石原慎太郎さんが都知事のころ、「世界のアニメの七割は日本製で、そのほとんどは練馬区と新宿区でつくっている。東京にとってみればこれが地場産業で、これが底力です」と日下公人氏(評論家)が言ったら、都知事は乗り気になって東京財団と東京都で新世紀東京国際アニメフェアをお台場で開催した。そのなかで、東京財団はマンガ・アニメに関するシンポジウムを開催した。
そのとき、20年前から日本のマンガとアニメをアメリカの映画館やテレビ放送局へ売り込んでいる人がゲストで登場して次のような話をした。
「今ではどんどん売れるようになったが、昔は本当に苦労した。『日本のマンガは主人公が成長する。それがおかしい』と言われ困った」
主人公がだんだん年を取っていくのが、アメリカ人にはよくわからないらしい。アメリカのマンガでは、ミッキーマウスといったらいつまでたっても同じ子供である。成長しない。ところが日本のマンガは主人公が年を取って、「課長島耕作」が「取締役島耕作」になる。
「こんなもの、アメリカ人にはわかりません。いつもと同じあれを見たいと思って見るのに、成長してくれては困る。ついていけない」と言われて、売り込むのにたいへん苦労をしたという話をされたのです。
日本のマンガの特徴とその精神性については、アメリカと大いに違うが、日本人は主人公が成長していっても驚かない。仏教の影響があって、生々流転とか、千変万化とか、無常とか、日本人はそれを日常的教養として知っている。
万物が固定して動かないなどと、そんなことはあり得ない、みんな変わっていくのだという仏教の世界を無意識のうちに身につけている。だから主人公が変わっていって、成長しても没落しても、それを不思議に思わない。
日本人は、自動車をつくればレクサスのようにハイテク製品ではなく芸術品にしてしまう。一方でマンガやアニメでは、「ポケットモンスター」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」まど、日本人は世界最高のお化けをつくることができる。そこに渋谷、新宿が生み出すストーリーを載せて、しかもその背景には仏教のみならず世界の思想がさまざまに影響している。
そんな深みのある作品をつくれる国は、いったい世界中にいくつあるだろうか。日本以外にほとんどないといえるでしょう。
とすれば、これからますます世界に勝てる。日本の底力は凄いのです。
日本の底力は凄いという視点で身の回りを見直してみてほしい。
新しい発見がたくさんあるはずです。
---owari---
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