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戦略的に動くバイデン、大国〇〇〇、〇〇〇と和解へ

2021年07月13日 | 政治・経済
今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。

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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。

バイデン政権が誕生して4か月。
RPEが予想していたとおり、

・米中覇権戦争はつづく
・日米関係は良好
ということが、はっきりしました。

残る問題は、「バイデン政権は、【戦略的】に動けるのか」ということです。

▼トランプ政権の功績と問題点
トランプ政権、最大の功績は何でしょうか?
「米中覇権戦争を始めたこと」でしょう。

特に2018年10月のペンス演説以降、ものすごい勢いで、チャイナ・バッシングをしてきました。
トランプさんは、「米中覇権戦争をはじめた大統領」です。

ですが、問題もありました。
トランプさんの政策は、「アメリカ・ファースト」。
「アメリカ第一主義」であると同時に、「アメリカ単独行動主義」でもありました。
彼は、「同盟国と相談して何かする」ことがなかった。
彼の中で同盟国は、「守ってやらなきゃならない、金のかかる存在」(=負債)というイメージだった。

それで、日本に、「米軍駐留経費の日本負担を4倍増やせ」と要求したといわれています。
彼の頭の中では、反ロ軍事ブロックNATOも、「負債」。
それで、欧州の首脳に会うたび、「軍事費をもっと増やせ!」と要求し、非常に嫌われていました。

トランプさん時代のアメリカと他国の関係は、どんな感じだったのでしょうか?
・日米関係 = 安倍さんが懐柔し、比較的良好。
・米欧関係 = トランプは、欧州諸国に大幅な軍事費増加を要求しつづけ悪化。

特にEUの盟主ドイツとの関係が最悪に。
・米ロ関係 = トランプは、プーチン好きで関係改善を目指す。
しかし、米議会は、「トランプはプーチンの傀儡だ」と見ており、関係改善を許さず。

・米中関係 = 米中覇権戦争がはじまって最悪に。
・米朝関係 = トランプと金正恩の関係は良好。しかし、米朝関係は、双方妥協せず、悪いまま。

こんな感じで、トランプ時代のアメリカは、ほとんどすべての国と関係が悪かった。
その主な理由は、トランプさんが、「同盟国はお荷物で、アメリカに不必要な存在」と考えていたこと。

▼バイデンは、「同盟戦略」を採用する
アメリカは、現時点で世界最強の国です。
しかし、「単独で中国に勝てる」と思うのは、甘すぎです。

もし中国が、日本、欧州、インド、ロシアを味方につけたら?
もちろん、アメリカに勝ち目はなくなります。
結局、米中覇権戦争の勝敗は、「他の大国の動向」に左右される。

「他の大国」とは、日本、欧州、インド、ロシアです。
この4つの勢力の多くを味方につけた方が勝つ。
だから、同盟国は、トランプさんが思っているような「負債」ではなく、「資産」なのです。

バイデンさんは、このことをよくわかっていて、はっきり「同盟戦略」をとっています。
彼は、安倍総理が考案し、トランプさんが採用した、
「自由で開かれたインド太平洋戦略」を継承、強化、発展させていく意向を示している。

日本、アメリカ、インド、オーストラリアの「クアッド」に、
イギリス、フランス、ドイツを加えていく。

そして、アセアン諸国の国々を「反中同盟」側に引き入れる工作をしています。
彼は、中国が強くなりすぎて破壊された、アジアのバランスオブパワーを、
日米印豪英仏独を結びつけることによって回復させようとしている。

リアリストの戦略を採用しています。
▼ドイツ、ロシアがカギ
世界の大局を見てみましょう。

米中覇権戦争が起こっている。
どっちが勝つかは、日本、欧州、インド、ロシアを味方にできるかどうかできまる。
日本の菅さんは、親中二階さんの支援で総理になった人。
ですが、親米麻生派、細田派からも支持されている。

それで、米中の間を、ふ~らふら、ふ~らふらしています。
しかし、総理の訪米で、「アメリカより」になっている感じですね。

インドは、どうでしょうか?
この国は、去年5月6月の中印国境紛争で、20人の兵士を中国に殺された。
それで、「非同盟外交」の方針を捨て、アメリカ側につくようになっている。

ロシアは、現状はっきり中国側についています。
アメリカが、中東→中国のシーレーンを支配していても、
ロシア→中国の石油・ガス供給を止める術はありません。
だから、ロシアが中国側についているのは、非常にまずいのです。

これは、リアリズムの神様ミアシャイマーも、世界一の戦略家ルトワックさんも同じ意見です。
バイデンは、なんとかロシアと和解しなければならない。

欧州はどうでしょうか?
欧州は、2015年時点で、完全に中国側でした。
こぞって、中国主導の国際金融機関AIIBに入ったことがその証拠。

しかし、2019年頃から、変わってきた。
理由は、香港問題やウイグル問題です。
香港の旧宗主国イギリスは、中国が返還時の約束
「50年間は一国二制度でいく」を破ったことに激怒し、反中になりました。

ドイツやフランスも、「100万人のウイグル人を強制収容している」という情報を無視できず、徐々に反中になっていきました。

▼バイデン、ドイツ、ロシアとの和解に動く
米AXIOSは5月18日、
バイデン政権が、「ノルド・ストリーム2」プロジェクトを監督する企業への制裁をやめると報じました。↓

これ、背景を知らない人が読んでも、意味がわからないでしょう。

簡単に説明します。
ロシアの天然ガスは、主に西の隣国ウクライナを経由するパイプラインで欧州市場に送られています。
しかし、ウクライナでは04年と14年に革命が起こり、「反ロシア派」が政権についている。
そのため、ロシアとウクライナの間でしばしば対立が起こり、
欧州へのガス供給が滞ることがあった。

これは、供給するロシアも、供給される欧州(主にドイツ)側も困る。
そこで、「ウクライナを迂回しないパイプラインを建設しよう」となった。

そして2011年、ロシアとドイツを直接結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム」が完成したのです。

さて、ロシアとウクライナの関係は、2014年2月の革命と、2014年3月の「クリミア併合」で、さらに悪化しました。
それで、2016年、「ノルドストリーム2」の建設がはじまったのです。

アメリカは、二つの理由で、このプロジェクトに反対です。
そのロジックは、
・アメリカは、ロシアの脅威からドイツを守っている。
しかしドイツは、ロシアから大量のガスを買うことで、敵であるロシアに大金を送っている。

これは、おかしいと。
もう一つ、シェール革命で世界一の産ガス国になったアメリカは、欧州にアメリカ産の液化天然ガス(LNG)を買わせたい。
だが、ノルドストリーム2ができると、その計画が非常に困難になる。
(もちろんロシア産の方が、アメリカ産より安い。)

そして、アメリカは、ノルドストリーム2プロジェクトに参加している企業に制裁を科していました。
ノルドストリーム2パイプラインは、すでに90%以上完成している。
しかし、アメリカに阻まれて、なかなか完工できない状態に置かれている。

実をいうと、アメリカとドイツの関係が悪い最大の理由は、
「ノルドストリーム2問題」なのです。

バイデンは、「ノルドストリーム2の完成を邪魔しない」方向に転換した。
これで、アメリカとドイツの障害が取り除かれ、両国関係は改善に向かうでしょう。
そして、「ノルドストリーム2」完成は、ロシアの利益でもあります。

なんといっても、世界でもっとも反ロの国ウクライナを経由せず、直接欧州市場にガスを送れるようになるのですから。

なぜ、バイデンは、ドイツとロシアを喜ばせるのでしょうか?
RPE読者さんは、おわかりですね。

アメリカが中国に勝つためには、日本、欧州、インド、ロシアを味方につける必要がある。
日本とインドは、アメリカ側にきている。
バイデンは、もう二つの大国(地域)、欧州とロシアを味方につけたいのです。

もし彼が成功し、欧州、ロシアがアメリカ側につけば、中国は終わりです。

---owari---
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