水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (81)身体(からだ)と心(こころ)

2020年07月04日 00時00分00秒 | #小説

 疲れるのは、なにも身体(からだ)に限ったことではない。心(こころ)だって疲れてショボくなるのだ。^^ それを忘れると、人はダメになる弱い生き物なのである。霊長類の頂点に君臨(くんりん)し、偉(えら)そうに、どうたらこうたら[どうのこうの]と御託(ごたく)を垂(た)れてはいるが、そう大した生き物でもない訳だ。それを忘れることなく、みなさん! 頑張ってください。^^
 とあるフツゥ~の家庭である。残業を終えた夫が疲れて凝(こ)った肩を叩(たた)きながら玄関戸をガラガラ・・と開けた。
「ただいまっ!」
 だが、奥の間からア~ともウ~とも返答はない。
「もう、寝たのか…」
 萎(な)えた小声で夫は呟(つぶや)いた。そのときである。妻がボリボリと首筋を掻きながら現れなくてもいいのに現れた。
「フヮァ~~、お帰りなさい。遅かったのね」
「なんだ、起きてたのか…」
 夫はうたた寝をしていた見たくもない妻の顔を見て、いっそう心が萎えて疲れた。
「起きてたのか? は、ないでしょ!」
「夕飯は?」
「外で食べてくると思ったから作ってないわよ」
「茶漬けとお新香(しんこ)くらいあるだろ?」
「まあ…」
 不貞腐(ふてくさ)れた妻の態度に、夫はいっそう心が萎えて疲れた。頭に浮かぶのは、新婚当時の熱かった映像である。

『もうっ! 遅いんだからぁ~~! お食事にするっ? それとも、お風呂っ?』
 色っぽい妻の声と姿に夫の疲れはフッ飛んだ。

「私、もう寝るから、勝手に出して食べてねっ!」
「ああ…」
 鮸膠(にべ)もない妻の声に、夫の心の疲れは頂点に達し、食欲が遠退(とおの)いた。
 心の疲れは身体の疲れになって影響を与えるのである。このことを忘れることなく、中年以後のサラリ-マンの男性は、遅くなった帰宅時の玄関前では耳栓(みみせん)をしましょう!^^
 
                                     


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