夢逢人かりそめ草紙          

定年退職後、身過ぎ世過ぎの年金生活。
過ぎし年の心の宝物、或いは日常生活のあふれる思いを
真摯に、ときには楽しく投稿

都知事選、都知事の責務は重責であり、都民の無力な私は、真摯な願いを託して・・。【下】

2016-07-14 06:32:26 | ささやかな古稀からの思い
私は昨年の2015年(平成27年)5月初旬、
松谷明彦・著作の『東京劣化 ~地方以上に劇的な首都の人口問題~』(PHP新書)を購読し、
震撼させられたひとりであった。
               

新書のカバーにある解説として、
《・・地方の集落の消滅を危惧する声が高まっているが、
これまでの政策の方向性を変えれば、日本の農業や集落を維持する術(すべ)はある。

むしろ、地方よりも東京のほうが、より急激な変化に見舞われると考えられる。
東京の高齢化は、すさまじい。
2040年には、2010年に比べて高齢者が143.8万人増加する。
1.5万人減少する秋田県とは対照的だ。

その結果東京の貯蓄率は低下し、インフラが維持できず、都市がスラム化するおそれがある。
年金の給付水準は大幅に引き下げられ、その結果多くの高齢者が家を失い、
老人ホームが新たに100万床以上必要になると考えられる。

ならばどうするか。
人口減少問題の第一人者が、欧州の事例も参考にしながら、現実的な処方箋を提案する。・・》

そして帯カバーの裏面には、
■地方は「消滅」しない
■貧しくなる東京
■オリンピックの狂騒の後に残るもの
■日本経済を支えたビジネスモデルの終焉
■1950年代の産児制限が急速な高齢化の原因
■公共賃貸住宅を大量につくれ―――財政への影響は問題なし  ・・など9つ命題が明記されていた。

こうしたことを立ち読みした私は、やがて到来する東京劣化を学びたく、買い求め、精読した。
                                   

私は東京の世田谷区と狛江市に隣接した調布市の片隅に住み、生家も近く、
この地域に結婚前後の5年を除き、66年ばかり住んでいる。

このような関係で地元はもとより、都心には幼年期の頃から行ったりし、
そして学生時代、やがて社会人になってサラリーマンで精勤すると、都心にある本社で奮戦したり、
定年後の年金生活の中でも、ときおり都心に行ったりしている。

そして私は、《・・貧しくなる東京・・》は都民のひとりとして、
無力ながら悲嘆し、ため息を重ねて、著作者の松谷明彦さんから多々教示された・・・。


やがて今年の3月下旬、ネットでニュースなどを見たりした中で、
ビジネス総合情報誌として名高い『プレジデント』の配信して下さった記事のひとつとして、
『 東京の高齢化にどう備えればいいか 』と題された見出しを見た。

そして過日の『プレジデント』2015年6月1日号に掲載され、
『東京劣化 ~地方以上に劇的な首都の人口問題~』を上梓された松谷明彦さんの寄稿文と解り、
この配信して下さった記事を、たまたま私は改めて精読を深めたりした。

精読後、基本的な要旨は、『東京劣化 ~地方以上に劇的な首都の人口問題~』と同一であるが、
今後の都心、そして首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)に多大な影響、
やがて日本各地に影響が波及するので、共有致したく、無断であるが転載させて頂く。
                         
《・・
★東京は30年後には「超高齢化」する

こうした人口の変化で深刻な影響を受けるのは地方ではなく大都市である。
地方の高齢化は既にピークを過ぎており、今後、人口変動は落ち着く。
一部で議論されている「地方の消滅」は杞憂に過ぎない。

これから東京などの大都市では、「人口がたいして減らない」
「これまで大量に流入した若者が歳を取り、高齢者が急増する」
「全国的な少子化で流入する若者が激減する」という三重苦が始まる。

人口が減らないため、行政サービスや公共インフラへの需要は減らない。
そこで高齢者が急増すれば、医療や介護への負担で財政支出が急激に膨張する。
さらに流入する若者の激減で納税者は減り、税収は低迷する。大都市は未曾有の財政難に陥る。

特に東京の高齢化の規模はあまりにも巨大だ。
社人研によると、2010年時点で、東京都の65歳以上の高齢者は約268万人。
これが2040年には約144万人増え、約412万人となる。

増加率は53.7%に達する。
この結果、これから首都東京の「劣化」が起きると予想される。
                         

★「高齢者難民」が発生。東京はスラム化する

劣化の第一は、東京の「スラム化」である。
人口減少高齢社会では、経済成長率が低下する。
さらに働いて貯蓄できる人の比率も下がるため、貯蓄率も大幅に低下する。

このような局面では、道路や上下水道といった公共インフラを計画的に整理縮小する必要がある。

ところが東京では人口の減少が小幅にとどまるため、大胆な整理縮小ができない。
それどころか2020年の東京オリンピックに関連して、インフラの新規投資が膨張している。
今後は既存インフラの維持や更新すら困難になるのに、貯蓄を使い果たそうとしている。

大量の「高齢者難民」が発生する可能性も高い。
東京の高齢者の約4割は借家住まいだ。
近い将来、年金制度が事実上破綻し、給付水準が引き下げられれば、家賃が払えなくなった高齢者が街にあふれ出す。

経済成長が衰えれば、民間によるインフラ整備も期待できなくなる。
再開発は行われなくなり、老朽化した商業ビルは、取り壊されず廃墟になる。
また鉄道の沿線人口が減れば、路線は廃止・短縮される。

鉄道が来なくなれば郊外の住宅地は価値を失い、ゴーストタウンになるだろう。
               

経済成長を上向かせるには、東京の経済を国際化・高度化する必要があるが、
それでも大量の失業が発生するだろう。1950年代後半から1970年代初頭に東京へ流入した第一波は、
製造業に組み込まれ、熟練労働者に成長した。

しかし1980年代や2000年以降に流入した第二波、第三波は、
流通業などに就いた人が多く、高度なスキルを持つ人は少ない。
これは政府と企業、そして労働者自身が、職業教育を軽視し、安価な労働力を追い求めたツケでもある。
                          
        
ではどうすればいいのか。
ひとつの提案は、「高齢者難民」を防ぐために、耐用年数が200年程度の公共賃貸住宅を大量に建設することだ。

民間の賃貸住宅は20~30年程度で建築費を回収する必要があるため家賃が高い。
だが国や地方自治体であれば超長期の借金ができる。
耐用年数が200年程度で、維持補修費が他の集合住宅とさほど変わらないものを建てる技術はすでにある。

土地は区役所の上や公共遊休地などを活用する。
建築費の回収期間を200年に設定すれば、家賃は月額2万~3万円程度に抑えられるはずだ。

人口減少高齢社会は資源減少社会だ。
限られた資源で社会を維持していくためには、世代を超えて資源を管理する必要がある。
年金は現役世代の稼ぎ、つまり「フロー」に頼る仕組みだが、公共賃貸住宅は世代を超えた「ストック」の資源になる。

民間の商業ビルにも「ストック」の管理という視点が有効だろう。
個々の対応ではスラム化は防げない。

東京にある商業ビルの台帳をつくり、新規建設の調整や建て替えの指導を行う。
資源を適正に管理できれば、企業活動の持続性も高まる。

東京の劣化を防ぐうえで、これから必要になるのは変化を恐れないことだ。
今後の人口減少高齢社会では、働く人の比率が低下するため、
1人当たりの財政支出は増えるが、税収は増えない。
                          
         
このため財政再建を達成するには、人口の減少に比例して財政規模を縮小させるしかない。
言い換えれば、年金や社会福祉、公共サービスなど、
これまでと同じ社会構造では成り立たないということだ。

経済にも同じことがいえる。
米国では、各業界の概ね3分の2、欧州では半分程度が、外国企業だ。
だが日本では、いずれの業界も国内企業がほとんどだ。

東京の国際競争力を高めるには、日本企業に外国人を呼ぶのではなく、
東京に多数の外国企業を呼び込むような「開国」が必要だろう。
そのためには日本経済全体の構造改革も求められる。

東京の劣化は、2020年の東京オリンピックの数年後には兆しが見えてくるだろう。
対策を急ぐ必要がある。
祭りの後で悔やんでも、最早手遅れなのだ。・・》

注)記事の原文にあえて改行を多くした。
                         

私はこの寄稿文を読み終わった後、やがて到来する都心の情景は、
1970年代のニューヨーク市の街中の荒廃した状景に思いを重ねてしまった。

戦後、1950年代まで政治、外交、軍事、経済、文化など世界を牽引してきたアメリカが、
1960年代の中頃より、ベトナム戦争の泥沼化の中、やがて推進派と反対派で昏迷し、
そして経済は低迷し、何よりもアメリカ人の心まで疲弊させた。

こうした深刻な経済状況の中、ニューヨーク市も財政悪化となり、
建物、道路、橋、地下鉄、水道、ガス、電気などの社会基盤の補修もままならず、荒廃していった。

こうした中で、裕福な人たちは市の財政が破綻し大増税が始まることを恐れて、
市の住民の13%に相当する約100万人が、市から流出した実態を思い馳せたりした。

この当時のニューヨークの荒廃した情景を的確に表現した映画があり、
マーティン・スコセッシ・監督の『タクシードライバー』(1976年)である。
                         

やがて到来する都心は、都民の裕福な人たちは。都政の高負担・低福祉に険悪して、
香港、シンガポール、カナダなどに移住してしまうと、私は妄想を重ねたりした。

そして残された都民の大半は、益々財政悪化の中、高負担・低福祉に従属した生活を
余儀なくされて過ごされる・・。

こうした中で、《・・財政再建を達成するには、人口の減少に比例して財政規模を縮小させるしかない。
言い換えれば、年金や社会福祉、公共サービスなど・・》削減、低下は、
過ぎし年のニューヨークは大胆な政策もとで、称賛されるほどに甦(よみが)ったが、
果たして都民、周辺の人々は、特に享受してきた高齢者は、耐えられるかしら、と危惧したりした。

このように何かとプラス思考の私でも、このような悲嘆な到来を思案したりしてきた。
               

今回、都知事選に立候補の有力者として、自民党衆院議員の小池百合子元防衛相(63歳)、
自民、公明などが推薦する前岩手県知事の増田寛也元総務相(64歳)、
野党統一候補として擁立されたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76歳)、
各氏には、今後予測される東京の難題を、どのような都政で対処するか、明示してほしい。

本来ならば、テレビ討論として、御三方が徹底公論をするのが、望ぞましい・・。

しかしながら公示後には、公職選挙法第151条の5で「選挙運動放送の制限」であり、
「何人も、この法律に規定する場合を除く外、放送設備
(広告放送設備、共同聴取用放送設備その他の有線電気通信設備を含む)を使用して、
選挙運動のために放送をし又は放送をさせることができない」と制約がある、と学んだりした。

やむなく読売、朝日、毎日新聞などで、紙上討論として掲載した後、ネットで公開すれば、
と漠然と思ったりしている。
               

いずれにしても、今後も東京は難題が山積しているので、新たに都知事となられる方は、
国と連携しながら、難題を対処する意欲のある御方が、私は秘かに期待しているひとりである。

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都知事選、都知事の責務は重責であり、都民の無力な私は、真摯な願いを託して・・。【上】

2016-07-14 06:19:40 | ささやかな古稀からの思い
私は東京の世田谷区と狛江市に隣接した調布市の片隅に住む年金生活の71歳の身であるが、
結婚前後5年を除き、都民のひとりとして、この地に66年ばかり過ごしている。

私は政治にも疎(うと)く、近現代史など歴史に興味あるひとりであり、
政治家は権力と重責が収集するので、一般社会人より遥かに言動が注視され、功罪も追及される人であり、
在任中に功績が7割、罪悪が3割で有ったら、十二分に責務を果たした、と私は評価している。

代表的な御方は、あえて表示すれば、元首相の田中角栄さんである。
            

私は舛添さんの都知事を辞任されるまで過程で、最初に知ったのは、やはり5月11日発売の『週刊文春』で、
問題視されて、この後、毎週のように神奈川・湯河原町の別荘への公用車通っていたを新聞で知り、
私は動顛させられたりした。

もとより都知事は聳え立つ都庁で、約13,574千人の都民をあずかる東京都の執行最高責任者として、
そして都の約16万5千人の職員の最高責任者として、都民の安全も責務とされる。

こうした中で、『別荘にいる時に首都直下地震が起きたらどうするんだ』という記者からの質問に対して、
『全く問題ありません。奥多摩よりも、おそらく早く帰ってこられる。
少なくとも時間・距離的に言うと、早いです。湯河原の方が・・』と舛添さんは答弁された、と私は新聞で読んだりした。

舛添さんは、世田谷区にご自宅があると知り、少なくとも都知事の在任中は、湯河原の別荘には自制するのが、
本来の職責であると私は思い、これ以来、無力ながら都民のひとりとして、一寸の虫にも五分の魂、という思いで、
このサイトに幾たびか、舛添さんは都知事を辞任してほしい目的で、投稿してきた。

舛添さんは確かに学力、力量も優れた御方であるが、殆どの都民の心情も解らない御方であった、
と私は苦笑したりしている。
            

今回、新たな都知事を選出される『都知事選』は、投票日7月31日に、
これに先立つ立候補の告示日は7月14日となっている。

こうした中で、立候補の有力者として、自民党衆院議員の小池百合子元防衛相(63歳)、
自民、公明などが推薦する前岩手県知事の増田寛也元総務相(64歳)、
野党統一候補として擁立されたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76歳)、となっている。

私は恥ずかしながら都政にも無知であったので、ここ2週間に於いて、
少し都政に関係した著名人の寄稿文を10数通読んできたが、この中で私が最も解りやすかったのは、
慶應義塾大学 経済学部教授の土居丈朗(どい・たけろう)さんが、『東洋経済オンライン 』に於いて、
【 東京都知事を取り巻く「超複雑」な政治力学 】(7月11日・配信)と題された寄稿文であった。
            

そして読み終わった後、土居丈朗さんの寄稿文は、私は初めて読む御方であったので、
略歴を読み、この寄稿文を更に深めたりした。

《・・ 1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。
東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。

行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、社会保障審議会臨時委員、東京都税制調査会委員等を務める。
主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、
『日本の財政をどう立て直すか』(編著・日本経済新聞出版社)、『日本の税をどう見直すか』(編著・日本経済新聞出版社)、
『入門公共経済学』(日本評論社)、『地方財政の政治経済学』(東洋経済新報社)等。・・》

そして私が最も解りやすかった氏の【 東京都知事を取り巻く「超複雑」な政治力学 】、
大半を無断ながら転載させて頂く。
            

《・・参院選公示直前に舛添前都知事が辞任したことから、
参院選中に主要政党による都知事候補の絞り込みは、進まなかったのだ。
気がついたら公示日3日前になっていた。

結局、都知事候補は「熟考を重ねて公約を掲げる」ほどの暇もなく選挙戦に突入する。
これでは、候補者同士の深い政策論議は、期待できない。

前の都知事、前の前の都知事のことを思えば、
単なる人気投票で、次の都知事は選びたくないという有権者の思いは、すでに裏切られそうである。
            

☆都議会との良好な関係を築けるか

ともあれ、候補者のうち必ず誰かが当選して、次の都知事になる。

次の都知事は、複雑な政治力学の中での船出となる。
都議会、特別区(注・23区)、多摩地域の市町、他の道府県、中央省庁と、時として利害が一致しつつも、
往々にして利害が対立する。

その利害対立を克服して、東京都民の生活環境をどう改善してゆくかが、
東京都知事が果たす役割である。


まず、都議会議員との関係である。

舛添前都知事も、都議会での審議で、辞任に追い込まれた。
わが国の地方政治は、首長と議会の二元代表制(いわゆる大統領制)で、
それぞれが直接選挙で、有権者から選ばれる存在として、制度的には緊張関係がある。

都知事の権限は強く、都知事が決断すれば、多くのことが実現できる。
ただ、実態は、持ちつ持たれつの関係の場合が多い。

つまり、予算を企画立案し、執行するのは知事であり、予算案を議決するのが議会である。
都議会議員は自らの要望を、都知事に受け入れてもらい、予算に反映してもらい、
都知事は自らの方針をも盛り込んだ予算案を、都議会議員に議会で通してもらう。

都知事に対して、野党的な立場をとる会派に属する都議会議員は、
都知事の失政を批判し追及するが、与党的な立場をとる会派に属する都議会議員は(見返りも意識しつつ)都知事をかばってくれる。
            

しかし、都議会で都知事をかばう与党的な会派の議員が、過半数に満たないと、
予算案も都知事肝いりの条例も通らない。
予算案も条例も通らないと、都政は停滞する。

さりとて、都知事と都議会が親密すぎて、馴れ合っているように都民からみられれば、
「談合政治」とかと批判されかねない。

議院内閣制をとる国政とは異なり、
都知事が議会の多数派によって、常に支持されるという保証はない。

新都知事が都議会との良好な関係を築けるか否かに、都政の推進か停滞かが決まる。

東京都は、他の道府県と異なり、都区制度が存在する。

23の特別区のことだ。
特別区は、市町村とほぼ同格の基礎自治体だが、税制上は市町村が課す税(市町村税)の一部、
つまり固定資産税と法人住民税(区民税)、特別土地保有税の3税は、直接課さないこととなっている。

これらの税収は、いったん東京都が課税し、55%を財政需要に応じて、各特別区に配分し、
45%を都が区部の広域行政(注・交通、環境、防災・安全、インフラ整備など)のために、直接支出することとしている。

この財源配分は、都と特別区のどちらが、どれだけ財源を獲得するかをめぐり、長年にわたり利害対立があった。
都にせよ特別区にせよ、できればより多くの財源が欲しいと思っているが、ゼロサムゲームである。
            

☆保育と国保は、火種になる可能性も

そもそも、日本の地方自治は、住民に身近な行政サービスである市町村事務と、
広域的に便益が及ぶ行政サービスである府県事務から成る。

都区制度がある東京都(都庁)は、
多摩地域においては府県事務を担う(多摩地域の市町が市町村事務を担う)が、
特別区部では府県事務だけでなく、一部の市町村事務も都庁が担っている。

財源配分は、基本的に担う事務の経費に比して、財源が配分される。
近年では、都と特別区の間の事務や財源の配分をめぐる議論は、
顕著な対立点はなく平穏だったが、今後対立が再燃するかもしれない火種がある。

1つは保育、もう1つは国民健康保険の都道府県単位化である。

目下、待機児童が深刻な問題となっている保育は、基本的には区市町村が主体であって、
今般の都知事選で争点にしても新都知事にできることは限られる。

しかし、東京都は、独自の認証保育所制度を持っており、
都と特別区は、保育に関わる事務権限と財源をどちらが、どれだけ持つかを再検討することもあり得よう。

待機児童問題に対してうまく対応できないと、
都と特別区とで責任の押し付け合いになるかもしれない。
            

医療に関する国民健康保険(国保)は、これまで区市町村が、保険運営の主体(保険者)だったが、
2018年度から区市町村は引き続き、保険料徴収と給付を行うものの、
国保の財政運営の責任は、都道府県に移されることになっている。

この事務と財源をめぐり都と特別区の間で、どうするかが問われる。

特別区長も、都知事に自らの要望を聞いてもらいたいという思いがある。
しかし、都知事が特別区の要望を聞きすぎると、
都の自由度が減って自分の首を絞めることにもなりかねない。

新都知事は、特別区とどう良好な関係を築けるか。

東京都は、特別区部だけではない。
多摩地区の市町からみると、特別区は優遇されているという思いがある。

確かに、特別区部は、東京都の人口の過半を占める人口を有しており、
税収がより多く上がる地域である。

しかし、多摩地域の市町を冷遇すれば、多摩地域選出の都議会議員や首長が、そっぽを向くことになりかねない。

これからますます高齢化が進む東京で、医療や介護でも市町村の協力は欠かせない。
協力関係を維持向上させるために、新都知事は多摩地域を見捨てるわけにはいかない。
            

☆どうする、地方法人税へのスタンス

東京都以外の国民からすれば、ここまでの話をご覧になって、
税収が多く入る東京都内のぜいたくな争いで、東京以外の日本のことが蚊帳の外になっている、
と思われるかもしれない。

現に、その嫉視の思いが、政治の場で発露している。
「東京富裕論」である。
東京都だけが税収が多く増えて「豊か」になっている、という見方である。
そして、その都度、東京都(都庁)は、「東京富裕論」に反論を出してきた。

消費税率を10%に引き上げる過程で、東京都をはじめとする大都市部の自治体は、さらに税収増となる一方、
農村部の自治体は税収があまり増えず、ますます税収格差が拡大するのではないか、との懸念が出された。

これに対応して、東京都をはじめとする大都市部で集められた税収(法人住民税)の一部を、
国が召し上げて、農村部の自治体に分配するという仕組みが導入されている。
この仕組み(地方法人税)に、東京都は強く反対している。
            

新都知事はこれに関して、すでに決まったことで、東京ばかりが潤ってもよくないから、
是認する姿勢を取るのか。

東京都民が納めて、東京都や都下の自治体に入った税収を国が召し上げるという仕組みは撤回せよという、
従来からの立場を堅持するのか。

どちらを取るかを問われる。
ちなみに、この仕組みで東京都が失っている税収は、
公用車やファーストクラス運賃やスイートルームに費やした金額より、はるかに多く桁違いの金額である。
(注・増田さんが総務相時代、東京都の法人事業税と法人住民税を毎年数千億円規模で、地方へ配布していた)


東京都と他の道府県との関係は、この一事だけではない。
「東京富裕論」が高まると、東京都の要望を通しにくくなるから、
これを和らげるには(東京都が不利になり)他の道府県に有利になることにも、同意しないといけない。

かといって、東京都民が払った税金を、どしどし他の道府県に渡してしまっては、
都知事は都民のために働いていないと批判される。
新都知事が臨む姿勢は、他の道府県の住民にも影響を与える。

他の道府県との関係は、国政に影響する。
国政は、国の予算を司る。

国の予算からは、東京都も1つの自治体として、補助金などが分配されている。
国が国税として集めた税金を、どの地域に分配するかは、国の予算で決まる。
            

☆利害が一致することはありえない

ただ、中央省庁は、東京都の財政は、国に比べて、ずいぶんと健全な状態で、財源が潤沢だとみている。
だから、国は巨額の財政赤字を出しているのに、
なぜ東京都におカネを出さなければならないのかという思いが強くある。

前述した仕組み(地方法人税)も、これが背景の1つとなっている。

また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの実施にあたり、
施設などの建設費を東京都に、もっと分担してもらえないかという発想も、ここに根源がある。

しかし、東京都民も国民であり、東京都の人口は、日本の人口の約10分の1にも達する。
新都知事は、中央省庁との利害対立を乗り越えるために、手腕をどう発揮するか。

このように、新都知事は、都議会、特別区、多摩地域の市町、他の道府県、中央省庁との間の利害対立を、
どう克服するかが問われる。

しかし、これらの関係者とすべてにおいて、皆利害が一致することはありえない。
こっちを立てれば、あっちが立たず。

こうした政治力学の中で、新都知事はうまく工夫して「合従連衡」して、
都民のために貢献できるか。

そして、今般の都知事選で、その能力のある候補者を有権者が選べるかが、まさに問われている。・・》

注)記事の原文にあえて改行を多くした。
文中に『注・』は、私が補記。

長文に伴い、分割掲載をする。
               《つづく》

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