6月21日に兵庫芸術文化センターで「日本の面影」を観てきました。
まあ何とも予想外の(殴)、観応えのある素晴らしい作品でした。
もう言うことなし!パーフェクト!これを観ない人は大損してる!と言いたくなるほど。
山田太一・脚本の『日本の面影』については、1984年のNHKテレビドラマを見ていいのはわかっていたつもりでしたが、改めて舞台で観てその脚本の素晴らしさを再認識。さすがの完成度で、それに加えて主役二人はもちろん、脇を固めるすべての役者がみんな完璧でした!
ベテランの持ち味を生かしたぜいたくな配役で、主役二人の熱演を盛り上げていました。
前夜の睡眠不足→ひよっとして爆睡(殴)という観劇前の懸念は軽く吹き飛びました。(笑)
劇場での2時間は、本当に忘我の至福タイムでした。
これはもう今年の演劇大賞・一般演劇部門のベストスリー入りは間違いなしですね。
何の演劇賞かって?言わずと知れた(知れてないない(笑))、『2014 思いつくまま演劇大賞』!(殴)
ということで、ひさしぶりの絶賛モード(笑)ですが、その割には中身の薄い、いつもの感想です。よろしければご覧ください。
(ネタバレも少々ありますので未見の方はご注意です。そして敬称略です。)
といいつつ、まずはいつもの劇場までのメモです。
6月21日(土) 午後1時開演でしたが、前回12日と違って自宅で早目の昼食を済ませてから出発しました。
1時間で劇場に着き、時間があったので、劇場前のチケットカウンターで、前日ネット予約した10月の2公演のチケットの受け取りを済ませました。送料・手数料が節約できて助かりました。
開場前のホールに居合わせた他のお客さんを見ていると、けっこう男率(笑)が高いのがわかりました。そして年齢も高め。まあ今では若き日の紺野美沙子や草刈正雄の活躍をリアルタイムで見た世代となると中年以上になってしまうのでしょうね。
今回の席も、例のごとく先行予約を頑張ったおかげで最前列のど真ん中。これで5,000円!とはね~♪
でも今回も満員御礼とはいかなかったような。もったいない話です。
まず紺野美沙子について。
実をいうと私は昔テレビドラマで見かけたぐらいで、最近の活動にさいては殆ど何も知りませんでした(無知を自慢してどうする!)。
それで今回の舞台も、誠に失礼な話ですが、まあせいぜいテレビタレントの余芸程度だろうと高をくくって観劇に臨みました。
で開演時間になって、舞台は薄い紗のようなカーテン越しに、ほの暗い照明のもとで紺野美沙子がハーンの母親役になって子供のベッドの横で童話を読み聞かせる場面になりました。ところが、そのセリフがよく聞き取れない!のです。
ハーンの父役の石橋徹郎の声は役柄上大きい声なのでそうでもなかったのですが、この場面での紺野美沙子は、まるであのこまつ座の「頭痛肩こり樋口一葉」の悪夢を再現したようです。それで「これはハズレだったかな」と思い始めました。
でもそれは全くの杞憂でした。
カーテン越しで、しかも演出的にはハーンの生い立ちを説明する補足のようなものなので、セリフの声量を低く落としていたので聞こえにくかったのですね。
いざ幕が上がって、本題に入り「小泉セツ」になったら、クッキリハッキリの明瞭なセリフ。まあ心底ホッとしました。後で聞いたらヨメさんも全く同じ思いだったとのこと。
セリフが明瞭なのは当然で、あとで当日買ったプログラム(A5版のかわいらしいものです)を読んだり公式サイトを見たら、彼女は2010年秋より地域文化の向上、舞台芸術の発展を目的に音楽や影絵や映像など、様々なジャンルのアートと朗読を組み合わせたパフォーマンスや、ドラマリーディングのために「朗読座」を旗上げして全国で上演しているそうです。
さらにセリフだけでなく、立ち居振る舞いや身のこなし、感情表現などすべてにわたって素晴らしい演技。本当にセツが乗り移ったようでした。劇中、セツがハーンに古い怪談を聞かせる場面がありますが、説得力のある語りと演技で私達もハーンになったような感じで聞き入りました。
初めに書いたように、山田太一の『日本の面影』といえばジョージ・チャキリス主演のNHKの名作ドラマ、そこでセツを演じていた檀ふみが絶品な私だったので、紺野美沙子がどこまでそれに近づけるか、お手並み拝見といった感じでした。
でも劇が進むにつれ、檀ふみとはまた別の、新しい「セツ」像が創り出されていて、本当に感心しました。
役年齢的にはやや無理な感じもしないではなかったのですが(首筋とか(笑))、もともと童顔だし、所作もキレがよくしかも丁寧で品があり文句なしにピッタリの役どころ。ハーンに寄り添って、芯の強さと才気を優しさにくるんで一緒に生きる姿が印象的でした。
紺野美沙子再発見!が今回の最大の収穫でした。あわせて当時の女性の立ち居振る舞いが本当にきれいなのもよくわかりました。たおやかで優雅で繊細。見惚れますね。
それとネイティブな方の耳にどう聞こえているのかわかりませんが、私にとってはいわゆる雲伯方言も聞いていてリズミカルで気持ちがよかったです。
このあたり、去年の「イーハトーボの劇列車」の東北弁と同じような心地よさを感じました。
今回の公演に関連した兵庫芸術文化センターのパンフのインタビューでは、今回の公演にあたって彼女なりにいろいろ考えるところがあって取り組んだというところが紹介されていましたが、今の日本の状況をよく考えていますね。
それと彼女はあくまでも謙虚。その点でも好感が持てます。
次はラフカディオ・ハーン/小泉八雲役の草刈正雄です。この人も昔のNHKの時代劇の「真田幸村」が大ヒット@我が家(笑)して以来、好感度を維持したまま現在に至っています。
でもそれから幾星霜(笑)。今ではいい意味で枯れてきて(殴)、それがプラスとなって容貌にもピッタリの適役。感心しました。チャキリスよりもよかったです。
隻眼だったハーンを演じるので左目にテープ?でもしているのか閉じたままで、観ながら大変だなと同情してみたり。(笑)
劇中周囲が気遣って無理やりステーキを食べさせるところとかコミカルな演技もあってよかったですね。この人も再評価の声が高まっています。(@我が家)
まあ主役二人がいいと、一安心。(笑) 以下の画像は当日買ったプログラムから
でも今回の舞台の魅力は豪華な脇の布陣でした。冒頭で、セツがハーンの身の回りの世話のため住み込みの女中になったと聞いて、親戚が乗り込んで来たところなど、圧巻の顔ぶれ。養祖父と養父母に実母の4人が豪華です。
養祖父・稲垣万右衛門役は金内喜久夫です。この人は1992年の初演以来同じ役を務めているとのことですが、存在感があります。稼ぎもないのに気位ばかり高くて役立たずな没落貧乏士族そのままでした。初めはセツの女中奉公に反対しながら、結局は八雲とセツの扶養家族になるのですが、そのあたりの微妙な立場がユーモアを交えた演技で演じていてうまかったです。
そしてセツの養父の稲垣金十郎役の田代隆秀と同じく養母の稲垣トミ役の大西多摩恵も過不足ないうまい演技でした。
芸達者な脇役陣でも一番存在感があったのがセツの母・小泉チエ役の長谷川稀世でした。こんな母親がいてくれたらセツも安心です。どんな事態になってもあわてず動ぜず。舞台に出てきただけでも絵になっていました。
とくにセツ同様にハーンに怪談を聞かせる場面での『耳なし芳一』の語りが絶品でした。これを聞けただけでも観に行った甲斐がありました。(笑)
そのほか、出番は少ないものの、あの三菱のキザなお兄さんでおなじみになった(笑)石橋徹郎がチャールズだけでなく佐伯信孝役でも出てきて遺憾なくイヤなヤツぶりを発揮していました。(笑)
松江時代のハーン思いの同僚・西田千太郎兼武士の亡霊役の川野太郎もさすがにベテランらしい堂に入った演技でした。なんでも彼も平家の末裔とか。甲冑が板についていました。
あと、同じく出番が少ないですが、安部愛子・渡辺吾郎・前田聖太の三人も役どころにふさわしい自然な演技でした。本当にこの芝居はぜいたくな配役で、脇の層が厚いです。
最後はハーンがセツに自分の死後について指示する有名なセリフがあって、感動のうちに幕となりました。
そして客席は満場のスタンディング! 本当に観てよかったです。
こういう完成度の高いいい芝居を観ると、私もいい人にならなくてはと思いますね。(笑)(でもすぐまた埒もない物欲に支配されてしまったりしますが)(殴)
各地での公演もまもなく終わろうとしていますが、近くにお住まいの方などで機会があればぜひご覧ください。心が洗われます。絶対おすすめです。
さて、やっとアップしたと思ったらまだ「昔の日々」の感想が残っていて、さらに今週は久しぶりのタカラヅカ観劇も。しばらくプレッシャーかかりっぱなしの日々です。^^;
まあ何とも予想外の(殴)、観応えのある素晴らしい作品でした。
もう言うことなし!パーフェクト!これを観ない人は大損してる!と言いたくなるほど。
山田太一・脚本の『日本の面影』については、1984年のNHKテレビドラマを見ていいのはわかっていたつもりでしたが、改めて舞台で観てその脚本の素晴らしさを再認識。さすがの完成度で、それに加えて主役二人はもちろん、脇を固めるすべての役者がみんな完璧でした!
ベテランの持ち味を生かしたぜいたくな配役で、主役二人の熱演を盛り上げていました。
前夜の睡眠不足→ひよっとして爆睡(殴)という観劇前の懸念は軽く吹き飛びました。(笑)
劇場での2時間は、本当に忘我の至福タイムでした。
これはもう今年の演劇大賞・一般演劇部門のベストスリー入りは間違いなしですね。
何の演劇賞かって?言わずと知れた(知れてないない(笑))、『2014 思いつくまま演劇大賞』!(殴)
ということで、ひさしぶりの絶賛モード(笑)ですが、その割には中身の薄い、いつもの感想です。よろしければご覧ください。
(ネタバレも少々ありますので未見の方はご注意です。そして敬称略です。)
といいつつ、まずはいつもの劇場までのメモです。
6月21日(土) 午後1時開演でしたが、前回12日と違って自宅で早目の昼食を済ませてから出発しました。
1時間で劇場に着き、時間があったので、劇場前のチケットカウンターで、前日ネット予約した10月の2公演のチケットの受け取りを済ませました。送料・手数料が節約できて助かりました。
開場前のホールに居合わせた他のお客さんを見ていると、けっこう男率(笑)が高いのがわかりました。そして年齢も高め。まあ今では若き日の紺野美沙子や草刈正雄の活躍をリアルタイムで見た世代となると中年以上になってしまうのでしょうね。
今回の席も、例のごとく先行予約を頑張ったおかげで最前列のど真ん中。これで5,000円!とはね~♪
でも今回も満員御礼とはいかなかったような。もったいない話です。
まず紺野美沙子について。
実をいうと私は昔テレビドラマで見かけたぐらいで、最近の活動にさいては殆ど何も知りませんでした(無知を自慢してどうする!)。
それで今回の舞台も、誠に失礼な話ですが、まあせいぜいテレビタレントの余芸程度だろうと高をくくって観劇に臨みました。
で開演時間になって、舞台は薄い紗のようなカーテン越しに、ほの暗い照明のもとで紺野美沙子がハーンの母親役になって子供のベッドの横で童話を読み聞かせる場面になりました。ところが、そのセリフがよく聞き取れない!のです。
ハーンの父役の石橋徹郎の声は役柄上大きい声なのでそうでもなかったのですが、この場面での紺野美沙子は、まるであのこまつ座の「頭痛肩こり樋口一葉」の悪夢を再現したようです。それで「これはハズレだったかな」と思い始めました。
でもそれは全くの杞憂でした。
カーテン越しで、しかも演出的にはハーンの生い立ちを説明する補足のようなものなので、セリフの声量を低く落としていたので聞こえにくかったのですね。
いざ幕が上がって、本題に入り「小泉セツ」になったら、クッキリハッキリの明瞭なセリフ。まあ心底ホッとしました。後で聞いたらヨメさんも全く同じ思いだったとのこと。
セリフが明瞭なのは当然で、あとで当日買ったプログラム(A5版のかわいらしいものです)を読んだり公式サイトを見たら、彼女は2010年秋より地域文化の向上、舞台芸術の発展を目的に音楽や影絵や映像など、様々なジャンルのアートと朗読を組み合わせたパフォーマンスや、ドラマリーディングのために「朗読座」を旗上げして全国で上演しているそうです。
さらにセリフだけでなく、立ち居振る舞いや身のこなし、感情表現などすべてにわたって素晴らしい演技。本当にセツが乗り移ったようでした。劇中、セツがハーンに古い怪談を聞かせる場面がありますが、説得力のある語りと演技で私達もハーンになったような感じで聞き入りました。
初めに書いたように、山田太一の『日本の面影』といえばジョージ・チャキリス主演のNHKの名作ドラマ、そこでセツを演じていた檀ふみが絶品な私だったので、紺野美沙子がどこまでそれに近づけるか、お手並み拝見といった感じでした。
でも劇が進むにつれ、檀ふみとはまた別の、新しい「セツ」像が創り出されていて、本当に感心しました。
役年齢的にはやや無理な感じもしないではなかったのですが(首筋とか(笑))、もともと童顔だし、所作もキレがよくしかも丁寧で品があり文句なしにピッタリの役どころ。ハーンに寄り添って、芯の強さと才気を優しさにくるんで一緒に生きる姿が印象的でした。
紺野美沙子再発見!が今回の最大の収穫でした。あわせて当時の女性の立ち居振る舞いが本当にきれいなのもよくわかりました。たおやかで優雅で繊細。見惚れますね。
それとネイティブな方の耳にどう聞こえているのかわかりませんが、私にとってはいわゆる雲伯方言も聞いていてリズミカルで気持ちがよかったです。
このあたり、去年の「イーハトーボの劇列車」の東北弁と同じような心地よさを感じました。
今回の公演に関連した兵庫芸術文化センターのパンフのインタビューでは、今回の公演にあたって彼女なりにいろいろ考えるところがあって取り組んだというところが紹介されていましたが、今の日本の状況をよく考えていますね。
それと彼女はあくまでも謙虚。その点でも好感が持てます。
次はラフカディオ・ハーン/小泉八雲役の草刈正雄です。この人も昔のNHKの時代劇の「真田幸村」が大ヒット@我が家(笑)して以来、好感度を維持したまま現在に至っています。
でもそれから幾星霜(笑)。今ではいい意味で枯れてきて(殴)、それがプラスとなって容貌にもピッタリの適役。感心しました。チャキリスよりもよかったです。
隻眼だったハーンを演じるので左目にテープ?でもしているのか閉じたままで、観ながら大変だなと同情してみたり。(笑)
劇中周囲が気遣って無理やりステーキを食べさせるところとかコミカルな演技もあってよかったですね。この人も再評価の声が高まっています。(@我が家)
まあ主役二人がいいと、一安心。(笑) 以下の画像は当日買ったプログラムから
でも今回の舞台の魅力は豪華な脇の布陣でした。冒頭で、セツがハーンの身の回りの世話のため住み込みの女中になったと聞いて、親戚が乗り込んで来たところなど、圧巻の顔ぶれ。養祖父と養父母に実母の4人が豪華です。
養祖父・稲垣万右衛門役は金内喜久夫です。この人は1992年の初演以来同じ役を務めているとのことですが、存在感があります。稼ぎもないのに気位ばかり高くて役立たずな没落貧乏士族そのままでした。初めはセツの女中奉公に反対しながら、結局は八雲とセツの扶養家族になるのですが、そのあたりの微妙な立場がユーモアを交えた演技で演じていてうまかったです。
そしてセツの養父の稲垣金十郎役の田代隆秀と同じく養母の稲垣トミ役の大西多摩恵も過不足ないうまい演技でした。
芸達者な脇役陣でも一番存在感があったのがセツの母・小泉チエ役の長谷川稀世でした。こんな母親がいてくれたらセツも安心です。どんな事態になってもあわてず動ぜず。舞台に出てきただけでも絵になっていました。
とくにセツ同様にハーンに怪談を聞かせる場面での『耳なし芳一』の語りが絶品でした。これを聞けただけでも観に行った甲斐がありました。(笑)
そのほか、出番は少ないものの、あの三菱のキザなお兄さんでおなじみになった(笑)石橋徹郎がチャールズだけでなく佐伯信孝役でも出てきて遺憾なくイヤなヤツぶりを発揮していました。(笑)
松江時代のハーン思いの同僚・西田千太郎兼武士の亡霊役の川野太郎もさすがにベテランらしい堂に入った演技でした。なんでも彼も平家の末裔とか。甲冑が板についていました。
あと、同じく出番が少ないですが、安部愛子・渡辺吾郎・前田聖太の三人も役どころにふさわしい自然な演技でした。本当にこの芝居はぜいたくな配役で、脇の層が厚いです。
最後はハーンがセツに自分の死後について指示する有名なセリフがあって、感動のうちに幕となりました。
そして客席は満場のスタンディング! 本当に観てよかったです。
こういう完成度の高いいい芝居を観ると、私もいい人にならなくてはと思いますね。(笑)(でもすぐまた埒もない物欲に支配されてしまったりしますが)(殴)
各地での公演もまもなく終わろうとしていますが、近くにお住まいの方などで機会があればぜひご覧ください。心が洗われます。絶対おすすめです。
さて、やっとアップしたと思ったらまだ「昔の日々」の感想が残っていて、さらに今週は久しぶりのタカラヅカ観劇も。しばらくプレッシャーかかりっぱなしの日々です。^^;