Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

派閥

2015-10-30 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
授業が終り、学生達は各々に席を立った。

その中で佐藤広隆は、テキストを鞄に仕舞っている。



少し離れたところにいる柳瀬健太が、舌打ちをしながら愚痴をこぼしていた。

「ったく赤山のヤツ、礼儀がなってねーんだよ。

自分まで青田レベルになったとでも思ってんじゃねーのか?」




そんな健太に向かって、メガネ君が自分の意見を口にする。

「まぁ‥過去問を回すのも義務じゃないし、もう気にしないでいたらどうすか?

過去問も赤山の持ってるヤツだけじゃないですし」


「なんだとぉ?!」



しかしそれが健太の癇に障ったようだ。

健太はメガネ君の前で腰に手を当て、頭を大きく前に倒して見せる。

「お前ってやつは、基本的なコトが分かってねぇよ。ったく」



「お前の目はふし穴か!

俺がそんなショボイことで怒ってるとでも思うか?!」




ネチネチとそう言う健太に、「あ‥はぁ」と曖昧に頷くメガネ君。

「赤山のヤツが生意気な態度を取るからだろ?!生意気な態度を!」

「いや、っつーか‥」



するとそんな健太の後ろから、キャップを被った後輩が声を掛けた。

彼は健太の諸々の行動について、客観的な意見を口にする。

「そんな風にずっとネチネチ喧嘩腰でいたら、結局過去問は見せてもらえねーんじゃねーすか?

んなことする必要あります?まぁ‥見たいっちゃ見たいけど、無理ならしょうがないっつーか‥。

穏便に行きましょーよ穏便にー」




しかしその意見はまたもや健太の癇に障ったようだ。

健太はくわっと目を見開き、大きな声で言い返す。

「穏便って何だよ穏便ってよぉ!」



「‥‥‥‥」



キャップ男子は目を細めながら、その場でただ口を噤んだ。

健太は悔しそうに胸をドンドンと叩きながら、持て余す感情をぶち撒ける。

「あーもう!お前らが情けねーからマジでモヤモヤすんよ!

こんなんで大学出てからちゃんとした社会生活送れんのかぁ?!」




健太は周りの皆に向かって、最年長の先輩らしい顔をして持論を展開した。

「今のうち赤山に常識ってモンを教えとかねーと、

いずれ社会に出た時に大変なことになるに違いねぇ。そうしとくべきだろ?まぁムカツクけどよ」




そして健太は教室を出て行こうとしている佐藤に向かって声を掛けた。

「だろ?佐藤よ」

 

佐藤は顔だけ振り向いて健太の事を睨む。

そんな佐藤の後方から柳楓が、クスクスと笑いながらこう言った。

「うーわいい年した先輩がそんなことで年下女子に食って掛かってるw人喰い人種だ~

皆も相手してねーで昼メシ食って来たら?」
「んだとぉ?!



怒る健太に向かって、柳はヘラヘラと笑って流している。

健太の周りの学生が、「だな。昼飯食い行こーぜ」と口にし、

皆は学食へと向かい始めた。



「あの野郎‥ノートPC事件以来マジ‥」

「はい?」「い‥いや」



”佐藤のノートPC柳が壊したと見せかけた事件”から、柳は健太に対して敵対視するようになった。

その証拠に、柳は健太には声を掛けずに周りの男子学生に向かって、

「おい!メシ!」と口を開く。






男子学生達は揃って顔を見合わせたが数秒の後、

キャップ男子は健太に背を向け、柳の方へと走って行った。

「おー」



徐々に分裂して行く男達。

メガネ君は迷ったが、最終的に健太の派閥へ付いて行った。






改めて教室を出て行こうとする佐藤。

するとそこで、再び健太に声を掛けられた。

「あ!そうだ!おい、佐藤!」

 

ビクッと身体を強張らせた佐藤に向かって、健太はニヤリと笑う。

「お前とよく一緒に居るハーフ女いるだろ?俺、あの女から聞き出した話があるんだがな‥」



その意味が解せず、「はい?」と聞き返す佐藤。

健太は佐藤の肩を軽く叩いて、曖昧な表現でこう続けた。

「ちょっとばかし覚悟しとけよ~?後で傷つかねーようにな」



健太は佐藤に背を向けると、ハハハと笑いながらそのまま教室を出て行った。

佐藤はその巨体と一味が去りゆくのを、ぐっと歯を食いしばって睨んでいる。



佐藤は険しい顔をして、健太が口にした言葉の意味を噛みしめていた。

バッと彼らから背を向ける佐藤。



すると突然、ひょっこりと柳楓が現れた。

「おい!佐藤!」



再びビックリする佐藤に、柳はにこやかな笑顔でこう続ける。

「な、何‥」「お前昼メシまだだったら一緒に行かね?」



「え?」



佐藤は思わず目を丸くした。

柳から昼食に誘われるなど、初めてのことでー‥。




「!!」



その返事を口にする前に、佐藤は三度目のビックリをすることになった。

教室のドア付近に、知らぬ間に赤山雪が立っていたからだ。

佐藤はズレた眼鏡を直しつつ、雪に向かって声を掛ける。

「あ‥赤山」「おー赤山ちゃん」「こんにちは」

「き‥来てたのか」「はい」



「いつから?」



佐藤は雪に向かって、思わずそう聞いた。

先程の柳瀬健太との会話を、彼女は聞いていたのだろうかー‥。



雪は曖昧な表情のまま、その佐藤の質問には返答しなかった。

代わりに皆の方を見ながら、佐藤にこう問いかける。

「あー‥佐藤先輩はみなさんとお昼‥」「え?あ‥いや」



昼食を共にしながら財務学会の発表資料を仕上げようと、先ほど雪は佐藤にメールしていたのである。

そして佐藤は了解の旨を返信していた。

そうとは知らない柳は、雪に向かってランチのお誘いを掛ける。

「ねぇ!赤山ちゃんは昼メシ食った?まだだったら一緒に行こーぜ!」

「あ‥いいんですか?」



柳の誘いを雪が了承すると、

佐藤は幾分ホッとした表情でそれに同意した。

「まぁ‥それなら」



雪は柳一味の人数をザッと数えると、こう提案を口にする。

「それじゃプルム館はどうですか?あそこは広いテーブルがあるので」



「俺はまぁ‥構わんよ」「俺もー」

「健太先輩とは極力会いたくねーわ。そこ行こーぜww」



そして皆、雪の提案通りプルム館へと向かうことになった。

一つの派閥がゾロゾロと移動する。

淳は元気ー? ハイ



それぞれの持つ風は、似たような流れを見つけてやがて集まる。

それぞれの意見を持って、様々な状況の中で‥。


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<派閥>でした。

だんだんとグループが出来上がって行きますね。

私はなんとしても柳のグループに入りたいと思います(キリッ)


次回は<風向き>です。


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鍵の行方

2015-10-28 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)


都内某スタジオにて、カメラマンの声が飛ぶ。

「はーい 正面真っ直ぐ見て!」



ファインダーの向こうに居るのはモデル・福井太一である。

「視線、右側に流してー、肩ちょっと下ろして」



「今度は頭だけ左に‥OK!」



カシャッとシャッターが切られ、チェックの為皆がカメラの周りに集う。

「もう袖も撮っちゃおうか」「ハイ」

「パンツの裾もー‥」



「他の服持って来て!」「分かりましたー」



伊吹聡美は普段見慣れない撮影現場に圧倒されながら、太一の姿を見つめていた。

新しい服に袖を通した太一は、再びカメラの前に立つ。

 

カシャッカシャッとシャッターが切られる度に、太一はポーズや表情を変え、

撮影クルー達はテキパキと仕事をこなしていく。






普段とはまた違った太一のそんな姿を、

聡美は微笑みながら見つめていた。



心がウズウズと動く。

結構イケてんじゃん‥? アイツめ‥



聡美はニヤッと笑いながら、今までとこれからのことについて一人考え始めた。

そうだよ。今まで微妙な告白もどきみたいなのは時々あったけど、

一度もちゃんとした告白ってのは無かったじゃん




太一からの告白‥。

考えれば考えるほど、心臓が大きく跳ねるようだ。

ドキドキ



太一を見つめる聡美の視線に、ふと太一が気がついた。

二人の目が合う。



フイッ



しかしすぐにあちらを向いてしまった太一。

聡美は「照れちゃって‥ww」と尚もニヤニヤが止まらない。

アイツ‥今日、あたしにイケてる姿を見せておいて‥



聡美の脳内でバラ色の妄想が始まった。

「聡美さん、改めてきちんと告白させて下サイ!

心から好きです。俺と付き合ってくれまセンか?」




片膝を折りながらの正式な告白。

そして太一は持っていた箱を開くと、そこにはあのピアスが‥。

ジャーン!





ウフフフ‥!



聡美は堪え切れずに肩を震わせ、一人ニソニソした。

心を落ち着かせながら、自分の気持ちを改めて確認する。

いいじゃん、いいじゃん。

今回はちゃんと受けようじゃないの。もう雪にも青田先輩という人が居ることだしね。

あたし、もうネガティブな結末を考えるのは止めることにしたから‥




ずっと、心に引っ掛かっていた。

太一は誰よりも大切な、大事な大事な友達。

いつか去って行ってしまったらどうしようって。



それでも煮え切らない関係を続ける内に、聡美にはもう分かっていた。

太一となら、きっと上手くやっていけるって。



あのピアスを受け取ったら、新しい二人の関係が始まる。

そしてそれで、聡美と太一の物語はハッピーエンドー‥。




「うん、貰ったけど?」



「超カワイイ~!」



その声に聡美が振り向くと、雪の同級生の萌菜とその仕事仲間が、何やらはしゃいでいる最中だった。

萌菜は嬉しそうにしながら、何かを持って仕事仲間に見せている。

「マジで?あの気になるって彼から?」「うん、彼がくれたの」



「カワイイでしょ?」



萌菜はそう言って、何かを耳に付けて見せた。

聡美はじっとそのやり取りを聞いている。

「なーによ、当分恋愛しないって言ってたじゃーん」「いやいや~」







萌菜の耳に輝いていたのは、あのピアスだった。

太一に携帯に表示されていた、彼の心の在処を示す鍵‥。






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<鍵の行方>でした。

太一との関係を進めることに臆病になっていた聡美が、いつの間にか結論を下していたのですね。

妄想に頬を染める聡美がカワイイです。

しかし萌菜が絡み出して、事態は急展開ですね!

次回は<派閥>です。

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それぞれの意見

2015-10-26 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
「もらってない人ー?」「あたしもあたしも!」



誰かが手に入れて来た過去問が、大量にコピーされ机の上に置かれた。

学生達はそれを一部ずつ取って行き、それぞれに自分の意見を口にする。

「過去問は雪ちゃんだけが持ってるモンじゃないっつーの」

「あの子には絶対あげちゃダメ」

「いやでもさー、健太先輩が変にでしゃばったから、

雪ちゃんにお願いするにも誰も出来なくなったんじゃん?」




過去問と赤山雪。それをめぐる皆の意見は様々だ。

そんな中、直美の友人・黒木典は客観的な意見を述べる。

「てか雪ちゃんは青田先輩の過去問持ってんだから、

欲しがんないでしょ」




去年の学年首席の過去問以上に上質な物などない。

皆内心そう思っているが、糸井直美はそのプライドから典に対してこう言ってみせた。

「もういいって。過去問なんて持ってなくてもいーし。

遠藤さんの話では教授、問題新しくするって言うしさ」




問題が一新されれば、過去問はただの紙切れ同然。

従って雪が持つ”青田先輩の過去問”も、何の意味も持たなくなる。

そんな直美の意見に、同期の女子はこう返す。

「うちの学科の卒験、もう3年連続過去問通りなのに、

遠藤さんの話を信じるの?」




そして雪と同期の吉田海という女の子は、ポツリとこう口にした。

「それでもあたしは青田先輩の過去問が‥」

「ストップ!」



直美は強引に彼女の話を切り、ウンザリしたような顔で口を開く。

「それじゃ雪ちゃんがますます調子に乗‥」

「ちょっと通りますね」







直美の後ろから、雪が突然姿を現した。

雪の悪口を言いかけていた直美は、口を貝のように閉じて固まる。

しんとする教室内。

雪は彼女達を横目で窺いながら、空いている席へと向かう。



雪は歩きながら、チラッと一人の女の子の方へと視線を流した。

先ほど「それでもあたしは青田先輩の過去問が‥」と口にした吉田海だ。

 

海は雪と目が合うと、思わずビクッと身体を震わせた。

しかし雪は何も言わず、ふいっと背を向けて行ってしまう。



席に就いた雪の元に、親しくしている子達が集い始めた。

「雪、おはよ」「今日は一人?」



外ハネヘアーの同期が、口に手を当てながらコソッと雪にこう話す。

「あたしこの空気マジで胃に来る ムカツクー

 

雪は二人の同期に挟まれながら、離れた席に座る直美の方を窺った。

直美は過去問をしっかりと抱え込みながら、隣に座る典にこう聞いている。

「あの子これ欲しがってそう?」「さぁ」



どこか不穏な空気が、教室全体に漂っていた。

不満そうな顔をした女子達や、寝ている男子、音楽を聞いて素知らぬフリをする子。

交錯する関心と無関心‥。

 





暫くしてからもう一度、海は雪のことを窺った。

すると再び、バチッと二人の目が合う。



二度目のビックリ。

海は目を丸くしながら、再び身体を震わせる‥。








授業が始まり、教授が壇上で講義を始めた。

雪は教授の話に耳を傾け、板書された内容をノートに取る。



ブルル‥



すると鞄に入れた携帯が震え、バイブ音が教室に響いた。

画面には”先輩”の文字が踊る。

「ここの箇所絶対テストに出るぞー。チェックしろー」



雪は携帯の電源をオフにしながら、教授の指摘した箇所を強くマークした。

そして最後まで、雪は真面目に授業を受けたのであった。




 

終了のチャイムが鳴り、雪は一人で外へと出た。

道を歩いていると、後ろから彼女を呼び止める声が掛かる。

「雪ちゃん」



雪が振り返ると、あの子が立っていた。

同期の海ちゃんである。



雪は微笑んで彼女に声を掛けた。

「あ、海ちゃん。どうしたの?」



すると海は鞄からプリントを取り出すと、雪に向かってこう言った。

「さっき配られた過去問、雪ちゃんも見る?」






変なプライドで噛み付いたりとか、相手を悪者にしたりとか、下手な小細工など何もなしに、海は過去問を差し出した。

そんな海を前にして雪は、ニッコリと微笑んでこう返す。

「ううん、大丈夫」



雪のその返事を聞いて、海は若干窺うようにこう言った。

「だよね、雪ちゃんのは青田先輩から貰ったヤツだから、他のなんて‥」



そう言う海に対し、雪はかぶりを振って笑顔を浮かべる。

「ううん、貰えなくて残念だよ。

先輩の過去問、今日大学に持って来てたら見せ合いっこ出来たのに」




そして雪は笑顔を浮かべながら、海にこう提案した。

「今度持って来た時、交換しよっか」



「えっ?」



予想外の返答に、思わず目を剥いた海。

そんな海の目の前で、雪は穏やかに微笑んでいる。







拍子抜け、というか、呆気に取られた、というか、とにかくポカンとした表情をしながら、

海は雪のことを見つめていた。そんな同期を前にして、雪は思う。

皆が同じ状況なわけじゃない。

だから当然、皆が同じ意見であるはずがない。




そんな非常に単純な事実を、私たちは実によく忘れてしまうー‥。







一方こちらは、教室内でテキストに目を落とす佐藤広隆。

ポケットの中の携帯が震えると、佐藤はすぐにそれを取り出した。

河村静香?!



メールが一通届いている。

佐藤は緊張しながらそれを開いた。

先輩、財務学会の発表の資料、もう全部準備しました?

もしまだなら、一緒にお昼食べながらやりませんか?




しかしそれは、赤山雪からの勉強お誘いメールだった。

思わず気が抜ける佐藤‥。



とりまOKっと‥



欲しい返事はなかなか貰えない。

佐藤は心をソワソワさせながら、あの自由奔放な彼女のことを考え続ける‥。


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<それぞれの意見>でした。

海ちゃん、青田先輩の過去問GET!ですかな。

登場人物それぞれが自分の考える”賢明な対処”を全うする、という流れになって来てますね。物語全体が。

さて次回は<鍵の行方>です。

聡美の考える賢明な対処は、果たして実を結ぶのか否か‥。


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それぞれの状況

2015-10-24 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
赤山雪の今の状況は、というと。



机の上に広げたテキストとノートを前にして、船を漕いでいる最中である。

しかも今は授業中‥。







授業が終わると、教室から学生達がぞろぞろと出て来た。

その中には、小走りで移動する雪の姿もある。



時刻はお昼。

聡美と共に学食でランチ。



そして時は過ぎ、日が沈んだ。

雪は聡美と手を振り合って別れる。また明日ね、と言って。



帰りの地下鉄の中でも、また勉強。

今日は座れなかったので、立ちながらテキストを持ち、暗記する。



帰宅。

ご飯を食べて、お風呂に入って、そこからまた勉強タイム。



遅くまで机に向かってると、両親が帰宅する物音が聞こえてきた。

腰が痛いと嘆く父に、早く横になってと母が言っている。



時計を見ると、もう午前様だ。

思わず大きなアクビが出た。



それでもまだ寝ずに、雪は勉強に集中した。

期末は絶対に落とせない。



カリカリとノートを文字で埋めていく音だけが、部屋に響いている‥。







朝。

鳥の鳴き声が青空に響き渡る中、雪は地下鉄の階段をダッシュで登っていた。



時刻は丁度通勤通学のラッシュ。

雪は大勢の人に揉まれながら地下鉄で移動する。

 

ぎゅむっと潰されながら延々二時間弱。

ヨレヨレになったところで、今日も大学に到着だ。



構内を歩いていると、ポケットの中の携帯電話がメールの到着を知らせる。

週末にイルミネーション見に行く?

雪ちゃんが前、見たいって言ってたやつ




先輩からのメール。

雪は目にクマを浮かべながら、あ‥私それ見たかったんだよね‥と弱々しく呟いた。



すると後方から、不意に声を掛ける人物が一人。

「おーい!赤山ぁ~」



振り返ってみると、そこにはあまり話したことのない同期が、

手を振りながら笑顔を浮かべている。



同期はニコニコしながら、雪に話し掛ける。

「どうしたの?」「なぁなぁ、これ見て!俺、過去問を一つ手に入れたんだ!」



「これと赤山のヤツ、交換してみない?!そうしない?!」



ジャーン!と言いながら、同期はその過去問を雪に差し出した。

背景に黄色いお花が見える‥。



すると瞬間、雪の身体が吹っ飛んだ。

「ゆきぃぃぃ!マジで一緒に行かない気なのぉぉ~?!」



伊吹聡美は大きな声でそう言いながら、雪のことを引っ張って行く。

「そうだってば」「うふふんそれでもぉ~」



同期は呆気に取られながら、「そ‥それじゃ後でまた‥」と弱々しく声を掛けて去って行った。

聡美は雪と肩を組み、ウインクする。

救出成功 ん、サンキュ‥



過去問をめぐる攻防は、未だ雪を巻き込んで進行中だ。

雪は聡美にお礼を言いつつ、二人は肩を並べて歩き出す。

「てかマジで一緒に行かないの?面白そうなのにぃ。

太一のヤツがモデルなんて長続きしないだろうし、次はいつそんな姿拝めるか~」


「うーん残念だけど‥。アンタ私の状況分かってるでしょ‥TT」



今日は、太一のモデル撮影を見に行く日なのである。聡美は行くが、スケジュールの都合上雪は行けない。

聡美は顎に指を沿わせながら、ウンウンと頷いてこう続けた。

「そっか。それじゃ仕方ないね。残念。ま、そんじゃちょっくら行ってくるわ!」

「え?授業全部終わったの?」

「いやちょっと早く行ってみようかなと思って。とにかく‥」



「今日は授業パース!!バイバーイ!」「へっ?!」






聡美はそう言い残して、走って行ってしまった。

雪はそんな聡美の背中を見送りながら、呆然と立ち尽くしている。

「は‥はは‥なんか裏山‥



雪が必死で守ろうとしているものを、いとも簡単に手放す人が居る。

雪は楽しそうに駆けて行く聡美の残像を追いながら、肩を竦めた。



今日は一人か‥と呟きながら、荷物を背負い直す。

重たい鞄には今日も、沢山のテキストが入っている。



聡美の姿が完全に見えなくなってから、雪はゆっくりと歩き出した。

もうじき授業が始まる。



高くなった秋の空を見上げながら、雪は思った。

皆が同じ状況なわけじゃない。と。



肩が触れるほど近くに居ても、メールで簡単につながっていても、自分と他人は別の人生を歩いている‥。

そんなことを思いながら、雪は今日も真面目に教室へと向かって歩いて行った。



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<それぞれの状況>でした。

雪ちゃん、本当にずっと勉強してるんですね‥。韓国の大学生はみんなこうなのか‥?

報われて欲しいですね‥。


次回は<それぞれの意見>です。


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意外な組み合わせ(2)

2015-10-23 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
河村静香は、怪訝そうに眉を顰める。

「横山翔‥?何よソレ‥」



先程柳瀬健太が口にした”横山翔”が、一体誰なのかピンと来ないのだ。

「誰‥」



しかしそこまで口にした所で、ようやく思い出した。

静香はそれ以上変なことを口走らないよう、コホンコホンと咳払いをする。

「横山翔、知らねーの?」



健太はそんな彼女の小さな変化を見逃さず、すかさずそう突っ込んだ。

「おたく、大学でアイツのこと殴ったって‥。

マジで横山知らねーの?」




静香はそんな健太のことを、観察するようにじっと凝視していた。

相手が抱く意図や欲を、彼女の嗅覚で鋭く嗅ぎ取る‥。



静香はとりあえず自分の立ち位置は明かさず、健太に話の先を促すことにした。

「それで何なの?どーしろっての?ソイツが何だってのよ?」

「いや~ちょっと変だなと思ってさぁ‥」



「おたく、どう見ても横山と付き合うようなガラじゃないでしょ?

俺のこと無視すんのとかもフツーじゃねぇし




なかなかに鋭い。

静香は更に先を促した。

「それで?」



すると健太は静香を見据えながら、試すような光を瞳に宿らせる。

「つーか、面白い話を耳にしたもんでね」



「こんなことがあったって聞いたんだけど‥」



健太はそう前置きすると、”青田淳と河村静香が腕を組んでいる写真”を持って皆に弁解したという、

横山翔の話を口にした。

静香は更に先を促す。

「それが何なの?」

「いやだからさぁ、」



健太は静香の顔を覗き込みながら、その答えを探すようにじっと彼女の瞳を凝視し、話を続けた。

「横山はおたくは青田の彼女だって言って、おたくは横山の彼女だって言う。

どう考えてもすげーおかしいでしょ?」




そして健太は一度も目を逸らさずに、こう彼女に質問したのだった。

「一体何が真実なの?」



静香は健太とは視線を合わせなかった。

更に言葉を続ける健太に、素知らぬ顔で返答する。

「本当は両方共‥」「さぁね~。気になるなら淳に聞いてみなよ」



「へっ?」



彼女はさらりと口にした。

青田淳の名前を。

目を丸くする健太の前で、静香はニコッと微笑んだ。






そしてくるっと後ろを向くと、それきり振り向きもせず行ってしまった。

楽しそうに鼻歌をハミングしながら。



健太は呆気に取られながら、彼女の後ろ姿を見て一人呟く。

「ありゃあどういう意味だ?」



柳瀬健太と河村静香。

野生の嗅覚を持つ二人の存在が、ストーリーを掻き乱していく‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<意外な組み合わせ(2)>でした。

短い記事で失礼しました。

二人ともなんらかの嗅覚が働く人種ですよね~。

ただこういった駆け引きには静香の方が断然強いでしょう。

横山に続き、健太にも平手打ちを食らわせてやってくれ‥静香さん‥!


次回は<それぞれの状況>です。


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