「それが、どうかしましたか?」
駒井は困るのだろうが、里山としては御の字なのだ。それでなくても、この話は立ち消えか…と、テンションを下げていたところだったのだ。週刊誌で騒がれて、小次郎が一躍、話題の人ならぬ話題の猫ともなれば、里山にとってこれはもう、願ったり叶(かな)ったりの進行だった。
[私が困るんですよ。それに制作部全体が…]
「開き直られるしかないでしょうよ、本当なんですから。言いましたように、器用な猫もいるもんですを押しとおされればいいんです。依頼があれば、どんな番組にでも出演させていただきますから…」
[バラエティ番組でも、よろしいですか?]
「ええ、なんでも…。視聴者もスタジオで小次郎が話す映像を見ればヤラセじゃないって分かるでしょう」
[ああ、そういう手も…。部長と話してみます。貴重なご意見をどうも…]
「いやぁ~」
里山は自分の思った方向に進んでいることに安堵(あんど)した。