Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

サングラス越しの瞳

2014-10-31 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)


自身に迫り来る新たな危険のことなど露ほども知らない雪は、相変わらず授業中船を漕いでいた。

グラグラと不安定な頭が、前に倒れたかと思えば後ろに倒れ‥。隣に座る男子学生もビックリである。



この後雪は眠気のあまりペンを落とし、この隣の男子学生に拾ってもらった。

しかし意識を取り止めようとすればするほど睡魔は自身を襲い、授業終了後に見たノートは途中から解読不可能‥。

 

雪は溜息を吐きながら、試験についての連絡をする教授の話に耳を澄ます。

「それでは期末は、グループ発表に置き換えさせてもらいます」



その教授の話に、雪は尚の事溜息が出た。またグループワーク‥。

きっと卒業まで続くであろうその苦行に、雪はもうウンザリだ。



その後雪は同じグループの人と携帯番号を交換し合ってから、教室を出た。

授業中にどれだけ寝ても、いくらでも出るアクビを噛み殺しながら‥。




一人構内を歩いていると、ふと携帯が震えた。

取り出してみると先輩からメッセージが入っている。雪はそれにすぐ返信する。

今日もひたすらコピーばっかりさせられてるよ‥T T

先輩がコピー?ウケるww



すると再び携帯が震え、彼からのメッセージが一言。

あー会いたいな



その甘い言葉に、雪はくすぐったくなって思わずその場でニヤけてしまう。

くぅ~っと一人声を漏らしながら。



気分が良くなった雪は、ふと空を見上げてみた。

秋晴れの空は瑞々しいほど青く、爽やかな風が天空を吹き抜けていく‥。



そのあまりの心地良さに、雪はふにゃっと顔を緩めて一人笑った。

あ~~いい天気だわぁ~~~



心が浮き立つような気分で、今まで引きずるように歩いていた足取りも思わず軽くなった。

雪はニヤニヤと笑いながらスキップを始める。

そうよ!鼻血が何よ!鼻血流してまで勉強して、卒業したらZ企業に行くのよ!

輝かしい未来がそこにあるのよーっ!




‥というゴキゲン雪ちゃんを、一人眺めていた人間が居た。

河村静香である。

 

ピシッと、思わず石になる雪‥。

しかし静香は構わず声を掛けてきた。サングラスで目元は見えないが、不敵に口角が上がる。

「どーーも」



静香を前にして、思わず雪の顔は引き攣った。挨拶を返しつつも、その動揺は隠せない‥。

「あ‥はぁ‥こんにちは‥ちょくちょく会いますネ‥」「嫌なの?」「い、いえそんな‥



その気まずさに耐え切れず、「それじゃこのへんで‥」と立ち去ろうとする雪と、静香は気にせず会話を始める。

「デートでも行くのぉ?バカみたいに嬉しそうだったけど」



雪は目玉をクルクルさせながら、小さな声でモゴモゴと返した。

「‥いえ、まだ授業が一つ残って‥行かないと‥」



しかし静香はどこか楽しそうに、雪をからかいつつ彼女の周りを回った。

「あら~マジメなのね~~。顔に性格が表れるって言うけどぉ」



そして静香は、何気なくその名前を口に出す。

「だから淳が好きなの?」



優等生スタイルって感じ、と静香は皮肉ってそう言った。

高校生の時、淳の彼女が皆彼に似たような優等生タイプだったことを静香は思い出している。



雪は静香が淳の話を持ち出したことに、ついカチンと来た。

”淳‥”



雪は乾いた笑いを立てながら、適当な相槌を打つ。

「はは‥。はい、まぁ‥」

「「はは‥はい、まぁ‥」?クソテキトーな答えね~」



適当に流せると思いきや、意外に静香は雪のその答えに食いついた。

ジリジリと近寄りながらツッコミを続ける。

「あまりにも当然のことすぎて話すことないってこと?」

「い、いえそういうわけじゃ‥ど、どうしていきなりこんな‥」「え?」



雪はその追及にタジタジだ。完全に静香のペースである。

「あたしが何したって?」



サングラス越しの瞳が、意地悪そうに嗤っている。

まるで目の前にした獲物を屠りながら、楽しんでいるような。

彼女のその本心を見抜いて雪は顔を顰めたが、静香は更に言葉を続けた。

「社長令嬢~アンタ思ったより相当やり手じゃない。ちょっと秘訣を教えてよ」

「な‥何を‥」 「ケロッとした顔しちゃってぇ。あたしの弟もゾッコン、淳ちゃんもゾッコン~」



雪の脳裏に、以前彼女が口にした言葉が蘇った。

次のターゲットは、あたしの好きなようにするわ



そう言いながらガリガリと、虎は雪の目の前で咀嚼を続けた。

雪から真っ直ぐ、目を逸らさずに。

「てかあの二人のタイプ、こういう感じじゃなかったのになぁ~超不思議~」



そのまま会話を続ける静香のことを、雪はじっと見つめた。

その横顔から覗く、サングラスの中にある彼女の本心を。






雪の鼓膜の裏に、以前電話越しに聞いた静香の声が響く。

あたしは、淳の彼女だけど?



あの時、そう口にする静香の顔を見たわけじゃない。

けれどその声に秘められた彼女の本心を、自分に向けられたその牙を、雪は確かに感じた。

自分は今この人から攻撃されている、と。彼女のターゲットとは、自分のことなのだと。





「てかご飯食べながら話さない?今日はあたしが‥」

「あの。」



突然、雪は切り出した。

自分はただ食われるだけの獲物ではないと、ハッキリと雪はその意志を表明する‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<サングラス越しの瞳>でした。

今週分、アップされましたね。来月休載ということは、次回からもう休載なのか‥?

と気になりつつ、今回は本家の題名に驚かされました。

なんと「ディナーショー第三幕」!!

合コンの後のスネ淳が見どころの「ディナーショー第一幕」、



雪の家の前で亮と出くわしたスネ淳が見どころの「ディナーショー第二幕」



に続いての今回!!

作者さんのブログには「最後のディナーショーです」と書いてありましたが、

今度はどんなスネ淳が出てくるんだろう‥と気になりつつ、今後の展開にドキドキですね‥!!


次回は<宣戦布告>です。


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探し人

2014-10-26 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)
「この人、見たことあります?この前方の建物にある英語塾に以前居たんですが」



そう言いながら男はチラシを通行人に見せたが、誰しもが首を横に振って行く。

「あーくそっ!誰も見ちゃいねぇ!」



その男ー河村亮が以前地方にて働いていた時の社長ーは、そう言って地団駄を踏んだ。

そんな社長を後ろで見つめるのは、亮と仲の良かった元同期の男である。男はオドオドと社長に声を掛けた。

「しゃ‥社長‥もうやめましょうよ~探せないですって‥」

「俺の勝手だろ!!」



社長は通行人もビックリする程の声を上げながら、依然として亮探しを諦めない。

もう数ヶ月もこんな感じなのだ。さすがに元同期の男もゲンナリ顔である。



男は社長に近寄ると、彼の説得を試みた。しかし社長は首を縦に振らない。

「社長‥どうしてこんなに亮に執着するんです‥。もう忘れたかと思ったのに‥」

「俺ぁとびきりアイツを可愛がってたんだよっ!」



社長の剣幕に、男はスゴスゴと引き下がった。心の内にその不満を押し込みながら。

それなら金をピン撥ねしなきゃ良かったのに‥



社長はプンスカ怒りながらも、手当たり次第に通行人に声を掛けて行く。

元同期の男は溜息をつきながら、そんな彼を見て心の中でひとりごちた。

つーか亮のヤツ結構な額持ち出しちゃったから、

社長も引くに引けないんだろうなぁ‥。アイツ電話番号も変えちゃったから、連絡も出来ないし‥。

どうする~?どうするよ~?もう俺も知らないよ~?




ここで亮を探すこと数ヶ月、今まで一人も亮のその後を知る人間は居なかった。

男は「この人知ら‥ないでしょ?どうせ」と通行人に言いながら、やる気無く社長に付き合っていた。

「あ、あ、知ってます」



するとそんな矢先、予想だにしない言葉が耳に入って来た。思わず男は声のする方を振り返る。

「知ってるって?」

「はい、はい。前にある英語塾の講師だった‥」



その通行人の言葉に、思わず社長は苛立った。そこまでなら、今まで何人かが口にしたのだ。

「だーから今はその塾にはいねぇだろうがっ!」

「い、今は辞めたっす‥」



通行人のその男は、フードを目深に被った小柄の男だった。

終始オドオドしている彼は、目だけをキョロキョロと動かしている。

「‥‥‥‥」



横山翔は、今のこの状況をじっと窺っていた。

目の前の柄の悪い中年は、どうやらチラシのあの男に、赤山雪の傍に居たあの男に、何かしらの恨みがありそうだ‥。

「この人、A大にちょくちょく出没するんで、そこを探してみたらいいかもっす」

「A大?」 「俺そこでこの人見ました」



社長は横山の口にした情報に顔を顰め、声を荒げた。横山はビクビクと返答する。

「たったそれだけの情報でどうやって探すってんだよ!」

「ひぃっ‥!も、勿論それだけじゃ見つけられません‥」



横山翔は、やつれた顔でニヤリと笑った。

あのヤンキー男に一矢報いることが、今ここから再び出来るかもしれない‥。



「A大に、その男と親しい仲の赤山雪という女が居るんです。

そいつに聞いてみればいいですよ。経営学科です」




横山はそれだけ言うと、「それじゃ」と早口で口にして彼らに背を向けた。

キャップのつばを目深に被りながら、小走りでその場から走り去る。



社長は重々しく頷きながら、元同期の男に声を掛けた。

「ほぉ‥こんな情報が‥。A大だとよ。まさかホラじゃねぇだろうが‥」



元同期の男は、遂に亮のその後を口にする人間が現れ、動揺していた。

そんな男の心情などお構いなしに、社長は彼に向き直り、こう問う。

「あ、その女の名前‥なんといったっけ?」




悪縁を紡ぐ運命の歯車が、カラカラと回り出していた。

今は呑気に船を漕ぐ雪の方へ、その影はゆっくりと近づいて来る‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<探し人>でした。

8話ぶりに出て来た横山‥すっかりやつれちゃって‥。



‥横山久しぶりだなと思いきや、時系列で言うとこの日(イタチ陥落)の翌日なんですよね、これ‥。



もうパラレルワールドです、私‥。


そして社長‥すごい執念ですね。仕事はほったらかしで良いのか??

さてどういう風に物語が動いて行くのでしょうか。来週分がアップされたらきっと来月は休載だし‥。

気になる木‥。


次回は<サングラス越しの瞳>です。


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覗く素顔

2014-10-25 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)
「あら~広隆、久しぶりぃ。グルワ課題は無事終わった?」



佐藤広隆を見てそう言った静香に、佐藤は小さな声でこう返した。

「いや‥まだ終わってない‥」



佐藤は静香に対して不満を感じていた。気にせず鏡を見ている静香の傍で、佐藤は一人憤る。

俺にあんな事言ったくせに、申し訳ない素振りをしたり避けるどころか‥。

最初から何の考えもないのかコイツは‥ムカつく‥




佐藤と静香が顔を合わせるのは、あの屈辱的な出来事があった日ぶりなのだ。

佐藤の脳裏に、静香から発せられたあの言葉が蘇る。

てかアンタも大概ね。正直ガッカリだわ



強さに屈服する姿をバカにされ、自身の弱さを露呈され、佐藤は突きつけられた己の不甲斐なさに落ち込んだ。

それでも佐藤は、どこか静香を憎み切ることが出来なかった。

ムカつく‥けど‥



佐藤は静香の顔を見ることが出来ないまま、

カバンから一冊の本を取り出す。

「あの‥これ」



自分に向かって差し出されたそれを見て、

静香は歯に挟まった何かを取りながら、彼に聞いた。

「ん?なぁに?」



佐藤は静香から目を逸らしながら、小さな声で説明する。

「美術のためにモグリまでするんだから、興味あるかと思って‥」



静香は佐藤の方をじっと見つめながら、「ふぅん?」と言って目を丸くした。

彼が何を言いたいのかが、いまいちよく分からない。



本を手に取ろうとしない静香に対して、佐藤はモゴモゴと話を続けた。

「その‥俺の親戚が美術専攻なんだけど、この本をオススメしてたんだ。

評価もいいし、美術専攻の学生の間でも有名な本で‥」




すると静香は、下を向きながらそう話す佐藤に向かって、突然ズイと自分の顔を近づける。

「それで?あたしにくれるの?これを?どうして?」



佐藤はそんな静香の行動を前にして幾分動揺しながら、彼女から目を逸らすとこう言った。

「だからその‥プレゼント‥だよ‥」



すると静香は目を丸くして、あんぐりと口を開けた。

「プレゼントォ?これがぁ??」



静香は不思議そうな顔をしながら、佐藤が手に持っている本を指さしてこう続ける。

「中にネックレスでも仕掛けてあるの??」

「ど、どういうことだ?俺はただ、良い内容の本だから‥!」

「ねぇプレゼントがどういうものかってのを知らないの?鞄とか靴とか財布とか、そういうものよ?」






その静香の言葉に、佐藤は腹が立った。

そして次の瞬間、佐藤は真っ直ぐに静香の顔を見上げ、ハッキリとこう口にする。

「お‥俺は君の彼氏じゃないんだ!どうしてそんなものあげなきゃならないんだ?」






大きな声でそう口にした佐藤に、静香はその言葉の意味を汲み取って首を傾げる。

「ふぅん‥ふぅぅ~ん‥。へぇ~へぇぇぇ~?」

 

そして彼の心の奥底に潜む気持ちを見透かすように、静香はクスッと笑った。

「ん、分かったわ」



佐藤は彼女が何を言いたいかが分かったような気がして、真っ赤になって黙りこむ。

すると佐藤が持っている本に向かって、静香が手を伸ばした。



静香はそのまま本をパラパラと捲りながら、彼に向かってお礼を言った。少しぶっきらぼうに。

「とにかく、くれるって言うんなら貰っとくわ。ありがと」



佐藤は決まり悪そうに舌打ちをしながらも、心の中が温かくなるのを感じた。

口元に微かな微笑みが浮かぶ。



佐藤の視線の先に、静香の手に載った本がある。佐藤はそれを見ながら、嬉しそうに言葉を紡いだ。

「そ、それで、今度◯◯講堂で美術家を招いての特別講義もあるんだって。

誰が来るのかは正確に思い出せないんだけど‥」


 

そう言って佐藤は顔を上げた。

そしてそこで彼は、目にしたことの無い表情をした彼女を見る。



色とりどりの絵が描かれた本に目を落としながら、静香は神妙な顔をしていた。

彼女がとうに失った夢が、その本の上に散らばっている。



色素の薄いその瞳の奥に、見たことの無い哀愁のようなものが浮かんでいた。

いつもの自信過剰な彼女からは想像もつかない位儚い、きっとそれは彼女の素顔‥。



佐藤は静香の横顔を見つめながら、初めて見る彼女の姿に驚いていた。

今まで感じたことのない感情が、微かに胸を疼かせる‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<覗く素顔>でした。

最初静香に気まずさを感じ、目を合わせられなかった佐藤君が、

「俺は君の彼氏じゃない」と怒る時に真っ直ぐ静香の目を見ているのが印象的でした。



そして静香も、初めて「男」ではなく「友人」からの本のプレゼントを受けて、

ぶっきらぼうながらにも本心でお礼を言っているのが印象的です。



この二人なら、飾らない自身で関わり合える間柄になれる気がしますね。

この先の展開に期待です^^


次回は<探し人>です。


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赤い痕跡

2014-10-24 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)


亮は絶句した。

目の前の雪が、突然鼻血を出し始めたからだ。



そんな亮の表情を見ながら、雪は不思議に思って彼に尋ねた。鼻の辺りに違和感を感じながらも。

「‥改まってどうしたんです?別にいいですよ、何でダッシュして来てまで謝っ‥」



そして鼻を拭いた手元を見て、雪は目を丸くした。

「ん?」



‥秋の葉色づく構内に、雪の叫び声が響く。

慌てる雪と、呆れる亮‥。








「‥‥‥‥」



暫しアタフタした雪であったが、やがてティッシュで鼻を押さえながら上を向いた。

するとそんな雪に向かって、荒い口調で亮がこう言う。

「頭下げろ!喉まで血が行っちまうだろーが!」



さすが喧嘩で鼻血を出し慣れた亮である。亮はそう言いながら幾分強い力で、雪の頭を押さえ込む。

雪は鼻を押さえながら、どうしてこんなタイミングで鼻血が出るのかと、その間の悪さを呪っていた。

こんな自分は、亮からからかわれるのに絶好のカモだ。

「授業中に鼻でもほじってたんか~?」



案の定亮はそんな雪を見ながら、ニヤニヤと笑ってそう口にした。

違いますよと言い返そうとする雪に、亮は缶ジュースを寄越してその反論を封じ込む。



雪がジュースを受け取って黙りこむと、亮は幾分得意そうな顔でこう言い始めた。

「頭に血でも上っちまったか?度々そうなった女共を見て来たけどよ‥。

オレのセクシーさに耐えることが出来なくて‥」


「もう!バカな事言わないで下さい!」



怒ってそう言い返す雪に、亮はニヤリと笑って更に続ける。

「おい、正直なところを言ってみろって」「何をですか?」



そして亮は己の顎に指を添わせダンディー(?)なポーズを取ると、雪に向かってこう質問した。

「マジで客観的に見て、正直淳よりオレの方がイケメンじゃね?公平に顔だけ見たら、だぜ。

高校の時も論争になってよ‥」
「何言ってるんですか‥この人は‥」



呆れながら流そうとする雪に対し、亮は尚も食い下がった。

スペックやこれまでの経緯など全部取っ払って顔だけ見た時に、どちらがよりイケメンなのか、と。



雪はニヤッと笑いながら、亮に向かって口を開く。

「そりゃあもちろん‥」



そして亮の方を振り返った雪が目にしたのは、

可愛い仕草で自分を見つめる、亮の姿‥。







雪は一瞬言葉を忘れ、目の前にある亮の顔に見入っていた。

しかし次の瞬間笑顔を浮かべ、用意したその台詞を口にする。

「もちろん青田先輩ですよ」「今躊躇ったな?」「チガイマスヨ。ワタシガイツ?」「棒読みじゃねーか」



雪は本心を亮から見破られ、彼から目を逸らして口元を手で覆った。

実のところ雪は、濃い顔の男性がタイプなのだ‥。

「オッケー了解ッ!!客観的評価頂きましたァ~!」



亮は高らかに笑いながら、雪の本心を汲み取って彼女をからかう。

「いや~どうしよっかなぁ~!日頃から気をつけなきゃいけなかったのに、

鼻血まで流させちまって‥マジイケメンでゴメンナサイね」


「違いますってば!!」



雪は真っ赤になりながら、必死になって否定した。

と同時に、その勢いで鼻に詰めていたティッシュがポンと外れる。

「うおっ!何してんだ!ティッシュ貸せティッシュ!」



亮は慌てながら、雪の膝の上に載っていたティッシュを何枚か引き出した。

「ったくよぉ!どーしてお前はこうなんだよ!」



亮はティッシュを雪の鼻に当てながら、強い口調でそう口にする。

その言葉の奥の方に、彼女を心配する優しさを込めながら。



鼻に当てられた大きな手の平越しに見える、彼の顔。

雪は瞬きも出来ないままに、その眼を見開いてじっとその顔を見ていた。



鼻から喉へ、赤い液体が落ちて行く。

その光景は雪の心に、赤い痕跡を残して行く‥。









亮はティッシュを手で押さえながら、どうして彼女が鼻血を出しているのかを思って眉をひそめた。

目の前にある彼女の顔はどこかやつれて、目の下には若干のクマも見える。

「ったくなんなんだよこのザマは。お前、最近すげーキツイんじゃね?」



「ほら、頭下げろって!」



「お前一日の睡眠時間はどのくらいだ?寝れてんのか?睡眠時間が足りねーからこんな‥」



雪は頭を下げた姿勢でも尚、亮の顔を見続けていた。

心の中に赤い痕跡がポタポタと、ゆっくり、しかし色濃く残って行く。

「疲れてんのにどうして午前中仕事すんだよ。その分寝てから大学に来るべきだろーが」



少し厚めで形の良い唇が、自分を心配する言葉を紡ぐ。

雪は鼻に当てられた亮の大きな手を意識しながら、

「自分でやりますから‥」と言って彼の手からティッシュを受け取った。



雪は自分で鼻を押さえると、さっと亮から視線を逸らした。

亮はそんな雪を見ながら、呆れるように小さく息を吐く。



そして亮は、疲れて見える雪に対してこう声を掛けた。

「お前家帰ったらよぉ、母親にスタミナのつく牛骨スープでも作ってもらえよ。分かったな?」



亮は色々と気苦労の多い雪を心配していた。

「もうあのおかしなヤツもいなくなったことだし、もっと気を楽に持てよ。

‥ったく、服にもついてら」
 「あ‥すいませ‥」



雪は彼の服に自分の鼻血がついてしまったことを謝りつつ、この間のことについて礼を述べた。

「あ!そういえばスプレー、本当にありがとうございました!

あいつの目、パンパンに腫れたと思いますよ。まともに見れなくて残念です、本当に!」




亮は「そっか」と言って満足そうに笑った。

「ほら見たか!オレのそんけんの明!」と言い間違う亮に、雪が苦笑いで「先見ね‥」と言い直す。



すると不意に亮は大きな声を出し、パッと顔を上げた。

「あ!んじゃオレ行くわ。遅刻したらまた殴られちまう」

「あ、はい」「お前も授業行けよ」

 

そして亮はジャケットを羽織ると、雪に背を向けて後ろ手に手を振った。

「家でちゃんと休めよ!」



ザクザクと、亮は落ち葉を踏みながら去って行く。

雪は暫くベンチに腰掛けたまま、亮の後ろ姿をじっと見つめていた‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<赤い痕跡>でした。

こ‥これは‥



この自然の風景の中で時が止まる感じ‥

この場面とかぶります。。



ひぃ~どうなるの?!とハラハラですが、作者さんのブログでは来月休載とか‥。

まだまだ先は長いかもですね‥。

というか、雪ちゃんの好みのタイプって濃い顔(亮>淳)だったのか‥!とビックリでした。。

今回のハイライトは、やっぱりこのキュート亮さんですね~^^



亮派の皆様には堪らないショット!いいなぁイケメンは‥。


次回は<覗く素顔>です。


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不意打ち

2014-10-19 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)


結局奇行に走った亮とはそのまま別れ、雪はお昼前の授業に出るため大学へ向かった。

身体の疲れは取れず、授業が終わった時、雪は机に突っ伏した状態だった。

「雪、なんかいつもよりダラケてない?」「逝ってしまわれましたネ」



雪の両隣に座った聡美と太一が、微動だにしない雪を挟んで会話する。

「季節の変わり目は疲れやすくなりますからネ」

「あんたこそバイトしすぎなんじゃないのー?」



聡美は暫し雪が自分から起きるのを待ったが、まるで目を覚ます気配が無いので、

しょうがなく揺り起こすことにした。

「てかこの子寝る前にノート取ったのかなぁ?おい、起きろっ!授業終わったよ!」

「あ、」



すると不意に太一はあることを思い出し、聡美に向かって話を切り出す。

「後で雪さんと一緒に夕飯食べに来ませんカ?」

「アンタの家に?」「姉ちゃん達が一度会いたいって‥」



その「太一+小姑三人からの実家ご招待」に聡美は幾分戸惑い、雪は「ご飯」の話題に反応する。

「ね、姉ちゃん達か‥」「ごはん‥」



ようやく目を覚ました雪が、ヨダレを拭きながら言う。

「ご飯食べに行こ、ごはん‥」 「起きたか‥」








三人は学食に移動して、そこで昼食を取った。

目の下にクマが出来ている雪を見て、聡美が「アンタ何時間寝れてるの」と雪の身体を心配する。

「ん?」



雪はもぐもぐとご飯を食べながら、不意に近くの通路を見知った顔が歩いているのに気がついた。

聡美と太一は雪の視線の先には気づかず会話を続ける。

「てか横山のヤツ、大学来てないよね?w」

「来れないデショ」



そこに居たのは、蓮と恵だった。二人は楽しそうにお喋りをしながら歩いている。

するとそこに、柳瀬健太が通りがかった。

三人がすれ違うその瞬間、健太の影に居る蓮の動きが止まる。



健太が通り過ぎた後で雪の目に入って来たのは、足を押さえて跳ねる蓮と、そんな蓮を心配する恵の姿だ。

健太は振り返りもせずに、「あーすいませーん」とその不意打ち攻撃に対する口だけの謝罪をする。



雪はその場面を見て顔を顰めた。

未だ恵にこだわっている柳瀬健太に、嫌な感情を感じずにはいられない‥。






昼食後、雪は聡美と太一と別れ、一人授業へと向かった。

紅葉で色づく構内を歩きながら、雪は大きな声で不満を垂れる。

「てか蓮はもうここで暮らし続けるの?!無駄に健太先輩から喧嘩ふっかけられてからに!

もう勉強は止めるってこと?!色々聞こうとしてもそれとなく逃げられて‥もう!」




日々に甘んじてアメリカに帰らない蓮に対する雪の不満は、もう爆発寸前だ。

雪はプリプリと怒りながら、早足で構内を歩く。

河村氏にもガツンとやってもらわなきゃ。

蓮、お前はもう死んでいるッ




すると後方から、凄い勢いで近づいて来る足音が聞こえて来た。

雪は不思議に思い、思わず振り向く。



するとそこに、凄い形相で迫り来る河村亮の姿があったのだった。

「ダメージヘアァー!!!」「?!」



走り過ぎて声がガラガラの亮が、ゼェゼェと息を切らせて彼女の愛称を口にする。

雪はあまりに驚きすぎて、「ナッ!ナッ!ナッ!」と言いながらそこらの木にしがみつく。



亮は汗をダラダラ流しながら、雪を睨んでこう言った。

「ダメージ‥クッソ‥足早ぇんだよ‥ったくよぉ‥」

 

突然の変な登場で驚かされた上に、自分に対して文句を言われた雪は、思わず亮を前にしてピキッと来た。

雪はツカツカと亮の方へと歩き出し、彼に向かって強く言う。

「あのねぇ!河村氏!普通に呼ぶか電話でもすればいいでしょ!

一体なんなんですか!




そのまま肩で息する亮に対し、雪は朝の出来事も含めて彼に文句を言う。

「もしかして昨日メールを返せなかったことへのあてつけ?!うーわこんなことするんだ?!」



するとそれまで黙っていた亮が、バッと顔を上げ、突然上着を脱ぎ始めた。

「ったく知るかっ!」



「何してんですか!」と青くなって周りを気にする雪など気にせず、

亮はTシャツ一枚になってその場に座り込んだ。



亮は未だ息を上げながら、汗を流し続ける。

「あーもうマジ、ダッシュして死ぬかと思ったぜ‥」

「だからなんでダッシュして来てんですかって!」



こんな格好で座り込まないで下さい、と雪は注意するが、亮はその場から動かなかった。

高い秋の空を見上げながら、自分がここに来た訳を口にする。

「だから‥」



「ゴメン‥」



亮は空を見上げたままの格好で、一言ゴメンと口にした。

雪は目を丸くしながら、「はい?」と聞き返す。



亮は、幾分決まり悪そうな顔をしながら口を開いた。

「‥さ、さっき‥変に腹立てたりしてよぉ‥」



亮は朝の自分の振る舞いを後悔して、謝罪をするためにこうして走って来たのだった。

息を切らせて、全身に汗をかきながら。



亮は気まずそうに顔の辺りを手で触れながら、ようやく整って来た呼吸を落ち着け、再度それを口にした。

「ゴメン‥」



亮が二度目の謝罪を口にしても、雪が黙っているので、亮はチラリと彼女の方を窺ってみた。

するとそこには、その不意打ち攻撃に当てられた彼女が、鼻血を垂らしてこちらを見ている‥。



「‥‥‥」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<不意打ち>でした。

太一の家への夕食招待!地味にすごくそれが気になってます。

お姉ちゃん達、弟の好きな子見たいんだろうな~と。笑

太一にそっくりな三人の姉達↓



そして悪いことをしたと思ったら、全力でダッシュして謝りに行く亮さん!

いやはやもう‥いい奴過ぎて何も言えません^^;

次回は<赤い痕跡>です。


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