正倉院は、奈良県奈良市の東大寺大仏殿の北北西に位置する。校倉造(あぜくらつくり)の大規模な高床式倉庫。聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめとする、天平時代を中心とした多数の美術工芸品を収蔵していた建物で、1997年に国宝に指定され、翌1998年に「古都奈良の文化財」の一部としてユネスコの世界遺産に登録されている(byウィキペディア)。
私は2年前、錦秋の奈良を訪れました。奈良国立博物館の正倉院展を観るためだったのですが、その前に「正倉院」をこの目で見たくて、現地を訪ねました。正倉院を一目見て感じたことは、「とても大きい!」と思ったことでした。
私は教科書の写真で見た正倉院しか知らなかったので、現物のスケール感は想像できなかったのです。今から1200年以上前の奈良時代にこれほどまで大きくて、宝物を守るために室内の湿度が自動調節される校倉造を考案して実現していたことに驚いたのでした。
奈良に行かれた際は、ぜひ一度、正倉院の現物を現地で見ていただきたいと思います。
今日はこの正倉院について、「日本人が知らない日本」(著者・伊勢雅臣さん)より転載します。
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天平勝宝8(756)年、聖武天皇が崩御(ほうぎょ)されたのだが、光明(こうみょう)皇后のお嘆(なげ)きは深く、天皇の遺品を東大寺に献(けん)ぜられた。その品々は約一万点にも及び、それぞれに由緒、来歴、造作、形式などを正確に記載した『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』が作成された。
その内容は仏具、武具、文房具、楽器、遊戯具、調度、食器類、装束(しょうぞく)、文書類など、美術品のみならず文化人類学や民俗学的資料に及んでいる。また唐代の遺品も数多く含まれ、さらに遠く中近東・ギリシャ・ローマにつながるものも少なくない。
このようなコレクションは世界でもほとんど例がないために、正倉院の宝物は、世界中の人々から驚異の眼差しで称賛され、人類の宝とまで呼ばれている。
宝物の保存状態も、時代の最先端をいっていた。まず建物が檜(ひのき)材を井桁(いげた)状に積み重ねた「校倉造」で、空気の吸入、排出の作用があり、湿度が調整される。檜材の放つ芳香が、室内の空気を清浄にし、殺菌の効果を持っている。
さらに宝物は杉の唐櫃(からびつ)に入っており、湿度は70%に保たれ、空気に触れることも少なかった。日本の古代からの木造建築の技術が活用されたのであろう。
貴重な文化財を国家が管理・保存し、展示するという「博物館」の概念は、16世紀フィレンツェのウフィチ美術館、18世紀中葉の大英博物館、同世紀末のルーブル美術館などを通じて確立されたものだが、この意味で正倉院は現存する世界最古の博物館と言っていい。
---owari---
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