楽しく暮らすつもりじゃないだろうな?!

赤山に真実を話した後、俺を貶めたことを骨に凍みるほど後悔しやがれ!!」




「自分の彼氏が自分にストーカーをふっかけた犯人だなんてな!」



横山は淳を人差し指で指差し弾劾した。(でも俺がストーカーというのは誤解だ、と彼は小さく呟いていたが)

淳は黙り込んだまま、暫しニヤついた横山と向かい合う。

「‥‥‥‥」



横山は自分のシナリオ通りに物事が運んでいっているのを感じ、心の中で嗤っていた。

視線の先には、俯きながら何かを考えあぐねている青田淳が居る。



見ろよあの表情。今必死で頭を働かしてるんだろうが、気が気じゃないはずだ。

けれどどんな言い訳をしようが、奴は今の俺を説得出来ない‥




そんな横山の考えには、裏付けがあった。メールという確たる証拠を持っていることに加え、

更に彼は秘密兵器を隠し持っていた。ポケットに突っ込んだ手をゴソゴソと動かす。

しかも今この会話を録音してる‥。約五分後に皆が到着するのに合わせて、

これを暴露するんだ‥。




自分を焚き付けたメールと、録音している今の会話‥。証拠はぞくぞくと揃って行く。

更にこれから弁明なり何なりをする淳の言葉が、更なる証拠となるだろう‥。

自分の計算は完璧だと横山は思い、不敵な笑みを漏らした。



録音していることを知ろうが知らなかろうが、肯定しようが否定しようが、どちらにしても淳は身を滅ぼすことになる。

時限爆弾はセットされた。

それは約五分後に爆発し、経営学科全体に激震が走るだろう。

横山はその様子を想像し、身震いした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<横山の復讐(2)>でした。

淳視点からの横山との話はこちらの記事

さぁ、横山のしかけた時限爆弾は爆発するんでしょうか~?

次回<横山の復讐(3)>へ続きます。

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横山翔の復讐(1)

2014-03-29 01:00:00 | 雪3年3部(萌菜ズボン~横山の復讐)
教授が、3時までに401号講義室に集まりなさいだって~!



雪と別れた後、青田淳が受け取ったメールは未登録アドレスから送られてきたものだった。

まだ大学構内に居た淳は暫し考えたが、時間もあることだし教室に向かうことにした。







401号講義室のドアを開けると、そこには誰も居なかった。

もうすぐ3時だというのに‥。淳は頭に疑問符を浮かべる。



すると背後から、聞き慣れた癖のある声が彼を呼んだ。

「あっれ~?せ~んぱ~い」



淳が振り返ると、ニヤニヤと嗤いながら佇む横山翔の姿があった。

早かったですね、と言って挨拶を口にする。



横山はゆっくりと淳に近付いた。

遂に青田淳を追い詰める日が来たのだ。横山の胸は高鳴っていた。

「ちょ~ど良かった!先輩に話さなくちゃいけないことがあるんすよ。

聞いたとこ今日がインターン前の最後の通学だそうで‥」




横山の言葉に、淳が「何?」と返す。

横山はニヤリと口元を歪めた。これまで水面下で進めてきた計画の暴露が始まる。

「先輩、近頃人生楽しいでしょ?」



そう切り出してきた横山を前にして、淳はキョトンとした表情を浮かべた。

淳の中では横山翔という人間を露ほども気にしていなかったので、彼の言葉は唐突に思えた。



しかし横山は尚も言葉を続けた。

ただでさえ順調な人生なのに、インターンは決まり、彼女も出来て、トントン拍子の人生ですね、と。

「それがしたかった話?」



横山は淳からの質問には答えず、更に話を続けた。

こと恋愛に関してはとても楽しそうに見えます、と。

「俺に赤山を勧めたのが不思議なくらいですよ」



どうやって今の関係に持ち込んだんすか?と横山は尋ねるが、

淳は依然としてキョトンとしていた。

「なんの話?」



そう淳が聞き返すと、横山はわざとらしく大きな声を上げた。

「うーわ!さすが青田先輩!やっぱり”すっとぼけ”にかけてはトップクラスっすね!」



皮肉を言った横山は大仰な仕草で淳に近づくと、

「もうほどほどにした方がいいんじゃないですか」と淳を見上げて言った。

「それとも、どこまでとぼけられるか試してみましょうか?」



横山の眼が意地悪く光る。

淳は横山の顔を見下ろす内に、だんだんと物事の本質が見えて来た。



淳は携帯を取り出すと、先ほど送られてきたメールを掲げて言った。

「これは横山が送ったのか?」



未登録アドレスから送られてきた、講義室集合のメール。

淳はこの場が横山によって仕組まれたものだということを確認しようとした。

「は?なんすかこれ。初めて見たんスけど~~ww」



しかし横山は嗤いながら首を横に振った。

そしてその横山の態度を見て、淳は感じた。彼の無言の挑戦状を。



しかし彼の敵意を前にして、淳は慌てるでも眉をひそめるでもなく、微かに笑った。

読者と同じくその笑みを疑問に思ったのは、横山も同じだ。

笑ってんのか?‥笑えばいいさ。俺が何の用意もなくここに居ると思うか?



横山には自信があった。

自分には天が味方してくれているんだと。



横山は微笑む淳と真っ向に向き合いながら、己も笑い続けた。

とある出来事が、横山の脳裏に浮かんでくる‥。




休学後、横山は久々に集まった友人達と談笑していた。

番号が変わったと言う友人の携帯をいじりながら、ふと思いついて質問する。

「なぁ、もしかして青田先輩ケー番変えた?携帯新しくなってる?」



横山の問いに、友人は首を横に振った。夏休み前と一緒だと言って。

「は‥?マジで‥?」



横山は信じられない思いだった。

てっきり青田淳は番号を変えたと思っていた。自分を焚き付けたあのメール履歴が残っている携帯など、

隙のない彼はとっくに証拠隠滅をして番号を変えているはずだと。

横山は友人の携帯をもう一度手に取ると、アドレス帳をスクロールして青田淳の番号を出した。

マジだ。末尾も変わって無い‥



010-5555-4580

それは横山の携帯アドレスにある淳の番号と同じ番号であった。

横山は天から降ってきたような幸運に、思わず笑みを漏らす。



これで青田淳が自分を赤山雪に焚き付けた裏付けが取れる。

あのメールの送信者が彼だということの、証明が出来る‥。


横山は不敵な笑みを浮かべた。彼の復讐劇が、そこから幕を開けたのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<横山翔の復讐(1)>でした。

いけ好かない横山ですが‥。

「うーわ!さすが青田先輩!やっぱり”すっとぼけ”にかけてはトップクラスっすね!」




これは同意しますw

しかし横山が友人に青田先輩の番号を確認したのはいつの時期なんですかね?

よく分からないまま記事にしてしまいました‥^^; 

分かる方、教えてくださるとありがたいです。


そしてこの横山の復讐回は過去記事にしたものもあるので、過去記事にリンクを貼りつつ進もうと思います~。


次回<横山翔の復讐(2)>へ続きます。


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