先月26日に、政府は天皇陛下の退位を実現する特例法案の骨子をまとめ、衆参両院の正副議長が与野党に提示した。法案名を「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」とした。政府・与党が骨子原案で示した法案名の「天皇陛下」が「天皇」に戻るなど、3月に正副議長のもとで取りまとめた国会見解に大筋で沿った内容となっています。
法案名で民進党は、「天皇」と一般化することで将来の天皇にも適用できる余地を残すよう求め、政府・与党が譲歩して、法案名に「陛下」を外したのです。
この「陛下」を外す、外さないはどちらでもよいと思われるかもしれませんが、実は重要な観点があります。私は陛下を外す呼び方にとても違和感があるのです。
現在の「皇室典範」では、第23条に「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后の敬称は、陛下とする」と定められています。
しかし、明治期から一般的に「陛下」という語は、天皇に対して上奏をする際に文書中で天皇を指し示す語であったのですが、天皇ご本人に上奏するなど畏れ多くて無理なので、「陛下」、つまり玉座へ続く階段の下にいる取次ぎの従者に対して申し上げるという形式をとっていたとのことでした。
それならば、上奏文の中で「陛下に申し上げる」というのは至極妥当ですが、現代のように天皇ご本人に対して「天皇陛下」と呼びかけるのは違うのではないかという意見になるわけです。いわば、天皇ご本人に対して「天皇の階段の下の従者」と呼びかけているようなもので、むしろ失礼ではないのかというお話になるのです。
そうであるならば、「天皇陛下」の「陛下」を外してもよいのではないかという議論となり、法案名から「陛下」を外すようになったと思われます。しかし、これは無謀なことだと私は思うのです。なぜ、無謀なのかについてお話します。
「陛下」という呼称については、明治維新の立役者の多くが下級武士で有った事を考えると、意味や用法も良く知らずに決めたのではないか、というご意見もあったのですが、私はそうは思わないのです。
「陛下」とは、もともと「天皇」を指し示すお言葉なのです。
「陛」の意味は、「きざはし(階段)」であり、「天子の宮殿の階段」を表しています。その階段の下にいる者を「陛下」といいます。
さて、では「陛下」がなぜ天皇ご本人を表す呼称なのでしょうか。
それは、この「きざはし(階段)」の上におられる方が、「天照大神」だからなのです。
「天照大神」は日本の神々の中で最高神の地位を占める神様で、太陽の神であり、高天原(たかまがはら)の主宰神です。皇室の祖神であり、日本民族の総氏神でもあるのです。
したがって、古来より天照大神という存在が国家神として認められ、伊勢を中心として、日本全体がそれを承認してきて、今の皇室制度は成り立っているわけです。
天皇制は何ゆえ存在するかという問いに対して、憲法学者である芦部東大名誉教授は「皇室は天照大神の子孫である」と言うことがその根拠となっていると述べているのです。
今回の法案名について、政府は民進党に配慮して、法案名に「陛下」を外したということですが、これは大きな間違いだということに気付いていただきたいのです。
赤坂御苑で開かれる春と秋の園遊会で、「陛下」とお呼びしていたものを、「天皇」、「天皇さん」とお呼びするのは、あまりにも無礼な呼び方になるのではないでしょうか。
民進党はそのことを分かっていて要求したのかはわかりませんが、「天皇」を蔑ろにしようとするたくらみがあると思わざるを得ないのです。
---owari---
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