Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

それぞれの意見

2015-10-26 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
「もらってない人ー?」「あたしもあたしも!」



誰かが手に入れて来た過去問が、大量にコピーされ机の上に置かれた。

学生達はそれを一部ずつ取って行き、それぞれに自分の意見を口にする。

「過去問は雪ちゃんだけが持ってるモンじゃないっつーの」

「あの子には絶対あげちゃダメ」

「いやでもさー、健太先輩が変にでしゃばったから、

雪ちゃんにお願いするにも誰も出来なくなったんじゃん?」




過去問と赤山雪。それをめぐる皆の意見は様々だ。

そんな中、直美の友人・黒木典は客観的な意見を述べる。

「てか雪ちゃんは青田先輩の過去問持ってんだから、

欲しがんないでしょ」




去年の学年首席の過去問以上に上質な物などない。

皆内心そう思っているが、糸井直美はそのプライドから典に対してこう言ってみせた。

「もういいって。過去問なんて持ってなくてもいーし。

遠藤さんの話では教授、問題新しくするって言うしさ」




問題が一新されれば、過去問はただの紙切れ同然。

従って雪が持つ”青田先輩の過去問”も、何の意味も持たなくなる。

そんな直美の意見に、同期の女子はこう返す。

「うちの学科の卒験、もう3年連続過去問通りなのに、

遠藤さんの話を信じるの?」




そして雪と同期の吉田海という女の子は、ポツリとこう口にした。

「それでもあたしは青田先輩の過去問が‥」

「ストップ!」



直美は強引に彼女の話を切り、ウンザリしたような顔で口を開く。

「それじゃ雪ちゃんがますます調子に乗‥」

「ちょっと通りますね」







直美の後ろから、雪が突然姿を現した。

雪の悪口を言いかけていた直美は、口を貝のように閉じて固まる。

しんとする教室内。

雪は彼女達を横目で窺いながら、空いている席へと向かう。



雪は歩きながら、チラッと一人の女の子の方へと視線を流した。

先ほど「それでもあたしは青田先輩の過去問が‥」と口にした吉田海だ。

 

海は雪と目が合うと、思わずビクッと身体を震わせた。

しかし雪は何も言わず、ふいっと背を向けて行ってしまう。



席に就いた雪の元に、親しくしている子達が集い始めた。

「雪、おはよ」「今日は一人?」



外ハネヘアーの同期が、口に手を当てながらコソッと雪にこう話す。

「あたしこの空気マジで胃に来る ムカツクー

 

雪は二人の同期に挟まれながら、離れた席に座る直美の方を窺った。

直美は過去問をしっかりと抱え込みながら、隣に座る典にこう聞いている。

「あの子これ欲しがってそう?」「さぁ」



どこか不穏な空気が、教室全体に漂っていた。

不満そうな顔をした女子達や、寝ている男子、音楽を聞いて素知らぬフリをする子。

交錯する関心と無関心‥。

 





暫くしてからもう一度、海は雪のことを窺った。

すると再び、バチッと二人の目が合う。



二度目のビックリ。

海は目を丸くしながら、再び身体を震わせる‥。








授業が始まり、教授が壇上で講義を始めた。

雪は教授の話に耳を傾け、板書された内容をノートに取る。



ブルル‥



すると鞄に入れた携帯が震え、バイブ音が教室に響いた。

画面には”先輩”の文字が踊る。

「ここの箇所絶対テストに出るぞー。チェックしろー」



雪は携帯の電源をオフにしながら、教授の指摘した箇所を強くマークした。

そして最後まで、雪は真面目に授業を受けたのであった。




 

終了のチャイムが鳴り、雪は一人で外へと出た。

道を歩いていると、後ろから彼女を呼び止める声が掛かる。

「雪ちゃん」



雪が振り返ると、あの子が立っていた。

同期の海ちゃんである。



雪は微笑んで彼女に声を掛けた。

「あ、海ちゃん。どうしたの?」



すると海は鞄からプリントを取り出すと、雪に向かってこう言った。

「さっき配られた過去問、雪ちゃんも見る?」






変なプライドで噛み付いたりとか、相手を悪者にしたりとか、下手な小細工など何もなしに、海は過去問を差し出した。

そんな海を前にして雪は、ニッコリと微笑んでこう返す。

「ううん、大丈夫」



雪のその返事を聞いて、海は若干窺うようにこう言った。

「だよね、雪ちゃんのは青田先輩から貰ったヤツだから、他のなんて‥」



そう言う海に対し、雪はかぶりを振って笑顔を浮かべる。

「ううん、貰えなくて残念だよ。

先輩の過去問、今日大学に持って来てたら見せ合いっこ出来たのに」




そして雪は笑顔を浮かべながら、海にこう提案した。

「今度持って来た時、交換しよっか」



「えっ?」



予想外の返答に、思わず目を剥いた海。

そんな海の目の前で、雪は穏やかに微笑んでいる。







拍子抜け、というか、呆気に取られた、というか、とにかくポカンとした表情をしながら、

海は雪のことを見つめていた。そんな同期を前にして、雪は思う。

皆が同じ状況なわけじゃない。

だから当然、皆が同じ意見であるはずがない。




そんな非常に単純な事実を、私たちは実によく忘れてしまうー‥。







一方こちらは、教室内でテキストに目を落とす佐藤広隆。

ポケットの中の携帯が震えると、佐藤はすぐにそれを取り出した。

河村静香?!



メールが一通届いている。

佐藤は緊張しながらそれを開いた。

先輩、財務学会の発表の資料、もう全部準備しました?

もしまだなら、一緒にお昼食べながらやりませんか?




しかしそれは、赤山雪からの勉強お誘いメールだった。

思わず気が抜ける佐藤‥。



とりまOKっと‥



欲しい返事はなかなか貰えない。

佐藤は心をソワソワさせながら、あの自由奔放な彼女のことを考え続ける‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<それぞれの意見>でした。

海ちゃん、青田先輩の過去問GET!ですかな。

登場人物それぞれが自分の考える”賢明な対処”を全うする、という流れになって来てますね。物語全体が。

さて次回は<鍵の行方>です。

聡美の考える賢明な対処は、果たして実を結ぶのか否か‥。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

それぞれの状況

2015-10-24 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
赤山雪の今の状況は、というと。



机の上に広げたテキストとノートを前にして、船を漕いでいる最中である。

しかも今は授業中‥。







授業が終わると、教室から学生達がぞろぞろと出て来た。

その中には、小走りで移動する雪の姿もある。



時刻はお昼。

聡美と共に学食でランチ。



そして時は過ぎ、日が沈んだ。

雪は聡美と手を振り合って別れる。また明日ね、と言って。



帰りの地下鉄の中でも、また勉強。

今日は座れなかったので、立ちながらテキストを持ち、暗記する。



帰宅。

ご飯を食べて、お風呂に入って、そこからまた勉強タイム。



遅くまで机に向かってると、両親が帰宅する物音が聞こえてきた。

腰が痛いと嘆く父に、早く横になってと母が言っている。



時計を見ると、もう午前様だ。

思わず大きなアクビが出た。



それでもまだ寝ずに、雪は勉強に集中した。

期末は絶対に落とせない。



カリカリとノートを文字で埋めていく音だけが、部屋に響いている‥。







朝。

鳥の鳴き声が青空に響き渡る中、雪は地下鉄の階段をダッシュで登っていた。



時刻は丁度通勤通学のラッシュ。

雪は大勢の人に揉まれながら地下鉄で移動する。

 

ぎゅむっと潰されながら延々二時間弱。

ヨレヨレになったところで、今日も大学に到着だ。



構内を歩いていると、ポケットの中の携帯電話がメールの到着を知らせる。

週末にイルミネーション見に行く?

雪ちゃんが前、見たいって言ってたやつ




先輩からのメール。

雪は目にクマを浮かべながら、あ‥私それ見たかったんだよね‥と弱々しく呟いた。



すると後方から、不意に声を掛ける人物が一人。

「おーい!赤山ぁ~」



振り返ってみると、そこにはあまり話したことのない同期が、

手を振りながら笑顔を浮かべている。



同期はニコニコしながら、雪に話し掛ける。

「どうしたの?」「なぁなぁ、これ見て!俺、過去問を一つ手に入れたんだ!」



「これと赤山のヤツ、交換してみない?!そうしない?!」



ジャーン!と言いながら、同期はその過去問を雪に差し出した。

背景に黄色いお花が見える‥。



すると瞬間、雪の身体が吹っ飛んだ。

「ゆきぃぃぃ!マジで一緒に行かない気なのぉぉ~?!」



伊吹聡美は大きな声でそう言いながら、雪のことを引っ張って行く。

「そうだってば」「うふふんそれでもぉ~」



同期は呆気に取られながら、「そ‥それじゃ後でまた‥」と弱々しく声を掛けて去って行った。

聡美は雪と肩を組み、ウインクする。

救出成功 ん、サンキュ‥



過去問をめぐる攻防は、未だ雪を巻き込んで進行中だ。

雪は聡美にお礼を言いつつ、二人は肩を並べて歩き出す。

「てかマジで一緒に行かないの?面白そうなのにぃ。

太一のヤツがモデルなんて長続きしないだろうし、次はいつそんな姿拝めるか~」


「うーん残念だけど‥。アンタ私の状況分かってるでしょ‥TT」



今日は、太一のモデル撮影を見に行く日なのである。聡美は行くが、スケジュールの都合上雪は行けない。

聡美は顎に指を沿わせながら、ウンウンと頷いてこう続けた。

「そっか。それじゃ仕方ないね。残念。ま、そんじゃちょっくら行ってくるわ!」

「え?授業全部終わったの?」

「いやちょっと早く行ってみようかなと思って。とにかく‥」



「今日は授業パース!!バイバーイ!」「へっ?!」






聡美はそう言い残して、走って行ってしまった。

雪はそんな聡美の背中を見送りながら、呆然と立ち尽くしている。

「は‥はは‥なんか裏山‥



雪が必死で守ろうとしているものを、いとも簡単に手放す人が居る。

雪は楽しそうに駆けて行く聡美の残像を追いながら、肩を竦めた。



今日は一人か‥と呟きながら、荷物を背負い直す。

重たい鞄には今日も、沢山のテキストが入っている。



聡美の姿が完全に見えなくなってから、雪はゆっくりと歩き出した。

もうじき授業が始まる。



高くなった秋の空を見上げながら、雪は思った。

皆が同じ状況なわけじゃない。と。



肩が触れるほど近くに居ても、メールで簡単につながっていても、自分と他人は別の人生を歩いている‥。

そんなことを思いながら、雪は今日も真面目に教室へと向かって歩いて行った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<それぞれの状況>でした。

雪ちゃん、本当にずっと勉強してるんですね‥。韓国の大学生はみんなこうなのか‥?

報われて欲しいですね‥。


次回は<それぞれの意見>です。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

意外な組み合わせ(2)

2015-10-23 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
河村静香は、怪訝そうに眉を顰める。

「横山翔‥?何よソレ‥」



先程柳瀬健太が口にした”横山翔”が、一体誰なのかピンと来ないのだ。

「誰‥」



しかしそこまで口にした所で、ようやく思い出した。

静香はそれ以上変なことを口走らないよう、コホンコホンと咳払いをする。

「横山翔、知らねーの?」



健太はそんな彼女の小さな変化を見逃さず、すかさずそう突っ込んだ。

「おたく、大学でアイツのこと殴ったって‥。

マジで横山知らねーの?」




静香はそんな健太のことを、観察するようにじっと凝視していた。

相手が抱く意図や欲を、彼女の嗅覚で鋭く嗅ぎ取る‥。



静香はとりあえず自分の立ち位置は明かさず、健太に話の先を促すことにした。

「それで何なの?どーしろっての?ソイツが何だってのよ?」

「いや~ちょっと変だなと思ってさぁ‥」



「おたく、どう見ても横山と付き合うようなガラじゃないでしょ?

俺のこと無視すんのとかもフツーじゃねぇし




なかなかに鋭い。

静香は更に先を促した。

「それで?」



すると健太は静香を見据えながら、試すような光を瞳に宿らせる。

「つーか、面白い話を耳にしたもんでね」



「こんなことがあったって聞いたんだけど‥」



健太はそう前置きすると、”青田淳と河村静香が腕を組んでいる写真”を持って皆に弁解したという、

横山翔の話を口にした。

静香は更に先を促す。

「それが何なの?」

「いやだからさぁ、」



健太は静香の顔を覗き込みながら、その答えを探すようにじっと彼女の瞳を凝視し、話を続けた。

「横山はおたくは青田の彼女だって言って、おたくは横山の彼女だって言う。

どう考えてもすげーおかしいでしょ?」




そして健太は一度も目を逸らさずに、こう彼女に質問したのだった。

「一体何が真実なの?」



静香は健太とは視線を合わせなかった。

更に言葉を続ける健太に、素知らぬ顔で返答する。

「本当は両方共‥」「さぁね~。気になるなら淳に聞いてみなよ」



「へっ?」



彼女はさらりと口にした。

青田淳の名前を。

目を丸くする健太の前で、静香はニコッと微笑んだ。






そしてくるっと後ろを向くと、それきり振り向きもせず行ってしまった。

楽しそうに鼻歌をハミングしながら。



健太は呆気に取られながら、彼女の後ろ姿を見て一人呟く。

「ありゃあどういう意味だ?」



柳瀬健太と河村静香。

野生の嗅覚を持つ二人の存在が、ストーリーを掻き乱していく‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<意外な組み合わせ(2)>でした。

短い記事で失礼しました。

二人ともなんらかの嗅覚が働く人種ですよね~。

ただこういった駆け引きには静香の方が断然強いでしょう。

横山に続き、健太にも平手打ちを食らわせてやってくれ‥静香さん‥!


次回は<それぞれの状況>です。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

意外な組み合わせ(1)

2015-10-22 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
A大学のキャンパス内を、河村静香はトボトボと歩いていた。

その足取りは重い。



しかし彼女は急に立ち止まると、いきなり地団駄を踏み始めた。

その場に居合わせた人間はビックリである。

「クソッ!あたしってば何やってんのよ!

富と栄華もナシにただ毎日大学通って‥!」




フラストレーション溜まりまくりな静香。

肩で息をする。

ゼエゼエ‥



しかし彼女は男子学生が傍を通ると、

急に素面になって髪をかき上げた。



男子学生は「ヒッ」と息を飲んで通り過ぎる。

静香の脳裏に、昨日の赤山雪の姿が浮かんだ。

「私と仲良くなりたいんなら勉強しますよ」



ピキッ



静香は空を見上げながら、鼻持ちならない二人の女を思い描いて声を上げる。

「はぁ?!勉強?!一緒に勉強?!

それに展示会?!あいつらあたしを弄びやがって!」




ゼエゼエ‥

↓今までに関わったことのないタイプのため免疫無し




静香は胃痛まで覚えながら、イライラを持て余していた。

自分らしくない今の状況。彼女はぶつくさと独りごちる。

「あーマジ考えれば考える程ムカツクわー

あんな奴らさっさとシメちゃえばいいのに、どうしてあたしがこんなにまで‥」




あ、そうか‥淳のことがあったか‥



静香は我慢するメリットを思い出し、ポリポリと頭を掻いた。

舌打ちをしながら、手元の問題集を持ち直す。







問題集の間から覗いたのは、小西恵から寄越された展示会のチケットだった。

世界中の名画を見ることが出来るという、企画展の‥。



不意に、心が動く。

静香はそんな自分が認められずに、ただ頭を掻いた。






するとポケットの中の携帯電話が震え、取り出してみると佐藤広隆から着信中だった。

静香は「あーめんどくさ」と言いながら電話に出ようとしたのだが、

その時後ろから誰かに声を掛けられた。

「あの!すんません!」「何だバカヤロー!」



振り向きざまにバカヤロー‥。

不機嫌な彼女に、呼び止めた健太は白目を向いておののいた。



「あ いつかのデクノボウ



静香は健太を見て、

以前佐藤広隆に向かって威圧的にPCを借りようとした男だということを思い出した。



金は持って無さそうだわ、顔もイケてないわ‥。

静香は溜息を吐きながら、そのまま健太に背を向ける。

「何なの?クレームなら遠慮して。あたし今日気分が良くないの」

「違う違う、ちょっと聞きたいことがあって!あのさぁ!」



健太はなんとか静香を止めようと彼女の腕に手を掛けた。

すると静香はブンブン腕を振ってその手を振り払う。

「何!何なのよ!どこ触ってんだよ!

「いや、だから‥」



健太はたじろぎながら姿勢を正し、ようやく静香に向かって本題を切り出した。

「おたく、佐藤と横山、本当はどっちと付き合ってんの?」



「は?横‥誰?」



河村静香と柳瀬健太。

この意外な組み合わせが、怪訝そうな顔で互いを見つめる‥。







お掛けになった電話は‥



通話先に”河村静香”と表示された携帯を、佐藤広隆は手に持ちながら溜息を吐く。

彼女は電話に出てはくれなかった。

「ふぅ‥」



佐藤はベンチに一人座りながら、どこか重苦しい気持ちを持て余していた。

静香から折り返しの電話も掛かってこない。

「‥‥‥‥」



佐藤は先程の教室での出来事と自分の行動を思い返していた。


「後輩にたかって点数稼いだり過去問欲しがったり、そういうことは!

もう止めて下さい!!」




あの時自分は、柳瀬健太を見据えてハッキリとそう言った。

そのことを、佐藤は静香に伝えたかったのだ。

俺今日‥あの男に対して、それなりに格好良く食って掛かったんだけど‥

あの俺は、弱虫じゃなかったよ




以前、静香から言われた言葉が脳裏を掠めた。

情けない



彼女は自分の痛い所を真っ直ぐに突いて来る。

あの時は言い返せなかったが、今ならそれは違うと言えそうなのに‥。



暫し佐藤はぐっと唇を噛んでいたが、次第に俯き、溜息を吐いた。

「ま‥どうせ興味なんて無いか‥」



佐藤は幾分残念そうにそう呟いて、図書館へと向かう為、腰を浮かせた。

その時だった。

「おい。

お前、うちのねーちゃんとどういう関係?」








男が、突然頭上から現れた。

佐藤は腰を抜かして、ただ叫びながらその場から逃げる。

「うわああああ!」

「おい!どういう関係かって!」



佐藤広隆と河村亮。

この意外な組み合わせが、初めて対面したのはこんなシチュエーション‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<意外な組み合わせ(1)>でした。

皆さんお気づきかと思いますが、最後の亮さんは‥

「お前、うちのねーちゃんとどういう関係?」



一部二十四話で、初めて雪と顔を合わせた時と同じ感じでセリフを言ってますね。

「お前、青田淳とどういう関係?」



懐かしい‥M字の頃の亮さん‥。今じゃすっかりイケメンに‥

このストレートさが、The 亮さんという感じですね。


さて次回は<意外な組み合わせ(2)>ですが、短い記事なので明日更新にします~。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

彼らの擁護

2015-10-20 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)


柳瀬健太は、怒りのあまりブルブルと震えていた。

しかしそれをぶつける相手‥赤山雪は教室を出て行ってしまったので、

健太は皆の方を向き、大声で不満を撒き散らす。

「見たか?!お前ら見てただろ?!

ありがとうって言えだの、先輩に対して謝罪の態度を見せろだのよぉ!」




「つーか赤山って本来あんなヤツじゃねーはずなのに、

どうしてあんななっちまったんだ?青田のヤツと付き合い出してから180度変わってー‥」


「もう止めて下さいよ!」



するとそんな健太に、柳楓が噛み付いた。

思わぬ人物からの反論に、健太は彼をギッと睨む。

「はぁ?!」



しかし柳は怯まない。

顔に青筋を立てながら、健太に向かってこう言った。

「もう我慢出来ねぇっすわ!」



「こんにゃろ‥」



眉を寄せる健太に構わず、柳は続けた。雪を擁護するその言葉を。

「つーかぶっちゃけ、赤山の言い分何も間違ってねぇすよ!

淳が赤山に過去問渡して、それを共有しないからってブツブツ言ってる、そのまんまじゃないすか!

俺の言ってること間違ってます?!間違ってないっしょ?合ってるっしょ?!」




教室中の学科生が皆、二人の方を向いてその会話に聞き入っている。

柳はそんな皆の方を向いて、彼らに向かってもこう言った。

「つーか皆もそうなんじゃねーの?!」



ヘッ!と息を吐き捨てる柳のことを、糸井直美は密かに睨んでいた。

あの人前からちょくちょく‥とおかんむりだ。



柳の言葉に、「俺はんなことしてねーよ!」と反論する学科生もいる。

柳瀬健太は柳に向かって言葉を返した。

「何だよ!過去問のせいで科の空気がピリピリしてっから、

俺が皆の代表として話してみたんじゃねーかよ!つーかあんなふうに怒って出てくなんてよぉ、ありえなくね?!」


「代表って何すか‥ったく」



柳は軽く息を吐いた後、クックックと小さく笑いながら話を続ける。

「赤山が変わったのは別に淳と付き合ったからじゃねーすよ。

健太先輩が赤山をムカつかせるから、ついに見限られたんですって」


「おいっ!俺がいつー‥」「そうですよ」



するとその二人の間から、ある人物が発言した。

彼は続けて、健太に向かってキッパリとこう言う。

「健太先輩の点数の半分は、俺と赤山が取ったと言っても過言ではありません」







目を丸くする健太と柳。

その視線の先には、ぎゅっと口を結んだ佐藤広隆が、

強い眼差しで健太を見据えている。



佐藤はメガネの柄を指で触りながらも、じっとその場に立っていた。

今発言した内容には微塵も嘘は無く、後ろめたいことも何も無いからだ。



そんな佐藤を見て、健太は眉をひそめた。

「佐藤?何だお前‥」「だから‥」



佐藤は健太が皆まで言う前に、口を開いた。

覚悟を決めるため、ぐっと一度下を向く。



そして佐藤は健太のことを見上げながら、腹の底から声を出したのだった。

「後輩にたかって点数稼いだり過去問欲しがったり、

そういうことは!もう止めて下さい!!」




真っ直ぐに健太のことを見据えながら、佐藤はそう言い切った。

そんな佐藤の姿に、ほう、と柳が思わず声を出す。



しかし健太は、というと、今までに無いくらい震えていた。

みるみる顔に青筋が浮かんで行く。

「その通りだな」「ホント」



後方から佐藤の言葉を擁護する声もチラホラ。

健太は顔は笑顔のままだが、怒りのあまり佐藤へと手を伸ばす。

「こんの‥!てめぇマジ‥!」「止めろ止めろ!」「どうどう!」



佐藤は「ヒィッ」と言って健太から背を向けた。あわや大騒動である。

すると先程からの一連の騒ぎを見ていた学科生達が、健太に向かって声を上げ始めた。

「もういい加減にして下さいよ!過去問手に入れられなかったからって、さっきからみっともないっすよ!」

「マジで喧嘩しようとしてんのー?」「仮にも先輩が‥」

 

皆健太に非難モード。

柳らに身体を押さえられている健太は、目を丸くして彼らの方を振り向いた。

「は?なんだお前ら」



「俺はお前らの代表として‥」



その顔がだんだんと怒りに歪んで行く。

しかし学科生達は怯まず、彼らや彼女らなりの意見をそれぞれ口にした。

「いつあたし達がそう頼みました?皆が皆同じ意見なわけじゃないですよ!」

「あんなふうにしたらもっと過去問手に入り難くなるのに‥」



教室で行われているそんなやり取りを、雪はドア一枚隔てた廊下で、聡美と共に聞いていた。

雪は先程耳にした学科生の言葉に、心から賛同する。

そうだ。



皆が同じ意見であるはずがない



非情に単純な事実をー‥



擁護に反論、思い違いにスレ違い‥。

我々がそれぞれ正しいと思っているものが、真理である保証はない。

雪はそんなことを思いながら、まだ騒がしい教室内の会話を聞いていたー‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼らの擁護>でした。

いいぞ!!いいぞ!!柳&佐藤先輩!!

ストレートに言い返しましたね~。男気を感じますね。

健太は全然堪えてないっぽいですが‥。

そして今回の佐藤先輩‥、ちょっと昔のスネオっぽいセーター‥。

 

ドラえもん全制覇でしょうか‥。次はオレンジか?!笑


次回は<意外な組み合わせ(1)>です。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!