コトは以外と早く進行した。駒井から電話が入ったのは、それから数日後の夜だった。
風呂上がりに沙希代の一品で軽くビールを飲んでいたとき、テーブルの上に置いた里山の携帯が激しく震動した。バイブ機能にしてあったのは、どうも最近、驚くことが多い里山が、風呂上りぐらいは気がねなく一杯をと、つい思ったからだった。
「はい、駒井です…」
[あっ! 夜分、どうも…。テレ京の駒井です。言っておりましたアノ件でお電話させていただきました。お預かりしたテープなんですが、最終選考の結果、ダントツで正式採用となりました。来週の木曜に流させていただきます。どうも、有難うございました。局の方から後日、お礼の寸志は送らせていただきますので…]
「いえいえ、こちらの方こそ…」
[ははは…部長にアノ事実は言ってないんですがね。私も腹を括(くく)りましたよ、里山さん。え~~と、なんと言いましたかね、猫ちゃんは…]
「小次郎ですか?」
[そう! その小次郎君と自爆ですよ、ははは…]
「そんな大げさな…」
[いやぁ~反響がね、どう出るか分かりませんので。恐らく、ヤラセか! とかの批判が多くなると思えましてね…]
「はあ…」
里山は慰(なぐさ)めの言葉が出なかった。