水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (90)反省(はんせい)

2020年07月13日 00時00分00秒 | #小説

 神さまや仏さまでない以上、人は必ず間違いを犯したり失敗したりする。そこに登場するのが、「反省(はんせい)しなさいっ! 反省をっ!!」と関係者に叱責(しっせき)される反省という言葉である。皆さんがテレビでよく目にされる「どうも、申し訳ございませんでした…[横一列に椅子(いす)から立ち上がり、直立したあと、深々(ふかぶか)と報道陣に頭を下げる]」などといった上層部のお偉方(えらがた)が反省の弁で陳謝(ちんしゃ)されるアノ画面だ。^^ まあ、謝(あやま)らないと社会やマスコミに対して格好がつかない・・という側面もあり、本当に反省されたのか? は不透明である。^^
 どこにでもあるような、とある一般家庭である。
「ただいまぁ~~っ!!」
 夏休み前の通知簿を返された小学三年生の久史は威風堂々(いふうどうどう)と玄関戸を開けた。
「あら? 久史ちゃん。早かったわねぇ~?」
 母親の美玖(みく)は訝(いぶか)しげに久史を出迎えた。
「なに言ってんのっ! 今日は終業式だよっ!」
「あっ! そうそう。そうだったわねっ! お帰りっ!」
 久史は困った母親だ…とは思ったが、通知簿のこともあり、窘(たしな)めずに流し、心に留め置いた。オール2は誰に自慢できるものでもない。だとすれぱ、自(みずか)らの公表は、さすがに憚(はばか)られる。要するに、久史は守りに入った訳である。^^
「通知簿はっ!?」
 次の一瞬、敵の攻撃は鮮烈(せんれつ)を極(きわ)め、久史の防衛陣を破壊し尽(つ)くした。
「んっ? ああ、あるよっ!」
 こうなっては俎板(まないた)の上の鯉だっ! とばかり、久史は破れかぶれで強気に出ることにした。開き直ったのだ。^^
 通知簿を手渡すと、美玖は案に相違して、久史を叱(しか)らなかった。
「ふ~~ん…」
 ひと通り見終えると、すんなりと美玖は久史に通知簿を返した。久史としては、怒られなかったから、やれやれ…という助かった気分である。だが、敵の攻撃はそう甘くはなかった。次の瞬間、直撃弾が久史の頭上で炸裂(さくれつ)した。
「まっ! 仕方ないけど、反省なさいよっ!!」
「はいっ!」
 素直に応じる以外、久史に余力は残されていなかった。
 このように、油断を突かれると、反省は存外、簡単に出来るものなのである。小学生諸君、忘れることなかれ!^^ 
  
                                     


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