水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (99)生きる意味

2020年07月22日 00時00分00秒 | #小説

 なんか哲学的で小難(こむずか)しい話になりそうだから端折(はしょ)るが[詳しいことは聖職の僧侶(そうりょ)、神主(かんぬし)、神父(しんぷ)さまなどにお訊(たず)ねください^^]、生きる意味を考えることは決して人生の無駄にはならないだろう。無意味に生きるのはもったいない話で、長生きするだけが能ではない! とかなんとか偉(えら)そうに言われそうだ。まっ! そんな死魔が誘(いざな)うような戯言(ざれごと)は、右から左へと受け流せばいい。もちろん、左から右でも、いっこうに構わない。^^ 折角(せっかく)こんないい国に生まれたのだから、その恩に報(むく)いるためにも有り難く生きねば罰(ばち)が当たる。などと言えば、馬鹿かお前はっ! そんなこたぁ~どぉ~でもいいんだっ! この世は、楽しめばいいだけのところさっ! 楽しんだ者勝ちっ! などと言われるお方も当然、お有りだろう。それも当然で、そういうお方は温泉に浸(つ)かり、美味(おい)しいお酒とお食事でお寛(くつろ)ぎ願えれば、それで結構である。^^
 ここは、とある温泉保養地である。退職後の元社員二人が、のんびりと露天風呂に浸かっている。程よい風が頬(ほお)を撫(な)で、辺(あた)りの景観に相まって、気分は高揚している。
「豚野(ぶたの)さんとこうして旅するのも、これで何回目になりましょうな?」
「そうですな、牛岡(うしおか)さん。かれこれ、三十回近くにもなりますか…」
「ははは…そんなになりますか…。いや、毎回、お世話になっとります」
「いやいや、こちらこそ…。最近は、旅をして自宅へ戻(もど)りますと、なんか空(むな)しゅうなりましてな。ははは…いけません、いけませんっ!」
「ははは…私もです。生きる意味を考えたりなんかします」
「生きる意味ですか? 旅するのが生きる意味でないことは確かでしょうが、ははは…」
「まあ、私らは十分、働いてきたんですから、意味なく生きてもいいんじゃないでしょうか」
「ははは…これからも有り難く生き続けさせてもらいますかな」
「そうしますか、ははは…」
 二匹の茹(ゆ)でダコの笑い声が湯煙(ゆけむり)の中に谺(こだま)した。
 生きる意味など忘れることにして、軽く生きればいい・・という、ただそれだけのお話である。^^

                                     


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