時計がない

時計がないと父が言う
置き忘れたのは時ではなく父だったのだろう

まんまんしゃん　まんまんしゃん

と　ばあちゃんにつれられて
ささぐりさんの洞窟の中
いわにきざまれた
のうまく
のもじのつづきがおもいだせないのだろう

まんまんしゃん　まんまんしゃん

と　ばあちゃんがおがんでおったように
つぶやいている父は
時計がない時を置き忘れて
不動の人になっていった

まんまんしゃん

いくあてのないちちのこえまんまんしゃんまんまんしゃんとつぶやくなかれ