Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

伝える

2013-12-31 01:00:00 | 雪3年2部(三人円卓~奉仕活動難航)
「は‥はは‥」



雪は気まずい心の内を誤魔化すように、目を逸らし逸らし乾いた笑いを立てた。

目の前には、雪の方をまっすぐ見つめながら微笑む彼。



雪は何度も視線を天地へと泳がせるが、彼は動じずニコニコと笑みを浮かべていた。

 

わ、笑わないで‥



‥一体この雰囲気は何なのだ。

雪が先輩の非に怒った末の話し合いだというのに、昨日のアレで立場は逆転だ‥。



尚も視線を泳がせ話を切り出せない雪より先に、先輩の方が先に口を開いた。

「昨日さ‥考えてみたんだけど‥」



言いづらそうに若干俯きながら言葉を選ぶ彼を見て、雪はドキリとした。

脳裏に姉ちゃんフラれんじゃね?と笑う蓮の姿が浮かぶ。

ま、まさか‥



別れ話か?と思った矢先、先輩は溜息を吐きながら静かな調子で口を開いた。

「もう二度とあんなにお酒を飲むんじゃないよ。絶対な‥」



先輩は飲み過ぎた雪を注意した上で、彼女を責めること無く二日酔いを心配した。

そんな彼の気遣いが、逆に雪をいたたまれなくするのだった‥。







窓の外ではまだ日差しが眩しい。

会話が途切れた二人が、手元のコーヒーに目を落とす。

「‥お隣のおじさん、引っ越しましたよ」



アイスコーヒーは晩夏の空気に水滴を垂らし、テーブルに小さな水溜りを作っていく。

その一粒一粒がゆっくりと溜まっていくのを見ながら、ぽつりぽつり話は始まった。

「‥うん 知ってる」



淳はそれきり口を噤み、二人の間に暫し沈黙が落ちた。

「‥‥‥‥」 「‥‥‥‥」



雪はテーブルに目を落としたまま、話の本題を口にした。

淡々と冷静に、自分の気持ちを彼に伝える。

「先輩が私のためにしたということでも、素直にそのまま受け入れるのは正直‥難しいです」

 

淳は伏せた彼女の瞼を眺めながら、その話の続きを静かに待つ。

膝の上で重ねた両手を組みながら雪は、「だけど、」と強い響きで口にして、前を向いた。

「遠藤さんの話を鵜呑みにして自分の考えを押し付けて‥ごめんなさい」



冷静になって考えて、雪は自分の非を謝った。それは彼女の誠意だった。

「先輩も悪意があってしたわけじゃないと思っているので、だから‥

今回は信じてみようと思います」




彼が雪に抱いていた好意を、雪はどうしても無下にすることが出来なかった。

だからそこの部分に関しては許したのだ。けれどやはり、受け入れられないこともある。

雪は「ただし、」と前置きした上で話を続けた。

「今後こういったことはもう止めにして下さい。私に関することは、まず私に聞いて下さい」





瞳と瞳が絡み合い、その心の動きを伝える。

二人は正面から向き合いながら、雪は自分の気持ちを伝え、淳はそれをまっすぐに受け止めた。



「そうしてもらえますか?」



そう雪が聞くと、淳はニッコリと笑って頷いた。

「うん、分かった」



雪はその笑顔に安堵した。

手持ち無沙汰に、指で耳元の髪を梳く。




そして雪はハッとあることを思い出した。

ホッとしたことで心の中に潜んでいた心配ごとが芽を出したのだ。



雪はおずおずと切り出した。

「あの‥私昨日すごい酔っちゃって‥その‥何か他におかしなことをしでかしたんじゃないかと‥」



言葉を濁しながらそう話す雪に、先輩は非常にあっけらかんと返答する。

「何が? 吐いた以外で?」



ぎゃっと雪が声を上げるのを見て、淳はクククと肩を揺らして笑った。

そして少し意地悪そうな顔をして、酔っ払って吐露していた彼女の本音を教えてあげた。

「亮とのことが気になるって何度も言ってたよ」



関わるなって言われた反動で逆に仲良くなったみたいだね、と少々の嫌味を漏らした後、淳は静かに話し始めた。

「もう知ってるかもしれないけど、亮が俺にああいう感じなのは‥自分の手のせいなんだよね」



そう言ってカップを持つ淳の手は、何の不自由も無い滑らかな動きをする。

淳は昔の記憶を回想し、幾分俯いて話し出した。

「ずっとピアノだけやって来た奴が、手が使えなくなって黒い部分だけが残っちゃったというか‥」





そして彼は語り始めた。

自分と亮が、どのように関わり合って来たのかを。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<伝える>でした。

雪ちゃんのすごいところは、物事を俯瞰して見れるところですねぇ。感情的にもなるんだけれど。

常に自分の非を振り返ってそれと相手の非を天秤にかける、というか。

とても真面目で、全然いい加減なところが無い。信頼出来る子ですねぇ‥

そして大晦日ですね~!皆様良いお年を~~~!(^^)♪

次回は<過去と未来と>です。

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季節の終わり

2013-12-30 01:00:00 | 雪3年2部(三人円卓~奉仕活動難航)
「よぉ!天然パーマ!」



塾にて雪と顔を合わせるや否や、亮はニヤニヤしながらそう言った。

雪は足早に彼の前を通り過ぎるが、亮は楽しくて仕方がないようだ。

「おっ?!今日も太くて良い髪だなぁ~?オレが無知なばかりに天然パーマとは知らず‥。

二日酔いは大丈夫か~?」




授業が始まるからと言ってそそくさとその場を後にする雪の後ろで、亮が腹を抱えて笑っている。

雪は振り返りはしなかったが、バカウケしている姿が容易に想像出来るほどの笑い声であった‥。



教室に着いてからも、雪の気分は最悪だった。

もうこのまま塾を辞めてしまおうかしらんと頭を抱える。








ガヤガヤと学生たちの談笑の声が響く教室を、雪はふと見回してみた。

その中に近藤みゆきの姿は無い。



みゆきは度々遅刻をするのだが、すると隣の席にも座れず話をすることも出来ない。

雪は彼女と徐々に疎遠になっていくような気がしていた。

遅れるなら連絡くれればいいのに‥。みゆきちゃんにとって私はその程度の仲なのかな。

所詮、塾でだけの友達なのかな‥




残念、とも寂しい、ともつかない気持ちが、雪の心の中に浮遊していた。

ざわついている教室内にそれは浮かんで、授業が始まってもそれは心の片隅に揺蕩い続けた。







一方亮は休憩室にて、講師たちのお茶を淹れていた(ティーバッグを入れているだけだが‥)

頭の中はこれからの計画についてだった。少し難しい顔で思案する。

月末だし、そろそろ辞めるって話してみっか‥。



とりあえずの計画としては、都心からは外れるが暮らすには利便性の良い地域に移動するか、

それか最初からもう都内を出て地方へ高飛びするか‥。亮はまだ決めかねていた。

そんな彼の頭の中などつゆ知らず、後ろで呑気に談笑していた男子学生の一人が亮に話しかけた。

「てかトーマスってかなりモテるっしょ?違う?」



その質問に、まんざらでもない様子の亮が答える。

「まぁ、昔からモテなくはねーな」



亮の返答に男子学生達はケラケラと笑いながら、トーマスについて会話を続けた。

「ガタイもいいし、喧嘩とかも強いんじゃない?」 
「腕筋パネー!ふっ飛ばされそ」 
「結構やんちゃしてきたっしょ?」



そんな彼らの軽い調子の会話に、亮は低いトーンで答えた。拳をバキバキと鳴らす。

「おうよ。まぁお遊び程度だけどな‥」



クククク、と笑う亮は不気味で恐ろしい‥。

その不敵な後ろ姿に、男子学生達は幾分ビビって口を噤んだ。



どこに行っても注目の的だぜと、得意げな亮が星を飛ばす‥。










授業合間の休憩時間がそろそろ終わろうとしているが、雪はトイレに急いだ。

すると女子学生二人がブツブツ文句を言いながら、トイレから出てくる所に出くわした。

「あのトイレ入ってる子全然出て来ないんだけど!泣くなら別のとこ行けっての!ムカつくわぁ」



女の子二人はプリプリと怒って行ってしまった。

雪が恐る恐るトイレに近づくと、確かに誰かがすすり泣いている声が聴こえる。



このまま無視して去ろうかとも考えたが、やはり良心の咎があった。

ノックをしようとドアの前まで行った時、中から聞き覚えのある声がした。

「入ってますぅ‥」



近藤みゆきの声である。

雪は慌てて「泣いてるの?どうかした?」と声を掛けるが、みゆきは出て来ない。



しゃくり上げながらの、小さな声がドアの向こうから聞こえる。

「あたし、しんどいよ‥。あんたもそうでしょ?分かるでしょ?この気持ち‥」



雪は最初どういうことか分からなかったので、頭に疑問符を浮かべるだけで返答しなかった。



するとみゆきは小さな声で、弱くなった心の内を吐露し始めた。

「悪口言われても大丈夫だって、へっちゃらだって思って強がって来たけど、やっぱしんどいよ‥。

あたしが何したって誰と付き合ったって、他人に何の関係があるっていうのよ‥」




また誰かから悪口を言われたのだろう、とみゆきの話から雪は推測してみるが、

どういう言葉を掛けて良いものか分からなかった。



雪が何と言おうか考えていると、「こんなこと話したって‥」と声がしたかと思うといきなりドアが開いた。

そして出て来たのは泣きすぎでマスカラが落ち、顔面黒くなってしまった彼女だった。



みゆきは顔を掌で拭い、しゃくり上げながらこう言った。

「嫌な気分にさせちゃってごめんね。あたしだけが大変なわけじゃないのに」



雪はみゆきの顔を見ながら、優しくこう返した。

「ううん、私は別に大丈夫だよ。辛いことも話してくれて構わないし」



雪の言葉を聞いて、みゆきはふと眉を寄せ、やがてこう聞いた。

「大丈夫なの‥?」



みゆきから見た雪は、まるで何も気にしていないようだった。

雪はみゆきに「みゆきちゃんこそ大丈夫?顔洗ってから一緒に行こう」と彼女を促す。



しかし彼女は首を横に振ると、一人トイレから出て行った。

「ううん、あたし今日はもう帰るね。一人でいたいの‥」



走り去っていくみゆきの後ろ姿を見ながら、雪はどこか呆気に取られた気分だった。

?? 行っちゃった‥



何か怒らせたことを言ってしまっただろうか、と自らの発言を反芻してみるが、よく分からなかった。

雪は洗い場で手を洗いながら、ぼんやりと鏡を見て考える。

やっぱり傷つかないわけないよね‥。どうしてみんな聞こえよがしに悪口言うんだろう。

本心でも心の中にしまっておくべきでしょ




鏡の中の自分の顔は、どこか困ったような表情をしている。

みゆきを傷つける人々も問題だが、それだけに原因があるわけではないことに気づいているからだった。

でもみゆきちゃんもなぁ‥。泣くくらいなら塾だけでも普通の服着てくればいいのに。私でさえ目のやり場に困ることあるし‥。



そう思ったところで、雪はハッと我に返った。

私すごいヒドイこと考えてる‥



雪は肩をすくめた後、鏡をじっと見つめてみた。

どう食い止めても止まらない、人の心と時の流れを感じながら。

それでも、夏休みも塾ももう終わりだ‥




そう考えてみると、普段の生活もどこか貴重な日々に思えてくる。

翌日事務所にて仕事をしながら、雪は色々振り返っていた。

もう事務所でのアルバイトも終わりだ。



今年は課外活動とかカフェでのバイトをしなくても、比較的涼しいところに座りながら、

余裕を持って仕事に取り組めた




雪は例年の夏休みの自分に思いを馳せた。

炎天下を走り回ったり肉体労働をしたり、やる気のない生徒の家庭教師をしたり‥。

今年とは比べ物にならないくらい大変な夏が、いくつもあった。

とにかく先輩のおかげだ‥



ゴタゴタも色々とあったが、結果論から言えばそういうことだった。

ただやはり気になることは残っていて、雪は横目で遠藤の方を窺った。



あれ以来パッタリと、遠藤からの嫌がらせは止んだ。いつも苛ついているようなその雰囲気も変わった。

心の中にわだかまりを残しつつ、夏は終わっていく。

空には相変らず太陽が煌めき、痛いほどの日差しがジリジリと照りつけてくるけれど、

息苦しいほどの蒸し暑さは少しずつ柔らかくなっていく。




夏休みも、もう本当にあと残り僅かだ



カレンダーの残り日数もあと少し。

けじめつけなくちゃな‥



雪は晩夏にそう思いを巡らせた。

仕事が終わったら、彼との約束が待っている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<季節の終わり>でした。

みゆきちゃんマスカラどれだけつけてるの‥(^^;)以前聡美も泣いた時黒い涙になってましたが、

韓国ではこれがスタンダードですか?!日本のマンガではこういう描写はないような‥文化でしょうか‥?

そして少しずつみゆきと雪の間に溝が出来始めましたね。こういう少しずつ動いていく不和を描くの、作者さん本当うまいなぁ‥と溜息出ちゃいます。


さて次回は‥<伝える>です。

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酒の代償

2013-12-29 01:00:00 | 雪3年2部(三人円卓~奉仕活動難航)


空に浮かぶぽってりとした夕陽も、もう沈もうとしている時刻だった。

西日が差し込む古いアパートで、雪は痛む頭を抱えながら電話をしていた。

通話先は母親である。

「うんお母さん‥何日かだけ‥。昨日携帯鞄に入れてて気付かなかったんだ」



お父さんの機嫌が直ったら連絡ちょうだい、と続ける雪に、食事中の蓮が言った。

「おかず送ってって言ってーおかず」



確かに雪と蓮の母親の作る惣菜は絶品だ。

しかし今この状況で厚かましくもそう主張する弟に、雪は般若のような顔をして無言の圧力を送った‥。

 



その凄い形相に気圧された蓮は、口を噤みほそぼそと食事を続けた。

「あ」



電話を終えた雪が時計に目をやると、既に夜七時を回っていた。

「塾行かなきゃ‥。どんだけ爆睡したんだ」



昨日の夜から今日の夕方前まで眠ってしまった雪には、一つ気になることがあった。

「約束もあったのに‥何で起こさないのよ!」



今日先輩と会う約束をしていたのに‥。

思わず八つ当たりする雪に、約束なんか知るかよと言って蓮も困り顔だ。

「あ、そういやメール来まくってたっぽいよ。見てみ」



雪はハッとしてフォルダを開いてみると、先輩からメールが入っていた。

よく眠れた?二日酔いしてない?ゆっくり休んで明日会おうな。起きたら連絡ちょうだい



実は昨日の記憶が飛び飛びしか無いのだが、このメールの文面を見るにやらかした感はなさそうだ‥。

雪がホッと胸を撫で下ろす横で、蓮が「で、どっちなの?」と聞いてきた。



「は?」と聞き返す雪に、蓮は「何がは?だよ」と言って、ニヤリと笑った。



「どっちが姉ちゃんの彼氏なの?」



蓮は興味深そうに質問を続ける。

「外国人っぽい方?優等生っぽい方? 二人ともイケメンだったけど。やるね~姉ちゃん」



雪は何とも言えずに黙っていたのだが、続けて蓮は不思議なことを言った。

「まぁとにかく優等生の方じゃないことを祈る」



「何で?」



思わず雪は問う。なぜ青田先輩の方ではいけないのだろう‥。

「え? 覚えてないの?」



「‥覚えて‥?」



‥嫌な予感がした。

見る見る顔を顰めていく蓮の表情の変化に、加速していく胸騒ぎ。

そして蓮は口を開いた。

いや~な顔をしながら‥。


「昨日優等生にゲロぶち撒けたじゃん」











顔面蒼白の雪に向かって、蓮は続けた。

「優等生のサラサラヘアーにチヂミが‥」






‥しかし蓮は続けて言った。

「ってのはうっそーん」



「家の前で吐いたんだよ!俺が片したんだぜ!超迷惑!!」



その間数秒、雪は口をあんぐりと開けたまま微動だにしなかった。

蓮は溜息を吐きながら、固まった姉に向かって尚も言葉を続ける。

「俺が思うに姉ちゃん、近い将来優等生にフラレてふんだり蹴ったり‥」




ゴッ



蓮の背中に雪のキックが炸裂した。

雪より先にふんだり蹴ったりになるのはどうやら蓮の方らしい‥。








雪は溜息を一つ吐くと、蓮に向かって指示を出した。

「私塾行くから、スペアキー作るまで家でじっとしてて。この辺泥棒多いから」

「えぇ~?姉ちゃん待ってなきゃいけないの~?」



蓮にとっては久しぶりの帰国だ。

行きたいところも会いたい友達も沢山‥


    

再び現れた般若に、やはり蓮は口を噤んで目を逸らした‥。

雪は青筋を立てながら音を立ててドアを閉めると、肩をいからせながら外へ出た。




しかし一人になると、途端に雪は動揺し始めた。

は、吐いたって‥?!先輩の前じゃないよね?違うよね?他にも何かやらかしてないよね?



雪は必死に記憶を辿ってみた。

辿ってみると、痛む頭の奥の方からなだれ込んで来たのだ。恐ろしい記憶が。

二人とも黙りやがれぇぇえええ!! あんたら本っ当ムカつくわ!!力自慢とか小学生か!ガキくさい!!
しかもあんた!メンタルじゃなくてマントルじゃアホンダラァ!


理由がありゃご飯おごりもするだろうがぁ。こんな風に突然現れてグチグチグチグチ‥。
てか何でいつもいきなり現れるの?お化けなの?私が心臓麻痺起こしたら責任取ってくれんの?
天然パーマじゃこるぁ!!









恐るべし酒の代償‥。

雪の叫びは夕闇の空へと、吸い込まれるように消えていった‥。




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<酒の代償>でした。

さて日本語版がアップされた時に姉様のところで話題に上がったのですが、

日本語版での蓮くんの台詞「爽やか系にフラれるのは時間の問題だなー」について少し。

ここでは”フる”という意味の単語「チャイダ」が使われているのです。

この「チャイダ」という単語は「蹴る」という意味も含んでいるので、この後雪が蓮の背中を蹴るんですね。

そこに面白味があるのですが、日本語にはなかなかしづらいんですね‥。日本語では「フる」と「蹴る」の意味を両方含んだ単語がないので。

ということで記事では「俺が思うに姉ちゃん、近い将来優等生にフラレてふんだり蹴ったり‥」としてみました。

苦しいですが‥(^^;)

しかし前回も思いましたが、コミカル回は難しい~!楽しんでいただけたかなぁ‥


次回は<季節の終わり>です。

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蓮の登場

2013-12-28 01:00:00 | 雪3年2部(三人円卓~奉仕活動難航)


振り上げられた瓶は、亮と淳に向かって勢い良く投げられた。

「ぎゃっ!」



淳は咄嗟にかわすも、亮は避けきれず顔面に命中した。

瞠目する淳と鼻を押さえて唸る亮に向かって、その男は声を荒げる。

「あんた達何なんだ?!男二人で女連れ込んでどうするつもりだよ?!

警察呼ぶぞ?!早くその人離せ!」




淳は凄い剣幕で近付いてくるその男を警戒し、雪を手で庇った。

「ちょっと待って下さい、落ち着いて」



雪に向かって手を伸ばす男の手首を取り、「誤解があるようだけど‥」と淳は男をたしなめた。

その力の強さに、男は声を上げて怯む。

「何すんだよ!誰だよあんた!」



男のその台詞に、ブチ切れた亮が鼻を押さえて吠えた。

「誰だよは貴様だぁ!!



亮は「よくもオレ様の鼻を」と続けようとしたのだが、男はそれ以上に声を張り上げてこう主張する。

「俺はそいつ‥赤山雪の弟だよ!」







声を合わせながら、思わず二人は目を丸くした。

よく事態は飲み込めないままだが、”弟”は雪に向かって手を伸ばす。

「姉ちゃん何やってんの!しっかりしてよ!」



姉ちゃん姉ちゃんと何度も”弟”は雪のことを呼び、身体を揺らした。

するとようやく目を開けた雪が、ぼんやりしながら彼の名を口にする。

「蓮‥?」               「ったく‥みっともねーなぁ」

  

雪の弟、赤山蓮は、尚も淳と亮のことを疑って睨みを利かす。

しかし当の雪はというと、口元を押さえて最悪な気分で呟いた。

「蓮‥私‥吐きそ‥」



それから一行はてんやわんやの大騒ぎだった。

顔を青くして口元を押さえた雪を中心に、男たちの声がこだまする。

「うわぁ!降ろして早く!」  「待って待って!」  「こらえろぉぉ!」



しかし一番大きな声を上げたのはやはり雪だった。切羽詰まったその叫びは、エコーをかけて響き渡る。


「吐くぅぅぅぅ!!」






‥というところで目が覚めた。

夢だったのだろうか? というかここはどこ? 私は誰‥?



モゾモゾと動いてみると、頭が鈍器で殴られたようにガンガンと痛んだ。

思わず雪は蹲る。



そしてぼんやりと視線を送った先に、見慣れない後ろ姿があった。

何やら小さな画面を見ては、肩を揺らして笑っている。



急激に意識が引き戻され、雪は頭が痛いのも忘れてガバッと起き上がった。

「あ‥あんた何やってんの?!」



しかし蓮は冷静だ。雪におはよーと挨拶すると、

「いや~昨日はマジウケたわ‥覚えてる?」と普段通りの口ぶりで話しかけた。



当然雪はパニックである。

「なんでここにいるの?!いつ来た?!学校は?!」と起きて早々弟を質問攻めだ。



それに対して蓮は淡々と答える。

昨日帰ってきたこと、大学は今夏休み期間であること。

しかし蓮は「まぁでも大学はしばらく休もうと思ってさ」と何とはなしに言った。

「休むって?」



蓮はテンパる雪の方を見ることもなく、相変わらず携帯でテレビを視聴しながら話を続けた。

「父さんも会社畳んだり新しい店オープンさせたり家がバタバタしてるのに、

長男がアメリカでのんびり留学してる場合じゃないっしょ」




その飄々とした態度に、雪が「そんな‥大丈夫なの?」と声を掛けるも、

蓮は「何がだいじょばないの?」とあっけらかんとしている。



お父さんたちは知ってるのかと雪が続けて質問すると、蓮は頷いた後、頬をさすった。

「殴られたけどね、父さんに。しかしこんなにまでしなくてもさぁ‥」



「じゃあ何も言わずに帰って来ちゃったわけ?」



蓮が頷く。

つまりは突然の帰国も大学を休学することも蓮の独断で、両親には事後報告だったということだ。

その証拠に彼の頬はまだ腫れていた。

「母さんに住所聞いて来てたのに、姉ちゃん昨日ずっと電話出てくんないしさー‥。

まーいーや。っつーわけで俺しばらくここで‥」




そう言って振り返った蓮が目にしたのは、世にも恐ろしい形相をした姉の姿だった。

「このぶあっっっかモンがぁぁぁぁぁぁ!!!」



蓮は思わず息を飲んだ。

そしてビシバシと姉の鉄槌が下る‥。

「イタッ!姉ちゃんちょ‥まって!そこ父さんに殴られたとこ!やめてよ!」




昼過ぎの住宅街に、暫し姉弟喧嘩の喧噪が響き渡ったのだった‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<蓮の登場>でした。

ついに出てきましたね~赤山蓮!韓国語名ではホンジュン君ですね。

彼は小西恵と同い年(ただいま20歳)という設定です。

彼が現れることで物語も進んでいきますね~!先が楽しみです。

次回は<酒の代償>です。(^^;)

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どちらの非

2013-12-27 01:00:00 | 雪3年2部(三人円卓~奉仕活動難航)
夕方降っていた雨はすっかり上がり、強い風に吹かれ厚い雲も流れていったらしい。

夜空には半月に近い月が浮かんでいた。



雪の家に向かう暗い夜道を、亮と淳は歩いていた。

亮は雪の鞄を持ち、淳は背中に酔いつぶれた彼女を背負っている。

「みっともねーなぁ、女のくせに」



呆れた顔で舌打ちをしながら隣を歩く亮に、「お前は何でついてくるわけ?」と淳は質問した。

亮はしゃきっと背筋を正し、ピシッと淳に指を向けて言う。

「酔っぱらい女にお前が何かしやしねぇか監視してるんだよ!マナーだよマナー!」



淳は溜息を一つ吐くと、お前には関係ない、と言った。

「さっきは雪の手前、お前のくだらない冗談も聞き流してたけど、あんまり調子に乗るんじゃない」と続けて釘を刺す。

「勝手に言ってろし~。オレがお前を信じてないってだけだし~」



おちゃらけたようにそう口にする亮に、淳は苛つきを感じながら口を開こうとした。

しかし背中で雪がもぞもぞと動いたので、淳はそのまま口を噤んで再び前を向く。



そんな彼の横顔を、亮もまた苛立ちを抱えて見つめていた。

険しい視線が彼に刺さる。



亮はその焦点を少し後ろにずらした。

するとそこには酔いつぶれた彼女が映り出す。亮は二人の姿を見つめた。



亮は二人を見た時に感じるモヤモヤとした気持ちを持て余していた。

それはまだ言葉にするには曖昧で、そしてどこか疎ましい‥。



亮が持っている雪の鞄の中で、先ほどからずっと携帯電話が震えていたのだが、彼らはそれに気が付かなかった。

そして雪の家の窓下に一人の男が佇み、侵入を試みようとしていたのだが、

男は淳と亮が近づいてくるのに気がつくと足早に去って行く。



そんなことを知る由も無い亮が、モゾモゾと動く雪に向かって絡み出した。

「ったくコイツ!何でそんなに飲んだんだよ?」 「お前が飲ませたんだろ」



「別に無理矢理飲ませたわけじゃねーよ!ダメージヘアーが勝手に一人でグイグイやってたんだよ!」

その亮の言葉に、淳は「さっきから気になってたんだけど」と前置きして口を開く。

「そのダメージヘアって呼び方やめろよ」



「は?ダメージヘアだからダメージヘアって呼んでるだけだけど?

それじゃあ何て呼びゃあいいんだ?天然パーマとか?」




ふざける亮に向かって、淳は静かに口を開いた。

その瞳の中に、仄暗い怒りを込めながら。

「やめろと言ったらやめろ」



いつか見たような、”問答無用”のその視線。

亮の瞳に注がれた一瞥を、真っ直ぐに食らわされて彼は押し黙った。



亮はいけ好かないものを感じながらも、それきり反抗することは無かった。

閑静な道に、二人の足音だけが響く。



こうして淳と肩を並べて歩くのは、いつぶりだろうと亮は思う。

無言の空間はいつかの過去を引きずり出し、彼に対して抱いていた思いを蘇らせる。

  

「あのさ、お前」と亮が口を開く。

淳は横目で彼の方を窺う。



亮は前を向いたまま言葉を続けた。

ずっと淳に対して抱いていた、それは本音だった。

「マジでオレに謝ること何もないと思ってんの?」










亮はじっと、淳を見据えた。

恨めしそうなその視線は、あの時と同じ‥。





淳は暫しの間、亮との間に起こった過去のしがらみについて、思いを巡らせた。

彼の視線から目を逸らしたまま、暗い記憶を呼び起こす。








「‥じゃあ、」と今度は淳が口を開いた。

二人は足を止め、淳はわだかまりに触れるようにそっと言葉を紡ぐ。

「お前は‥?」




記憶の奥に沈めていた出来事が、走馬灯のように浮かんで消えた。




どちらの非も同じように、二人の間に広がる沈黙に溶けていく。




もういい、と亮は言った。

もうこれ以上は聞かない、と。



淳も何も言わなかった。

結局、互いにそのわだかまりに手を付けることなく、二人はまた黙り込んだ。




そして二人の数メートル先で、一人の男がその様子を窺っていた。

淳の背でモゾモゾと動く雪の姿を見た男は、思わずハッとした表情を浮かべる。

  

そんなことなど知る由もない雪は、

具合悪そうに「ううう」と唸りながら意識を取り戻した。



すると目の前にある淳の頭が視界に入ったのか、据わった目つきで睨みながら突然彼の髪を掴んで揺すり出す。

「何なのこれは!男のくせになんでこんな髪サラサラなの!私と換えて私と!あー超ムカツク~!!」



いきなりの雪の暴挙に、亮は思わず目玉が1,5倍(当社比)で飛び出した。

されるがままの淳を見ていると可笑しくなり、思わずプププと吹き出す。

「笑うなハゲ!」



ハ、ハ◯‥。



突然向けられたとんでもない悪口に、亮は我を忘れて雪の髪を掴んで引っ張った。

「はぁぁ?!ダメージヘアこらテメー!死にてーかこらぁ?!

テメーなんかダメージヘアじゃなくタワシ頭って呼んでやんよ!」




それから二人は暫し髪の毛を引っ張り合って毛なしけなし合った。

特に雪が亮の髪を強く掴むので、淳は亮がもがく度に振り回され、結果三人ともその場でワチャワチャすることになった。

「二人ともいい加減に‥」



仲裁しようと声を上げた淳だったが、次の瞬間思いも寄らないことが起こることになる。

一人の男が持っていた瓶を振り上げ、声を上げた。



「おいあんた達!!」



突然の大声に、淳と亮は思わず目を丸くした。

予想だにしない人物の登場で、もう一騒動起こることになる‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<どちらの非>でした。

二人の間にある過去の出来事‥このやり取りをみるに、どちらにも何かしらの非がありそうです。

居酒屋での会話「最後まで自分の非は認めないんだな」 「元々オレに非なんかねぇんだよ」が何だか布石になっている気がしますね。

何にせよ過去が明らかになるのが楽しみです~(^^)

そして意識してなかったですが、亮が雪を「ダメージヘア」と呼ぶのを、先輩は初めて聞いたんですよね、この時。

雪の髪の毛(頭?)が好きな先輩には許せなかったんでしょうか‥「ダメージヘア」呼び‥。

自分と同等に考えている雪への中傷が許せなかった、というのもあるのかな‥。

さて次回は<蓮の登場>です。

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