水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (76)回転

2021年11月12日 00時00分00秒 | #小説

 回転とは回ることだ。朝から何を言っとるんだっ! と怒られる方もあろうが、まあそういうことだ。^^ 世の中にこの回転がないと、どうも上手(うま)くいかない。この回転という言葉は、今風にはサイクルと呼ばれている。お金だって、天下の回りもの・・と言われるくらいで、回転している訳だ。と、いうことでもないが、今日の四方山話(よもやまばなし)は回転をテーマにした次第だ。^^
 とある普通家庭である。ご隠居が庭でお隣のご隠居と垣根越しに話をしている。いつやらの短編集に登場したご隠居二人だ。
「ええ、そうですっ! 懐中時計の歯車の回転がどうも悪いらしく、遅れるんですわっ!」
「機械式でっ!?」
「はあ、祖父の代からの年代物で、明治らしいですっ!」
「ははは…それだけ古いと遅れもしますなっ!」
「ですなっ! これで十何回目でしたか…」
「今どきの…そうそう! クオーツとかはダメなんですかっ!?」
「はあ、ダメなんですな、これが…。どうも、私の性(しょう)に合わないっ!」
「遅れてもですか…」
「はあ、まあ…」
「遅れるといえば、景気の回転が今一ですなっ!」
「コロナの関係もあるんでしょうが、世の中に回転が欠かせません…」
「私、最近、物忘れしましてなっ! ここの回転が悪くなりました、ははは…」
 片方のご隠居が人差し指で自分の頭を指さした。
「いや、それは同じですなっ! ははは…」
 二人は笑顔で軽く会釈すると左右に分かれ、家の中へと戻(もど)っていった。
 今日の七十六話は、世の中に回転は欠かせない・・という馬鹿馬鹿しい四方山話でした。^^

                   完


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