このゆびと~まれ!

「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

世界の子供たちに愛されている『ポケモン』『ONE PIECE』

2019年04月06日 | 日本
今日も日下公人著書「新しい日本人が日本と世界を変える」より転載します。

アニメーションの世界は日本の作品が主流となって久しい。相手国の文化や価値観に影響を与えていくこうしたソフトの力は、長期的に見れば統計数字などには現れない。数値化できない大きな影響を与える。

たとえば『ポケットモンスター(ポケモン)』は登場して20年が経つが、国内外での人気はいまもきわめて高い。夢中になってポケモンを見た世代が大人になっている。

かつてアメリカ滞在中に招かれたホームパーティーで、こんな話を聞いたことがある。
海外出張の多い父親に子供が寂しさを募(つの)らせていた。もっと家にいてほしいとせがまれ、彼もそろそろ仕事を変えようと考えていたが、日本に出張することになった。

そこで「お父さんが今度行くにはポケモンの国(日本)なんだよ」と言うと、子供は目を輝かせて、「えっ、本当?それなら行ってらっしゃい。その代わりポケモンのおもちゃをたくさん買ってきて」と明るく送り出してくれたという。

アメリカの家族の中で、ポケモンがどんな存在かがうかがえる。ポケモンは、アメリカに上陸してから二世代にわたって受け入れられている。

ポケモンにかぎらず、日本のアニメーション、もっと広く日本のポップカルチャー全般の世界への浸透を考えれば、日本の外務大臣が国連でポケモンを話題に演説しても少しもおかしくない。ポケモンはアニメに関するあらゆる記録を破って登場したのだから、知らぬは日本人ばかりかもしれない。

受験秀才として勝ち上がって政治家や官僚になったような人間にはそうした発想力、柔軟性はないだろうが、諸外国の国民に向けてメッセージを発しようとしたら、ポケモンの世界観、哲学をふまえて日本の主張を展開することは何ら荒唐無稽(こうとうむけい)ではない。

では、ポケモンの哲学とは何か。物語の結末を見ると、みんなで話し合って、わかり合って、許し合って、涙を流して・・・・・というものが多い。

『ONE PIECE』(ワンピース)という、漫画も似たところがある。
海賊となった少年ルフィを主人公とする海洋冒険ロマンだが、仲間たちとの友情が基本テーマで、仲間をけっして見捨てない。また戦い終わったら相手とも心を通わせるという物語である。海外では翻訳版が35以上の国と地域で販売され、海外でのコミックス累計発行部数も6000万部を突破している。

日本人がつくる物語の特長を、この二つの作品はよく表している。結末が爽(さわ)やかなのである。

だが、たとえばアメリカが活劇をつくると、最終的には神と悪魔の戦いのような善悪二分法の世界となって、悪を倒す戦いも皆殺しや殲滅(せんめつ)となる。お互いがわかり合う、許し合うという結末はあまりない。アメリカの子供たちは和解という結末があり得ることを「ポケモン」や「ONE PIECE」で知り、それまでのアメリカ人とは異なる価値観、考え方に触れるようになった。

日本人は、戦って勝ち獲(と)ったものは長続きしないことを無意識のうちに知っている。だから、なるべく仲良くしようとする。

お人好しは、日本では美徳である。そういう日本人を理解せずに怨(うら)みに思って仕返ししてくる人たちにはそれなりに対応しなければならないが、日本人はそこにある種の空(むな)しさが伴うことを知っている。

もちろん、日本のアニメーションにも暴力的で平和的でないテーマや結末の物語はたくさんある。『第三の波』の著者アルビン・トフラー氏と食事をしたとき、彼が「日本のアニメーションはセックスと暴力場面が過激で、子供の精神に悪影響を与える」と言うので、私はこう反撃した。

「日本は一年間にアニメ作品を数千本も制作している。テーマも描写も多様である。上品なもの、ほのぼのしたものから、暴力やセックスを描いたものまで日本には全部そろっている。その中から、あなた方がセックスと暴力をテーマにした作品ばかりを買っているのではないか。あなたたちのほうが偏(かたよ)っている。日本のアニメーションを全部見てから意見を述べるべきである」

トフラー氏は、「とても合理的な説明だった」と理解してくれたが、日本の外務省もこのくらいの説明ができなければ存在意味がない。だが外務省が何もしなくとも、たとえば『少年ジャンプ』のモットーである「友情・努力・勝利」という価値観は、その作品を通じて世界の子供たちのあいだに広がり、愛されている。

---owari---

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国内のみならず海外でも高い... | トップ | 世界の体操界が尊敬する内村... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本」カテゴリの最新記事