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Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

芥川龍之介が想いを馳せたみかんの花咲く丘を走る

2018-03-26 00:37:32 | ランニング

(根府川橋梁からJR東海道線と相模湾を臨む)

3/25 海沿いの旅。

この日、伊豆伊東まで走ろうと6時に茅ヶ崎駅をスタート。メンバーは4名。

 

(真ん中のオナゴはトレイルレース年代別上位入賞者。これから主レース常連になるのか!!)

予定距離65キロ。
小田原~湯河原~熱海~伊東フィニッシュ。
「オーシャンビューと桜道の旅ラン、伊豆の温泉で海鮮、ビールの後は電車で寝て帰る」が副題。

なんとか長距離を走り切るために、楽しそうな道を選ぶ。
長距離は、風景に魅力がないと走り切れない。
そしてフィニッシュ後の温泉や飲み屋を調べる。
そして、仲間を誘う。

コースを選ぶことから旅ランは始まる。
日々のランは朝に思い立って走るが、
旅の場合は計画しないと無謀旅で終わってしまう。
前日にザックに着替えを入れ、
温泉用タオルを入れ、エネルギージェルを買いに行き、
翌日着るTシャツ、短パン、ソックスをソファーの上に畳んで置いておく。

朝から夕方まで走り続けるための準備をするのだ。
おやつ代は無制限で嬉しい。
しかしながら旅ランは、自己責任の超ハイキング。

ギブアップしても電車やバスで帰れるルートを前調査する必要がある。

そういうのひっくるめて楽しい。
ロードトリップがまるでトレイルになる。
気持ち一つでどうにでもなる。
これをやってると、きっとウルトラレースも過酷なトレイルレースも、楽しいイベントにできる。
何事も気持ち一つでどうにでもなる。
ランが教えてくれる、人生をポジティブにしてくれることのうちの一つだ。


6時に茅ヶ崎駅南口を出発した一行は、背中に朝陽を浴びて湘南ロードを西へ向かう。
サイクリングロードから国道134に出る。



花水川沿いに申し訳なさそうにサイクリングロードがある。
眼の前に湘南平が迫り、その奥には山頂を真っ白にした丹沢山系が聳え立つ。
1国に入ると、そこから東海道だ。

東海道は実に情緒がある。
高い建物はなく、老舗の蒲鉾屋と小洒落たカフェが並ぶ。

大磯の鴫立庵(しぎたつあん)を通過する。
日本三大俳諧道場の一つである。
石碑に「著盡湘南清絶地」と刻まれている。
「ああ、しょうなんせいぜつち」と読む。
“清らかですがすがしく、このうえもない所、湘南とは何と素晴らしい所”
という意味だ。
実にそう思う。石川弘樹氏の記事にこんなのあった。
「湘南生活とトレイルランニング」
今日のオレらのランはこうだ。
「湘南生活と海沿いランニングトリップ」

 



まだ朝も早い時間なので車も人もまばら。
気温は8度。
空には雲ひとつ無い。

国府津のエマージェンシーローソンに立ち寄り(まちカフェがあるローソンね)、
いよいよ小田原市街地へ侵攻。
このあたりから満開に近い桜がちらほら見え始める。

宿場町小田原に入る。
東海道の雰囲気はそのままながら、街度がいきなり上がる。
これまでキロペース6分半くらいで走っている。
遅く走ると、速く走るより疲れるものだ。
ジワジワジワジワとダメージが溜まってくる。
赤信号で止まり、青に変わって走り出す数歩がとても重く痛く、憂鬱になる。

フルマラソンでいうところ、30キロの壁である。

1国から135号線に入る。
早川の料金所を左手に見て通過する。



すると、前方からウルトラ、トレイル系ランナーの集団がやってきた。
見ればわかる。
普通のロードランナーと違うのだ。
そういう違いがわかるっていうのは何の役にも立たないんだけどね。

20人くらいいたかなあ。
すれ違うとき、元気に声を掛け合う。
山での挨拶と同じで気持ちいい。
彼らはどこをスタートにしてどこへ向かうんだろうか。

早川から伊豆半島の本格的な海岸線に入っていく。
そこで問題が出てきた。
国道135号線は、ほとんど自動車専用道路と言っていいほど、歩行者を無視している。
まあそれが普通だとは思う。
歩道が完備されている峠道や海岸道路なんてないのだ。

昼前の海岸線なので上り下り車がバンバン通っている。
手前の干物屋に入り詳しく聞く。
「135を通らず山越えできますかね?」
「どこ通っても同じような道だから、このまま国道がいいよ」
「まじすか!!!!」

まじすか!!!って言葉が出てくる道である。
ロードバイカーも必ずこの干物屋で同じことを聞いてくるらしい。
みんな、まじっすか!!!って言うらしい。
「でもランナーに聞かれたことはないなあ。。。」
おれら、初めてっすか!!!!

意を決し、歩道のないギンギンのワインディングロードに入っていく。
右側通行である。
左走って、後続車に引っ掛けらたらたまらない。
右側なら前方から突っ込んできても、瞬時に崖のぼったりできるかなと。。

走って間もなく、タンクローリーや大型観光バスがやってくる。
道路の右崖にへばりついて車をやり過ごす。
すれっすれでタンクローリーが顔をかすめる。
かなり恐いし。

ラッキーにもその道は延々続かなかった。
クネクネでわからなかったけど、数百メーターだったね。
干物屋の主人はその距離を教えてくれるべきだったよ。

観光客用の蒲鉾屋を数件やり過ごすと岐路が現れる。
海沿い道路と峠コースだ。
いずれも湯河原吉浜で合流する。

どっち行けばいいかわからない。
Googleマップは海沿いの左を行けという。
でもだ。見るからに先程の狭い国道の延長で、歩行者の余裕が一切ない。
素晴らしいオーシャンビューと助手席の女に気を取られたドライバーが、
おれらを引っ掛ける確率は峠より絶対高いので、海沿いはやめよう!という結論に達した。

この峠道、渋滞を避けるために何度か車で通ったことがある。
記憶にも残らないどうでもいい峠道である。

(根府川入り口の壮絶オッサンビュー、もとい、オーシャンビュー)

そこを少しずつ登っていく。
JRの駅があった。根府川という。
伊豆クレイルっていうノボリがあった。トレイルならぬクレイル。
どうやら伊豆のリゾート列車らしい。



駅を超えると小さな街並みに入る。街ではない。村だな。
古い建物と右にはトレイル、左には海を臨む深い沢。
山々がピンクに色づき始める。
とても色の濃い桃の花は鮮やかなピンク。
小鳥のさえずりや海から吹き込み沢を登ってきた南風が木々の葉を鳴らす。

7キロ登り続ける。
たいした傾斜ではないがじわじわくる。
ましてや30数キロ地点なので本日の一番コタエルパートである。
それでも走れるのは、この風景のせいだ。

左右木々の生い茂ったロードと、海を見渡す絶景ロードを繰り返す。
みかんの花が咲く丘を走り続ける。

江の浦という地区へ入っていく。
沢にかかる道にさしかかる。
断崖絶壁に段々畑があり民家もある。
桜もあり、そして海を臨む。
なぜこんな険しい土地に生活があるのか不思議に思う。

前方に老夫婦がいらっしゃった。
「こんにちは」
「こんにちは」

ご主人の手には美味しそうなパンがたくさん入った袋が下げられていた。

なんでも豊臣秀吉が小田原攻めをするときに、千利休に茶を立ててもらった古民家が先にあって、
その古民家を改築したパン屋があるんだとか。
大評判なので立ち寄ったほうがいいよ!

そんなこととちょっと世間話をして別れた。

その先にあった。
麦焼処  麦踏 (むぎやきどころ むぎふみ)というパン屋だ。
チョコの入ったパンにオリーブ茶(無料)を、店の縁側で頂いた。
縁側でくつろぐって、これから先何度あるだろうか。
パンはすぐ売り切れるようだ。
オススメっす。

(Run On 縁側)

江の浦測候所を左手にする。
ここは気象庁のものではない。
建物自体が日本の伝統建築をすべて盛り込んだアートなのである。

良い峠を、辛辣に、しかも楽しく走った。
そういえば根府川入ったところ、トレイル入り口にトロッコの跡があった。
ここ、芥川龍之介の「トロッコ」の舞台になったところなのだ。
年に数回、満月の夜に、月が大海原から村の沢に向け1本の光の道を作る。
壮大なムーンライトセレナーデ。
トロッコの主人公が見た風景だ。
文豪が想いを馳せたその峠を走り抜く。

(ゲロゲロに疲れてるけど、この大海原見てちょいと復活)

ラン一行は湯河原まで一気に下る。
湯河原手前の吉浜では小波ながらも多くのサーファーが入っていた。
ポルシェが何台も行き交う。
ランナーが歩道狭しと走る。



結局、根府川の峠走のダメージが大きく、
この先熱海の峠が想像以上にきついだろうと言うことから、湯河原フィニッシュとした。
またタンクローリーと大型観光バスとすれ違うと思うとかなりブルーになったのだ。
行程45キロ。
湯河原の温泉街までは桜満開の川沿いを歩いた。


そして入浴したのは、ニューウエルシティー湯河原のいずみの湯。
いやー、すげー良かった。
キレイ、清潔、広い、ガラガラ(*^^*)。
そして駅前で食事して電車で寝て帰る。
湯河原~茅ヶ崎760円。
たった760円の距離を何時間も何十キロも走り、
壮大なオーシャンビューと美味しい湘南小麦のパンと秀吉が座ったであろう縁側で桜を見る。

富士山と菜の花、そして根府川橋梁。



ナイス旅ランでした。
そして1ヶ月後、100キロ完走できるのか???