Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

刹那の大学生

2017-02-28 01:00:00 | 雪3年4部(消えた兎〜河村亮)


翌日、雪の携帯にメールが届く。

(聡美)味趣連、集合しようよ〜 (蓮)姉ちゃん、キンカンと一緒に‥

(萌菜)一度店に遊びに来てよ (カテキョ先の子)先生、私です〜。今日の勉強の時間‥



自分を取り巻く彼女達のメールを見て、雪は穏やかに微笑んだ。

擦り減った神経が少しだけ回復するような、優しい気持ちになる。



そんな中、財務学会からも一通メールが届いていた。

ゼミの時間が変更になりました



「もぉー何よいきなり〜」



ゼミは直前にキャンセルになったようだ。

雪は「チェッ」と口にして歩き出す。







冬休み中の大学。知っている人は誰も居ない。

雪は一人その中を歩いて行く。







どこを目指すわけでもなく、ただぼんやりと歩いていた。

すると。






先輩そっくりの後ろ姿に目が止まった。

勿論それは、人違いだったけれど。



「‥‥‥」



胸の中がさわさわと騒いだ。

その場に立ち止まった雪に、後ろから声が掛かる。

「ダメージ!」



聞き覚えのあるその声、そしてその呼び名。

振り返ったその先に、彼の姿があった。



「よぉ」



河村亮は被っていたキャップのつばを上に上げると、ニッと笑った。

雪は突然現れた彼に驚き、思わず目を丸くする。

「河村氏」「おいおい」



「冬休みなのにご登校ってか。大学生ってのはそんなもんなんか?」



亮はそう言いながら雪の方へ近付いた。

雪は何を言うべきか分からずに、ただそんな亮を見つめている。



亮は黙り込んだ雪を見て、ニヤリと笑った。

そして顔を上げながら、こんなお願い事を口にしたのだった。

「なぁダメージ、ちょっと学校案内してくれよ」









二人が並んでキャンパス内を歩き出した時、頭を掻きながら亮が言った。

「さっき教授に挨拶して来たんだ」



最近手の調子が鈍ることが多くて、結局コンクールにも出れずじまいでな



志村教授に向って亮は、何度も頭を下げた。ごめんなさいと謝りながら。

けれど今まであれほど亮の頭を叩き怒鳴っていた教授も、今回は何も言わなかった。

ただ淋しげに眉を下げ、そっと亮に自分の名刺を渡しただけだ。いつでも連絡して来てくれと言い残しながら。



そのことに亮は言及しないまま、雪には前向きな言葉を伝える。

まぁ、大したことじゃねぇよ



コンクールは沢山あるしな



亮が音大を出て行くまで、志村教授はずっと亮を見送ってその場に立っていた。

けれど亮は振り返らずに、ただ前を向いて進んで行く。

そんでふと周りの建物見回してみて、思ったんだ



あぁ、ダメージの大学ってこんなにでかかったっけって



これが大学なんだなって







亮が紡ぐその言葉を、雪は彼の隣でただ黙って聞いている。

考えてみたら、音大と図書館以外行ったことねぇなと思って









まともに見てみたくなったんだよ






大学ってやつを









一度、大学生のフリして遊んでみたかったんだ。



亮は刹那の大学生として、雪と共に構内を歩いた。

学歴も過去も今までのわだかまりも全てを忘れて、ただ二人で笑い合いながらー‥。








空に夕焼けが広がる頃、二人は大学内のホールに居た。

ステージに置かれたグランドピアノの前で、亮は立ち止まる。



「‥‥‥」



その鍵盤に指を伸ばすのを、雪は黙って遠くから見つめていた。






亮は伸ばしたその手を、

鍵盤ではなく被っていたキャップのつばに伸ばし、上を向く。



そのステージの上から見る景色を、亮は暫く眺めていた。

胸の中に懐かしさが染み入ると、肌に照明の熱さが蘇り、鼓膜の奥で豪雨のような拍手が残響する‥。








聴こえていたはずの拍手は、やがて消えた。

魔法はいつしか解けて、再び現実が目の前に広がっている。

そのまま亮は雪と共に、大学を去った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<刹那の大学生>でした。

亮さん、髪切りましたね!初期のM字を思い出させる髪型に‥。

ていうかコンクール出ないというのがすごくショックでした。。亮さんにステージに立ってほしかったよ‥

次回は<音に乗せて>です。

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彼女の中の静寂

2017-02-26 01:00:00 | 雪3年4部(消えた兎〜河村亮)


財務学会の講義を聴きながら、次第に雪の視線は窓の外に注がれて行った。

どこかぼんやりとした意識の中で、昨日の出来事について雪はこう思う。

正直な所、何とも思わない。



昔はあんなに敏感だったくせに、今はもう本当に何とも思わなくて



窓の外の景色も、昨日の先輩の後ろ姿も、全ては心の表面を滑って行くだけだ。

先輩に対して腹が立つとかそんな感情も湧かなかった。

今も変わらず先輩のことは好きだと思う。




けど、何か反応を見せようという気になれない。

ただ‥




知らなかった自身の一面を知った。



雪の脳裏に、様々な場面が再び蘇って来た。

先輩の手に縋り付く自分と、昔祖母の手を振り払ってしまった自分が。

どうしてああいう行動をしたのかということも。



そして、先輩はそのことを知っていた。



思い出したことがあった。

離れたその手を繋ぎ止めたその時、

彼は手に目を落としながら、どこか寂しそうな顔をしていた。



そんな表情も一瞬で、

笑顔で隠されてしまったけれど。







握り締めた手。

彼は何を思い、その手を握っていたんだろう。



雪は地下鉄の揺れに身を任せながら、擦り減った神経と疲れた身体を持て余している。

混乱してる。

周りの人達の為じゃなく、自分自身を探す為の休息が必要だと感じた








携帯を取り出して、履歴ページを開いてみる。

そこには「先輩 不在着信32」「河村静香 不在着信50」という表示があった。



しかしどうしても掛け直す気にはなれない。

今日は連絡とか何もしないで休みたい



掛け直すには意志が必要で、向き合うには勇気が必要だった。

瞼の裏に彼らが浮かぶ。

三人が消えた私の世界は












静かだ




瞼を閉じると彼らは居なくなった。

雪の中にはただ静寂だけが残り、それは彼女に安らぎを与えていた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼女の中の静寂>でした。

短めの記事で失礼しました!

さて今回の雪のモノローグ‥。最後の「静かだ」は否応なしにこの場面を思い出しますね。


<彼の中の静寂>より

淳化は止まらないのか‥。

そして手を離すことが出来ないという自分を客観視出来た時、雪にどんな変化が訪れるのかが楽しみです。

次回は<刹那の大学生>です。

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冬休みの始まり

2017-02-24 01:00:00 | 雪3年4部(消えた兎〜河村亮)


冬休みが始まった。

街はいつも通りの朝を迎えている。



蓮は恵と会い、



雪は請け負うことになった家庭教師のバイトに励んでいた。

「それでこの公式をね‥」



バイトの後は、聡美と太一に会う。

「こっちこっち〜」



冬休みに入っても別段変わらない雪や周囲の人達であったが、

一つ気になる出来事があった。

ここは麺屋赤山。



”休業”と書かれた張り紙の下には、

ガラスにヒビが入った箇所が‥。








一方ここは赤山家。

リビングにて雪の父と母がテレビを見ている。

「まったく、一体誰がガラスを割ったんだか!

腰痛で休業にしたが、金が出てくばっかりじゃないか」




父は不満気に愚痴を零しながら、ソファに座る妻に娘の所在を尋ねた。

「雪は?」「大学よ」

「冬休みなのにか?」「就活生だもの、当然でしょ」



母はのんびりそう答えたが、父はどこか落ち着かない気分だった。

漠然とした不安が、胸の中に広がっている‥。







その頃雪は、母の言葉通り大学に居た。



普段より静かで殺風景なキャンパス。



雪は予定された教室へと向かう。







大学院の中にある一室にて、雪はノートを広げ板書を取っていた。



今日は財務学会のゼミがある日なのだ。

隣には佐藤広隆が座っている。



今は学生のプレゼンテーションの時間だが、

雪はどこかぼんやりとした面持ちだった。



どこか疲れて見えるその横顔。

心ここにあらずの雪の表情を、佐藤は時たま見つめていた。







「ほら」



休み時間、佐藤が雪に向かって缶コーヒーを差し出した。

「あ‥」「何かあったのか?気分が優れないみたいだから」



佐藤は心配そうに雪にそう声を掛け、

雪は缶コーヒーを受け取りながら、笑顔を浮かべて礼を言う。

「ありがとうございます。大したことじゃないんです」



「悩み事があるならいつでも言って」「はい」

「雪ちゃん!」



すると同期の吉田海が雪に声を掛けた。

「おはよ」「おはよ」



周りを見回しながら、雪に話を振る。

「今日はデートなの?」「え?」



「さっき廊下で青田先輩見掛けたから。でも挨拶したのにそのまま行っちゃったのよ。

見間違いだったのかな?」




先輩が大学に来ている‥。

雪はバッと窓の下を見た。






けれどそこに先輩の姿は無い。

「来てるなら連絡が来るだろ。それより柳の奴、早く来いよな。このままじゃ遅刻だぞ‥」



結局淳が現れることはないまま、ゼミの開始時間になった。

学生達はそれぞれ教室に戻って席に着く。





財務ゼミが始まると同時に、時間ギリギリに到着した柳が、「ソーリー」と言っておどけた。

呆れたように舌打ちする佐藤。






ゼミは予定通り進行した。

雪は手元の資料に目を落しながら講義を聴いている。






冬休みが始まったものの、雪の前には未だ多くの課題があった。

雪はどこかぼんやりしながら、目の前のプリントにじっと目を通していた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<冬休みの始まり>でした。

佐藤先輩の優しさよ‥!

気配りも出来て勉強も出来て謙虚で面倒見が良くて‥。

これはチートラ1良い男のランクが入れ替わる日も遠くないですね!(ちなみに暫定1位は太一です)←私調べ


次回は<彼女の中の静寂>です。ちょっと短めです〜

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消えた兎

2017-02-22 01:00:00 | 雪3年4部(消えた兎〜河村亮)


淳は駆けた。



路地の狭間を滑るように。



ここは入り組んでいて道が分かりにくい。

曲がっても進んでもまるで同じ道を繰り返しているようだった。



淳は彼女の名を呼んだ。

「雪ちゃん!」



何度も、何度も。

「雪!」



まるで姿は見えない。

淳は見覚えのある通りを見つけては歩を進め続けた。



走っても走っても、見つけられない。

暗く狭い路地の隙間を、ただ闇雲に進み続けるだけ。



「雪ちゃん!」



彼女の名が響いて消える。

淳の心の中で育つ不安の蔦が、以前は見えていたはずの道標を覆ってしまった。



ふと視線を流した時だった。

彼女の後ろ姿が見える。



「!」



しかし淳が目を凝らすと、それはすぐに消えて行った。



「‥‥‥‥」



ほんの数ヶ月前のことが蘇る。

同じ様にこの路地の狭間で、彼女を捕まえた時のことを。

すぐに見つけられたのに。何をするか全て分かっていたのに‥



まるで不思議な国のアリスに出てくる白い兎を追っているかのように、

いつしか淳は迷い込んでしまっていた。

その場に佇む淳の元に、一件のメールが届く。



今日は先に寝ますね。また連絡します







時の狭間で、いつしか兎は消えた。

その幻影を追いながら淳は、その暗闇の中で一人立ち尽くしていた‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<消えた兎>でした。

結局会えなかったんですね〜。うーん切ない。。

手を握ることで繋ぎ止めていた雪が、離れて行ってしまう‥。うーん切ない!!

そして雪ちゃん足早いな‥!


次回は<冬休みの始まり>です。

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因果

2017-02-20 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)


雪が駆けて行ってからも暫く、淳はその場で立ち尽くしていた。

しんと静まり返った路地。

先に言葉を発したのは亮だった。

「くっ‥」



「ぶはっ!」



「ぶははははっ!」



一部始終を見ていた亮は、笑いを耐え切れずに一人腹を抱えた。

淳は振り返り、笑う亮を見て目を丸くする。

「ははっ!ははははっ!くはははは!」






ゆっくりと顔を上げた亮は、その指の隙間からチラリと淳の方を見た。

嘲るようなその目を見た瞬間、淳の胸に炎が燃える。

「この‥っ!」



淳は思い切り亮の胸ぐらを掴み、瞳孔の絞られた瞳で彼を睨んだ。

しかし亮は口元を緩ませながら、やり返しもせず淳のことを見ている。



亮は激昂する淳を、挑発するかのように口を開いた。

「どうした、殴んのか?顔怖ぇぞ」



「お前、わざと‥!」



「はぁ?」



ニヤニヤと笑いながらはぐらかす亮に、淳は胸ぐらを掴む手により一層力を込めた。

「お前‥!」「んだよ。オレは何も言ってねーぞ」



被っていた亮のキャップが地面に落ちる。

けれど亮は気にも留めず、正論で淳に切り返した。

「てめーがどんな話すんのかなんて、オレが知るわけねーだろ」



「んだよ」



「自分の感情に押し流されて口滑らしたんはテメーだろ?」



それは今までの亮とは違う切り返し方だった。

まるであべこべになったかのような立場、形勢。

淳は言葉を見失う。



亮はゆっくりと淳の手に自身の手を伸ばした。

「つーか、」



「こんなことしてる場合か?」



強い力で胸ぐらを掴むその手を、より強く掴んで引き離しこう言った。

「さっきのダメージの態度、全部諸々、」



「テメーが撒いた種だろうが」







亮に向かっていつかそう言った淳は、全ての因果が自分に返ってくるのを感じていた。

言い返す言葉を紡ぐことも出来ずに、ただ俯いて立ち尽くす。







亮はニヤリと口元を緩めると、皮肉るように尚も言葉を続けた。

「あーウケるぜその顔。生きてる内にそんな顔拝めるなんてな」



ゆっくりと淳に近付き、肩に手を置く。

それはいつもの淳の常套手段だった。

「せいぜいダメージと腹割って話し合って、まぁ仲良くやるこったな」



「これは本心だぜ」



淳の表情が険しく歪む。

淳は肩に置かれた亮の手をバッと振り払った。







亮に背を向け、淳は雪が走り去った方向へと駆けて行った。

長いコートが翻る。



亮はその場に佇みながら、遠ざかって行くその背中に声を掛けた。

「テメーあん時笑っただろ!」



「笑ったよな!オレの手滅茶苦茶にした時よぉ!」



淳は振り返らなかった。

亮の声は暗い夜空に吸い込まれて行く。






亮は上を向きながら、乾いた笑いを一人立てた。

辺りには誰も居ない。

「はは‥」



今淳が一番大切にしているものを壊せば、この胸の淀みも晴れるはずだった。

淳のやり方、その常套手段を模倣して見事制裁を加えた喜びに、胸が打ち震えるはずだった。

けれど今亮の目に映るものは‥。







星も月も無い夜空。

それは輝かしい未来が消えたあの日に見たあの空と、何ら変わりはしなかった。

世の中全て思い通りにしていると思っていたあの男が見ていた風景は、

暗く深い闇だったー…。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<因果>でした。

まさかの亮さんまで黒淳化‥!

結局雪を呼んだのも亮さんだったのですね。


そして最後の亮さんが見上げる空のカット。

高校時代に手を潰された日に見上げた空のカットとかぶります。

 

人を陥れても何も得ることが出来ない虚しさを、描いているような気がします。


次回は少し短めです。<消えた兎>です。


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