今まで生きてきて、ただの一度も自分の行動に後悔なんてしたことは無かった。
けれど今回は。
今回だけは‥。
どうしてやろうか‥
彼女と自身の間には、一向に縮まない距離がある。
それは遠い遠い距離でありながら、会話一つ入り込む隙間も無い。
どうすればその距離は縮むのか? どうすれば逃げる彼女を捕まえられるのか?
光が消えた淳の瞳が、舐めるように彼女を観察した。
目の前に横たわる彼女は、疲れ果てた顔ですぅすぅと寝息を立てている。
今まで見て来た彼女の性分と、彼女が抱える様々な問題。
それらを総合して考えると、彼女は身の丈以上の重荷を抱えて生きていることが分かった。
ではどうするか。淳は考え続ける。
目の前にある、細い首筋。
絞めればすぐに息が止まってしまいそうなほどに。
次の瞬間、心の声が全身に響いた。
ゆっくりと‥
逃げられないように‥
それは徐々に淳に確信を与え、口から言葉が零れ出る。
「赤山雪‥倒れて‥軟弱で‥」
一つ一つのファクターが、だんだんと線で繋がれて行く。
まるで蜘蛛が音も無く糸を張り、ゆっくりと獲物を囲い込んで行くように‥。
今まで目にして来た「赤山雪」という人間の核(コア)が、淳の脳裏に次々と浮かび始めた。
父親に認めてもらいたいと言って、歯を食い縛ってその感情に耐える彼女。
ごめんなさい、わざとじゃないと口にして、何かに縛られ苦しむ彼女。
時の狭間に沈み込み、一人ぺしゃんこになっている小さな彼女。
もうとっくに目にしていたじゃないか。
彼女が一番欲しいもの。
彼女が一番、縋ってくるであろうものを‥。
衝撃が走った。
今まで見聞きしてきた全てが繋がる。
必要なのはこの一言だ。
困っている彼女を見つけたら、ただこう一言発すればーーー‥。
「雪ちゃん」
淳の声が、しんとした室内に響いた。
今はまだ、彼女の耳には届かないが。
彼女を見下ろす淳の表情は、今までとはがらりと違う顔をしていた。
優等生で人気者の”青田先輩”が、まるで初めて彼女に出会ったかのような。
”青田先輩”は、眠る彼女に呼びかけ続ける。
「雪ちゃん」
爽やかで、人懐こそうな笑顔を浮かべながら。
彼女は深い眠りに就いている。まだ起きる気配はない。
淳は彼女を見下ろしながら、まるで”青田先輩”を練習するかのようにこう口にした。
「一緒に課題やろう?一緒にご飯行こう?」
目を覚ました彼女にこう声を掛けたら、どんな反応をするだろう。
きっと顔を引き攣らせながら、それでも断りきれず、おそらく渋々でも受け入れる‥。
淳は”青田先輩”の笑顔を暫く浮かべていたが、
不意に滑稽な気分になってスッと表情を戻した。
俺は一体何をやっているんだろうと、少しバカみたいな気分になりながら。
「う‥ん」
すると雪が、小さく声を漏らしながら体勢を変え始めた。
淳の声が届いていたのか、寝ぼけながら返事をする。
「は‥い‥」
「う‥うう‥」
無意識にもかかわらず淳の呼びかけに返答する彼女を見て、淳は思わず軽く息を吐き捨てた。
なんだかままごとでもやっているかのような気分だ。
彼女はイモムシのように布団にくるまり、ううんと小さく唸っている。
その姿はどこか滑稽で、可笑しかった。
これも赤山雪という人間の一つの性質だ。
見ているこっちが、思わず拍子抜けしてしまうような一面‥。
彼女が見せる全ての面を、これから受け入れて行くのだ。”青田先輩”として。
彼女が助けを必要としている時に手を差し伸べ、その努力を認め、慰めてやる。
いつか彼女が”青田先輩”から、離れられなくなるその時まで。
ネズミはチーズを差し出されたら抗えない。
そして気がついたら、罠に掛かっているだろう。
もう、二度と逃げられない。
彼はそのまま暫くの間、じっとその場に佇み続けていた。
胸の中にある不確かな何かは、行くべき道筋を見つけて弾んでいる。
そう、必要なのはこの一言だけだ。
「雪ちゃん」
”青田先輩”は最後にもう一度、彼女の名前を呼んで微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>チーズインザトラップ でした。
淳が雪に近づき始めた理由が、ようやく明らかになりました。
まるでこの漫画のタイトルを表しているかのような回‥!鳥肌ですよね。
というか本当淳がエキセントリックすぎて‥
”青田先輩”の練習をする淳‥。
「一緒に課題しよう?一緒にご飯行こう?」
↓練習の成果(笑)
本当に意図から始まったんですね。
まるで罠にネズミを掛ける為に道筋にチーズを置いていくような過程です。
あの人間性までもガラリと変わったかのような淳の態度は、彼が変わったのではなく、
変わらない彼が雪へのアプローチ方法を変えただけ、だったのですよね。
これを踏まえて淳目線で1話から読み返すと、また違った発見があります。
そして今は、自分が組み敷いたその意図が逆に足枷になって、
本心を曝け出せないというジレンマ。
しまいには更に意図を重ねて、
自分から離れられなくする方向へと行ってしまっているという‥。
「ほら、やっぱり俺しか居ない」
このままじゃまずいことは分かるんですが、
どうやったら淳がその考え方を止めることが出来るようになるのか。
最終回までになんとか真人間になって欲しいですが‥。
雪ちゃん次第ですね。雪ちゃん‥ファイティン!
‥ということで、とうとう本家最新話に追いついてしまいました。
また以前のように本家更新日が来たら翻訳、記事執筆と進めて出来るだけ早くアップ出来るように頑張ります
これからもよろしくお願いします!
早速ですが、明日一つ記事をアップしたいと思います。
この怒涛のアヲタ祭りを祝して‥笑
ではまた明日!
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!
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けれど今回は。
今回だけは‥。
どうしてやろうか‥
彼女と自身の間には、一向に縮まない距離がある。
それは遠い遠い距離でありながら、会話一つ入り込む隙間も無い。
どうすればその距離は縮むのか? どうすれば逃げる彼女を捕まえられるのか?
光が消えた淳の瞳が、舐めるように彼女を観察した。
目の前に横たわる彼女は、疲れ果てた顔ですぅすぅと寝息を立てている。
今まで見て来た彼女の性分と、彼女が抱える様々な問題。
それらを総合して考えると、彼女は身の丈以上の重荷を抱えて生きていることが分かった。
ではどうするか。淳は考え続ける。
目の前にある、細い首筋。
絞めればすぐに息が止まってしまいそうなほどに。
次の瞬間、心の声が全身に響いた。
ゆっくりと‥
逃げられないように‥
それは徐々に淳に確信を与え、口から言葉が零れ出る。
「赤山雪‥倒れて‥軟弱で‥」
一つ一つのファクターが、だんだんと線で繋がれて行く。
まるで蜘蛛が音も無く糸を張り、ゆっくりと獲物を囲い込んで行くように‥。
今まで目にして来た「赤山雪」という人間の核(コア)が、淳の脳裏に次々と浮かび始めた。
父親に認めてもらいたいと言って、歯を食い縛ってその感情に耐える彼女。
ごめんなさい、わざとじゃないと口にして、何かに縛られ苦しむ彼女。
時の狭間に沈み込み、一人ぺしゃんこになっている小さな彼女。
もうとっくに目にしていたじゃないか。
彼女が一番欲しいもの。
彼女が一番、縋ってくるであろうものを‥。
衝撃が走った。
今まで見聞きしてきた全てが繋がる。
必要なのはこの一言だ。
困っている彼女を見つけたら、ただこう一言発すればーーー‥。
「雪ちゃん」
淳の声が、しんとした室内に響いた。
今はまだ、彼女の耳には届かないが。
彼女を見下ろす淳の表情は、今までとはがらりと違う顔をしていた。
優等生で人気者の”青田先輩”が、まるで初めて彼女に出会ったかのような。
”青田先輩”は、眠る彼女に呼びかけ続ける。
「雪ちゃん」
爽やかで、人懐こそうな笑顔を浮かべながら。
彼女は深い眠りに就いている。まだ起きる気配はない。
淳は彼女を見下ろしながら、まるで”青田先輩”を練習するかのようにこう口にした。
「一緒に課題やろう?一緒にご飯行こう?」
目を覚ました彼女にこう声を掛けたら、どんな反応をするだろう。
きっと顔を引き攣らせながら、それでも断りきれず、おそらく渋々でも受け入れる‥。
淳は”青田先輩”の笑顔を暫く浮かべていたが、
不意に滑稽な気分になってスッと表情を戻した。
俺は一体何をやっているんだろうと、少しバカみたいな気分になりながら。
「う‥ん」
すると雪が、小さく声を漏らしながら体勢を変え始めた。
淳の声が届いていたのか、寝ぼけながら返事をする。
「は‥い‥」
「う‥うう‥」
無意識にもかかわらず淳の呼びかけに返答する彼女を見て、淳は思わず軽く息を吐き捨てた。
なんだかままごとでもやっているかのような気分だ。
彼女はイモムシのように布団にくるまり、ううんと小さく唸っている。
その姿はどこか滑稽で、可笑しかった。
これも赤山雪という人間の一つの性質だ。
見ているこっちが、思わず拍子抜けしてしまうような一面‥。
彼女が見せる全ての面を、これから受け入れて行くのだ。”青田先輩”として。
彼女が助けを必要としている時に手を差し伸べ、その努力を認め、慰めてやる。
いつか彼女が”青田先輩”から、離れられなくなるその時まで。
ネズミはチーズを差し出されたら抗えない。
そして気がついたら、罠に掛かっているだろう。
もう、二度と逃げられない。
彼はそのまま暫くの間、じっとその場に佇み続けていた。
胸の中にある不確かな何かは、行くべき道筋を見つけて弾んでいる。
そう、必要なのはこの一言だけだ。
「雪ちゃん」
”青田先輩”は最後にもう一度、彼女の名前を呼んで微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>チーズインザトラップ でした。
淳が雪に近づき始めた理由が、ようやく明らかになりました。
まるでこの漫画のタイトルを表しているかのような回‥!鳥肌ですよね。
というか本当淳がエキセントリックすぎて‥
”青田先輩”の練習をする淳‥。
「一緒に課題しよう?一緒にご飯行こう?」
↓練習の成果(笑)
本当に意図から始まったんですね。
まるで罠にネズミを掛ける為に道筋にチーズを置いていくような過程です。
あの人間性までもガラリと変わったかのような淳の態度は、彼が変わったのではなく、
変わらない彼が雪へのアプローチ方法を変えただけ、だったのですよね。
これを踏まえて淳目線で1話から読み返すと、また違った発見があります。
そして今は、自分が組み敷いたその意図が逆に足枷になって、
本心を曝け出せないというジレンマ。
しまいには更に意図を重ねて、
自分から離れられなくする方向へと行ってしまっているという‥。
「ほら、やっぱり俺しか居ない」
このままじゃまずいことは分かるんですが、
どうやったら淳がその考え方を止めることが出来るようになるのか。
最終回までになんとか真人間になって欲しいですが‥。
雪ちゃん次第ですね。雪ちゃん‥ファイティン!
‥ということで、とうとう本家最新話に追いついてしまいました。
また以前のように本家更新日が来たら翻訳、記事執筆と進めて出来るだけ早くアップ出来るように頑張ります
これからもよろしくお願いします!
早速ですが、明日一つ記事をアップしたいと思います。
この怒涛のアヲタ祭りを祝して‥笑
ではまた明日!
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コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
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