葵から菊へ&東京の戦争遺跡を歩く会The Tokyo War Memorial Walkers

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侵華日軍第731部隊罪証陳列館の交流集会で発言

2009年12月02日 | 日本と中国

管理人は明日から6日まで訪中します。5日に中国・黒竜江省ハルビン市の郊外にある「侵華日軍第731部隊罪証陳列館」(金成民館長)で開かれる日中交流集会で下記を発言します。毒ガス裁判と毒ガス被害者を支える人々の活動報告(要旨)
毒ガスの過去・現在・未来を考え、旧日本軍の被害者をサポートする会 事務局長 長谷川順一
 日本が日中戦争以来、ふりまいてきた毒ガス問題を包括的に検証し、日中の毒ガスの被害者と毒ガスをめぐる各分野の第1線の研究者が一堂に会する初めての国際シンポジウム「毒ガスの完全廃絶を求めて~悪魔の連鎖を断ち切ろう~」が2003年3月8日に開催されました。
 国際シンポの当日は会場の東京・飯田橋「家の光会館」を約150人が会場を一杯に埋め尽くしました。中国からは、原告の仲江さん、遺棄兵器被害の現地調査に当たった黒竜江省社会科学院の歩平副院長が出席。日本側からは、生物・化学兵器問題に詳しい科学史の常石敬一神奈川大教授、毒ガスの歴史検証を精力的に行っている日本近現代史の吉見義明中央大教授に加え、コーディネーターとして、憲法学の水島朝穂早大教授が参加。さらに、大久野島毒ガス資料館の元館長、村上初一さんと、旧相模海軍工廠の工員だった奥山辰男さんも体験談を語りました。
 「双方の毒ガス被害者が団結して日本政府の責任を追及し、正義を求めようではないか」中国人被害者の仲江さんは、この言葉で証言を締めくくりました。仲江さんは1982年、黒竜江省牡丹江市で土木工事の監督中に、たまたま見つけた日本軍の致死性毒ガス、イペリットを浴び、重症を負った「戦後の戦争被害者」です。後遺症に苦しみ仕事の継続を断念、妻と子どもも仲江さんのもとを去る厳しい生活を強いられているだけに、団結の呼びかけの意味は深いものがあります。
 討議では、「非核宣言」に続く「毒ガス廃絶宣言」の決議を国会に求める意見などが提起され、最後に『中国に日本軍が持ち込み、敗戦時に放置した遺棄毒ガス兵器は推定70万~200万発に上る。その遺棄毒ガス兵器による中国人被害者は、少なくとも1000人近くに達する。国内では戦時中、毒ガス製造に従事した人々の多くが仲江さんと同じような後遺症に苦しんでいる。昨年9月には、神奈川県・寒川町の海軍の毒ガス製造施設跡での道路工事中にイペリットなどの入ったビール瓶10数本が発見され、作業員12人が被災する事件が起きた。中国でも、遺棄毒ガス兵器による被害は後を絶っていない。日中ともに今後、日本軍の毒ガスが新たな被害をもたらす可能性は依然、残っている。「日本の毒ガス史」は未だ現在進行形であることを今日、わたしたちは確認した。兵器というモノの廃棄だけではなく、被害者への補償や実効性のある再発防止策が講じられてこそ「毒ガス兵器の全廃」が実現されると訴え、日本政府に対し、責任の所在を明確化した上で、全ての被害者への補償、新たな被害を食い止めるための情報の公開などをすみやかに行うことを求める』という要旨のアピールを採択しました。
 本年5月26日,最高裁判所第3法廷は,日本政府に対し,旧日本軍が中国に遺棄してきた毒ガス・砲弾の被害による損害賠償を請求していた事件(1次訴訟,2次訴訟)の上告審で,原告の上告を棄却する不当な決定を下しました。
 「遺棄化学兵器問題の解決をめざす会」は6月10日に『最高裁判所は5月26日、旧日本軍が遺棄した毒ガスで被害にあった中国人が日本政府を訴えていた訴訟で上告を棄却した。「単なる法令違反だから棄却する」というのである。最高裁判所は人権の砦としての役割を担っている。真につらい体験をした人の側にたつのが裁判所である。最高峰にたつはずの最高裁が「法令違反」は問わない、というのでは話しにならない。』という要旨の抗議声明を出しました。
 1991年8月に訪中した「市民調査団(団長越田稜さん)」に当時、中国人民抗日戦争祈念館で開催していた「731部隊展」の展示パネルや史資料を日本に貸し出すから開催しないかと中国側から提案がありました。帰国したメンバー等がよびかけ人となって「731部隊展実行委員会」(代表・森川金壽さん、常石敬一さん、松谷みよ子さん、事氏務局長渡辺登さん)が結成され、92年7月、新宿を皮切りに「731部隊展」は全国巡回活動を開始したのであります。
 この活動を通じて、旧日本軍が中国戦線で毒ガス弾を実戦使用した事実が明らかになっっていきました。「戦後50年・国際シンポジウム」が、哈爾浜市で95年7月31日から8月2日までの3日間にわたって開かれました。毒ガス問題が独立の分科会となり、「旧日本軍が遺棄した毒ガス弾が中国各地で発見され、人的被害が拡大中だ。実態究明は細菌・毒ガス戦などの全体像を明らかにすることが重要だ(吉見義明中大教授)」など旧日本軍が中国各地に遺棄した化学兵器による住民の被害が多発していた事実が報告された。③九七年春には「化学兵器禁止条約」発効が確実となり、日本は《遺棄化学兵器を完全処理する責務》を負うことなった…など。日本政府はもとより市民としても歴史的な事実を究明、学習・宣伝する重要性を痛感しました。
 96年2月に「毒ガス展実行委員会」を結成、代表:遅塚令二さん、事務局長:梅靖三さんのもと広島・大久野島研究所とも連携して、毒ガス展パネル60枚を作成し、実物の毒ガス製造装置や旧日本軍文書、写真などを展示し国民に広く訴えるために9月に新宿から「毒ガス展」がスタートしました。医師である遅塚令二さんは『今日「毒ガス展実行委員会」結成総会を迎えましたけれども、この「毒ガス展」をやっていこうじぁないか、ということになった流れは、「731部隊展」を全国展開していく中で、当然避けて通れないような形で毒ガス問題が出てきたわけです。』と述べています。
 99年9月、731部隊展と毒ガス展の実行委員会を「ABC企画委員会」に統合。代表代行:山辺悠喜子さん、事務局長:三嶋静夫さん、事務局次長:和田千代子さんの役員体制となったのであります。現在は「侵華日軍第731部隊罪証陳列館」を世界遺産に登録させることや細菌戦と毒ガス戦による中国人被害者支援、加害の戦跡を訪ねる中国スタディーツアーなどの運動をしています。
 731部隊・南京虐殺・無差別爆撃訴訟ならびに中国人「慰安婦」第1次訴訟の全体を支援する団体「中国人戦争被害者の要求を支える会」が1995年8月に結成されることとなりました。弁護士南典男さんが事務局長を引き受け、その後弁護士山田勝彦さんが事務局長をやって頂いております。「中国人戦争被害者の要求を支える会」はさまざまな活動を繰り広げ、被害と旧日本軍の加害の事実を広げ、署名や集会、裁判傍聴などの活動を今日まで続けてきています。こうして現在「支える会」は、大谷猛夫事務局長のもと、会員3000人以上の会へと発展しています。
 07年1月25日、に提訴した斉斉哈爾事件を支援する「チチハル8・4被害者を支援する会」は斉斉哈爾の現場へのスタディーツアーなどで若い人たちが裁判傍聴や集会の企画に参加しています。斉斉哈爾事件被害者馮佳縁ちゃんとお母さんの白玉栄さんが来日した時に茨城県神栖市毒ガス被害者青塚美幸さん親子と共に国会内で記者会見する中で交流が深まっています。
 広島県大久野島は陸軍忠海兵器製造所として毒ガスを製造してきたましたが1996年4月28日に竹原市を拠点にして発足した「毒ガス島歴史研究所」もご紹介しておきます。代表に大久野島毒ガス資料館の元館長村上初一さんがなり、毒ガス島の関係者の聞き取りを含め、大久野島の戦争加害の歴史を掘り起こし毒ガス問題を考えることで、私たち一人ひとりの戦争の被害と加害の両面を考えていくことを目的としています。この研究所では過去の悲惨な歴史を二度と繰り返さないために毒ガス問題を調査・研究することを通して、戦争の被害・加害の真実を広く伝える平和研究機関として平和と人権を守る運動、並びに大久野島の戦争遺跡の保存運動、平和学習ガイドに力を入れています。
 一方、この基金とは別に、ドキュメント映画「苦い涙の大地から」(海南友子監督作品)を鑑賞した中国帰還者連絡会故三尾豊さんの家族から100万円のカンパがあり、「中国人毒ガス被害者の治療費用に充てて欲しい」というカンパの趣旨を確認して「中国人毒ガス被害者基金」として処理することにしました。「8・4チチハル毒ガス被害者人道支援資金」は「中国毒ガス被害者基金」の活動目的に賛同し、情報を共有し、お互いに助け合いながら中国国内のすべての化学兵器の被害者をサポートする道を模索してきました。
 現在、原告らと弁護団は、すべての日本軍遺棄毒ガス被害問題について以下のとおり全面的な解決を要求しています。
面的な解決を要求しています。
①中国国内における遺棄毒ガス兵器による事故被害者に対し、日本政府は責任を認め、真摯に謝罪すること。
②被害者らに対し補償を行うこと。
③障害を受けた被害者に対し、医療ケア等の支援を行うこと。
④遺棄毒ガス兵器による環境破壊に対し、誠実に対処すること。
⑤遺棄毒ガス兵器を速やかに撤去すること。
⑥日本における毒ガス兵器の製造、配備、使用の事実に関する情報の収集と公開に努め日本政府が責任を持って究明し、これを中国政府に伝えること。
⑦日本における毒ガス兵器の製造、配備、使用の事実を資料館の建設等の事業活動により未来に記憶すること。

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