水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ②<46>

2015年02月18日 00時00分00秒 | #小説

 二日後、駒井の心配は現実になった。週刊各誌が小次郎を<話す猫! 現る>というスクープ記事として取り上げたのである。それは里山にとって、駒井とは逆に願ったり・・の進行だった。それにしても、いつかのように家の前の取材には来ないが…と、少し当て外れの感は否めなかった。まあ、これからか…と、用もないのに里山は玄関に出ようとした。
『誰も来てないようですよ…』
 小次郎が里山の気持を推(お)し量(はか)ったように、すれ違いざまに言った。
「…」
 里山は期待が外れた馬鹿顔で週刊誌を片手にキッチンへ戻(もど)った。
「騒がれてるみたいね、小次郎…」
 沙希代が、いつものように晩酌用の突き出しの小鉢をテーブルへ置きながら言った。すでに何日か熱帯夜が続き、里山は通勤でパテぎみだった。小次郎もクーラーの風が流れ落ちる位置へ寝床を変えていた。まあ、キッチンの片隅には違いなかったのだが…。
「ああ…、そのようだ」」
『そのようです…』
 小次郎が続けたあと、注がれたビールのコップをグイッ! とひと口、飲み干し、里山は週刊誌を見た。 注がれたビールのコップをグイッ! とひと口、飲み干し、里山は週刊誌に目を通した。期待感もあったが、この先、どうなっていくのか…といった漠然(ばくぜん)…という漠然とした不安も少しあった。期待感もあったが、この先、どうなっていくのか…といった漠然(ばくぜん)…という漠然とした不安も少しあった。
「なるようにしか、ならないのよね…」
 里山も小次郎も沙希代にしては上手(うま)く言ったな…と思った。


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