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アメリカの深い闇???

2023年07月21日 | 政治・経済
今日は国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。

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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。

ここ1年驚いていることがあります。
それは、ロシアのウクライナ侵略について、プーチンを擁護する人が、かなりの数いることです。
テレビではあまり見ませんが、ネットでは「プーチン擁護派」の方が「優勢なのでは?」と思えるほどです。

どうして、こういうことになっているのでしょうか?
私は、「アメリカが諸悪の根源派」が「プーチン擁護派」になっていると見ています。

なぜ、「アメリカが諸悪の根源派」は、日本に多いのでしょうか?
最大の理由は、日本がアメリカの属国だからです。

アメリカの属国であれば、日本に悪いことがあれば、「宗主国のせいだ!」ということになります。
実際、東欧諸国のほとんどの国で、反ロシア感情は強いです。

なぜかというと、冷戦時代東欧諸国は、ソ連(拡大ロシア)の属国だったからです。
同じように、アメリカの属国日本で、「アメリカが諸悪の根源派」が一定数いるのは理解できます。

「アメリカが諸悪の根源派」が多い他の理由。
それは、アメリカが実際、いろいろ悪いことをしているからです。

たとえば、イラク戦争。
私は、「ウクライナ侵攻は国際法違反だ!」と書いています。

なぜか?
国際法的に合法な戦争は、二つしかありません。
一つは、自衛戦争。
もう一つは、国連安保理が承認した戦争です。
ロシアの戦争は、この二つに当てはまりません。
だから、「国際法違反の戦争」「悪の戦争」です。
一方、ウクライナにとっては、「自衛戦争」「合法的戦争」です。

さて、アメリカのイラク戦争。
これは、自衛戦争ではありません。
イラクは、アメリカを先制攻撃していません。
さらに国連安保理常任理事国のうち、フランス、ロシア、中国が反対していました。
だから、イラク戦争は、「国際法違反の戦争」「悪の戦争」なのです。

もし私が、「イラク戦争はいいけど、ウクライナ侵攻は悪だ」といえば、「ダブルスタンダードだ」と批判されるでしょう。

しかし、私は2005年に1冊目の本を出してから、ずっと
「イラク戦争は国際法違反の戦争」
と書きつづけてきました。

イラク戦争については、日本以外のいわゆる「国際社会」では、「悪の戦争だった」というのが定説になっています。
それで、「アメリカが諸悪の根源派」は、「アメリカだってイラクを侵略したじゃないか。なぜアメリカはよくて、ロシアがやるとダメなのだ」と考える?

私は、「アメリカのイラク戦争も悪で、ロシアのウクライナ戦争も悪なのだ」と考えます。
そして、二つの戦争の共通点は、二つとも【大戦略的失敗】であることです。

アメリカは、イラク戦争を始めてから5年後に没落。
「アメリカ一極時代」は終焉しました。
ロシアも、相応の代償を払うことになるでしょう。
それは、「悪いことをしたから」というより【大戦略的失敗】をプーチンがしたからです。

さらに、アメリカについて。
アメリカが世界中を盗聴していることを暴露した元CIA、NSA職員エドワード・スノーデン。
アメリカ軍がアフガニスタンやイラクでの悪事を隠蔽していることを暴露したジュリアン・アサンジとウィキリークス。

この二人が、2010年代に暴露したことは、多くの人に衝撃を与えました。
二人は、真実を暴露したことで逮捕された「英雄」となった。
この二つの事件を深く学んだ人は、「アメリカが諸悪の根源派」になる可能性があるでしょう。

ちなみにスノーデンは、ロシアに亡命しました。
プーチンは、「勇敢な内部告発者を保護した英雄」と一部の人から思われるようになりました。
ただ、この件で、知っておいた方がいいことがあります。
それは、プーチンも、できるかぎり盗聴をしている。

そして、ロシアは、言論の自由に関して、アメリカと比較にならないほどひどいということです。
以前にもお伝えしましたが、6年生の女の子が、学校で戦争反対の絵を描いた。
すると、父親は逮捕され、描いた女の子は、孤児院送りにされた。
「アメリカが諸悪の根源派」は、ここでも「プーチンの方がアメリカよりマシだ」と勘違いしています。
実際、盗聴に関しても、言論の自由に関しても、ロシアの方がアメリカよりも、ずっとひどいのです。

▼アメリカの深い闇???
話は変わりますが、私がとても尊敬しているジャーナリストがいます。
産経新聞の田村秀男先生です。
田村先生は、経済通。
安倍元総理、田村先生のいうことを聞いたときはうまくいっていました。
しかし、田村先生のいうことを聞かなくなると、とたんにうまくいかなくなりました。

私は、ある人の記事をずっと読みつづけています。
一貫してはずれている人。
主張がコロコロ変わる人。
一貫して正しい主張をつづけ、ブレない人。
最後の、一貫して正しい主張をつづけ、ブレない人は、ほとんどいません。

田村先生は、数少ない人の一人です。
さて、そんな田村先生が、新刊
◆『現代日本経済史』
詳細は↓
を出版されています。

全国民必読のこの名著に、とても興味深い記述がありました。
皆さん、2009年に亡くなられた中川昭一さんを覚えておられるでしょう。
経済産業大臣、農林水産大臣、財務大臣を歴任され、「未来の総理」と思われていた方です。

2008年10月11日のこと。
(@2008年9月15日のリーマンショックから「100年に1度の大不況」がはじまっています。)
中川さんは当時、財務大臣でした。
10月11日、ホワイトハウスでG20財務大臣、中銀総裁の歓迎レセプションがありました。
このレセプションの最中に、中川さんは驚きのニュースを受け取ります。
「アメリカが北朝鮮に対する「テロ国家指定を解除する」
というのです。

中川さんは、日本人拉致問題の解決に執念を燃やしておられたので、このニュースを聞いて激怒しました。
即座にブッシュ大統領のところにダッシュして、
「大統領、北朝鮮に対するテロ指定解除とはどうしてですか。日本人などの拉致問題をどうするつもりですか」
と迫りました。

大慌てのブッシュは、「コンディ(ライス国務長官)にきいてくれ!」といって、逃げ出します。
日本に帰国した中川さんは、米国防総省の元高官G氏に会い、いいます。
「『日本はいくら世界のためだ、黙ってカネを出せと米国から言われても、
“キャッシュ・ディスペンサー(現金自動支払機)”になるつもりはない』
とブッシュ大統領に伝えてくれ!」

この時、通訳として同席していたのが、田村先生だったのです。
Gさんは、驚いていましたが、「必ず伝えます」と返事をしました。

そして、おそらく、ブッシュに伝わったのでしょう。
この後、日本のホープだった中川昭一さんに、悲劇が襲います。
<以来、中川さんは失脚への道を辿る羽目になりました。>

中川さんは2009年2月14日、イタリアでG7の財務大臣、中央銀行総裁に出席しました。
その後、中川さんは、白川日銀総裁、篠原財務官と共同記者会見に臨みます。

これがいわゆる「酩酊会見」です。
@動画↓

一連の流れを知っている田村先生は、
<完全に意識が朦朧(もうろう)、思考停止とは、あまりにも異様です。
「誰かが仕掛けたのではないか」とも考えます。>
と書いておられます。

中川さんは帰国後、大バッシングにあい、酩酊会見から3日後の2月17日、辞任に追い込まれました。
そして、2009年8月の衆院選で落選。
2009年10月4日、自宅で亡くなっているのが発見されました。

@動画↓

この一連の流れ、田村先生は、事実を語っておられるだけで、何の結論も出されていません。

一連の流れを見ると、
・2008年10月11日、中川さん、ブッシュ大統領に、「なぜ北朝鮮のテロ国家指定を解除したのだ!」と詰め寄った。

・中川さんは数日後、米国防総省の元高官G氏に会い、
「日本はアメリカの現金自動支払機にはならないとブッシュ大統領に伝えてくれ!」という。

・2009年2月14日、ローマで「酩酊会見」。
・2009年2月17日、「酩酊会見」が原因で、辞任。
・2009年8月、衆院選で落選。
・2009年10月、自宅で死亡。

中川さんがブッシュに反抗してから亡くなるまで、ちょうど1年です。
皆さん、これ偶然だと思いますか?????????

アメリカに関しては、そもそも日本が属国であり、「日本の不幸の原因は、全部アメリカのせい」と考えやすい。
それに、イラク戦争、スノーデン事件、ウィキリークス事件など、闇の部分も多い。
それで、「悪のアメリカと戦うプーチンは善だ」という人が一定数いるのでしょう。

しかし、アメリカが悪だからといって、プーチンが自動的に善になるわけではありません。
善悪を語るなら、ダブルスタンダードは排し、一つの基準で語るべきです。

イラク戦争は国際法違反の悪の戦争だった。
同じように、ウクライナ戦争は国際法違反の悪の戦争なのです。

そして、戦略的にいうと、
侵略したプーチンが勝てば、
習近平も、「プーチンは欧米日に勝った。俺が台湾に侵攻しても、欧米日に勝てるだろう」
と確信し、台湾侵攻の可能性が高まります。

善悪論からも、勝敗論からも、プーチンに勝たせないことが大事です。


ちなみに、今日の出所
◆『現代日本経済史』
詳細は↓

田村先生が50年間記者として働いてきて、見てこられた歴史的大事件の裏話が満載です。
迷うことなくご一読ください。
絶対お勧めです。

---owari---
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2 コメント

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初めまして、お邪魔します。 (Jiro)
2023-07-24 14:03:02
拝読していて分からない事。
それは国際法という人が多い事ですが
そんな夢物語が存在するのでしょうか?

物事は非常にシンプルで、戦争の大義名分だろうと
思います。➡ そこに正義はあるか?

簡単に言えば、戦争に正義なんかはありません。
要は、当事国の国益重視だけです。

なので、弱肉強食の世界の中で武力が正義です。
弱者がどれほど騒いでみても意味はありません。

日本は米国の属国ですが独立国になるにはそれ
相応の武力と経済力を持てばよい事になります。

国際法に違反するロシアは世界から排除されたか?
現実はモスクワには弾一発も落とされていません
から世界各国は無関心というのが正しいと思います。
誰も他人の為に火の粉を被りたくない。
これは学校で頻繁に起こる虐め問題と同一です。

正義を語り貫くには自分も血を流す覚悟がなければ
単なる戯言だろうと思われます。
返信する
こんにちは (このゆびとまれ!です)
2023-07-25 15:04:36
こんにちは (このゆびと~まれ!です。)

Jiroさんへ
コメントありがとうございます。

おっしゃる通り「国際法」で世界の戦争や内戦は解決できません。
それは、法(ルール)は権力に屈するからだと思います。
確かに、戦争は大義名分だとおっしゃることも分かりますが、イラク戦争のように「イラクは大量破壊兵器を持っている」という大義名分は事実ではなかったのです。

私は、「正義とは何か」という観点は、この地上から悪を減らし、正しいものを増やすということのために必要だと思っています。
悪しき国が他国を侵略し、多くの人々がその悪しき侵略によって苦しむのならば、それは悪です。
そのときには、国連や他の大国が、その悪事を止めるべきなのです。それが正義だと思います。

通常、正義という名で呼ばれているものは、秩序の維持を目的とするものです。神の創られた世界のなかで、人間をはじめとする万象万物がその生命を維持してゆくためには、調和ある秩序というものが必要とされます。

ゆえに通常の場合には、秩序を維持するための考え方と行動とが正義と見なされるのではないでしょうか。また、「正義の根本」にあるものは、「人々への愛」ではないかと思います。

「地球的正義とは何か」について答えるとするならば、「世界の方々から見て、地球的正義に見えるかどうか」ということが一つの判断基準になると思います。

一つの大きな力を持った国がリーダーとなって世界を導いていくかたち、すなわち、各時代のいわゆる覇権国家、最強の国の考える「正義」が「地球の正義」になる場合もあれば、また、国際連合等の、現代の国際社会において多数の同意を得られた考えが「正義」と考えられる場合も多いかと思います。

最後は、それぞれの国に、応援する国家が付くはずですので、応援する国家の意見も交えて、「地球的レベルでの正しさとは何か」ということが決まっていくのではないでしょうか。
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