東京オペラシティ・タケミツメモリアルに於けるモーツァルト「レクイエム」特別演奏会を終えて、三度目の朝を迎えた。
コンサートの感想は聴衆それぞれのものであるが、わたしはわたしで、記憶の鮮烈なうちにいくつか書き残しておきたい。
まずは、東京ヴェリタス交響楽団のことである。盟友にして日本を代表するコンサートマスター崔文洙さん率いる弦楽セクションと悪友・高野成之さん率いる管楽器セクションの合体した夢のオーケストラ。
弦に於いて、最後尾のプルトまで、崔文洙さんの意思が伝わり、呼吸をともにしている様は、相互の尊敬と信頼に裏付けられたもので、ある意味、様々なメソードや想いの混在する既存のオーケストラよりも純粋な存在となっていたであろう。
管楽器を率いる高野成之さんは東京交響楽団所属の名プレーヤーであるが、彼の人柄に引き寄せられたメンバーによるアンサンブルの清涼さ、温かさは格別であった。
そして、ティンパニには、これまで、バッハ、モーツァルトなどで共演を重ねてきた村本寛太郎さん。センスと情熱に惚れ込んでお呼びした。
ついでに述べると崔文洙さん、高野成之さんとわたしは、桐朋学園でともに学んだ仲。このような日のために、桐朋学園の日々があったのだ、と思えなくもない。
通常、オーケストラ定期のリハーサルが3日あるところ、我々に与えられた時間は本番前日ただ1日。これは、多忙を極めるメンバーのスケジュール的にも、興行としての予算的にもギリギリの選択。
その1日のリハーサルで、経験豊富とは言いかねる指揮に反応し、わたしの感性や意図を最大限に汲み取り、実現化してくれたのは、崔文洙さんの類い希なリーダーシップと上記に掲げた友情とチームワークのなせる技であろう。
そんなわけで、コンサートは、「魔笛」序曲と「40番」によって、まことに幸せなスタートを切ることができた。