水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (84)潔(いさぎよ)さ

2021年11月20日 00時00分00秒 | #小説

 我が国の美学の一つに潔(いさぎよ)さというのがある。この潔さというのは、なかなかの曲者(くせもの)で、ある意味、虚栄心的なその人の見栄のような色彩がある。内心では、ぅぅぅ…なのだが、外見では笑顔で手を振って去る・・というような姿である。選挙で落選した人は、こうであって欲しい。^^ 結果、本人の人望を高め、格好よさもある訳だ。今日の八十四話は、潔さに焦点を当てた四方山話(よもやまばなし)である。
 毎度、登場する、とある老人二人の会話である。
「角鹿(つのじか)さん、落選されましたな…」
「さようで…。山多(さんた)さんが応援に駆け付けられたんですが…」
「聖和党も偉い損失ですなっ!」
「はいっ! まあ、いづれにしても、今年はコロナですから…」
「そうでした。ジングルベルも今一でしょうなっ! それにしても、角鹿さんの敗戦の弁の潔さには、つくづく感服いたしました…」
「ですなっ! 次回は一票を…と言う人も多かったんじゃありませんかな?」
「いや、私もそう思いましたっ!」
「上に立つ人は、アアでないとっ!」
「ですなっ! …私らもこの辺(あた)りで潔く去るとしますか…」
「はいっ! 咳払いも聞こえてきましたからなっ!」
 二人は三時間ばかり、辺りの人目(ひとめ)も気にせず話していたが、潔く? ベンチを立つと公園を去った。
 潔さは場合によって変化するもののようだ。^^
 八十四話は潔さの四方山話でした。私も長話(ながばなし)にせず、潔く終わることにします。^^

                   完


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