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兵庫芸文センターで 『海の夫人』を観て

2015年07月02日 | 観劇メモ
6月6日(土)兵庫芸術文化センター・阪急中ホールで「海の夫人」を観てきました。
もちろん、観ようと言い出したのは、長年麻実れいファンを継続しているヨメさん。で、反対する理由もないので(殴)、パソコンで先行予約しました。でもこの先行予約、1月24日の話ですよ。1月!!
いくら先行でも程があると思いますね。昨日のことでも忘れるのに半年近く前!
でも、チケットは財布にやさしい5,000円です。(笑)

この公演は、新国立劇場での「JAPAN MEETS...─現代劇の系譜をひもとく─」シリーズ第十弾として、宮田慶子芸術監督の演出で5月15~31日まで上演されたのち、全国公演として兵庫芸文センターで1日だけ!上演されたものです。
しかし東京だと2週間以上の公演期間なのに、関西ではたった1日1回だけの上演。やはり関西は文化不毛の地なのか、人口を考慮しても、その差については考えてしまいますね。


原作は1888年に出版され、翌年ノルウェーとドイツで同時上演されて大成功をおさめたそうです。有名な「人形の家」につづく、社会的自立を求める女性と、それを阻む当時の世相をテーマとした社会劇です。

舞台装置は、巨大な簀子みたいな反り返ったウッドデッキが据えられただけのシンプルなもの。

あらすじです。

話の舞台は北部ノルウェーのフィヨルドに面した小さな町だそうです。

灯台守の娘だったエリーダ(麻実れい)は、初老の医師ヴァンゲル(村田雄浩)の後妻となり、先妻の二人の娘ボレッテ(太田緑ロランス)とヒルデ(山薫)とともに暮らしています。でもこの二人の娘との関係はギクシャクしていて、とくに妹ヒルデは反感をあらわにして全く馴染んでいません。
そしてエリーダは、ヴァンゲルとの間に設けた息子を生後すぐに亡くしてからは、精神が不安定となり、毎日海で泳いでばかり。そんなエリーダを周辺の人々は「海の夫人」と呼んでいます。
そこに、かつてボレッテの家庭教師をしていた教師アーンホルム(大石継太)や、胸を病んだ画家リングストラン(橋本淳)、便利屋バレステッド(横堀悦夫)といった人物がからんで一幕目の話が展開しますが、ここまではあまり波乱もなく、状況説明みたいなユル~い流れです。

しかし、そこに謎の男(眞島秀和)が登場して一変。二幕目からはサスペンス物みたいな緊張感のある展開となります。ようやく眠気は一掃されました。(殴)
その見知らぬ男はかつてのエリーダの恋人。その男から、この町を出ようと誘われるエリーダ。今の生活に満足できず、ずっと外の生活にあこがれてきたエリーダは動揺しますが......。まあ結末はまた再演もあるでしょうから言わないことにします。

ただ、今回の芝居のテーマはまだ完全に過去のものとは到底言えませんね。たびたび繰り返される政府与党要人の事態錯誤な「女は子供を産んで家で子育てしていればいい」発言や、今国会での派遣法改悪などを見るにつけ、労働者、特に働く女性にとって、この国のありようはイプセンの時代からほとんど進歩していないと痛感します。

ということで、全体の感想はここまで。薄いです。(殴)

以下は役者さんごとの感想です。これまた薄いですが、ご容赦ください。^^; 例のごとく敬称略です。
まず主演の麻実れい

まあピッタリの役。他に誰が演じられるか思いつかないほど。というか、役のほうが麻実れいのキャラクタに乗っ取られているというか。(笑)

いつも気怠そうで、しかも心の奥底では何を考えているのかわからない謎めいた女性です。毎日泳ぎに行くのも人の目を欺く一流の韜晦でしょう。ただし、あの『炎 アンサンディ』で久々に全力投球、圧倒的な演技力を見せてくれた麻実れいなら今回の役は余裕しゃくしゃく、さすがに『ボクの四谷怪談』までとはいいませんが、かなりの省エネ・アイドリングで充分こなしていそうです(殴)。大体、かなり地のままで行けそうなキャラクタだし。
(笑) いえ、手抜きといっているのではありません。^^; それほど「炎‥」が凄かったということです。

対する夫役の町医者ヴァンゲルは村田雄浩

テレビや映画、舞台と幅広い活躍で知られていますが、私は舞台でお目にかかるのは初めてです。初老の温厚な医者役がぴったりでした。この役も感情を表に出す激しい役ではないので、役者さんとしてはよくわかりませんでしたが、これまでの人生にほとんど疑問を抱くことなく生きてきた地元の医者というのはよく表現できていたと思います。この人、今回舞台で見て初めてかなり大柄なことがわかりました。

感心したのは姉妹役のボレッテ=太田緑ロランスとヒルデ=山薫

ボレッテは、内には学問にあこがれ、社会に出て自己実現したい想いを秘めながら、誰にも言えず半ば諦観しながら生きている女性。これを
太田緑ロランスが自然な演技でよく体現していました。しっとりとしたリアルな演技で心に残りました。この人も舞台では初めて見ましたが、いい役者さんです。
妹のヒルデ役の山薫も、継母への反感から、生活のことごとくに反抗する多感な少女をうまく演じていました。クルクルと舞台を駆け回って、嫌な子供全開でした。(笑)

教師アーンホルム(大石継太)や、胸を病んだ画家リングストラン(橋本淳)、便利屋バレステッド(横堀悦夫)、謎の男(眞島秀和)も芸達者ぞろい。


大石継太はブログの記事を見直したら二度目の観劇になっていますが、前出の『ボクの四谷怪談』が誠にアレな作品でして(笑)、ほとんど記憶にありません。(殴)
でも今回のアーンホルムはいい味出ていました。いかにもその辺にいそうな人物です。画家の橋本淳は初めてです。この人もセリフ・演技いずれもまったく自然で達者なもの。
味のある演技といえば、便利屋バレステッド役の横堀悦夫も、出番の少ないのが残念ないい演技でした。そして、後半の要となる謎の男の眞島秀和。ミステリアスな登場から始まって、少ないセリフでも迫力のある人物になっていました。おもに映画やテレビドラマで活躍していますが、舞台でもなかなかの演技です。もっと舞台経験があるかと思っていましたが、去年の「ボクの妻と結婚してください。」以来二作目とか。

というわけでよくできた舞台でしたが、先に紹介したとおりいささか地味な話なので、観終わって余韻に浸るとまではいかなかったですね。帰途の車中でも、ヨメさんもいつもと違ってあまり感想を語らず。(笑)

私の印象としては太田緑ロランスが予想外の(殴)いい演技で心に残りましたが、芝居全体としては佳作といった感じです。

次はまた同じ劇場で観たこまつ座公演の感想です。そしてそのあとは「王家‥」も控えているので、しばらくかなりのプレッシャーな日々が続きます。^^;
コメント
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