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神道の世界観を外国人に語ろう(後編)

2022年12月17日 | 日本
日本は古い神社や仏閣と最先端のハイテク技術が同居する「ワンダーランド」。

(宇宙は時計仕掛けか、生成発展するものか)
古事記では、最初の神が現れた時、「大地はまだ若く、水に浮く脂(あぶら)のようで、海月(くらげ)のように漂っていて、しっかりと固まっていませんでした」と説く。

そこから、神々が国土を作り、その上で人々が田を作り、水を引く。神や人や万物が力を合わせて何事かを生みなすことを、神道では「むすぶ」と呼ぶ。男女が結ばれて、家庭を作り子をなす。農民が土や水などと力を合わせて作物をなす。

「むすび」の「むす」は、「うむす」が縮まった形で、「うむ(産む)」と同じく、「物の成り出づる」ことを言う。「むすこ」「むすめ」「苔むす」は、この意味である。「び」は「ひこ(彦)」「ひめ(姫)」など、「物の霊異(くしび)なるをいう美称」である。したがって、「むすび」とは万物を生成する不思議な働きを指す。

この「むすび」に示されるように、神道の世界観では世界は生成発展するものであり、人間もそのプロセスに参画する。

これに対して、キリスト教では唯一絶対神が宇宙を創造し、あとは人間も自然もその「時計仕掛け」の一部として運動を続けるのみである。この世界観では生物が勝手に進化するという進化論は受け入れられない。今でもアメリカでは42%の人々が「神が今の人間をそのままの形で作った」と信じている。

人間の努力も与(あずか)って世界が生成発展するという神道の世界観は、人類が科学によって自然法則を発見し、それを応用して新たな技術を生み出すという技術革新を後押しする。

経済学者ヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションが経済発展をもたらすことを主張したが、そのイノベーションとは既存の要素の「新しい結合」であると考えた。異なるものの「むすび」が新たなる生成発展をもたらすという神道的世界観と同じである。

技術革新は日本企業の強みであるが、それはこの「むすび」の考え方が後押ししているからと考える。特に現場の作業者一人ひとりまでが「改善」に参加するという日本の製造業における「改善サークル」「改善考案」は今や、世界の製造業のグローバル・スタンダードになりつつあるが、その根底にあるのも、人間が世界の生成発展に参画する、という神道の考え方だろう。

(神道的世界観の中で生まれた幸福と責務)
こうして見ると、現代のグローバル社会における環境運動、自由民主主義、大脳生理学、自由市場経済、技術革新などのトレンドは、みな神道的世界観と親和性が高いことが判る。

逆にキリスト教的世界観と、現代文明はきわめて相性が悪いことが見てとれる。考えて見れば、キリスト教が支配した中世から訣別して始まったルネサンスや宗教改革が西洋近代の出発点となった。

そこから産業革命、自由民主主義、自由市場経済、ついには現代の「リベラル」にまでつながってくるが、この点に関して、山村氏は田中英道・東北大学名誉教授の『日本人にリベラリズムは必要ない』から、こう指摘する。

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もともと「リベラル」そのものが伝統的な「反キリスト教」から始まり、政治思想的には17世紀の「キリスト教からの自由」で始まったイギリスのジョン=ロックに始まり、経済的にはアダム=スミスから、心理学的にはフロイトから始まったといわれているからです。
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西洋近代は、キリスト教との戦いの中で「キリスト教からの自由」を訴えざるを得なかった。しかし、それを追求する過程で、キリスト教が支えていた宗教的道徳も失うことになってしまう。その結果の「神なき近代文明」が現代人から安心立命を奪ってしまった、と言えるのではないか。

(古いものと新しいものが同居するワンダーランド)
山村氏は外国人観光客数十人に「日本の良いところはどこですか?」とアンケートで聞いたことがあるという。
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その結果を見ると、50%以上の外国人が、「日本には、古いものと新しいものが共存し、同居しているところ」と、答えていました。
古い神社や仏閣と最先端のハイテク技術がなぜ同居するのか。また、日本人は新しいものを好む傾向があるのに、なぜ古いものを残そうとするのか。
日本人にとっては、神社以外にも仏閣や古い家屋の残る日本の当たり前の風景ではありますが、外国人から見れば、日本は「なぜか古いものが残っている」ということが、「ワンダーランド」に見えてしまうのです。
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外国人、特にキリスト教徒から見れば、「古いもの=キリスト教」、「新しいもの=現代文明」で、両者は基本的に相容れないところがある。しかし、日本では「古いもの=神道」であって、それは以上述べたように、現代文明を包摂し、より良き方向に導く力を持ったものである。

神道的世界観は現代文明の自由化、民主化、技術革新などを肯定しつつ、自然や共同体の中で共生し、より良く生きる道を教えている。そのような世界観の下で生まれた我々日本人の幸福をよく噛みしめつつも、外国人にもその世界観を共有する責務を我々が担っていることを知るべきだろう。

昨年(2017年)の訪日外国人客数が28百万人を超え、政府は2020年には4千万を目標としている。神道的世界観を世界に共有するには絶好の機会である。

しかし、神道は言挙げよりも、まずは自然の美しさ、有り難さを感じとる処から始まる。そのためには、各国首脳が神宮参拝で感じとったように、まずは我々日本人がこの美しい国土を大切にし、それの姿を見て貰うことが出発点だろう。
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)

---owari---
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