国際関係においては、「その場になってから考える」というのは柔軟な姿勢のように見えて、実は下策である。まずは自分の立場を鮮明にする宣言を出す。その宣言に100%守るかどうかは、それこそケース・バイ・ケースだが、「日本には日本なりの外交があって、それはこういう基本理念に基づく」と周囲に明らかにしておけば、相手の要求を断わる口実はいくらでもつくれる。
しかし、現実の日本はそうした主体的な理念を掲げていないから、アメリカや中国から要求を突きつけられると、そのまま受け入れるしかないということが続いてきた。一方で、「国連中心主義」だとか「憲法九条の精神」だとかを掲げても、それは日本が国際社会において主体性を放棄するという前提だから、日本の独立、自立を回復し、維持するための方策とはなりえない。
これは、「これまではこうだった」という話である。だが、繰り返すように「災後派=戦前派」は違う。「災後派」が主導するようになれば自ずと日本は変わる。その可能性と能力について私は語っている。
日本外交は「おカネを出すだけ」から今後は「口を出す外交」をしていかなければならない。黙って毟(むし)られることに終止符を打つ必要がある。それを志向するのに、いまの日本は絶好機である。
一つは、「東日本大震災の影響でもう日本に資金はない」ということができる。
サハリン南端にあるコルサコフ(旧・大泊)港に行ったが、最新鋭のロシアの駆逐艦が六隻並んでいた。この状況を知れば、日本人はすぐに「北方領土が獲られる!」といった話になるが、逆からいえば、ロシアに軍艦を六隻も建造させてロシア経済に打撃を与えたと見ることもできる。
かつてレーガン大統領が「スターウォーズ計画」まで持ち出してソ連を軍拡競争に引きずり出し、結果的にソ連経済の崩壊を早めさせた戦略である。ロシア経済は原油市況に大きく左右される不安定さを抱えており、彼我(ひが)の経済力、技術力からすればこちらのほうが優位戦を構想できる。
中国の空母建設についても同様で、「中国の技術レベルは知れている。何の役にも立たない航空母艦を、大金をかけて一所懸命つくっている」と見なすこともできる。
ここで重要なことは、彼らの行動を横目で見ながら「日本も原子力潜水艦を建造する用意がある」と、ひと言いっておくことである。
(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)
---owari---
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