里山は駒井に言われたとおり小次郎に指示した。
「小次郎、聞いてのとおりだ。適当に部屋を動いてくれ」
『分かりました…』
また、しゃべった…とでもいうように、駒井の顔は少しずつ蒼ざめていった。それでも、さすがにプロだ。仕事は忘れない。
「あっ! 少し話し合ってもらえませんか…」
小声ながらも駒井は指示を出した。
「はい…。今日は、いい天気になったな、小次郎」
『そうですね。こういう天気は久しぶりです』
「梅雨だからな…」
『梅雨は嫌ですね。ジメジメして…』
二人の会話を耳を欹(そばだ)てて駒井は聞いた。 二人の会話を駒井は耳を欹(そばだ)てて聞き、一部始終を凝視(ぎょうし)した。
「こんなもんで、どうでしょう? 信じてもらえましたか?」
「えっ? ええ…」
里山の落ちついた声に駒井は上擦(うわず)った、か細い声で返した。
「ぞれじゃ、もういいですね。おい! 小次郎、OKがでたぞ」
『あっ! そうですか。なんだ…』
少し物足りなさそうに言い、小次郎は尻尾を振った。
「それは、いいんですがねえ~」
里山が小次郎をキャリーボックスへ収納しようとしたとき、駒井は今一つ歯切れが悪そうに言った。