アコースティックギターのつま弾きだけのコーラスだけの曲で
このアルバムは始まる。
イーグルスのハーモニーがいかに優れているか、
どれだけ凄いバンドか、この1曲が全てを語る。
夜遅い時間に、ステレオの前に座り、濃い酒を飲みながら、
外の月明かりだけで聴きたくなる。
森の話の歌だが、秋の月明かりに照らされた海を臨んで聴くとさらにいい。
とにかくオープニングから一気に作品世界に引きずり込まれる。
渋谷か新宿の交差点で、大きなスピーカーからこの曲が流れたら、
街の喧騒が一気に静寂に変わりそうだ。歩く人々が立ち止まる。
2曲目は、シングルカットされた軽快なアップテンポの
ロックンロール『HOW LONG』
ホテルカリフォルニアで、爆発的な商業成功をおさめた彼らだが、
時はもっともっと遡る。
このアルバムはホテルカリフォルニア以前の
バンドの本質的な面を見せているのではないだろうか。
『HOW LONG』はまさに『TAKE IT EASY』のころのに通じるサウンドで、
「これがオレらの音だぜ~』的なアピールがある。
バンドは確実に復活したという自信と、今後の意気込みにも感じられる。
この曲はもともと70年ライブでやられてたんだな。
DISK2ではアルバムタイトル曲でドン・ヘンリーの悲痛な歌声から始まる。
アメリカの廃退から『平和の祈り』、そして『夢のあとさき』とアルバムは終わる。
これはライナーノーツからだが、
『ホテル・カリフォルニア』を通じて、イーグルスは現代社会へ疑問を投げかけた。
30年前の出来事だ。
それは、アメリカだけや彼らの問題だけにとどまらなかった。
僕ら、ひとりひとりが砂漠に迷い、深夜ホテルに辿り着いた旅人だったわけだ。
あれから長い歳月が経ち、果たして世の中は良くなったのかと思いを巡らす。
彼らの歌声は、時代が歓迎すべき通りには、時を重ねていないという現実を突きつける。
それでも、グレン・フライは、孤独な夜に別れを告げよう、
落ち込んで勝負をあきらめるときがあっても、君は一人じゃないよ、
それを伝える機会があるとは思わなかったよ、と歌う。
君は一人じゃないよ、とこれだけのことを伝えるために、
イーグルスは28年の歳月をかけて、
そしてそれだけのことを聴くために僕らは28年待ったのだ。
それは素敵なことなんだろうな、と思う秋でした とさ。
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失われた森を求めて