「きよ水のくわん、あひる一つかいしん上す」
<清水寺の願のため、アヒルひと番いを進上す>
すごい記載です。「御湯殿上日記」/天正15年2月19日(1587年)。突然のアヒル登場に、正直なところ、本当に驚きました。
「お湯とののうへの日記」は、内裏、宮中の御湯殿の上の間に奉仕する女官が筆録した宮廷日記です。文明9年から文政9年にまで約350年間の記録。464冊が残っています。一部欠損はありますが、たいへん貴重な日記です。(1477年~1826年)
「願」を辞典でみてみます。(がん/ぐわん・ぐはん)
願うこと。特に神仏に祈り、願うこと。物事がかなうように祈願すること。
内裏の女官は、いったい誰の、どのような願いを、清水の観音さんに願ったのでしょうか。
願の用例を参考までに。願を懸ける。願を起こす。願を立てる。
『世間胸算用』井原西鶴(藝鼠の文づかひ)の「願」には同情します。
「其(その)後、色々の願を諸神にかけますれ共、其甲斐もなし。」
この日記が書かれた天正15年(1587)はどのような時代だったのか。以下、概略です。
前年末に、秀吉は太政大臣となり豊臣の姓をうける。
3月秀吉、島津征伐のために大阪を出発。
5月島津義久、秀吉に降る。
6月秀吉、筑前筥崎にて九州の封域を定め、ヤソ教(キリスト教)の布教を禁止する。(なお「布教」を禁止したのであって、禁教ではありません。)
豊臣秀吉はこの年、日本全国制圧を完成した。彼の絶好調のころである。しかし5年後、朝鮮に出兵し、文禄・慶長の役が始まる。文禄元年~慶長3年、壬辰・丁酉の倭乱である。
<2024年9月18日>
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