焼き畑にまつわる昔ばなし。
じつは高度な技術と、文化をもって営まれていたという「焼き畑農法」を
を 前回 そして 前々回 とご紹介しました。今回は、そんな焼き畑に
関する民話のご紹介です。真夏の夜の寝物語として、よろしかったら。。
では、おはなしです。
● 日之影町 逆巻大明神
日之影町の崎の原というところに逆巻大明神のほこらがある。宮水と大
人(おおひと)をつなぐ竜天橋の下で、昔はその下を流れる五ヶ瀬川が、
逆巻ふちという深いふちをつくっていた。
近くの村に住む男があるとき、この付近のヤボ切りを始めた。ヤボ切り
は山の斜面の木や草を切り払って乾燥させ、ころ合いを見て焼き畑にす
ることである。
この場所に大きな木があって、その根元の洞穴に大蛇の夫婦がすんでい
た。雌蛇はお産のために休んでいた。男はそんなこととは知らず、木に
登って枝を切り始めた。
大蛇は木を揺すって男を振り落とそうとしたが、男が歌う仕事歌に聞き
ほれて、落とすことができなかった。
大蛇は男の夢まくらに立ち、「火を入れるのをあと7日間待ってくれ。
この願いを聞いてくれれば、お前の家に幸福をもたらしてやる」と言っ
た。男は、夢に現れた蛇の話を信じようとしなかった。
そして焼き畑に火を入れる朝になった。
雄蛇は産後の雌蛇のため、二神山の乳ケ岩屋というところまで薬を求め
にいった。その帰り、舟ケ原というあたりに来たとき、すまいにしてい
る斜面に火が入れられ、燃えているのが見えた。雌蛇は生まれたばかり
の子蛇とともに焼け死んでしまった。
雄蛇は男の仕打ちを恨んで怒り狂い、その夜中、男の家に巻きついて家
を倒してしまった。男の家では、その後も災いが続いた。男は夢まくら
に立った蛇のことを思い出し、後悔した。
男は、大蛇の恨みを慰めるためにほこらを建て、逆巻大明神として祭っ
た。また、斜面の見える近くの森に礼拝するところをつくり、朝夕大蛇
の霊魂に祈りをささげたという。
● 田野町 大戸野神社
田野町の鰐塚山(わにつかやま)の稜線の東、その山地を田野から北郷
に越えるところに、大戸野峠があります。峠を下りると、そこに黒荷田
という集落がある。
大戸野の茅野は、春先の草の芽立ちがいいようにと、黒荷田の村人が毎
年野焼きをしていた。ある年、いつものように野焼きをする時期がきた
ので、村人は総出で大戸野に登り、火道(野焼きのときの防火線となる
区切り)を切って準備をした。そして、明日はいよいよ火を入れるとい
う日の夕方、村人は寒くなったので、早めに山を下りた。どの家も囲炉
裏(いろり)をたいて暖をとっていた。
村の庄屋の家でも、忙しく夕飯の支度をしていた。ふと気付くと、戸口
で人の気配がして、女人のすすり泣くような声が聞こえた。家族は何と
も気味が悪いので、お互いに顔を見合わせていぶかしがった。
主人が立ち上がって戸口に行き、「そこで泣いているのはだれか」と尋
ねた。
すると、「私は大戸野にいる者ですが、2人の子どもが病気なので、明
日の野焼きをしばらく延ばしてください」と頼んだ。主人は「村で決ま
っていることだ。延ばすことはできない」と答えた。
主人は、大戸野に人が住んでいるはずもないのに、おかしなことだと思
った。
翌日、村人は総出で大戸野の茅野を囲み、野焼きを行った。広い茅野は、
一面に焼けて黒い斜面となった。
焼き終わったとき、1匹の大蛇が、2匹の小蛇をかばうようにして焼け
死んでいるのが見つかった。このあと、村では病気がはやったり、飢饉
(ききん)が起こったりした。村人は蛇のたたりを鎮めるため、大戸野
神社を建ててその霊を祭り、「蛇権現」と呼ぶようになった。
注〕大戸野峠の田野町の反対側に北郷町がありますが、そこでも上記の
話が伝わり、こちら側では-蛇塚-としてお祭りされています。
◎ ヘビが聞き惚れたという男の仕事唄。どんな節回しだったのか
と、おもってしまいます。
「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」
じつは高度な技術と、文化をもって営まれていたという「焼き畑農法」を
を 前回 そして 前々回 とご紹介しました。今回は、そんな焼き畑に
関する民話のご紹介です。真夏の夜の寝物語として、よろしかったら。。
では、おはなしです。
● 日之影町 逆巻大明神
日之影町の崎の原というところに逆巻大明神のほこらがある。宮水と大
人(おおひと)をつなぐ竜天橋の下で、昔はその下を流れる五ヶ瀬川が、
逆巻ふちという深いふちをつくっていた。
近くの村に住む男があるとき、この付近のヤボ切りを始めた。ヤボ切り
は山の斜面の木や草を切り払って乾燥させ、ころ合いを見て焼き畑にす
ることである。
この場所に大きな木があって、その根元の洞穴に大蛇の夫婦がすんでい
た。雌蛇はお産のために休んでいた。男はそんなこととは知らず、木に
登って枝を切り始めた。
大蛇は木を揺すって男を振り落とそうとしたが、男が歌う仕事歌に聞き
ほれて、落とすことができなかった。
大蛇は男の夢まくらに立ち、「火を入れるのをあと7日間待ってくれ。
この願いを聞いてくれれば、お前の家に幸福をもたらしてやる」と言っ
た。男は、夢に現れた蛇の話を信じようとしなかった。
そして焼き畑に火を入れる朝になった。
雄蛇は産後の雌蛇のため、二神山の乳ケ岩屋というところまで薬を求め
にいった。その帰り、舟ケ原というあたりに来たとき、すまいにしてい
る斜面に火が入れられ、燃えているのが見えた。雌蛇は生まれたばかり
の子蛇とともに焼け死んでしまった。
雄蛇は男の仕打ちを恨んで怒り狂い、その夜中、男の家に巻きついて家
を倒してしまった。男の家では、その後も災いが続いた。男は夢まくら
に立った蛇のことを思い出し、後悔した。
男は、大蛇の恨みを慰めるためにほこらを建て、逆巻大明神として祭っ
た。また、斜面の見える近くの森に礼拝するところをつくり、朝夕大蛇
の霊魂に祈りをささげたという。
● 田野町 大戸野神社
田野町の鰐塚山(わにつかやま)の稜線の東、その山地を田野から北郷
に越えるところに、大戸野峠があります。峠を下りると、そこに黒荷田
という集落がある。
大戸野の茅野は、春先の草の芽立ちがいいようにと、黒荷田の村人が毎
年野焼きをしていた。ある年、いつものように野焼きをする時期がきた
ので、村人は総出で大戸野に登り、火道(野焼きのときの防火線となる
区切り)を切って準備をした。そして、明日はいよいよ火を入れるとい
う日の夕方、村人は寒くなったので、早めに山を下りた。どの家も囲炉
裏(いろり)をたいて暖をとっていた。
村の庄屋の家でも、忙しく夕飯の支度をしていた。ふと気付くと、戸口
で人の気配がして、女人のすすり泣くような声が聞こえた。家族は何と
も気味が悪いので、お互いに顔を見合わせていぶかしがった。
主人が立ち上がって戸口に行き、「そこで泣いているのはだれか」と尋
ねた。
すると、「私は大戸野にいる者ですが、2人の子どもが病気なので、明
日の野焼きをしばらく延ばしてください」と頼んだ。主人は「村で決ま
っていることだ。延ばすことはできない」と答えた。
主人は、大戸野に人が住んでいるはずもないのに、おかしなことだと思
った。
翌日、村人は総出で大戸野の茅野を囲み、野焼きを行った。広い茅野は、
一面に焼けて黒い斜面となった。
焼き終わったとき、1匹の大蛇が、2匹の小蛇をかばうようにして焼け
死んでいるのが見つかった。このあと、村では病気がはやったり、飢饉
(ききん)が起こったりした。村人は蛇のたたりを鎮めるため、大戸野
神社を建ててその霊を祭り、「蛇権現」と呼ぶようになった。
注〕大戸野峠の田野町の反対側に北郷町がありますが、そこでも上記の
話が伝わり、こちら側では-蛇塚-としてお祭りされています。
◎ ヘビが聞き惚れたという男の仕事唄。どんな節回しだったのか
と、おもってしまいます。
「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」