お金(かね)・・これはもう、皆さん、無くてはお困りになるだろう。^^ 現に国会議事堂でご活躍中の諸先生方さえ財源の捻出(ねんしゅつ)にお困りのご様子で、口から手が出るほど欲しい代物(しろもの)の一(ひと)つに違いない。^^ 世の仕組みを考える上で、お金の本質を知ることは、皆さんが億万長者におなりになる秘訣(ひけつ)[一番の近道]とお考えあれ。^^ そのことを忘れるから、私達はいつまでも貧乏なのである。^^
とある繁華街にある一軒の店前で、一人の客が買おうか買うまいか…と、♪思案橋ブルース♪を歌うでなく、思案に暮れていた。^^
「どぉ~されました? お客さん」
ひょいと奥から店前へ出てきた店員が、その客を窺(うかが)った。
「いや、流動性選好(りゅうどうせいせんこう)の動機がね、今一つ…」
「はあ?」
店員は意味が分からず、首を傾(かし)げた。
「ですから、流動性選好ですよっ!」
「何を言っておられるか、よく分かりません。流動性線香ですか?」
「そう! その流動性選好の動機です」
「蚊取り線香でしたら店の中です…」
店員は流動性を渦巻(うずま)き、選好を線香と早合点(はやがってん)していた。
「もうっ! そうじゃなくっ! 流動性選好ってのは、早い話、、私が今、財布に持っているお金を好んで手離(てばな)そう…と思う動機のことですよ。使えば手元を離れますよねっ!」
「はいっ!」
「お金にすれば、『やれやれ、これで他へ移動できるんだっ!』くらいの気分ですよっ!」
「そうなんですか?」
「ええ、そうなんですっ! 移動するってのは流動するってこってしょ!?」
「ええ、まあ…」
「要するに、これが流動性選好です。この気分になる動機には、取引的、予備的、そして投資的動機の三つがありましてねっ! 因(ちな)みに、株券、パチンコ、競馬、宝くじなんてぇ~のは投資的動機になります」
「? はあ…」
店員は、まさか店前で大学の講義を教わろうとは…くらいの気分だ。偉(えら)いのに捕(つか)まった…と、心で悔(く)やんだが、もう遅い。
「それが、この品なんですよ…」
客は悩んでいる品を指さし、やっと誰もが分かる話に戻(もど)した。店員としては、やれやれ…という気分である。
「この品は少し値が張ります。まあ、お財布の中身のご都合次第ですが…」
「いや、お金は十分、あるんですが…」
「あるんですか? あるんでしたら、この品ですっ!」
「いやいや、あることはあるんです。あるんですが、予備的動機が今一…」
「はあ?」
店員は小難(こむずか)しい話に、ふたたび首を傾げた。
「ですから、予備的動機がね…。いや、この品と似たのが家にあることはあるんです。ただ、まだ十分、使えるんです。ですから予備的に買っておこう…と思う動機がね。今一つ…」
聞いた店員は、好きにすればっ! …と怒れたが、そうとも言えず、笑って暈(ぼか)した。
「ははは…さようで。それじゃ、ごゆっくり」
ここは逃げの一手と思えたのだろう。店員は足早にスゥ~っと店奥へと姿を消した。
その後、どうなったか? まで私は知らない。
お金は使おうか、使うまいか…と迷う得体の知れない存在で、使おうとする決断力を忘れると、いつまでも宿便(やどべん)のように財布の中に留(とど)まるから使おうとする積極性が必要だ。但(ただ)し、遊興費も必要経費も使途が不明にならないようご注意をっ!^^
完