へんないきもの日記

今日も等身大で…生きてます😁

拾う神

2017-02-08 08:22:07 | 日々雑感


 昨日、私は「一瞬にしてすべてを失った」本当に、持ち物はわが身の肉体と魂だけ・・・という状態になったのだ。

 毎週火曜日は、午前中に英語の教室がある。この日もJRで博多に向かう車内で課題をやった後、「文芸福岡」という地元の文芸誌を読んでいた。ここで紹介されている「九州芸術祭文学賞」は、なかなかあなどれない。ローカルな賞ながらも、優秀作品は「芥川賞に最も近い」とされる文芸誌「文学界」に掲載される。

 現在の私の文章能力、度量はさておき、思わず「文学界」に掲載されることを想像して、ニンマリしてしまう。

 まもなく、電車は博多駅に到着した。折り返しでホームに待つ乗客の間をすり抜け、改札口を通過する。改札を出た瞬間・・・!いつもと違うことに気付いた。そう、手元が「軽い」のだ。しまった・・・!きびすを返して人ごみを押し返すようにして階段を駆け上り、たった今、降りたホームに出る。

 わずか3両のローカル線は、博多駅の乗客を飲みこむと、すぐさま「出発」し、かげもカタチも無くなっていた・・・

 忘れ物センターへ届け出ると、終点から折り返して博多に戻って来るのを待つしかない、という。電車が博多駅に到着するまで、少なくとも1時間以上はかかる・・・ワンマン電車のため、車掌はおらず、運転士だけでは途中で確認のしようもない。途中の駅での乗務員の交代も無いから、終点の駅で運転士が確認するまで、「完全無防備」状態である。

 必要事項を用紙に記録しながら、思った。「ここにいる場合ではない、すぐさま警察に行かなきゃ!」書きかけの用紙を置いて、駅前の交番に行った。

 実は、入口から入ってすぐ右手の横座りの座席の角に置き忘れたセカンドバッグの中には、財布のほかに免許証、健康保険証、家の鍵、車の鍵が入っていた。財布の中身は2万4千円の現金のほか、銀行のキャッシュカード3枚、アメリカンエキスプレスのゴールドカード、ETCカードなどが入っている。

 要するに、私は、今、ここにいる私以外、何も持ち物が無い・・・状態なのである。

 銀行のキャッシュカードの暗証番号は、生年月日とまったく関係のない数字を組み合わせているため、今すぐ利用される心配はないだろう。逆にクレジットカードが心配である。

 まず、私がすべきコトは、一刻も早く自宅に戻り、預金通帳で必要なお金をおろした後、銀行とクレジット会社に電話して・・・その前に、自宅に入れないのだから、管理人から管理会社に連絡しないといけない・・・その前に、帰りの電車賃!

 ということで本来の目的の英会話教室で仲間から電車賃を借りた。

 なぜか、冷静な私がいる。もはや、執筆をなりわいとする者、わが身の不幸すら「題材」にしようとしているのか?いや、この時、私は「試されている」と感じていたのだ。次のステージに上がる前の「検定試験」!

 だから、下手にうろたえて「この世で一番不幸な人間」を装えば、本当に最大の不幸がやってくる・・・だから、すべてを失った「生身の私」を受け入れることにした。

 帰りの電車賃を得て、切符を買う前に忘れ物センターへ寄ると、なんと乗車した駅で「保管」されている、とのこと。

 無事、無傷な状態で戻ってきたセカンドバッグを手にし、拾い主に電話する。意外にも30代後半くらいと思われる私より明らかに若い男性の声だった。お礼をしようと住所をたずねると「いえいえ、それより出てきてよかったですね」

 アンタも、これからは周りにそうしてあげなさい、ふと、天の声が聞こえたような気がした。
コメント
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