疲れるのは、なにも身体(からだ)に限ったことではない。心(こころ)だって疲れてショボくなるのだ。^^ それを忘れると、人はダメになる弱い生き物なのである。霊長類の頂点に君臨(くんりん)し、偉(えら)そうに、どうたらこうたら[どうのこうの]と御託(ごたく)を垂(た)れてはいるが、そう大した生き物でもない訳だ。それを忘れることなく、みなさん! 頑張ってください。^^
とあるフツゥ~の家庭である。残業を終えた夫が疲れて凝(こ)った肩を叩(たた)きながら玄関戸をガラガラ・・と開けた。
「ただいまっ!」
だが、奥の間からア~ともウ~とも返答はない。
「もう、寝たのか…」
萎(な)えた小声で夫は呟(つぶや)いた。そのときである。妻がボリボリと首筋を掻きながら現れなくてもいいのに現れた。
「フヮァ~~、お帰りなさい。遅かったのね」
「なんだ、起きてたのか…」
夫はうたた寝をしていた見たくもない妻の顔を見て、いっそう心が萎えて疲れた。
「起きてたのか? は、ないでしょ!」
「夕飯は?」
「外で食べてくると思ったから作ってないわよ」
「茶漬けとお新香(しんこ)くらいあるだろ?」
「まあ…」
不貞腐(ふてくさ)れた妻の態度に、夫はいっそう心が萎えて疲れた。頭に浮かぶのは、新婚当時の熱かった映像である。
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『もうっ! 遅いんだからぁ~~! お食事にするっ? それとも、お風呂っ?』
色っぽい妻の声と姿に夫の疲れはフッ飛んだ。
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「私、もう寝るから、勝手に出して食べてねっ!」
「ああ…」
鮸膠(にべ)もない妻の声に、夫の心の疲れは頂点に達し、食欲が遠退(とおの)いた。
心の疲れは身体の疲れになって影響を与えるのである。このことを忘れることなく、中年以後のサラリ-マンの男性は、遅くなった帰宅時の玄関前では耳栓(みみせん)をしましょう!^^
完