今回のシリーズは、毛利元就についてお伝えします。
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元就は違った。六十二歳にもなって、自分の長男に、
「親父としてのおれは、子供の頃こんなに不幸だった」と、くわしく書き綴っている。見方によっては、
「未練な人だ」と思われる。
しかし元就にとって、この幼少年時代の不幸な経験は、
「その後の彼を名将に仕立て上げるバネ」になっていた。元就はいつも、
「みなし子同様の幼少年時代」
を、自分が生きていくパワーの源泉にしていた。
「意識して、自分の不幸な経験を前向きに生きるバネにする」
というやり方は、現代の私たちにも参考になる.
しかし、
「母親代わりに自分を育ててくれた大方殿(父毛利弘元の側室。元就の養母)に、始終まつわりついた」という一文は、胸を絞られる。ひたむきな大方殿への思慕の情がしのばれる。
「それほど元就は淋しかったのだ」と、可哀相になる。
(『歴史小説浪漫』作家・童門冬二より抜粋)
---owari---
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