Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

特別編・赤ずきんちゃん

2016-08-13 01:00:00 | 特別編
皆さまこんにちは

4部43話と44話の間にある特別編を、CitTさんが訳して下さったので少しアレンジして載っけます

Enjoy




<昔々あるところに、モジャモジャ髪を押し込んだ赤ずきんちゃんがおりました。>



「雪‥いや赤ずきん、お前の弟が勉強のしすぎで栄養不足らしいの。

このおかずを持って行ってくれないかい?もうカップ麺は止めなさいと伝えておくれ


「はい。ったく好き嫌いが激しいんだから‥行って来ます」



「寄り道しないで、知らない人に声を掛けられても答えてはダメだよ。

森には呪いに掛けられた恐ろしいオオカミがいるからね」




「呪い?」




<チーズ名作劇場>赤ずきんちゃん




1.不審者①



<真面目な赤ずきんは、試験勉強をしながらお使いに行きました。>

「あぁ期末試験は一体いつ終わるのかしら‥」



<そんな赤ずきんの前にいきなり‥>

ガチャッ



「うおっ!すまん!人間だったか!

オレは狩人なんだが、お前のその毛並み、もしやオオカミじゃないかと‥いやダメージヘアーか。マジすまん




バコン!



「ったく何だっつーの!誰がダメージヘアーよ!ったくもう‥」

「だから悪かったって‥」



<‥その赤ずきんの後ろから突然‥>

シュッ



「ん?」




2.不審者②



<不審者が現れた!>

「雪‥いや赤ずきんちゃん、こんにちは」「だ、誰っ?」



「どこ行くの?」「弟の所へおかずを届けに」

「弟君はどこに住んでいるの?」「この道の先に‥」



「へぇ、そうなんだぁ」爽やか〜



「わぁっ!」眩しくて目が潰れる!



「受験生といえばコンビニおにぎりだよね。あれ買って行ってあげれば喜ぶんじゃないかな?

急がずゆっくり、遠回りしなね それじゃ」


「はい!さようなら先輩!」



「‥先輩?」




3.+)



私どうしてこれ買ったんだっけ??




4.怪しい弟①



<何か少しおかしな気がしたけれど、赤ずきんは弟の所へ辿り着きました。>

「これ買うのに遠回りしちゃった」



「弟や‥」



「いらっしゃい、お姉ちゃん」







5.怪しい弟②



「‥‥‥‥」



「蓮‥いや弟よ‥。お前のお耳はどうしてそんなに大きいの?」

「お姉ちゃんの声がよく聞こえるようにだよ」



「あら?それじゃどうしてお目目はそんなに笑っているのかしら」

「お姉ちゃんに会えて嬉しいからだよ」



ムズムズ 「ほぇ?」



「あら、でも‥」






「その髪‥」



「どうしたのその髪‥うちの家系にはいない髪質だけど‥」

「あぁ、それは‥チッ「チッ?」




6.オオカミ



「ちょっとその帽子取ってみて」「うん、お姉ちゃん」

「なんだか良心がそれをやっちゃいけないって言ってる気がするけど‥」



ドン!



「‥どうしてお前のお口はそんなに大きいの?どうして体が毛むくじゃらなの?つーかそのファスナー何?

「え?それはね、勿論‥」



「君を捕って食うためさ」




7.猟師



「きゃあああああ!」



「そこか!オオカミめ!お前を捕まえて‥!」



「やる‥」



「‥‥‥‥」

「うわああ!助けてぇーー!」



ドスドスドス‥


8.逃走



「何これ?!せめて二人三脚にしてぇーー!」

「まぁ、捕って食われたわけだから」「てかどうして逃げるんですか?」

「だって〜」



「アイツが鉄砲撃ってくるからさ」「きゃあああーっ!」

「待て!おいダメージ!撃たねえってば!」



「待てぇー」 ドスドスドス‥




9.その夜



パチパチ‥



「なんか胃もたれしてる‥」「はい、私を捕って食べたわけですしね」

「喉乾いたし‥」



「はぁ‥」



「いつも頭が痛いんだ」「もしもーし?人の話聞いてます?」

「自分が自分じゃないみたいで、いつも偽りの服を着ている気分だった」

「これ、脱がせてくれません?」



「無駄だよ」「ゼェ‥ゼェ」




10.フォーリンラブ



「あぁフラフラする‥もう限界だ」「えっ!大丈夫ですか?!」



「先輩‥いえオオカミさん」



「私、井戸のある場所を知ってます。一緒に行きましょう」



ドキン‥



「雪‥いや赤ずきんちゃん‥

「だから試験勉強させて下さいよ!」




11.理由



「でも、どうしてわざわざ私を連れて逃げたんですか?」

「‥ただ、」



「君と一緒に居れば全てが上手く行くような気がしたんだ」





12.井戸



「あっ井戸だ!」



「やったぁ!」



「‥‥‥」



「毛‥皮‥」



「新作‥キルサーチ2016f/W コレクション‥」

「何?!」



「毛皮ぁぁー!」

「えっ?!こんな素材のままでいいの?!」




13.美女と野獣じゃありません



「うう‥」



「ね‥姉ちゃん‥」

「あ、そっか。アンタのが先に食べられてたんだ」



「俺‥ずっと踏まれ続けて‥」



シャラララ‥



「呪いが解けた」




14.この漫画は赤ずきんです



「そう‥そうだ。俺は‥」



「インターン生で‥しかも父親が会長で‥。そうだ、ある意味俺はアンダーカバーボス‥」

「姉ちゃんあの人と結婚すんの?ちょっと変なんだけど‥」「これ破れちゃったわ」



「雪ちゃん」



「全部君のおかげだ」「先輩‥!」「一緒に課題やろう?」

「クソッ払い戻してもらうか」




15.皆さんの予想通り



「ふっ‥一件落着ってわけか」「狩人氏!」



「ほらよ、落としもん。これ渡すために追っかけてたんだよ。

撃とうとしてたワケじゃねぇ」
「あっ!私のおかず!」



「ありがとうございます、狩人氏」



「んじゃ、達者でな」



「あばよ」「バイバイ」

チリチリチリチリ‥




<チーズ名作劇場>>美女と野獣 赤ずきんちゃん

〜完〜



ジャキン!



「おお〜」



〜本当に完〜




+おまけ ボツになった名作達 


<狐と鶴のご馳走(短すぎてボツ)>





<オズの魔法使い(キャラが多すぎてボツ)>

「奨学金下さい!」「お昼一緒にどう?」「奨学金下さいぃぃ!!」




<星の王子さま(特に理由もなくボツ)>

「おじさん、爆弾を描いてください」




<運の良い日(途中でどう展開すればいいか分からなくなってボツ)>

「あなた、コンビニのおにぎりが食べたい‥」「こらっ」

「買って来たのにぃぃどうして食べられないんだぁぁ」




<哭声(※:韓国のホラー映画)(‥色々な理由でボツ) >






おしまい!

皆さまもお達者で〜〜〜

凋落

2016-08-11 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)
ダンッ!



もう何杯目になるかも分からない程、静香は杯を重ねていた。

「ちょ‥ちょ‥」



「うう‥」



静香は低い声で唸りながらも、それでもグラスを離そうとしない。

寧ろ更に焼酎の瓶に手を伸ばし、佐藤はオロオロしながらも必死でそれを制止した。

「おっとっとっと!」



この人も、弟が真実を知ってしまうとは、

予測していなかっただろう。




今まで目にしたことも無いくらい、この日の静香は荒れていた。

佐藤は戸惑いながらも、彼女に優しく言葉を掛ける。

「もっとペース落として‥。な、何かあったの?」

「酒もっと‥持って来てよぉ‥」



悪女め‥



しかしまるで思い通りにならない彼女に、佐藤は次第に苛立って来た。

もう終わりだって言ってたのに、今度は人をカモ扱いかよ‥



ふと、以前言われた彼女の弟の言葉が蘇る。

「なぁ、うちの姉貴ナメてんの?」



「大概惚れた方の負けだろ?

アンタが突然誠意だの真心だの言った所で伝わんねーよ。

んなことより、まず姉貴の好きなモン与えて気を引くこと!」




弟が言うくらいだから、きっとそれが正解なんだろう。

けれど佐藤の目に映る彼女は、どこかそのイメージとは逆の印象を投げ掛けてくる。

「‥‥‥‥」



酔いが回った静香の横顔は、いつもの美しく毅然としたそれとはまるで別人だった。

目の周りは充血し、髪はボサボサで、お世辞にも綺麗とは言えない。



けれどその横顔は、尚の事佐藤の気を惹きつけた。

特にその色素の薄い瞳の奥にある、焼けつくようなその光は‥。



静香の脳裏に、昨夜亮から言われた言葉が蘇る。

「淳には、お前がやったってことは伏せておいた。

そのままオレのせいだってことにしとけ」




亮は昼間、淳と会った時のことを静香に話した。

そしてその上で、改めて姉に宣言する。

「もう‥オレはここを出て行く」



ピクリ、と静香の身体が小さく反応した。

亮は姉に背中を向けたまま、俯いた姿勢で話し続ける。

「お前を連れて行くか悩んで、何度か聞こうとしたけどよ、どうせ返事は分かり切ってるよな。

ここの家賃、半年くらいはオレが出しとくけどよ、それ以降はちゃんと自活して、人間らしく暮らして行けよな」




「それがオレがお前にしてやれる、最後の仕事だよ」



低い声で、そう言葉を続ける亮。

静香は口元を歪ませながら、掠れた声でこう返した。

「‥三人でずっと一緒に暮らそうって言ったじゃない」



「アンタだってそうしたかったはずよ。

けどそれを潰したのは、他でもないアンタだからね」




「‥‥‥‥」



かつて夢を見た、三人でずっと一緒に居る未来。

もうそれは、修復の仕様が無いくらい壊れてしまった。

「‥分かってたわよ」



「アンタはまたあたしを捨てて、ここからいなくなるだろうってね!」



静香はそうヒステリックに叫び、肩で息をし亮を睨む。



自分がそう行動せざるを得なかった元凶は亮にあると、改めて静香は彼にそう突き付けた。

「アンタは所詮そういう男よ!

ピアノがあるから一人でも生きて行けるもんね?!

あたしがどう思ってるかなんて一度も考えたことないもんね?!

‥だから!」




「会長にどうにかして気に入られようとしてあたしは‥!

あたしはアンタより百倍も千倍も死に物狂いで生きなきゃならなかった!!」




静香は血を吐くような叫びを上げた。

そうしなければ生きて行くことが出来なかったと、

全ては三人が一緒に居るための未来を作るためだったのだと‥。

「分かった。これからは死に物狂いでまともに生きて行ってくれ」



けれどその叫びも、既に亮には届かない。

亮は姉のほうを一瞥たりともしないまま、そのまま自室へと歩いて行った。








暗い暗い闇の中に、一人ポツンと残される恐怖。

もう味わうこともないだろうと思っていたその感情が、今の静香を凋落させる。

「全部‥終わっちゃった‥」



「え?」



そう聞き返した佐藤に向かって、静香は呂律の回らない喋り方で話を続ける。

「もうこれ以上落ちることは無いと思ってたけど‥

完全に終わっちゃったのよぉ」




「どういうこと?」



佐藤がそう質問を投げ掛けても、静香は乾いた笑いを立てるだけだった。

拳を握り、頭をフラフラと揺らしながら、独り言のように愚痴を零す。

「なによ‥大人でも大学生でもなく高校生よ?

父親に色々喋って何が悪いワケ?ぶっちゃけフラれた腹いせだけどぉ‥スッキリしたっつの‥」




「あーあ‥今はもうそれも‥亀裂入っちゃって‥出来ないけどぉ‥」



佐藤は黙って静香の話を聞いていた。

静香は何も言わない佐藤の隣で、クックックと笑いを立てながら言葉を続ける。

「分かるぅ?」



「チクったら、あの父親アイツに対する態度が目に見えて変わるのよ。

それがもう面白いったら‥」




愉快そうに笑いながら、静香はそのままテーブルに突っ伏した。

それと同時に、小西恵がこの場に到着する。

「静香さん、飲み過ぎですよ〜」「あ、来てくれたの。とりあえず座って」



そしてこの場に現れたのは、恵だけではなかった。

気になるのは



「何か嫌なことでもあったのかな‥はぁ‥勉強で忙しいだろうに呼び出してすまなかった」

「いいえぇ」



酩酊する静香を見下ろすその人物は、この先の展開を俯瞰しながらこう思う。

果たしてこの人がその後の私の反応を、どのように予想するかだ。



静香にとって雪は、予想通りの人物なのか、それともそうでないのか。

頭の中で様々な算段を立てながら、雪はじっと静香を見下ろしている‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<凋落>でした。

一度も顔を見せない亮さんが切ない‥。

静香も今度ばかりは亮が本気で去って行くことを感じてるんでしょうね。

凋落した静香が何だか哀れでした。

そして雪の登場で波乱の予感‥!というところですが産休です申し訳ない!


事後報告になりますが、8月9日の15時、無事女の子を出産いたしました。^^
母子共に健康です。
三人目で予定日より早い出産になると思いきや予定日を一日超過しての出産でした。
皆様から沢山心配コメントいただいて申し訳ないです^^;


また余裕が出来たら不定期で更新して行きたいと思ってますので、またお暇な時に覗きに来て下さいね^^

それでは皆さま、暑いので体調崩されませんように!

暫しの間、失礼します〜〜


あ、あとおまけとして明後日、「特別編赤ずきんちゃん」アップします。
改めて翻訳してくれたCitTさんに感謝です

☆ご注意☆ 
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
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逆転(2)

2016-08-09 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)
二人は場所を変えて話し始めた。

過去問盗難事件の真犯人について、雪は持論を展開する。

「‥だからそういうわけで、どう考えても犯人は健太先輩なんですが、

残念ながら証拠が無くて‥」




「事を荒立ててしまってすいませんでした、直美さん」



そう謝罪を口にした雪に対して、それまで黙って話を聞いていた直美は食って掛かった。

「だからってずっと黙ってるつもり?!アンタにも責任が‥」

「はい」



雪は直美の怒りを受け止めながら、事の成り行きを正直に口にする。

「実はどうにか解決しようと健太先輩を問い詰めてみたんですが、

先輩が逆ギレしてもっと大事になってしまったんです。私を押し退けて‥青田先輩まで怪我をして」


「はぁ?!マジで?!青田先輩を?!」



雪が口にした真実に、直美の怒りはどんどん膨れ上がって行った。

「マジでおかしいんじゃないのあの男!

卒業するからって何してもいいっていうの?!それであたしを陥れて‥」







あまりの屈辱に、直美は口元をワナワナと歪ませた。

考えれば考える程、柳瀬健太という人間が憎くて堪らない。

「ああっ!もうむかつきすぎておかしくなりそう!!」



「あたし‥今まで生きてきてこんな屈辱初めてよ。

どうして健太みたいな奴に‥」




「どうして‥」



全身をブルブルと震わせながら、直美は思わず駆け出した。

「我慢出来ない!このままにしちゃおけないわ‥!」

「あっ!直美さんっ‥」



「落ち着いて下さい!」



雪はそんな直美を呼び止めると、強引に振りほどこうとするその腕を強い力で押し留める。

「ちょっと待って。冷静になって考えてみて下さい」

「何を考えろって?!どうして止めるのよ!



「直美さん」



雪は落ち着いた口調で、残酷なまでの現状を冷静に伝える。

「証拠が無いんです。

また心証だけで問い詰めても、皆を疲れさせてイライラさせるだけです。

直美さんにもよく分かるでしょう?」




雪からそう言われ、直美は思わず言葉に詰まった。

二人の脳裏に、心証だけで騒ぎ立て、問題が肥大してしまったあの出来事が浮かぶ。

「それ本当?雪ちゃん‥ちょっとひどいんじゃない?同じ学科の同期同士で‥」

「女ってこえー」「あーうるせー。つまんねーことで喧嘩すんなよ」



清水香織を巡って起こったあの一連の事件。

確証も証拠もないままに、溝だけが深まって行ってしまったあの日々が思い出された。

「あんな晒し者みたいにして‥恨みでもあるの?同じ学科の仲間じゃない!」

「それは‥」「だって、直美さん!」



「清水のしでかしたことには賛成しかねるけど、衆人環視の中でフルボッコはなぁ‥」

「ちょ、レポートパクったのもアリだって?」

「パクったのは勿論ナシだけど、皆が見てる前で晒すのはちょっとさぁ‥」



「だから私が盗んだってワケ?随分容易く人のことを変人扱いするのね?

証拠も無いのに、私のことが嫌いだからって意地を張るのは止めてくれる?

皆試験期間中だっていうのに喧嘩売って‥。それってどうなの?」




「雪ちゃんも大概ね。今度は何につっかかってるの?」

「そうよ、試験期間中なんだから止めてよ」



あの事件において、巻き込まれる側の苛立ちと他人事の感情を、

誰よりも分かっていたのは直美だった。

「直美さんが一番よく分かってるはずです」



「‥‥‥‥」



雪から言われたあまりにも図星のそれに、直美は身体を細かく震わせたまま押し黙るしかなかった。

雪の言う事を理解出来る理性と、柳瀬健太を許すことの出来ない感情が、直美の中で真っ二つに割れる。

「ああっ!もうっ‥!」



「直美さん、気持ち分かります」

「あんな奴に騙されて‥!」「そんな風に考えないで」



雪は直美の気持ちを受け止めながら、震える彼女の身体を支えた。

「それじゃどうしたら‥。証拠がなきゃ何も出来ないんでしょ?」

「はい‥残念ながら」



「逆に証拠が無いから、あの人はあんなにも堂々としていられるんです」



雪は直美に顔を寄せると、意味深なその言葉を口にした。

直美はその言葉の中に含まれる真意を、深い所で受け止める。

「‥‥‥」



「そうよね‥」



要は一番重要なのは”証拠”が出るかどうかということだった。

それさえ気をつければ、後は相手を誘導するのみー‥。

「糸井からすげー情報を入手したんだが‥。そんな過去問よりも遥かに良いモンだ」



雪と直美がその会話をした数時間後、柳瀬健太は雪達にそう告げて来た。

皆相手にはしなかったが、健太が去ってからの柳の言葉が耳に残る。

「つーか糸井発のすごい情報ってなんだろな?」



まさか‥?



あれだけ柳瀬健太に憤慨していた直美が、有益になる情報を彼に流したとは考え難かった。

あれからずっと、直美のことが引っ掛かっている。



そんなことを思い出しながらキャンパス内を歩いていると、

視線の先に彼女の姿が映った。



糸井直美。

彼女は雪と目が合うと、視線を外さぬまま軽く会釈をする。



そして何も言わずに、直美は雪の前から去って行った。



「‥‥‥‥」



言葉を交わさなくとも、直美が健太に何を吹き込み、

それが彼の運命を変えることになったであろうことに、雪は気づかざるを得なかった。



証拠も何も出ない心証だけの誘導を、やってのけたと彼女の背中は語る。

予想通り反応する相手も居て





人は一体どのくらいの確率で、自分の思い通りに動くのか。



「卒験、上手くいきました?」

「うん、まぁ‥」



その頃、教養授業の教室では、

小西恵と佐藤広隆が、未だ現れぬ彼女のことを思って会話を交わしていた。

「今日、教養発表の最終日なのに、静香さん結局来ませんね」「うん‥」



恵の言葉に佐藤が頷いた矢先、教室のドアが大きな音を立てて開いた。

バンッ!



「!」



呆気にとられる二人の元に、サングラス姿の彼女はツカツカと近づき、

やがてどっかりと席に就く。



河村静香。

いつも予想外の行動を見せる彼女は、前を向いたまま佐藤に向かってこう話し掛ける。

「今日、この授業最終日なんでしょ?」「え?ああ‥」

「飲み連れて行って」「あ‥」



「あ‥」



佐藤は彼女の横顔をじっと見つめたまま、その真意を組むことが出来ずに困惑していた。

無表情で黙り込む彼女の横顔からは、何の感情も読み取れない。

そうじゃない相手も居る。



まるで予想が付かないその相手。

その最たる者が、河村静香だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<逆転(2)>でした。

直美、やってのけましたね。健太の行く末が恐ろしい‥

目には目を、の精神がこの作品の根っこのところにありますよね。

雪ちゃんがだんだんと黒淳に似てきたような‥。ブルブル


次回は珍しい落ち込む静香が見られます‥。

<凋落>です。


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逆転(1)

2016-08-07 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)
翌日。



<糸井>

はい。先輩の仰る通りです。卒験頑張って下さい!




差出人”糸井直美”からのメールを読みながら、柳瀬健太はニヤリと笑みを浮かべた。

直美からの卒業試験攻略情報が、健太に余裕を与えている。







するとそんな健太の横を、テキストを睨みながら歩く柳楓と佐藤広隆が通りがかった。

今や数々の因縁のある二人に対し、健太は「こいつらめ」と呟きながら顔を顰め舌打ちする。



しかし健太には余裕があった。

次の瞬間パッと笑顔を浮かべ、二人に向かって笑い掛ける程に。

「よぉ!試験がんばろーな?なっ!」



そのままルンルンと去って行く健太の後ろ姿を見て、柳は気分を害したようだ。

「うう‥アイツのせいで俺胃炎になったかも‥」「無視無視」



なんといっても今日は、卒業試験の日なのだ。

胃を庇いながら歩く柳に、淡々とテキストに目を通す佐藤。そして意気揚々と歩いて行く健太。

様々な四年生達が一様に、卒業試験の催される教室へと入って行った。



問題用紙が配られても尚、健太の余裕は変わらない。



これで卒験パスすれば、もう面接、卒業とトントン拍子だ。

したら時計代でも何でも‥




この試験に合格すれば、輝かしい未来が待ち受けているー‥。

そんな誇らしい気持ちを胸に、健太は問題に目を落とした。

しかし。

「えっ?」



思わず目を丸くする健太。

次の瞬間、思わず叫んでいた。

「何だこりゃ?!全然違うじゃねーか!!」



「そこ、静かに!」



うっ、と言葉に詰まりながら、健太はもう一度問題用紙に目を通す。

「‥‥!」



しかしそこには、まるで予想外れの問題がズラズラと並んでいた。

テ、テキストの既出問題から出るんじゃ‥??確かにそう糸井が‥!



あの時糸井直美から聞き出した情報への自信が、

健太の保持していたその余裕が、ガラガラと音を立てて崩れゆく。

冷や汗と脂汗をダラダラとかきながら、健太は目の前が真っ暗になっていくのを感じていた‥。

「‥‥‥‥」









しかしながら、予想通り相手が行動する確率というのはどれほどのものなのか



青く澄み渡る空を見上げながら、雪はそんなことを思った。

手に持った携帯電話に表示されているのは、柳楓とのメッセージのやり取りだ。

卒験頑張って下さいね、柳先輩

うん、サンキュ。

健太の様子見てたら、糸井の過去問惜しかったな〜って思っちった。

ま、俺も頑張んなきゃだけど!


大丈夫ですよ。勉強頑張ってましたから、無問題です。







メッセージを打ち終えた雪は、一人授業へ向かうために歩き出した。

もう秋の空気は随分と冷たい。







ふと、見覚えのある風景に目が止まった。



数日前、ここで彼女と交わしたやり取りが蘇る。

「‥‥‥‥」







彼女とは、糸井直美のことであった。

立ち止まる雪の視線の先に、参考書に目を落しながらこちらに向かって歩いてくる直美が居る。



やがて雪の視線に気付いた直美は、弾かれたように駆け出した。



過去問騒動で村八分になってしまった直美。

風の噂で夜間授業の方へ移ったと聞いた。

その場に立ち尽くす雪の目の前から、

だんだんと直美の背中が小さくなって行く‥。



「直美さん!」



雪はその背中に思わず声を掛けた。

ピクッ、と身を強張らせながら直美は足を止める。



「直美さん、ちょっと待って下さい」



「少しお時間ありますか?ね?」



そう言って雪は、実はあの時直美を呼び止めたのだった。

二人は場所を変えて、あの過去問騒動のことを話し合う‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<逆転(1)>でした。

4部38話でキャンパス内で直美を見掛けた雪が、実はあの後声を掛けていたことが判明!

またしても時系列マジックですね〜。

次回は二人の話し合い、<逆転(2)>です。

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一筋の水流

2016-08-05 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


亮は一言呟いた。

「静香」と。



あの輝かしい未来へと続いていた道を歪ませたのは、

あの忌々しい事件への糸を手繰り寄せた先に居たのは、

紛れも無く自身の姉だった。

「静香‥」



心の奥底から、炎のように激情が溢れ出す。

亮は無意識の内に、大声で姉の名を叫んでいた。

「静香ぁぁぁぁぁっ!!!!」



「静香!静香!静香っ‥!」



今にも掴みかからんといった勢いで、鬼のような形相をした亮は走り出した。

けれどその激情の中に流れる、一筋の水流が亮の足を止める。

「‥‥‥‥」



「‥‥‥‥」



突然立ち止まった亮のことを、通行人達は怪訝な表情をして見つめていた。

まるで燃え盛った炎が一瞬で消えたような、不可思議な光景を目にしながら。



亮は空を仰ぎながら、掠れた声でポツリと呟く。

「姉ちゃん‥」



その一筋の水流は、亮の瞳から流れ落ちた。

「あ‥そりゃねぇよ‥姉ちゃん‥」



たった一人の肉親。

たった一人の家族。

けれど亮の未来を閉ざしたのは、紛れも無く彼女だった。

「そりゃねぇよ‥」



次から次へと溢れ出す感情が、亮の頬を濡らし、流れて行く。

気がつけば空に、満月が浮かんでいた。








とっぷりと暮れた街を、雪は疲れた身体を引き摺りながら歩いていた。

今日もこんな時間になっちゃった、と一人呟きながら。



すると視線の先に、見覚えのある姿を見つけた。

「宴麺屋赤山」の近くの路地に、佇んでいる彼の姿を。







河村亮は店の明かりを見上げながら、瞳からボロボロと涙を流していた。

長い時間泣いていたのだろうか、目は赤々と充血している。



やがて亮は自身を見つめる雪の姿に気が付いた。

しかし彼は何も言わずに、ただ彼女に背を向ける。







立ち尽くす雪を残して、亮は涙を拭いながら、ただその場から去って行く。

だんだんと遠ざかるその背中を、雪は追いかけること無くただ見送った。



河村氏の涙を目にするのは二度目であった。

初めて目にした時の記憶が、雪の脳裏を掠めて行く。



たった数カ月前のことなのに、もう随分前のことのような気がしていた。

雪は俯いたまま、自身が進むはずの方向へと踏み出す。

多くのことが変わった。



私は彼を慰めはしなかったし、河村氏も当然のように私を避けた。



店のドアを開けると、「おかえり」と母の声がした。

帰るべき場所へ帰って行く私達。

河村氏は、一体どこへ帰るのだろう?

時に身の丈以上のさざ波が日常を揺らしたとしても、

いつもそうであるように、




河村氏もきっと乗り越えて行けると、私は信じている。



キィ、と暗闇の中でドアが開いた。

自室から出て来た姉は、リビングに居る弟へ声を掛ける。

「何よ‥」



「いつ帰って来たの?」



亮は電気も付けずに、無言でテーブルに突っ伏していた。

姉からの言葉に何も言わぬまま、ゆっくりと顔を上げる。







泣き腫らしたような疲れた顔を、静香は暗闇の中で微かに目にした。

静香の心の中に一筋の水流が、つぅと流れ落ちる‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<一筋の水流>でした。

皆さま、二週間ぶりです。

予定日までもうすぐですが、まだ産まれてないのでなんとかアップ出来ました

ただ正産期の身体+育児が思いの他しんどくて、なかなかコメントのお返しなど出来ず‥申し訳ない気持ちでいっぱいです。

特別編のリンクを貼って下さったCitTさん、なかなかお礼も言えずすいませんでした。

楽しく拝見いたしました!ありがとうございました


出来る限り、残りの今週分も頑張りますー!


そしてそして!今日8月5日は‥

我らが河村氏のお誕生日ーーおめでとう



本編では辛い展開になっちゃってますが‥。彼が心から笑える日が来ますように‥!

次回は<逆転(1)>です。

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