11月に入り、藤沢周平記念館は棟の部分までたちあがりました。木造建築の場合、棟というのは屋根の一番高い稜線の部分にある横架材のことです。棟上、あるいは上棟式というのはというのはこの材(棟)が架けられ、建物の骨組みが完成したことを祝う式です。
藤沢記念館のように鉄骨と鉄筋コンクリートが組み合わされた構造(混構造)の場合、とくにこれが棟だというものはありませんが、それでも屋根の最頂部まで鉄骨が組みあがることが一つの区切り、けじめになることに代わりはありません。
これからは外装を進めると同時に、内部の仕上げ工事にも入っていくことになり、私たちとしては、さらに神経を集中して細部にわたる詰めを行って行く時期です。
下の写真は収蔵庫の大屋根から月山と金峰山の方向を眺めたものです。つい先ほどまで見えていた月山は既に全貌を見せてくれません。「月山は月山と呼ばれるゆえんを知ろうとする者には、その本然の姿を見せず、本然の姿を見ようとする者には月山と呼ばれるゆえんを語ろうとしないのです」。これは森敦の『月山』からの引用です。東山明子先生の解説(『庄内の風土・人と文学』)に影響されたせいか、見えても見えなくても、その存在そのものが生と死が分かち難く共存する庄内の風土を象徴しているかのように思われます。
高谷時彦記 Tokihiko Takatani