水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (86)順序

2021年11月22日 00時00分00秒 | #小説

 あいうえお、かきくけこ・・と続くが、いあうえお、きかくけこ・・とは言わない。^^ これは、順序がある、ということに他ならない。すべてのことに順序がある訳だが、では、順序が狂えばどうなるのか? それを考えてみるのも面白い。^^ 例えば、大相撲の大関が幕内の取り組みの最初に登場すれば、相撲ファンはド肝(ぎも)を抜かれることだろう。^^ まっ! この例は極端だが、やはり順序通りにコトが進めば安定感があることは確かなようだ。今日の八十六話は、順序を巡る四方山話(よもやまばなし)です。
 とある波止場である。汽笛が鳴り、主役のマドロスが格好よくカモメが飛ぶ岸壁に現れた。
「ダメダメダメッ!! そんなとこじゃないだろっ! 立ち位置っ、立ち位置っ!!」
 監督がダメ出しして、カメラが止まった。
「すみませんっ!」
「そこは彼女が登場して、君達が語るとこだろっ! 立ち位置の順序が逆なんだよっ!」
 そのとき、監督の横に座る助監督が口を出した。
「監督、アソコでいいんじゃないですかっ?」
「ええっ! そおっ?」
「はい…。二人が語り合う場所はアチラですよ、確か…」
「あっ! そうだった? 俺も年かな…」
 主役が登場して立った波止場の位置は正解だったのである。だが、監督にも面子(メンツ)がある。キャストに謝(あやま)る訳にもいかない監督は、ひと声、大声を出した。
「やめっ! やめ、やめぇ~~!! はいっ、次のシーンいくよぉ~~っ!!」
「次っ! シーン35、カット4っ!!」
 助監督は、勝手だな…とは思ったが、そうとも言えず、素直に従った。監督はカット3だろっ? とは思ったが、自分も間違ったから、まっ! いいか…と黙認した。
 順序を間違っても、スンナリいくときはスンナリいく・・という馬鹿馬鹿しい四方山話でした。^^

                   完


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